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顔を重ねた「平均顔」は、生後6か月の赤ちゃんも好むのに、いちばん魅力的な顔ではなかった

顔を重ねた「平均顔」は、生後6か月の赤ちゃんも好むのに、いちばん魅力的な顔ではなかった

読む前に予想してみよう!

たくさんの顔を重ねた「平均顔」は、どんな顔よりも魅力的に見える

研究カード(どんな研究?)
対象
大人の評価者、生後6か月の赤ちゃん、タンザニアのハッザの人たちほか
規模
1990年の実験は男女の顔写真セット各3組
研究の種類
実験(顔写真をコンピューターで合成して評価)と、その後の追試・反論
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

顔を重ねた「平均顔」は、元のほとんどの顔より魅力的と評価され、赤ちゃんも好む。でも魅力的な顔だけの平均のほうが好まれ、いちばんの顔は平均ではなかった。

ひとことで言うとたくさんの顔をまぜると、魅力的な顔になりやすい。でも「いちばん」は平均じゃなかった!

もくじ
  1. 顔写真を重ねたら、整った顔になった
  2. コンピューターで平均すると、ほぼすべての顔より魅力的に
  3. 生後6か月の赤ちゃんも、平均顔を好んだ
  4. どんでん返し:いちばん魅力的な顔は、平均ではなかった
  5. 「平均」は、見てきた顔で決まる
  6. まとめ

1878年、イギリスの学者フランシス・ゴルトンは、変わった写真を発表しました。殺人や強盗などで有罪になった人たちの顔写真を、1枚に重ねて写したのです。ねらいは「犯罪者らしい顔つき」を取り出すことでした。

ところが、重ねた顔から「犯罪者らしさ」は、はっきりとは出てきませんでした。ゴルトン自身、元の顔より整って見えると書いています。

1990年、アメリカの心理学者は、たくさんの顔写真をコンピューターに取りこみ、平均して1つの顔を作りました。この「平均顔」は、元になったほとんどすべての顔より魅力的と評価されました。のちの実験では、生後6か月の赤ちゃんも平均顔を好みました。

では、いちばん魅力的な顔は「平均」なのでしょうか。1994年、その答えをひっくり返す実験が出ます。平均顔よりも好まれる顔が作れたのです。

01顔写真を重ねたら、整った顔になった

ゴルトンは、顔写真の目の位置をそろえ、同じ1枚の写真に、1人ずつ短い時間だけ重ねて写し込みました。論文の例では、8人を10秒ずつ、合わせて80秒です。すると、全員の特徴がまざった1つの顔が浮かび上がります。この方法は1878年に発表され、翌1879年に学会誌の論文になりました。

ゴルトンは、目の位置をそろえた顔写真を、1枚の写真に少しずつ写し込んだ(イメージ図)
ゴルトンは、目の位置をそろえた顔写真を、1枚の写真に少しずつ写し込んだ(イメージ図)

できた顔について、ゴルトンはこう書いています。

「合成した顔はどれも、元の顔より見た目がよい」(Galton 1879。訳は編集部)

一人ひとりの顔の「ふぞろいなところ」が、重ねると消えるから、というのが彼の説明です。ただし、これは本人の感想です。ほかの人に見せて評価してもらったわけではありません。

ゴルトンは、重ねた顔では一人ひとりの顔のくせが消えて、だれにでも共通する人間らしさが残った、とも書いています。なお、この記事は、顔つきで人の性格や行いを判断してよいという話ではありません。

02コンピューターで平均すると、ほぼすべての顔より魅力的に

顔の平均を、コンピューターを使った実験で調べたのが、アメリカの心理学者ラングロワさんとログマンさんです。1990年に学術誌『Psychological Science』で発表しました。

論文の題名は「魅力的な顔は、平均にすぎない」。かなり言い切った題名です。著者たちは、理由として2つの考えを挙げています。1つは、集団の平均に近い特徴が、進化の中で有利だったのかもしれない、という考えです。もう1つは、人には、同じ種類のものの中で「いちばん典型的な形」を好む傾向がある、という考えです。

その後、ほかの研究者による実験も増えました。2006年に多くの研究をまとめて分析した論文(メタ分析)でも、平均に近い顔は、男性の顔でも女性の顔でも、さまざまな文化で魅力的と評価される傾向がありました。

03生後6か月の赤ちゃんも、平均顔を好んだ

1999年、ラングロワさんたちは赤ちゃんで調べました。大人だけでなく、生後6か月の赤ちゃんも平均顔を好むことが分かりました。

さらに、6か月の赤ちゃんは、何枚もの顔を見るうちに、その「まんなか」をつかめることも示されました。研究者たちは、赤ちゃんの好みは、見た顔から平均を取り出す頭の働きで説明できると考えています。論文によると、赤ちゃんが魅力的な顔を好む傾向は、親やまわりの人、テレビなどの影響を受けるより前から見られることが、それまでの研究で分かっていました。

04どんでん返し:いちばん魅力的な顔は、平均ではなかった

1994年、イギリスのペレットさんたちが日本の研究者と組んだ実験を、学術誌『Nature』に発表しました。女性の顔で、2種類の平均顔を作りました。

  • 集めた顔全部の平均の形
  • その中で、魅力的と評価された顔だけの平均の形

好まれたのは、魅力的な顔だけの平均でした。そのうえ、その顔が全体の平均と違うところを強調して大きくすると、もっと魅力的になりました。平均からわざと離したほうが、魅力が上がったのです。

