文字の「色」を答えるだけなのに脳がバグる。90年前の実験「ストループ効果」

読む前に予想してみよう!
文字をまだ読めない幼い子どもでも、ストループ効果は大人と同じくらい強く起きる
ストループ効果は「読むこと」が自動化されているから起きる。文字が読めないと、文字の意味に邪魔されにくい。
- 対象
- 大学生・子ども・高齢者など
- 規模
- 数十人規模の実験が数千件
- 研究の種類
- 実験室実験・レビュー
- 確かさ
- ★★★★★
青いインクで書かれた「あか」の色を答えると、脳は混乱して遅くなる。1935年に報告されて以来、心理学で最も有名な実験の一つとして研究されている。
ひとことで言うと読むのが上手になりすぎた脳は、つい文字を読んじゃう!
ちょっと頭の中で想像してみてください。
青いペンで「あか」と書かれた文字があります。「この文字は何色で書かれていますか?」と聞かれたら、あなたは「あお」と即答できますか?
多くの人は、一瞬「あか…じゃなくて、あお!」とつまってしまいます。
この不思議な現象は「ストループ効果」と呼ばれ、なんと90年以上前から研究されている、心理学で最も有名な実験の一つです。
011935年、ストループさんの発見
ちなみにストループさんは、この有名な研究のあと、心理学の研究の第一線からは離れ、大学で聖書を教えることに力を注いだと伝えられています。本人の手を離れたあとで、論文が世界中で引用されるようになったのです。
02なぜ脳はバグるのか?
理由は、私たちが文字を読むことに慣れすぎているからです。
大人の脳にとって、文字を読むことはほぼ自動。見た瞬間、意識しなくても意味が頭に入ってきます。一方、「インクの色を言葉にする」のは、ふだんあまりやらない作業です。
すると、頭の中で「あか!」という自動の答えと、「あお」という正しい答えがぶつかり合い、交通渋滞が起きてしまうのです。
たとえるなら、慣れた通学路を歩いているときに、「今日は別の道で」と言われた感じ。足が勝手にいつもの道へ向かおうとして、ブレーキをかけるのに手間取ってしまいます。

03文字が読めない子には起きにくい
この説明を裏づけるのが、子どもの研究です。
文字をまだ読めない幼い子どもは、文字の意味に邪魔されにくいため、ストループ効果がほとんど起きません。ところが、読むことを覚えはじめると、効果が強く現れるようになります。
面白いのは、その後の変化です。1962年の研究(Comalliら)では、小学校低学年ごろの子どもは大人よりも大きく混乱し、成長とともに混乱は小さくなり、高齢になると再び大きくなるというU字型の変化が報告されました。読む力が自動化する一方で、「じゃまな情報を抑える力」は大人になるにつれて育ち、年をとると少し弱まる、と考えられています。
つまりストループ効果は、読む力が身についた証拠でもあり、じゃまを抑えるブレーキの強さを映す鏡でもあるのです。
0490年たっても現役の実験
ストループ効果は、今でも心理学や医療の現場で使われています。
- 注意や集中のコントロールを調べるテストとして
- 年齢による認知機能の変化を調べる研究として
- 「感情ストループ課題」:不安や心配ごとに関係する言葉が出ると、色を答えるのが遅くなりやすい性質を利用し、心の状態を調べる研究に
1991年には、カナダの心理学者マクラウドさんが、それまでの半世紀分のストループ研究をまとめた大きなレビュー論文を発表しています。それだけ多くの研究者が、このシンプルな実験に魅了されてきたのです。
ストループ効果そのものは、再現性の危機が話題の心理学の中でも、ほぼ確実に再現される「鉄板」の現象です。ただし落とし穴もあります。「みんなに起きる」ことは確実でも、1人ひとりの「混乱しやすさ」を測るテストとしては、再テストで個人の順位が安定しにくいことがわかってきました(2018年の研究)。「ストループの成績で、あなたの集中力がわかる」といった使い方には注意が必要です。
また感情ストループ課題についても、不安に関わる言葉で遅くなるのは、色と文字の「ぶつかり合い」というより、気になる言葉に注意が引っぱられて全体が遅くなるだけではないか、という指摘があります。
05まとめ
青い「あか」でつまるのは、あなたの脳が読むことの達人だから。自動で動く力が強すぎて、ブレーキが一瞬遅れるのです。
90年前の小さな実験は、「脳の中では、いくつもの処理が同時に競い合っている」という大きな事実を教えてくれました。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf the word "green" is printed in red ink and someone asks you to name the ink color, you will probably…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Look at the word "red" written in blue ink. Can you quickly say the color of the ink? Many people stop for a moment. This is called the Stroop effect. It was first reported in 1935. Adults read words very fast, almost without thinking.
