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脳と心理ビミョー

吊り橋効果は本当にある? 1974年の元論文とその後の研究を読んだら「条件つき」だった

吊り橋効果は本当にある? 1974年の元論文とその後の研究を読んだら「条件つき」だった

読む前に予想してみよう!

吊り橋効果は、もともと苦手な相手にも好意を持たせる万能テクニックだ

研究カード(どんな研究?)
対象
橋を渡った成人男性ほか
規模
1条件あたり十数〜数十人、メタ分析(多数の実験を統合)
研究の種類
フィールド実験(非ランダム)+実験室実験+メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

揺れる吊り橋の上で女性に声をかけられた男性は、頑丈な橋の男性より、あとでその女性に電話する人が多かった。ただしドキドキは、もともとの印象を「増幅」するだけかもしれず、相手しだいでは逆効果にもなりうる。

ひとことで言うとドキドキを「恋かも」と勘違いすることがある。でも相手しだい!

もくじ
  1. 舞台は、高さ70mの揺れる吊り橋
  2. ドキドキの「犯人」を取り違える脳
  3. 「度胸のある男性ほど揺れる橋を選んだだけ」では?
  4. 落とし穴:ドキドキは、悪い印象も強めてしまう
  5. まとめ

「好きな人とはお化け屋敷に行け」「ジェットコースターに乗れば恋が始まる」。いわゆる吊り橋効果は、恋愛テクニックの定番中の定番です。

この言葉の元ネタは、50年以上前にカナダで行われた、本物の吊り橋を使った大胆な実験でした。たしかに効果は見つかりました。でも元の論文や、その後の研究を読み進めると、「どんな相手にも効く魔法」ではないことが見えてきます。

01舞台は、高さ70mの揺れる吊り橋

吊り橋は谷底から約70メートル。手すりは低く、風でグラグラ揺れる。渡るだけで心臓がバクバクする橋です。

02ドキドキの「犯人」を取り違える脳

研究者たちは、この結果を興奮の錯誤帰属で説明しました。

かみ砕くと「ドキドキの原因を勘違いする」ということ。心臓がバクバクしているとき、脳はその理由を周りの状況から推測します。目の前に魅力的な人がいると、「このドキドキは、この人のせいかも」と考えてしまう。橋の怖さを、恋のときめきと取り違えるわけです。

この考え方のもとになったのが、情動の二要因説(シャクターとシンガー, 1962年)です。「感情は、体の興奮と、その理由づけの2つでできている」という説です。

脳は「ドキドキの理由」を、そのとき目の前にあるものに結びつけがち
脳は「ドキドキの理由」を、そのとき目の前にあるものに結びつけがち

03「度胸のある男性ほど揺れる橋を選んだだけ」では?

当然ツッコミもありました。「わざわざ揺れる吊り橋を渡る男性は、もともと冒険好きなのでは? だから女性に電話する積極性も高いのでは?」というものです。

ダットンとアロンもこれを気にしていました。そこで同じ論文の中で、実験室での別の実験も行っています。「これから強い電気ショックを受ける」と予告して男性を不安にさせると、一緒に実験を待つ女性への好意が高くなりました。とはいえ、元の橋の実験は1条件あたり十数人と小規模です。しかも、どちらの橋を渡るかは本人が選んでいて、研究者が決めたわけではありません。

1979年には、別の研究者たちが実験室で似た実験を4回行いました(Personality and Social Psychology Bulletin)。ところが4回とも、「怖い状況だと相手の女性への好意が高まる」という結果は出ませんでした。参加者は、ドキドキの原因を女性ではなく、怖い状況のほうだと正しく考えていたのです。

一方、興奮と好意の関係を調べた多くの実験を、まとめて分析した研究もあります(Journal of Personality and Social Psychology, 1998)。このようなまとめの分析をメタ分析といいます。結果は、体の興奮が魅力の評価を高める傾向をおおむね支持するものでした。

ただ、「原因の取り違え」が理由なら、ドキドキの原因がはっきりしているときは効果が出にくいはずです。ところが効果は、原因が比較的はっきりしている場合でも起きていました。一方で、原因があいまいなときほど効果が強い傾向も、同じ論文の別の検討で示されています。つまり、働いているのは「原因の取り違え」だけではなさそうです。興奮が、そのとき心に浮かんでいる反応を自動的に強める仕組みもある、と研究者たちは考えました。

遊園地のジェットコースターで調べた米国の研究もあります(Archives of Sexual Behavior, 2003)。見た目が平均的な異性の写真を見せて、魅力を点数にしてもらいました。すると、これから乗る人より、乗り終わった直後の人のほうが高い点をつけました。ところが、恋人と一緒に乗っていた人では、この差が見られませんでした。条件しだいで効き方が変わるわけです。

