結婚の幸せは数年で「元どおり」説、独身の人と比べると7年以上たっても高めだった

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結婚で上がった満足度は数年で元に戻るので、結婚してもしなくても満足度は同じになる
自分の結婚前と比べると数年で戻る、という結果は有名。でも独身のままの人と比べたイギリスの研究では、結婚した人の満足度は結婚後も平均で少し高めだった。ただしどれも観察研究で、結婚が原因とまでは言えず、変わり方も人によって大きく違う。
- 対象
- ドイツの全国調査で、調査の間に結婚し、そのまま結婚を続けた人
- 規模
- 1,761人(調査全体は2万4000人以上・15年)
- 研究の種類
- 観察研究(同じ人に毎年たずねた調査)
- 確かさ
- ★★★☆☆
「結婚で上がった満足度は数年で元に戻る」と報告した、ドイツの調査を使った2003年の研究。その後、独身のままの人と比べたイギリスの研究では、結婚した人の満足度は平均で少し高めのまま続いていた。
ひとことで言うと結婚の幸せは「元に戻る」? 独身のままの人と比べると話が変わる!
もくじ
結婚で上がった幸せは、数年たつと結婚前の高さに戻ってしまう。2003年、ドイツで2万4000人以上を15年間追った研究が、こう報告しました。
結婚した人の人生の満足度は、結婚の前後で少し上がります。けれども平均すると、数年後には結婚前とほぼ同じ高さに戻っていたのです。「結婚の幸せは長続きしない」という話は、ここから広まりました。
ところが、その後に話がひっくり返ります。2012年のイギリスの研究は、比べる相手を「結婚前の自分」から「独身のままの人」に変えました。すると、結婚した人の満足度は数年たっても高めでした。比べ直したチームには、2003年の論文を書いた研究者自身も加わっていました。
012003年ドイツの研究:上がったのは結婚の前後だけ
2003年の論文は、アメリカのミシガン州立大学のルーカス(Lucas)さんたちが発表しました。使ったのは、ドイツで1984年に始まった全国調査です。同じ人に毎年、「今の生活全体にどのくらい満足していますか」とたずね、0〜10点で答えてもらいました。
研究チームが選んだのは、最初は結婚しておらず、調査の途中で結婚し、その後も結婚を続けた1,761人です。この人たちの毎年の点数を、結婚の前と後で比べました。
まず分かったのは、この人たちが結婚の何年も前から、もともと満足度が高めだったことです。結婚の2年以上前の時点で、満足度は調査の参加者全体の平均より約0.28点高めでした。0〜10点のうちの0.28点なので、1点にも届かない小さな差です。5年以上前でも、約0.20点高かったと書かれています。結婚する人の中には、もともと満足度の高い人が多いのかもしれません。
そして、結婚の前の年から結婚の次の年までの3年間は、自分の結婚前より約0.23点高くなりました。これも0〜10点のうちの0.23点で、上がり方は小さめです。けれども結婚から2年たったあとは、結婚前とほとんど同じに戻っていました。別の計算方法でも、平均すると結婚から約5年で元の高さに戻るという結果でした。
02平均の線の裏で、上がった人と下がった人が同じくらいいた
2003年の論文には、もう一つの結果があります。平均では「元に戻る」のに、一人ひとりを見るとばらばらだったのです。
結婚の直後に満足度が大きく上がった人は、何年たっても高いままでした。反対に、結婚後に下がり、そのまま低くなった人もいました。論文には、結婚を続けた人に限っても、結婚前より満足度が下がった人と、上がった人が同じくらいいたと書かれています。
結婚前の満足度が低めだった人ほど、結婚で上がる幅が大きいこともわかりました。上がる人と下がる人が打ち消し合った結果、平均の線が「元どおり」に見えていたのです。
配偶者(夫や妻)を亡くした人は、ちがう動きをしました。満足度は大きく下がり、再婚しなかった人では、8年ほどたっても元の高さに少し届きませんでした。
03どんでん返し:独身のままの人と比べたら、差は消えなかった
2003年の研究は、結婚した人を「結婚前の自分」と比べていました。でも人の満足度は、結婚しなくても年月とともに変わります。そこで2012年、ルーカスさんたちのチーム(筆頭はヤップ(Yap)さん)が、イギリスの全国調査で計算をやり直しました。
対象は、調査の途中で結婚し、結婚を続けた1,366人です。結婚した年齢は平均29.8歳でした。この調査では、満足度を1〜7点で答えます。ドイツの0〜10点とは点数の幅が違うので、数字はそのまま比べられません。
