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カップルの手足をつないで7分の「障害物競走」、終わった直後は相手への気持ちが高まっていた

カップルの手足をつないで7分の「障害物競走」、終わった直後は相手への気持ちが高まっていた

読む前に予想してみよう!

カップルの仲を深めるには、心臓がドキドキするほどの激しい運動が欠かせない

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカのカップル・夫婦(実験)と、カリフォルニア州の町の住民(アンケート)
規模
実験3つで計126組、アンケート192人
研究の種類
ランダムに組分けした実験室の実験+アンケート調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

2人の手首と足首をベルトでつないでマットの山を越えたカップルは、ゆっくりした課題の組より、直後の「満足度と恋心」の点が大きく上がった。ただ後の研究では、ドキドキは必須ではなさそう。

ひとことで言うと2人で初めてのことに挑むと、終わった直後は相手への気持ちが上がっていた!

もくじ
  1. 体育館のマットの上で、2人は何をしたのか
  2. 3回の実験すべてで、新しい課題の後に気持ちが高まった
  3. どんでん返し:ドキドキは要らなかった?
  4. 効果は長く続く? VRで旅をしても満足度は動かなかった
  5. まとめ

カップル2人の、となり合う手首どうしと足首どうしを、ベルトでくっつける。2人は四つんばいで体操マットの上を進み、まん中の山を越えて往復する。しかも2人のあいだにクッションをはさみ、手も腕も歯も使わずに運ぶ。アメリカの心理学者たちは、本気でこの実験をしました。

7分ほどのこの課題を終えたカップルは、ゆっくりボールを運ぶだけの課題をしたカップルより、直後に答えた「満足度と恋心を合わせた点」が大きく上がっていました。実験は3回行われ、3回とも同じ向きの結果でした。

付き合いが長くなると満足度は下がりやすいものです。でも「2人で何をするか」なら今日から変えられます。ただし、その後の研究で話は少しひっくり返りました。

01体育館のマットの上で、2人は何をしたのか

実験をしたのは、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のアーサー・アロンさんたちです。吊り橋の実験や、恋に落ちる36の質問の研究にも加わった心理学者です。

2人はまず別々の部屋で、関係についてのアンケートに答えます。次に、くじで組を分けました。

  • 新しい課題の組:となり合う手首と足首を面ファスナーのベルトでつなぎ、四つんばいで約9mのマットを往復する。まん中には高さ約1mの丸めたマットの山。円筒形のクッションを、手・腕・歯を使わずに、頭や体ではさんで運ぶ。1分以内にゴールできたらお菓子がもらえる
  • ゆっくりした課題の組:1人がボールを転がしながら四つんばいでまん中まで進み、もう1人が取りに行って戻る。1秒ごとの合図に合わせて、手足を1回ずつしか動かせない。これを7分続ける

終わると、2人はまた別々の部屋で、前とは違う質問用紙に答えました。

023回の実験すべてで、新しい課題の後に気持ちが高まった

3つの実験すべてで、新しい課題の組のほうが、課題の前から後への点の伸びが大きくなりました。

夫婦63組の実験では、課題をせずに別室でアンケートを続ける組も作りました。点が伸びたのは新しい課題の組だけで、ゆっくりした課題の組と何もしなかった組には、はっきりした差はありませんでした。「ゆっくりした課題で下がった」のではなく、「新しい課題で上がった」ことになります。

夫婦35組の実験では、課題の前後に5分ずつ2人で話し合ってもらい、その録画を実験の目的を知らない人が見て、相手を責める言い方が少ないか、相手の話を受け止める様子が多いかを数えました。すると、新しい課題の組のほうが、課題の後によい方向へ変わっていました。

ただし、満足度と恋心を別々に見ると、はっきりした差が出たのは、夫婦の2つの実験での恋心のほうだけでした。満足度だけでは差ははっきりしませんでした。

アンケートでも「2人でわくわくすることをしている」人ほど満足度が高めで、その多くは「退屈を感じにくい」ことで説明できました(どちらが原因かは分かりません)。1993年には、夫婦53組が10週間、毎週1時間半「わくわくすること」をすると、「楽しいこと」をした組より満足度が上がった、という実験も出ています。

2018年の研究では、ボールを弾ませてキャッチする遊びや、足におもりをつけて走ることで、「新しさ」と「ドキドキ」の効き目を分けようとした(イメージ)
2018年の研究では、ボールを弾ませてキャッチする遊びや、足におもりをつけて走ることで、「新しさ」と「ドキドキ」の効き目を分けようとした(イメージ)

03どんでん返し:ドキドキは要らなかった?

2000年の課題は、新しくて、しかも心臓がドキドキする課題でした。吊り橋の実験のように、ドキドキを相手への気持ちと取り違えただけかもしれません。

2018年、アロンさんも加わったチームが、夫婦35組を4つのグループに分けて調べました。

  • 床のフラフープにゴムボールを弾ませ、相手がキャッチする遊び(新しい)か、床にかいた長方形の辺にそって行ったり来たりするだけ(新しくない)か
  • 両足首に約1.4kgのおもりをつけて全力で走る(ドキドキする)か、おもりなしでゆっくり歩く(ドキドキしない)か

課題は2分間。おもりをつけて走っても、ゆっくり歩いた組と比べて、満足度の伸びに差は見られませんでした。ボール遊びの組は満足度が上がる傾向でしたが、はっきりした差ではなく、著者たちも「35組では慎重に見るべき」と書いています。

さらに友達どうし100組の実験と、結婚している200人・親友について答えた202人へのアンケートでは、関係のよさと結びついていたのは「楽しかった・おもしろかった」と感じた度合いでした。「心臓が速くなった・体力を使った」という感覚は結びつかず、アンケートではむしろ満足度が少し低い傾向も出ました。

