75人の日記では、よく眠れなかった次の日ほど恋人との「ケンカ」が多めだった

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一晩徹夜したカップルは、ケンカの話し合いで合意にたどり着けなくなった
スイスの小さな実験(30組)では、合意できた組の数に差はなかった。ただし徹夜した組は前向きな気持ちが少なく、話し合いの直前と最中にストレスホルモンが高かった。
- 対象
- アメリカの恋人のいる18〜32歳と、18〜56歳のカップル
- 規模
- 75人(2週間の日記)と69組(実験室での話し合い)
- 研究の種類
- 観察研究
- 確かさ
- ★★☆☆☆
恋人のいる75人の2週間の日記で、よく眠れなかった次の日は恋人とのケンカが多めだった。ただしこれは観察した研究。徹夜させた実験では、「合意できるか」に差は出なかった。
ひとことで言うとよく眠れなかった次の日は、恋人とのケンカが少し多かった!
もくじ
恋人とのケンカの原因といえば、言い方、約束、お金、家事。ところが、原因の一つは「前の夜の眠り」かもしれません。
アメリカのカリフォルニア大学バークレー校の研究者が、恋人のいる75人に2週間、毎日の眠りとケンカを記録してもらいました。すると、よく眠れなかった夜の次の日ほど、恋人とのケンカが多めに報告されていました。
さらに、カップルを実験室に呼んで本当に話し合ってもらうと、どちらか1人がよく眠れていないだけで、2人とも相手の気持ちを読み違えやすくなっていました。ただし、この研究は「眠り」と「ケンカ」が一緒に起きていたことを観察したものです。のちに、カップルにわざと徹夜させる実験も行われました。前向きな気持ちは減りましたが、合意できるかどうかには差が出ませんでした。
012週間、毎晩「眠り」と「ケンカ」を書いた
研究したのは、カリフォルニア大学バークレー校のゴードン(Gordon)さんとチェン(Chen)さんです。2013年にオンラインで発表され、2014年に学術誌に載りました。
1つ目の調査には、恋人のいる78人(うち女性65人)が参加しました。平均21歳で、付き合っている期間は平均20か月です。参加者は2週間、ベッドのそばに紙の睡眠日記を置きました。寝つくまでの時間、眠った時間、夜中に目が覚めた回数、朝すっきりしたか、昼間どのくらい眠かったかを書きます。そして毎晩、その日の「恋人とのケンカ」を5段階で答えました。1は「今日はまったくなかった」、5は「今日はたくさんあった」です。
日記を1回しか出さなかった3人を除いた75人分、合わせて908日分が分析されました。
02眠りが悪い日の次の日、ケンカは多めだった
結果、前の夜によく眠れなかった日ほど、その日のケンカが多めでした。前の日にケンカがあったかどうかの影響は、計算で取りのぞいています。
分析は2つの見方で行われました。まず、2週間を通して眠りが悪めの人は、よく眠れている人よりケンカが多めでした。また、同じ人でも「いつもより眠れなかった日」の次の日はケンカが増える傾向がありました。ただし、こちらの差は小さく、偶然の可能性も残る境目の結果でした。
ストレス、不安、気分の落ちこみ、前の日の関係への満足度を考えに入れても、結果は残りました。「恋人のせいで眠れなかった」と答えた夜の影響を計算から取りのぞいても同じでした。
なお、ケンカの点数は平均1.49点です。1点が「まったくなかった」なので、ふだんのケンカはごく少なめでした。毎日ケンカしていたわけではありません。
031人の眠りが悪いと、2人とも気持ちを読み違えやすかった
2つ目の調査では、カップル71組が実験室に来ました。まず2人が別々に、前の夜に眠った時間、眠りの質、今の眠さを答えます。
次に、2人のあいだでよく問題になる話題を3つ書き出します。くじで選ばれた1人がその中から1つを選び、2人は5分間、解決に向けて話し合いました。様子はビデオで撮られています。
話し合いのあと、2人は別々に、10種類の気持ちの強さを答えました。「怒り」「うらみ」「身構え」「拒まれた感じ」「大切にされている感じ」などです。自分の気持ちだけでなく、相手がどう感じていたかも予想して答えます。相手の予想と本人の答えの差が小さいほど、気持ちを正しく読み取れたことになります。
結果は次のとおりです。