まず結婚前の自分と比べると、ドイツと同じでした。結婚の年は約0.31点(1〜7点)上がりましたが、長い目で見ると結婚前と変わりませんでした。
次に、性別・年齢・収入・学歴が似ていて、調査のあいだずっと独身だった人を一人ずつ選び、比べました。すると、結婚した人も独身の人も、年月とともに満足度が少しずつ下がる傾向がありました。そのうえで、結婚した人の満足度は、「もし独身のままだったら」という予測より、結婚の年で約0.48点、その後の年でも約0.28点高かったのです(どちらも1〜7点)。どちらも1点に届かない小さな差ですが、結婚の年が過ぎても差は残っていました。結婚した人の満足度も少しずつ下がっていたが、独身のままならもっと下がっていたはずだ、と著者たちは考えています。
同じドイツの調査を使った別のチーム(2006年)も、年齢による変化を計算に入れ直しました。すると、結婚した人の満足度は結婚後に下がるものの、結婚前より高いままでした。

04結婚7年以上でも高め、配偶者が親友なら上がり幅は約2倍
ここからは、ルーカスさんたちとは別の研究です。2017年、カナダの経済学者グローバー(Grover)さんとヘリウェル(Helliwell)さんが、イギリスの長期調査で別の計算をしました。10年前の満足度の違いを計算で差し引いても、結婚した人は結婚していない人より満足度が高めでした。結婚して7年以上たった人でも、1〜7点で約0.2点高かったのです。小さな差ですが、7年以上たっても消えていませんでした。
二人は、イギリスの別の調査(2011〜2013年、約33万件の回答)も調べました。人生の満足度は、中年のころに一度下がる傾向があります。その下がり方は、結婚していない人より結婚している人のほうが小さめでした。両者の差がいちばん大きかったのは、40代後半から50代です。
グローバーさんたちが最初に使ったイギリスの長期調査には、「いちばん親しい友達は誰ですか」という質問もありました。結婚している人の約半分は、配偶者を挙げていました。この人たちは、そうでない人に比べて、結婚や同居で高くなる満足度の幅が約2倍でした。

05それでも「結婚すれば幸せになる」とは言えない
ここまでの研究は、どれも人を観察したもので、実験ではありません。結婚する人としない人では、もともと性格や健康、仕事などが違うかもしれません。計算でそろえても、そろえきれない違いが残る可能性はあります。
2012年には、結婚などの人生の出来事を経験した人を追った188本の論文をまとめた分析も出ています。結婚を扱ったのは38の集団で、そのうち結婚の前から追った研究では、人生の満足度は結婚直後に高く、その後は下がっていました。恋人・夫婦関係への満足度も、結婚後に下がる傾向でした。著者たちは、結婚の直前は満足度がふだんより高い時期で、その後の下がりは「元に戻る」動きだと説明しています。
また、ここで紹介したデータはドイツとイギリスのものです。グローバーさんたちも、結果がそのまま当てはまるのは、長期の調査がある欧米の国だと書いています。日本で同じ結果になるかは分かりません。
ずっと独身の人を11年追った研究では、約9割の人が人生の満足度を高いまま保っていました(11年「ずっと独身」でも約9割は満足度が高いまま)。うれしい出来事に人が慣れていく話は、宝くじの当選者を追った研究でも紹介しています。
06まとめ
「結婚の幸せは数年で元に戻る」は、結婚前の自分と比べた平均の話としては、ある程度当たっています。けれども独身のままの人と比べると、結婚した人の満足度は結婚して何年かたっても、平均で少し高めでした。そして平均の線の裏では、上がり続ける人も下がる人もいます。
結婚と幸せの関係は、何と何を比べるかで見え方が変わります。次に知りたいのは、欧米以外の国、そして日本で同じことが起きるかどうかです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2003, a team led by Richard Lucas used a German survey that ran for 15 years and included more than…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Is a wedding day the start of a happier life? A German survey asked the same people every year how happy they were with their lives.