著者たちの結論は、大事なのは新しくて楽しいと感じることで、体のドキドキはそれほど中心ではなさそう。ただし、新しいことをすると少しはドキドキもするので、2つを完全に分けるのは難しいとも書いています。

04効果は長く続く? VRで旅をしても満足度は動かなかった

2013年の研究では、カップル101組をくじで2つに分け、半分には4週間、わくわくする活動のアイデアをネットで送り、毎週90分を目安に一緒にするよう勧めました。4週間後、この組は、あとから同じプログラムを受ける順番待ちの組より、関係のわくわく感、前向きな気分、満足度が高くなっていました。プログラムが終わって4か月後も最初より高いままでしたが、これは比べる相手の組がなく、自分たちの最初の点と比べた数字です。

2025年、カナダのヨーク大学などのチームは、平均20歳ほどのカップル約140組で実験しました。2人は別々の部屋で、頭にかぶるゴーグル型の機械をつけます。そこに映るコンピューターで作った景色(VR)の中で、約6分いっしょにすごしてもらいました。どんな結果になるかの予想を、前もって登録してから行った実験です。スイスの山でゴンドラに乗った組は、景色の見えるポーチに座った組より退屈さが減り、相手を近くに感じていました。でも満足度には差が出ませんでした。もともと満足度が高く、上がる余地が小さかったのかもしれません。

2000年の論文自身も、実験室という特別な場面で、アメリカの人だけを調べ、なぜ効くのかも分けられておらず、長い追跡もしていないことを限界に挙げています。

05まとめ

2人で初めてのことに挑むと、少なくとも直後は相手への気持ちが上向きやすい。その後の研究では、ドキドキより「初めてで楽しい」と感じることがカギらしいと分かってきました。効果がどれだけ続くのか、もともとマンネリを感じているカップルでも効くのかは、まだ確かめている途中です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a study published in 2000, psychologists at a university in New York invited couples to their lab. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In a study published in 2000, psychologists at a university in New York invited couples to their lab. First, the partners answered questions about their relationship in separate rooms. Then half of the couples were strapped together at the wrist and ankle. They crawled across gym mats, climbed over a barrier and carried a pillow between their bodies.

The other couples did a slow task, rolling a ball to the middle of the room for seven minutes. When the partners answered a second set of questions, the scores of the first group had risen more. The researchers ran the experiment three times, and each time the result went the same way. Doing something new together seemed to help, at least right after the task.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2000年に発表された研究で、ニューヨークの大学の心理学者たちは、カップルを実験室に招いた。まず、2人は別々の部屋で関係についての質問に答えた。それから、半分のカップルは手首と足首をベルトでつながれた。彼らは体操マットの上を這って進み、障害物を乗り越え、体のあいだにクッションをはさんで運んだ。

残りのカップルは、7分間、部屋のまん中までボールを転がすゆっくりした課題をした。2人が2回目の質問に答えると、最初のグループの点のほうが大きく上がっていた。研究者たちは実験を3回くり返し、毎回同じ向きの結果になった。少なくとも課題の直後には、新しいことを一緒にするのが役に立つようだった。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did the second group of couples do?

Q3. What does the writer suggest with the words "at least right after the task"?

重要単語

  • novelB2
    形容詞新しい、今までにないThe team tried a novel way to test the idea. 名詞の novel(小説)と同じつづり。novelty(目新しさ)もセットで覚える
  • boredomB2
    名詞退屈、マンネリLong meetings often lead to boredom. bore(退屈させる)+-dom。bored(退屈している)と boring(退屈な)の使い分けは入試頻出
  • barrierB1
    名詞障害物、さく、壁The runners jumped over a low barrier. language barrier(言葉の壁)のように、目に見えない「壁」にも使う
  • crawlB1
    動詞這う、四つんばいで進むThe baby crawled across the floor. on one's hands and knees(四つんばいで)と一緒に使われることが多い
  • satisfactionB1
    名詞満足、満足度Customer satisfaction went up after the change. satisfy(満足させる)の名詞。be satisfied with ~ で「~に満足している」
  • partnerA2
    名詞恋人、配偶者、相手She talked with her partner about their trip. 恋愛にも仕事にも使える。business partner は「仕事の相棒」
  • strapB2
    動詞・名詞ベルトでとめる/ひも、ベルトHe strapped the bag to his bike. be strapped together で「ベルトでいっしょにつながれる」。watch strap は「腕時計のバンド」
2000年の実験。カップル2人の手首と足首をベルトでつなぎ、四つんばいでマットの山を越えて往復。ゆっくりした課題をしたカップルより、直後のアンケートで「満足度と恋心」の点が大きく上がった。ただ後の研究では、大事なのは心臓のドキドキより「初めてで楽しいこと」らしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Aron, Norman, Aron, McKenna & Heyman (2000) Couples' shared participation in novel and arousing activities and experienced relationship quality, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Reissman, Aron & Bergen (1993) Shared Activities and Marital Satisfaction: Causal Direction and Self-Expansion versus Boredom, Journal of Social and Personal Relationshipsdoi.org
  3. Coulter & Malouff (2013) Effects of an intervention designed to enhance romantic relationship excitement: A randomized-control trial, Couple and Family Psychology: Research and Practicedoi.org
  4. Tomlinson et al. (2018) Do shared self-expanding activities have to be physically arousing?, Journal of Social and Personal Relationshipsdoi.org
  5. Balzarini, Sharma & Muise (2025) Virtually Connected: Do Shared Novel Activities in Virtual Reality Enhance Self-Expansion and Relationship Quality? Behavioral Sciencesdoi.org