So the word "red" gets in the way of the answer "blue." Young children who cannot read yet do not have this problem very much.
69 words ・ CEFR A2
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青いインクで書かれた「red(赤)」という単語を見てください。インクの色をすぐに言えますか?多くの人は一瞬止まってしまいます。これはストループ効果と呼ばれます。1935年にジョン・ストループがそれについて書きました。大人はほとんど考えずに、とても速く単語を読みます。
そのため「赤」という単語が「青」という答えのじゃまをするのです。まだ字が読めない幼い子どもには、この問題はあまり起きません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
色の名前が別の色で書かれていると答えにつまる=ストループ効果が主題なので B。
Q2. When did John Stroop write about the effect?
John Stroop wrote about it in 1935. とあるので D。
Q3. In this passage, "gets in the way of" means ...
get in the way of ~ は「~のじゃまをする」。単語の意味が正しい答えのじゃまをする、という文脈なので B。
If the word "green" is printed in red ink and someone asks you to name the ink color, you will probably hesitate. In 1935, the American psychologist John Ridley Stroop showed that people take much longer to name ink colors when the word and the color do not match, and they also make more mistakes.
The reason is that reading is almost automatic for adults. The meaning of the word comes into our mind before we can stop it, so it competes with the correct answer. Young children who cannot read yet are hardly affected. The effect becomes strong once they start learning to read. Over 90 years later, the Stroop task is still widely used to study attention.
119 words ・ CEFR B1
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「green(緑)」という単語が赤いインクで印刷されていて、インクの色を言うよう頼まれたら、おそらくためらうでしょう。1935年、アメリカの心理学者ジョン・リドリー・ストループは、単語と色が一致しないとき、人はインクの色を言うのにずっと長い時間がかかり、間違いも増えることを示しました。
その理由は、大人にとって読むことはほぼ自動的だからです。単語の意味は私たちが止める前に頭に入ってきてしまい、正しい答えと競い合うのです。まだ字を読めない幼い子どもはほとんど影響を受けません。この効果は、読むことを学び始めると強くなります。90年以上たった今でも、ストループ課題は注意の研究に広く使われています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Stroop show in 1935?
people take much longer to name ink colors when the word and the color do not match とあるので A。
Q2. According to the passage, why does the Stroop effect happen?
The reason is that reading is almost automatic for adults. とあるので C。
Q3. What can we infer about a child who has just started learning to read?
The effect becomes strong once they start learning to read. から、読み始めた子は効果が強く出始めると推論できるので B。
The Stroop effect is one of the most robust findings in psychology. In 1935, John Ridley Stroop reported that participants were considerably slower, and made more errors, when naming the ink color of a word that spelled a different color than when naming colored patches. The standard explanation is that, for skilled readers, reading is so automatic that the word's meaning intrudes on the less practiced task of naming colors, creating a conflict that takes time to resolve.
Developmental research supports this account: children who cannot yet read show little interference, whereas a 1962 study reported a U-shaped pattern, with interference largest in early schoolchildren, smaller in adults and larger again in older people. The task remains popular for studying attention and aging, and an "emotional" version is used to examine anxiety. However, two cautions apply. A 2018 study showed that, although the effect is robust in groups, people differ so little that individual Stroop scores are not very reliable, making them poor measures of personal concentration. In addition, slowing on emotional words may reflect a general distraction rather than genuine word-color conflict.