- 前の夜によく眠れなかった人ほど、相手の気持ちの読み取りがずれていた
- その恋人の側も、よく眠れなかった人の気持ちを読み違えやすかった
- よく眠れなかった人は、話し合いの間の気持ちが「いやな気持ち」に傾いていた(本人の答え)
- 「解決できた」と感じた度合いは、2人ともよく眠れていたときに最も高かった。どちらか1人の眠りが悪いだけで下がっていた
読み取りのずれと「解決できた感じ」の結果は、気分の落ちこみや関係への満足度を考えに入れても残りました。一方、「いやな気持ちに傾いた」という結果の一部は、それらを考えに入れるとはっきりしなくなりました。

04どんでん返し:徹夜しても、話し合いがまとまる組は減らなかった
ゴードンさんたちは論文の中で、限界をはっきり書いています。観察した研究なので、眠りがケンカの原因だとまでは言えません。眠りの量や質を、機械で測った研究も必要だとしています。
そこで、スイスのジュネーブ大学のチームが実験をしました(2021年オンライン発表)。付き合って1〜5年の健康なカップル30組を、コンピューターを使い、偶然にまかせて2つのグループに分けます。一方は実験室で一晩じゅう起きていました。もう一方は家でふつうに眠りました。次の朝、どちらのグループも、くり返しもめている話題について15分間話し合いました。
徹夜したカップルは、話し合いの前もあとも、前向きな気持ちが少なくなっていました。だ液にふくまれるストレスホルモン(コルチゾール)も、話し合いの前と最中に高くなっていました。
けれども、ほかの多くの点では差が出ませんでした。
- 合意にたどり着いた組の数:徹夜した15組のうち10組、よく眠った14組のうち8組(ほかに1組はデータなし)で、差はなかった
- 話し合いへの満足度、もめごとの深刻さ、いやな気持ちの強さ:差はなかった
- 役者の短い動画を見て感情を当てるテスト:差はなかった
チームはこの理由として、人数が少ないこと、話し合いが15分と短かったこと、関係にとても満足しているカップルが多かったことなどを挙げています。徹夜した人たちは実験室で一緒に夜を過ごしたので、それが影響した可能性も書かれています。
ほかの研究も、結果はそろっていません。結婚しているアメリカの43組を調べた研究では、2人とも直前の2晩の睡眠が短めだと、話し合いの態度がとげとげしくなっていました(観察研究)。一方、同居するカップル208組が14日間、眠りを測る機械を毎晩身につけた研究もあります。関係のストレスが特に大きい日の夜は、途中で起きている時間が長くなりました。しかし全体としては、その眠りの悪さと、次の日のケンカの多さとの結びつきは見られませんでした。眠りが悪いからケンカが増えるのか、ケンカが多いから眠れないのか。向きはまだはっきりしていません。
05はっきりしているのは「前向きな気持ちが減る」こと
眠りと気分の関係は、実験の積み重ねがあります。眠りを実験で減らした154本の研究、5,717人分をまとめた分析では、徹夜でも睡眠を短くしても、前向きな気持ちが減りました。一方、いやな気持ちが増えるかどうかは、眠りの減らし方によって結果が分かれていました。ジュネーブの実験とも合う結果です。
寝不足の脳で何が起きているかは、徹夜した脳の「警報装置」の研究にもまとめています。話し合いの中身から関係の行方を当てようとした研究は、「夫婦の会話で離婚が9割当たる」の検証で紹介しています。
06まとめ
よく眠れなかった次の日は、恋人とのケンカが多めでした。1人の眠りが悪いだけで、2人とも気持ちを読み違えやすくなっていました。ただし、これは観察から分かったことです。徹夜させた実験では、前向きな気持ちは減ったものの、合意できるかどうかは変わりませんでした。
次に必要なのは、もっと多くのカップルで、何日も続く寝不足を機械で測りながら確かめる研究です。夜勤や小さな子どもの世話で眠れない夫婦のように、実際の暮らしに近い寝不足で調べることも、ジュネーブのチームは課題に挙げています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTwo psychologists at the University of California, Berkeley, studied sleep and arguments in two ways.