Researchers looked at 1,761 people who got married. Their scores went up a little around the wedding. A few years later, the scores were close to their old level again. But later studies compared married people with people who stayed single. The married people were still a little happier.
75 words ・ CEFR A2
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結婚式の日は、もっと幸せな人生の始まりなのだろうか。ドイツのある調査は、同じ人たちに毎年、自分の人生にどのくらい満足しているかをたずねた。
研究者たちは、結婚した1,761人を調べた。その人たちの点数は、結婚式の前後に少し上がった。数年後には、点数はまた元の高さに近くなった。しかし、のちの研究は、結婚した人を独身のままの人と比べた。結婚した人のほうが、それでも少し幸せだった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
結婚した人の満足度が長く高いままかどうかを調べた研究の話なので、正解は B。
Q2. How many married people did the researchers look at?
「Researchers looked at 1,761 people who got married.」とあるので、正解は C。
Q3. In the passage, "compared" is closest in meaning to ___.
結婚した人と独身のままの人を並べて違いを見た、という意味なので、正解は A。
In 2003, a team led by Richard Lucas used a German survey that ran for 15 years and included more than 24,000 people. Every year, people rated their life satisfaction from 0 to 10.
The team focused on 1,761 people who married during the survey and stayed married. Their scores rose by about a quarter of a point around the wedding. After the second year of marriage, the average score was about the same as before. This finding became famous.
But it was based on comparing people with their own past. In 2012, the same researcher and his team used a British survey. They compared married people with similar people who stayed single, and the married group came out a little happier.
122 words ・ CEFR B1
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2003年、リチャード・ルーカスが率いるチームは、15年続き、2万4000人以上が参加したドイツの調査を使った。毎年、人々は自分の人生の満足度を0から10で評価した。
チームは、調査の途中で結婚し、結婚を続けた1,761人に注目した。その人たちの点数は、結婚式の前後に約4分の1点上がった。結婚2年目より後は、平均の点数は結婚前とほぼ同じだった。この結果は有名になった。
しかしそれは、人を自分の過去と比べたものだった。2012年、同じ研究者とそのチームはイギリスの調査を使った。チームは結婚した人を条件の似た独身のままの人と比べ、結婚したグループのほうが少しだけ幸せだった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
結婚前の自分と比べると満足度が元に戻るが、独身の人と比べると結婚した人のほうが高かったという話なので、正解は B。
Q2. What happened to the average score after the second year of marriage?
「After the second year of marriage, the average score was about the same as before.」とあるので、正解は C。
Q3. Why does the writer mention that the 2003 finding "was based on comparing people with their own past"?
直後に、独身のままの人と比べた2012年の研究で別の結果が出たと続くので、比べ方が違えば答えも変わることを説明するためだと分かる。正解は B。
A 2003 paper by Richard Lucas and three colleagues backed a gloomy idea about marriage. Using a German panel survey that tracked more than 24,000 people for 15 years, they followed 1,761 participants who married during the study and stayed married.
Life satisfaction climbed by about 0.23 points on a 0-to-10 scale in the years around the wedding, then, on average, settled back to where it had been. Those same people, though, had already been more satisfied than average years before they married. And the average hid wide differences. Some people stayed much happier after the wedding, while about as many ended up less happy than before.
Later work changed the comparison. In 2012, a team that included Lucas matched British newlyweds with people of similar age, sex, income, and education who stayed single. Satisfaction drifted down slightly in both groups, but the married group stayed about 0.28 points higher on a 1-to-7 scale than predicted for staying single. A 2017 study found a similar gap even after seven years of marriage, and the gap was roughly twice as large when people named their spouse as their best friend. None of these studies were experiments.