183 words ・ CEFR B2
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ストループ効果は、心理学で最も確固とした発見の1つです。1935年、ジョン・リドリー・ストループは、色のついた四角形の色を答えるときに比べ、別の色を表す単語のインクの色を答えるとき、参加者はかなり遅くなり、間違いも増えることを報告しました。標準的な説明では、熟達した読み手にとって読むことはあまりに自動的なので、単語の意味が、あまり慣れていない「色を言う」という作業に割り込み、解決に時間のかかる葛藤を生むとされます。
発達研究はこの説明を支持しています。まだ字を読めない子どもはほとんど干渉を示さない一方、1962年の研究は、干渉は小学校低学年で最も大きく、大人で小さくなり、高齢者で再び大きくなるというU字型のパターンを報告しました。この課題は注意や加齢の研究で今も人気があり、「感情」版は不安を調べるのに使われています。ただし、2つの注意点があります。2018年の研究は、集団レベルでは頑健な効果であるものの、人どうしの差が小さすぎて個人の得点は信頼性が低く、個人の集中力を測る指標としては不向きであることを示しました。さらに、感情語での遅れは、本当の単語と色の葛藤ではなく、全般的に気が散ることを反映しているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ストループ効果の発見・説明・応用・注意点を順に述べているので D。
Q2. According to the 1962 study, who showed the smallest interference?
U字型で、interference ... smaller in adults とあるので D。読めない子は1962年の研究ではなく別の発達研究の話。
Q3. What does the author suggest about using the Stroop test to judge one person's concentration?
individual Stroop scores are not very reliable, making them poor measures of personal concentration とあるので C。
重要単語
- interferenceC1名詞干渉、じゃまNoise causes interference with radio signals.
動詞 interfere with ~「~をじゃまする」。with とセットで入試頻出。 - automaticB1形容詞自動的なFor adults, reading is almost automatic.
auto-(自ら)。副詞 automatically、名詞 automation(自動化)もまとめて覚える。 - inkA2名詞インクThe word was written in red ink.
「~色のインクで」は in red ink のように前置詞 in を使う。 - attentionA2名詞注意Pay attention to the teacher's instructions.
pay attention to ~ は最重要熟語。attract / draw attention「注意を引く」も。 - reaction timeB1名詞(句)反応時間Coffee may shorten your reaction time.
心理学実験の基本指標。「短くなる=速い」なので shorten / longer を読み違えない。 - robustC1形容詞確固とした、頑健なThe Stroop effect is a robust finding.
研究では「何度やっても同じ結果が出る」の意味。robust evidence / robust economy など幅広く使う。 - hesitateB1動詞ためらうDon't hesitate to ask questions.
Don't hesitate to do「遠慮なく~して」は手紙・メールの定番表現。名詞 hesitation。
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青いインクで「あか」と書かれた文字。「何色で書かれている?」と聞かれると、なぜか一瞬つまる。1935年に報告された「ストループ効果」。読むことが自動化された脳ほど起きやすく、文字を読めない幼い子では起きにくいらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Stroop (1935) Studies of interference in serial verbal reactions, Journal of Experimental Psychologydoi.org
- MacLeod (1991) Half a century of research on the Stroop effect: An integrative review, Psychological Bulletindoi.org
- Comalli, Wapner & Werner (1962) Interference effects of Stroop color-word test in childhood, adulthood, and aging, The Journal of Genetic Psychologydoi.org
- Williams, Mathews & MacLeod (1996) The emotional Stroop task and psychopathology, Psychological Bulletindoi.org
- Hedge, Powell & Sumner (2018) The reliability paradox: Why robust cognitive tasks do not produce reliable individual differences, Behavior Research Methodsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











