顔を重ねた「平均顔」は、生後6か月の赤ちゃんも好むのに、いちばん魅力的な顔ではなかった

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たくさんの顔を重ねた「平均顔」は、どんな顔よりも魅力的に見える
平均顔は元の顔のほとんどより魅力的と評価された。でも1994年の実験では、魅力的な顔だけを平均した顔のほうが、全員の平均顔より好まれた。
- 対象
- 大人の評価者、生後6か月の赤ちゃん、タンザニアのハッザの人たちほか
- 規模
- 1990年の実験は男女の顔写真セット各3組
- 研究の種類
- 実験(顔写真をコンピューターで合成して評価)と、その後の追試・反論
- 確かさ
- ★★★★☆
顔を重ねた「平均顔」は、元のほとんどの顔より魅力的と評価され、赤ちゃんも好む。でも魅力的な顔だけの平均のほうが好まれ、いちばんの顔は平均ではなかった。
ひとことで言うとたくさんの顔をまぜると、魅力的な顔になりやすい。でも「いちばん」は平均じゃなかった!
もくじ
1878年、イギリスの学者フランシス・ゴルトンは、変わった写真を発表しました。殺人や強盗などで有罪になった人たちの顔写真を、1枚に重ねて写したのです。ねらいは「犯罪者らしい顔つき」を取り出すことでした。
ところが、重ねた顔から「犯罪者らしさ」は、はっきりとは出てきませんでした。ゴルトン自身、元の顔より整って見えると書いています。
1990年、アメリカの心理学者は、たくさんの顔写真をコンピューターに取りこみ、平均して1つの顔を作りました。この「平均顔」は、元になったほとんどすべての顔より魅力的と評価されました。のちの実験では、生後6か月の赤ちゃんも平均顔を好みました。
では、いちばん魅力的な顔は「平均」なのでしょうか。1994年、その答えをひっくり返す実験が出ます。平均顔よりも好まれる顔が作れたのです。
01顔写真を重ねたら、整った顔になった
ゴルトンは、顔写真の目の位置をそろえ、同じ1枚の写真に、1人ずつ短い時間だけ重ねて写し込みました。論文の例では、8人を10秒ずつ、合わせて80秒です。すると、全員の特徴がまざった1つの顔が浮かび上がります。この方法は1878年に発表され、翌1879年に学会誌の論文になりました。

できた顔について、ゴルトンはこう書いています。
「合成した顔はどれも、元の顔より見た目がよい」(Galton 1879。訳は編集部)
一人ひとりの顔の「ふぞろいなところ」が、重ねると消えるから、というのが彼の説明です。ただし、これは本人の感想です。ほかの人に見せて評価してもらったわけではありません。
ゴルトンは、重ねた顔では一人ひとりの顔のくせが消えて、だれにでも共通する人間らしさが残った、とも書いています。なお、この記事は、顔つきで人の性格や行いを判断してよいという話ではありません。
02コンピューターで平均すると、ほぼすべての顔より魅力的に
顔の平均を、コンピューターを使った実験で調べたのが、アメリカの心理学者ラングロワさんとログマンさんです。1990年に学術誌『Psychological Science』で発表しました。
論文の題名は「魅力的な顔は、平均にすぎない」。かなり言い切った題名です。著者たちは、理由として2つの考えを挙げています。1つは、集団の平均に近い特徴が、進化の中で有利だったのかもしれない、という考えです。もう1つは、人には、同じ種類のものの中で「いちばん典型的な形」を好む傾向がある、という考えです。
その後、ほかの研究者による実験も増えました。2006年に多くの研究をまとめて分析した論文(メタ分析)でも、平均に近い顔は、男性の顔でも女性の顔でも、さまざまな文化で魅力的と評価される傾向がありました。
03生後6か月の赤ちゃんも、平均顔を好んだ
1999年、ラングロワさんたちは赤ちゃんで調べました。大人だけでなく、生後6か月の赤ちゃんも平均顔を好むことが分かりました。
さらに、6か月の赤ちゃんは、何枚もの顔を見るうちに、その「まんなか」をつかめることも示されました。研究者たちは、赤ちゃんの好みは、見た顔から平均を取り出す頭の働きで説明できると考えています。論文によると、赤ちゃんが魅力的な顔を好む傾向は、親やまわりの人、テレビなどの影響を受けるより前から見られることが、それまでの研究で分かっていました。
04どんでん返し:いちばん魅力的な顔は、平均ではなかった
1994年、イギリスのペレットさんたちが日本の研究者と組んだ実験を、学術誌『Nature』に発表しました。女性の顔で、2種類の平均顔を作りました。
- 集めた顔全部の平均の形
- その中で、魅力的と評価された顔だけの平均の形
好まれたのは、魅力的な顔だけの平均でした。そのうえ、その顔が全体の平均と違うところを強調して大きくすると、もっと魅力的になりました。平均からわざと離したほうが、魅力が上がったのです。
日本人の評価者と白人の評価者で、好みの向きは同じでした。平均顔は、たしかに魅力的です。でも、いちばんではありませんでした。
05「平均」は、見てきた顔で決まる
2007年には、アフリカのタンザニアで狩りと採集をして暮らすハッザの人たちを調べた研究が出ました。欧米の人もハッザの人も、全体としては平均に近い顔を好みました。ところが、ヨーロッパの人の顔では、ハッザの人たちに平均顔へのはっきりした好みは見られませんでした。
研究者たちは、見てきた顔の違いで説明しています。ハッザの人たちは、ヨーロッパの人の顔を見る機会があまりありません。だから、その顔の「まんなか」が頭の中にできていないのかもしれない、というのです。
赤ちゃんの実験とあわせると、平均顔の「平均」は、世界の全員の平均ではなく、一人ひとりが見てきた顔の平均なのかもしれません。集合写真の中の顔が少しよく見える「チアリーダー効果」も、平均顔の考え方で説明されることがあります(集合写真だと少しよく見える「チアリーダー効果」)。
06まとめ
1878年、ゴルトンは、顔写真を重ねると整った顔に見えることに気づきました。その後の実験で、平均顔が魅力的に見えることは、大人でも赤ちゃんでも確かめられました。
一方で、いちばん魅力的な顔は平均ではありませんでした。そして「平均」そのものも、その人がどんな顔を見てきたかで変わるようです。魅力的だと感じる基準の一部は、生まれつきではなく、毎日見ている顔から作られているのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan a face made from many faces be beautiful?
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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この研究を英語で読もう