04落とし穴:ドキドキは、悪い印象も強めてしまう

興奮は好意を一方的に増やすのではなく、もともとの反応を強めるのかもしれません。

相手を魅力的だと感じていれば、その気持ちがさらに強まる。でも、もともと魅力を感じていない相手だと、マイナスの印象が強まることがあるのです。

それを示したのが、1981年の実験です(Journal of Personality and Social Psychology)。運動で心拍を上げた男性に、女性の映像を見せて評価してもらいました。すると、魅力的な女性はより魅力的に、そうでない女性はより魅力的でないと評価しました。

05まとめ

吊り橋効果は「ウソ」とまでは言えません。元の研究が示そうとしたのは、恋のテクニックではなく、ドキドキの原因を脳が取り違えることがあるという心の仕組みでした。ただし、この仕組みはいつも働くわけではなく、うまく再現できなかった実験もあります。

恋のテクニックとして使うなら、前提は「すでにちょっといい感じ」であること。結局のところ、橋の揺れより大事なのは、一緒にいて楽しいかどうか、なのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe "suspension bridge effect" comes from a 1974 experiment in Canada. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The "suspension bridge effect" comes from a 1974 experiment in Canada. A female interviewer approached men who were crossing either a long, swaying bridge about 70 meters above a river or a low, solid bridge. She gave each man her phone number. Nine of the 18 men on the scary bridge called her, compared with only two of the 16 men on the safe bridge. The researchers believed the men mistook their fear for attraction.

However, the men chose which bridge to cross, so braver men may simply have been more likely to call. Later studies also suggest that excitement can increase both positive and negative feelings, depending on the person.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「吊り橋効果」は、1974年にカナダで行われた実験に由来します。女性の調査員が、川から約70メートルの高さにある長く揺れる橋か、低くて頑丈な橋のどちらかを渡っている途中の男性に近づきました。彼女はそれぞれの男性に電話番号を渡しました。怖い橋では18人中9人が彼女に電話をかけてきたのに対し、安全な橋では16人中わずか2人でした。研究者たちは、男性たちが恐怖を好意と取り違えたのだと考えました。

しかし、男性たちはどちらの橋を渡るかを自分で選んでいたので、勇敢な男性ほど単に電話をかけやすかっただけかもしれません。その後の研究も、興奮は相手によって、好ましい気持ちと好ましくない気持ちの両方を強めうることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. How many men on the scary bridge called the interviewer?

Q3. Why might braver men have called more often?

重要単語

  • arousalC1
    名詞(体の)興奮、覚醒Physical arousal can be mistaken for attraction. arouse(呼び起こす)の名詞形。arouse suspicion「疑いを招く」も頻出。
  • misattributionC1
    名詞誤帰属(原因の取り違え)Misattribution happens when we blame the wrong cause. attribute A to B「AをBのせいにする」に mis-(誤って)。attribution theory(帰属理論)は心理学の基本用語。
  • attractionB1
    名詞魅力、ひかれることShared adventures may increase attraction. 動詞 attract、形容詞 attractive。tourist attraction「観光名所」の意味もある。
  • suspension bridgeB2
    名詞(句)吊り橋The suspension bridge swayed in the wind. suspend(吊るす・一時停止する)の名詞形。suspension には「停学・停止」の意味もある。
  • amplifyC1
    動詞増幅するExcitement can amplify both good and bad feelings. amplifier(アンプ)でおなじみ。ample(十分な)と同語源。
  • swayC1
    動詞揺れる;(意見を)左右するThe bridge swayed in the strong wind. 「人の考えを動かす」の意味もある。be swayed by ~「~に左右される」。
吊り橋効果の元ネタは1974年、カナダの揺れる吊り橋での実験。たしかに効果は出たけど、ドキドキはもともとの印象を「増幅」するだけで、印象が微妙な相手だと逆効果になる可能性もあるらしい。うまく再現できなかった実験もある。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Dutton & Aron (1974) Some evidence for heightened sexual attraction under conditions of high anxiety, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Schachter & Singer (1962) Cognitive, social, and physiological determinants of emotional state, Psychological Reviewdoi.org
  3. White, Fishbein & Rutstein (1981) Passionate love and the misattribution of arousal, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  4. Foster et al. (1998) Arousal and attraction: evidence for automatic and controlled processes, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  5. Kenrick, Cialdini & Linder (1979) Misattribution under fear-producing circumstances: four failures to replicate, Personality and Social Psychology Bulletindoi.org
  6. Meston & Frohlich (2003) Love at first fright: partner salience moderates roller-coaster-induced excitation transfer, Archives of Sexual Behaviordoi.org