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do you fight more with your partner after a bad night? Researchers in the United States studied 75 young people in love. They kept a diary for two weeks.
Every day, they wrote about their sleep. They also wrote about fights with their partner. After nights of poor sleep, people reported a little more conflict. But this study only watched what happened. It did not change anyone's sleep.
68 words ・ CEFR A2
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よく眠れなかった夜のあと、恋人ともっとケンカをしますか。アメリカの研究者が、恋人のいる若者75人を調べた。彼らは2週間、日記をつけた。
毎日、彼らは自分の眠りについて書いた。恋人とのケンカについても書いた。よく眠れなかった夜のあとは、ケンカが少し多いと報告された。しかし、この研究は起きたことを観察しただけだった。だれの眠りも変えてはいない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
眠りと恋人とのケンカの関係を調べた研究の話なので、正解は B。
Q2. How long did people keep the diary?
「They kept a diary for two weeks.」とあるので、正解は C。
Q3. In the passage, "poor" in "nights of poor sleep" is closest in meaning to ___.
poor sleep は「よくない眠り」のこと。文の最初の「a bad night」と同じ意味なので、正解は A。poor には「貧しい」以外に「質がよくない」という意味もある。
Two psychologists at the University of California, Berkeley, studied sleep and arguments in two ways. First, 75 young adults in relationships wrote a short diary every day for two weeks. On days after a poor night of sleep, they reported more conflict with their partners. This was only an observation, so it cannot show that bad sleep causes fights.
Next, in a lab study of 69 couples, partners talked for five minutes about a problem in their relationship. Then each person guessed how their partner had felt. When one partner had slept badly, both of them made bigger mistakes in these guesses. Couples felt they had solved the problem best when both had slept well.
115 words ・ CEFR B1
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カリフォルニア大学バークレー校の2人の心理学者が、眠りと言い争いを2つの方法で調べた。まず、恋人のいる若い大人75人が、2週間、毎日短い日記を書いた。よく眠れなかった夜の次の日には、恋人とのケンカが多かったと報告した。これは観察しただけなので、悪い眠りがケンカの原因になるとまでは示せない。
次に、69組のカップルを対象にした実験室の研究で、2人は関係の問題について5分間話した。そのあと、それぞれが、相手がどう感じていたかを予想した。どちらか1人がよく眠れていなかったときは、2人とも予想のずれが大きかった。カップルが問題をいちばんうまく解決できたと感じたのは、2人ともよく眠れていたときだった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
日記と実験室の2つの方法で、眠りと恋人との言い争いの関係を調べた話なので、正解は B。
Q2. What did each person do after the five-minute talk?
「Then each person guessed how their partner had felt.」とあるので、正解は C。
Q3. Why does the writer say the diary study "cannot show that bad sleep causes fights"?
日記の研究は観察しただけ(only an observation)で、眠りを実験で変えていないため、原因とまでは言えない。正解は A。
A five-minute talk about a sore subject can go badly when one person is tired. Psychologists at the University of California, Berkeley, saw signs of this in a lab study with 69 couples. Before the talk, each partner rated last night's sleep. Afterward, each person rated ten feelings, both their own and the ones they thought their partner had.
When one partner had slept poorly, both people misread each other more, and couples felt they had settled the issue best when both were well rested. A separate two-week diary study by the same team found more conflict on days after poor sleep.
But neither study changed anyone's sleep, and the participants judged their own sleep. A team in Geneva later tested the idea directly. Thirty couples were split by chance. One group stayed awake all night, and the other slept at home. It was a small study, and most of the couples were very happy together.
The next morning, the tired couples felt less positive and had higher levels of a stress hormone. Even so, they were no less likely to reach an agreement in a 15-minute discussion, and they were no worse at naming emotions in short video clips.