In 1878, a British scientist put many face photos together into one face. He said the new face looked better than the real faces. In 1990, two researchers did the same thing with a computer. Adults said the mixed faces were more attractive than almost all the real faces.
Later, six-month-old babies liked these faces too. But in 1994, a face mixed only from attractive faces did even better. So the most attractive face is not the average one.
79 words ・ CEFR A2
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1878年、イギリスのある科学者が、たくさんの顔写真を合わせて1つの顔を作った。彼は、その新しい顔は本当の顔よりよく見えると言った。1990年、2人の研究者がコンピューターで同じことをした。大人たちは、まぜた顔のほうが、本当の顔のほとんどすべてより魅力的だと答えた。
のちに、生後6か月の赤ちゃんも、こうした顔を好んだ。しかし1994年、魅力的な顔だけをまぜた顔は、さらによい結果になった。だから、いちばん魅力的な顔は平均の顔ではない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
顔をまぜて作った顔がどのくらい魅力的に見えるかを、1878年から1994年まで順に述べているので、正解は B。
Q2. Who liked the mixed faces, according to the passage?
「Adults said the mixed faces were more attractive」「six-month-old babies liked these faces too」とあるので、正解は C。
Q3. In the passage, "attractive" is closest in meaning to ___.
「魅力的な」という意味で、見た目がよい(nice to look at)に近いので、正解は A。
Can a face made from many faces be beautiful? In 1990, two American psychologists put photos of men's and women's faces into a computer and averaged them. Adults rated the averaged faces as more attractive than almost all of the faces used to make them, and the scores went up as more faces were added.
A later study found that six-month-old babies also preferred averaged faces. The babies could also find the middle of a group of faces they had seen. But in 1994, British and Japanese researchers made two averaged faces of women. One used all the faces, and the other used only the attractive ones. People liked the second one more.
113 words ・ CEFR B1
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たくさんの顔から作った顔は、美しくなりうるのだろうか。1990年、アメリカの2人の心理学者が、男性と女性の顔写真をコンピューターに取りこみ、平均した。大人たちは、平均した顔を、それを作るのに使ったほとんどすべての顔より魅力的だと評価し、加える顔が増えるほど点数は上がった。
その後の研究で、生後6か月の赤ちゃんも平均した顔を好むことが分かった。その赤ちゃんたちは、見た顔の集まりの「まんなか」をつかむこともできた。しかし1994年、イギリスと日本の研究者が、女性の平均顔を2つ作った。一方は全部の顔を使い、もう一方は魅力的な顔だけを使った。人々は2つ目の顔のほうを好んだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
平均した顔が魅力的かどうかを調べた研究の流れを述べているので、正解は A。
Q2. What happened when more faces were added to an averaged face?
「the scores went up as more faces were added」とあるので、正解は C。
Q3. What does the 1994 study suggest?
魅力的な顔だけを使った平均顔のほうが、全部の顔の平均より好まれたとあるので、正解は B。
In 1878, Francis Galton blended photographs of convicted criminals, hoping to find a typical criminal face. He wrote instead that every blend looked better than the faces that went into it. More than a century later, Judith Langlois and Lori Roggman tested the idea with a computer. They digitized photos of men and women, averaged them, and asked adults to rate both the blends and the originals. The blends beat almost every individual face, and they scored higher as more faces were added.