日本人の評価者と白人の評価者で、好みの向きは同じでした。平均顔は、たしかに魅力的です。でも、いちばんではありませんでした。

05「平均」は、見てきた顔で決まる

2007年には、アフリカのタンザニアで狩りと採集をして暮らすハッザの人たちを調べた研究が出ました。欧米の人もハッザの人も、全体としては平均に近い顔を好みました。ところが、ヨーロッパの人の顔では、ハッザの人たちに平均顔へのはっきりした好みは見られませんでした。

研究者たちは、見てきた顔の違いで説明しています。ハッザの人たちは、ヨーロッパの人の顔を見る機会があまりありません。だから、その顔の「まんなか」が頭の中にできていないのかもしれない、というのです。

赤ちゃんの実験とあわせると、平均顔の「平均」は、世界の全員の平均ではなく、一人ひとりが見てきた顔の平均なのかもしれません。集合写真の中の顔が少しよく見える「チアリーダー効果」も、平均顔の考え方で説明されることがあります(集合写真だと少しよく見える「チアリーダー効果」)。

06まとめ

1878年、ゴルトンは、顔写真を重ねると整った顔に見えることに気づきました。その後の実験で、平均顔が魅力的に見えることは、大人でも赤ちゃんでも確かめられました。

一方で、いちばん魅力的な顔は平均ではありませんでした。そして「平均」そのものも、その人がどんな顔を見てきたかで変わるようです。魅力的だと感じる基準の一部は、生まれつきではなく、毎日見ている顔から作られているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan a face made from many faces be beautiful? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Can a face made from many faces be beautiful? In 1990, two American psychologists put photos of men's and women's faces into a computer and averaged them. Adults rated the averaged faces as more attractive than almost all of the faces used to make them, and the scores went up as more faces were added.

A later study found that six-month-old babies also preferred averaged faces. The babies could also find the middle of a group of faces they had seen. But in 1994, British and Japanese researchers made two averaged faces of women. One used all the faces, and the other used only the attractive ones. People liked the second one more.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

たくさんの顔から作った顔は、美しくなりうるのだろうか。1990年、アメリカの2人の心理学者が、男性と女性の顔写真をコンピューターに取りこみ、平均した。大人たちは、平均した顔を、それを作るのに使ったほとんどすべての顔より魅力的だと評価し、加える顔が増えるほど点数は上がった。

その後の研究で、生後6か月の赤ちゃんも平均した顔を好むことが分かった。その赤ちゃんたちは、見た顔の集まりの「まんなか」をつかむこともできた。しかし1994年、イギリスと日本の研究者が、女性の平均顔を2つ作った。一方は全部の顔を使い、もう一方は魅力的な顔だけを使った。人々は2つ目の顔のほうを好んだ。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened when more faces were added to an averaged face?

Q3. What does the 1994 study suggest?

重要単語

  • averageA2
    名詞・形容詞・動詞平均(の)、平均するThe computer averaged thirty photos into one face. on average で「平均して」。動詞としても使える
  • attractiveB1
    形容詞魅力的なMost people found the blended face attractive. attract(引きつける)+-ive。名詞は attractiveness
  • blendB1
    動詞・名詞まぜ合わせる、まぜたものShe blended the two photos on her laptop. blender(ミキサー)と同じ仲間の語。blend in で「なじむ」
  • compositeC1
    名詞・形容詞合成したもの、合成のThe artist made a composite of ten portraits. compose(組み立てる)と同じ語源。a composite photo は合成写真
  • typicalB1
    形容詞典型的な、よくあるRain is typical of June in Japan. type(型)と同じ仲間の語。be typical of ~ で「~によくある、~らしい」
  • preferA2
    動詞~のほうを好むBabies preferred the averaged faces. prefer A to B で「B より A を好む」。名詞は preference
  • exaggerateB2
    動詞大げさにする、強調するDon't exaggerate the size of the fish you caught. g が2つ続くつづりに注意。名詞は exaggeration
1878年、何人もの顔写真を1枚に重ねると、元の顔より整って見えた(撮った学者の感想)。1990年の実験でも、コンピューターで顔写真を平均した「平均顔」は元の顔のほぼすべてより魅力的と評価された。でも1994年、魅力的な顔だけの平均のほうが好まれた。いちばん魅力的な顔は、平均ではなかった。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Galton (1879) Composite Portraits, Made by Combining Those of Many Different Persons Into a Single Resultant Figure, The Journal of the Anthropological Institute of Great Britain and Irelanddoi.org
  2. Langlois & Roggman (1990) Attractive Faces Are Only Average, Psychological Sciencedoi.org
  3. Perrett, May & Yoshikawa (1994) Facial shape and judgements of female attractiveness, Naturedoi.org
  4. Rubenstein, Kalakanis & Langlois (1999) Infant preferences for attractive faces: A cognitive explanation, Developmental Psychologydoi.org
  5. Rhodes (2006) The Evolutionary Psychology of Facial Beauty, Annual Review of Psychologydoi.org
  6. Apicella, Little & Marlowe (2007) Facial averageness and attractiveness in an isolated population of hunter-gatherers, Perceptiondoi.org