195 words ・ CEFR B2
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リチャード・ルーカスと3人の同僚による2003年の論文は、結婚についての暗い考えを支持した。15年間にわたって2万4000人以上を追ったドイツのパネル調査(同じ人に繰り返したずねる調査)を使い、研究の途中で結婚し、結婚を続けた1,761人の参加者を追った。
人生の満足度は、結婚式の前後の数年間に0〜10点で約0.23点上がり、その後、平均すると元の高さに落ち着いた。ただし、その同じ人たちは、結婚する何年も前から平均より満足度が高かった。しかも平均は大きな個人差を隠していた。結婚後もずっと満足度が高いままの人もいたが、結婚前より満足度が下がった人も、ほぼ同じくらいいた。
のちの研究は比べる相手を変えた。2012年、ルーカスも加わったチームは、イギリスで結婚した人を、年齢・性別・収入・学歴が似ていて独身のままだった人と組み合わせて比べた。どちらのグループも満足度が少し下がったが、結婚したグループは、独身のままだった場合の予測より1〜7点で約0.28点高いままだった。2017年の研究は、結婚から7年以上たっても同じような差を見つけ、配偶者をいちばんの親友に挙げた人では、その差がおよそ2倍だった。これらの研究はどれも実験ではない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
結婚の幸せは元に戻るという有名な結果と、独身の人と比べると差が残ったというのちの研究の話なので、正解は A。最後の文にある通り、実験ではない。
Q2. According to the passage, what did the 2012 team do?
「matched British newlyweds with people of similar age, sex, income, and education who stayed single」とあるので、正解は B。
Q3. What can be inferred from the sentence "the average hid wide differences"?
直後に、ずっと高いままの人もいれば、ほぼ同じ数の人が下がったとあるので、平均が元に戻っても上がった人と下がった人が混ざっていると分かる。正解は C。
重要単語
- life satisfactionB2名詞人生の満足度People rated their life satisfaction from 0 to 10.
satisfy(満足させる)の名詞形 satisfaction。be satisfied with ~ で「~に満足している」 - adaptB1動詞慣れる、適応するMost students adapt to a new school within a few months.
adapt to ~ で「~に慣れる」。名詞は adaptation。adopt(採用する)とのつづりの違いに注意 - baselineC1名詞比べるときのもとの水準、基準値Her mood went back to its baseline after the trip.
base(土台)+line。研究では「変化の前の状態」を指すことが多い - compareA2動詞比べるIt is hard to compare one person's happiness with another's.
compare A with B(AをBと比べる)は入試頻出。名詞は comparison - spouseB2名詞配偶者(夫または妻)About half of the married people named their spouse as their best friend.
性別を問わない言い方。書類や調査でよく使われる - matchB1動詞(条件の似たもの同士を)組み合わせるEach married person was matched with a similar single person.
match A with B で「AをBと組み合わせる」。名詞の match(試合、マッチ)と同じ語 - long-lastingB2形容詞長く続くThe new park had a long-lasting effect on the town.
last(続く)から。a long-lasting friendship(長く続く友情)
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ドイツで2万4000人以上を15年追った2003年の研究は「結婚で上がった人生の満足度は、数年で結婚前の高さに戻る」と報告。ところが独身のままの人と比べ直したイギリスの研究では、結婚した人の満足度は結婚後も高めだった。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Lucas, Clark, Georgellis & Diener (2003) Reexamining adaptation and the set point model of happiness: Reactions to changes in marital status, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Yap, Anusic & Lucas (2012) Does personality moderate reaction and adaptation to major life events? Evidence from the British Household Panel Survey, Journal of Research in Personalitydoi.org
- Grover & Helliwell (2017) How's Life at Home? New Evidence on Marriage and the Set Point for Happiness, Journal of Happiness Studiesdoi.org
- Luhmann, Hofmann, Eid & Lucas (2012) Subjective well-being and adaptation to life events: A meta-analysis, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Zimmermann & Easterlin (2006) Happily Ever After? Cohabitation, Marriage, Divorce, and Happiness in Germany, Population and Development Reviewdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