Later work showed that six-month-old babies also preferred averaged faces, and that they could pick out the middle of a group of faces they had seen. The surprise came in 1994. A team from Britain and Japan averaged only the women's faces that had been rated attractive, and people preferred this blend to the average of the whole set.
Pushing its shape further away from the overall average made it even more appealing. The average itself may depend on experience, too. Hadza hunter-gatherers in Tanzania, who rarely see European people, showed no clear preference for averageness in European faces.
182 words ・ CEFR B2
和訳を見る
1878年、フランシス・ゴルトンは、典型的な犯罪者の顔を見つけようとして、有罪になった犯罪者たちの写真をまぜ合わせた。ところが彼は、どのまぜた顔も、元になった顔よりよく見えたと書いた。1世紀以上たって、ジュディス・ラングロワとロリ・ログマンが、コンピューターでこの考えを確かめた。2人は男性と女性の写真をデジタルに取りこんで平均し、大人に、まぜた顔と元の顔の両方を評価してもらった。まぜた顔は、ほとんどすべての個人の顔に勝ち、加える顔が増えるほど点数が高くなった。
その後の研究で、生後6か月の赤ちゃんも平均した顔を好み、見た顔の集まりの「まんなか」をつかめることが分かった。意外な結果は1994年に出た。イギリスと日本のチームが、魅力的と評価された女性の顔だけを平均すると、人々はこのまぜた顔を、全体の平均より好んだのだ。
その形を全体の平均からさらに遠ざけると、もっと魅力的になった。平均そのものも、経験によって変わるのかもしれない。ヨーロッパの人をめったに見ないタンザニアの狩猟採集民ハッザの人たちは、ヨーロッパの人の顔では、平均に近い顔へのはっきりした好みを示さなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ゴルトンから1990年の実験、赤ちゃんの研究、1994年の反証、経験の影響まで、平均顔の魅力という考えとその限界をたどっているので、正解は B。
Q2. According to the passage, what could six-month-old babies do?
「they could pick out the middle of a group of faces they had seen」とあるので、正解は B。
Q3. Why does the writer mention the Hadza?
直前の「The average itself may depend on experience」の例として、ヨーロッパの人をめったに見ないハッザの人たちが、ヨーロッパの人の顔では平均への好みを示さなかったと述べている。正解は B。
重要単語
- averageA2名詞・形容詞・動詞平均(の)、平均するThe computer averaged thirty photos into one face.
on average で「平均して」。動詞としても使える - attractiveB1形容詞魅力的なMost people found the blended face attractive.
attract(引きつける)+-ive。名詞は attractiveness - blendB1動詞・名詞まぜ合わせる、まぜたものShe blended the two photos on her laptop.
blender(ミキサー)と同じ仲間の語。blend in で「なじむ」 - compositeC1名詞・形容詞合成したもの、合成のThe artist made a composite of ten portraits.
compose(組み立てる)と同じ語源。a composite photo は合成写真 - typicalB1形容詞典型的な、よくあるRain is typical of June in Japan.
type(型)と同じ仲間の語。be typical of ~ で「~によくある、~らしい」 - preferA2動詞~のほうを好むBabies preferred the averaged faces.
prefer A to B で「B より A を好む」。名詞は preference - exaggerateB2動詞大げさにする、強調するDon't exaggerate the size of the fish you caught.
g が2つ続くつづりに注意。名詞は exaggeration
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1878年、何人もの顔写真を1枚に重ねると、元の顔より整って見えた(撮った学者の感想)。1990年の実験でも、コンピューターで顔写真を平均した「平均顔」は元の顔のほぼすべてより魅力的と評価された。でも1994年、魅力的な顔だけの平均のほうが好まれた。いちばん魅力的な顔は、平均ではなかった。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- Galton (1879) Composite Portraits, Made by Combining Those of Many Different Persons Into a Single Resultant Figure, The Journal of the Anthropological Institute of Great Britain and Irelanddoi.org
- Langlois & Roggman (1990) Attractive Faces Are Only Average, Psychological Sciencedoi.org
- Perrett, May & Yoshikawa (1994) Facial shape and judgements of female attractiveness, Naturedoi.org
- Rubenstein, Kalakanis & Langlois (1999) Infant preferences for attractive faces: A cognitive explanation, Developmental Psychologydoi.org
- Rhodes (2006) The Evolutionary Psychology of Facial Beauty, Annual Review of Psychologydoi.org
- Apicella, Little & Marlowe (2007) Facial averageness and attractiveness in an isolated population of hunter-gatherers, Perceptiondoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