200 words ・ CEFR B2
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気まずい話題についての5分の話し合いは、1人が疲れているとうまくいかないことがある。カリフォルニア大学バークレー校の心理学者たちは、69組のカップルを対象にした実験室の研究で、そのきざしを見た。話し合いの前に、それぞれが前の夜の眠りを評価した。話し合いのあと、それぞれが10種類の気持ちについて、自分の気持ちと、相手が感じていたと思う気持ちの両方を評価した。
どちらか1人がよく眠れていないと、2人とも相手の気持ちを読み違えやすく、問題をいちばんうまく片づけられたと感じたのは2人ともよく休めていたときだった。同じチームによる2週間の日記の研究では、よく眠れなかった次の日にケンカが多かった。
しかし、どちらの研究も眠りを変えてはおらず、参加者は自分の眠りを自分で評価していた。のちにジュネーブのチームがこの考えを直接確かめた。30組のカップルを偶然で2つのグループに分けた。一方のグループは一晩じゅう起きていて、もう一方は家で眠った。小規模な研究で、しかもほとんどのカップルが関係にとても満足していた。
次の朝、疲れたカップルは前向きな気持ちが少なく、ストレスホルモンの値が高かった。それでも、15分の話し合いで合意にたどり着く組が少ないわけではなく、短い動画で感情を言い当てる力も落ちていなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
眠りとカップルの言い争いの関係を調べた研究と、のちの実験の結果を述べているので、正解は A。
Q2. What happened to the couples who stayed awake all night in Geneva?
「the tired couples felt less positive and had higher levels of a stress hormone」とあるので、正解は B。合意できる組が少ないわけではなかった。
Q3. Why does the writer mention that most Geneva couples "were very happy together"?
人数が少なく、満足度の高いカップルが多かったという限界を述べている。関係に問題の多いカップルでは結果が違うかもしれない、という含みなので正解は B。
重要単語
- conflictB1名詞対立、言い争いThey had a small conflict about money.
名詞は前を強く(CON-flict)、動詞(対立する)は後ろを強く(con-FLICT)読む。conflict with ~ で「~と食い違う」 - partnerA2名詞恋人、パートナー、配偶者She called her partner after work.
性別や結婚しているかに関係なく使える言い方 - diaryA2名詞日記、毎日の記録He kept a sleep diary for two weeks.
keep a diary で「日記をつける」。dairy(乳製品)とつづりが似ているので注意 - resolveB2動詞(問題・対立を)解決するThey resolved the problem by talking calmly.
名詞は resolution。New Year's resolution(新年の決意)の意味もある - sleep deprivationC1名詞睡眠をとらせないこと、断眠The study used one night of sleep deprivation.
deprive A of B(AからBを奪う)の名詞形。be sleep-deprived で「寝不足だ」 - observeB1動詞観察するThe researchers observed the couples through a camera.
an observational study は「観察研究」。原因と結果までは言いにくい研究のこと - agreementB1名詞合意、意見の一致After a long talk, they reached an agreement.
reach an agreement で「合意に達する」は入試頻出のコロケーション
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恋人のいる75人が2週間、眠りとケンカを毎日記録。よく眠れなかった次の日ほど、ケンカは多めだった。1人の眠りが悪いだけで、2人とも相手の気持ちを読み違えやすかった。ただ、徹夜の実験では合意できた組の数に差はなかった。
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- Gordon & Chen (2014) The Role of Sleep in Interpersonal Conflict: Do Sleepless Nights Mean Worse Fights? Social Psychological and Personality Sciencedoi.org
- Cernadas Curotto et al. (2022) Quarreling After a Sleepless Night: Preliminary Evidence of the Impact of Sleep Deprivation on Interpersonal Conflict, Affective Sciencedoi.org
- Wilson et al. (2017) Shortened sleep fuels inflammatory responses to marital conflict: Emotion regulation matters, Psychoneuroendocrinologydoi.org
- Haydon & Salvatore (2023) Relationship stress, arguments, and sleep quality: A causal process analysis, Journal of Social and Personal Relationshipsdoi.org
- Palmer et al. (2024) Sleep loss and emotion: A systematic review and meta-analysis of over 50 years of experimental research, Psychological Bulletindoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







