なぜ人はお金を払ってまで怖がりたいのか? お化け屋敷で心拍を測ってわかったこと

読む前に予想してみよう!
ホラー映画は、怖ければ怖いほど楽しく感じる
お化け屋敷の研究では、怖すぎても怖くなさすぎても楽しさは下がり、「ほどほど」が最も楽しかった。
- 対象
- お化け屋敷の来場者・オンライン調査の成人
- 規模
- 110人(現場研究)、310人・1,070人(調査)
- 研究の種類
- フィールド研究+相関研究
- 確かさ
- ★★☆☆☆
ホラーの楽しさには「ちょうどいい怖さ」がある。怖すぎても怖くなさすぎても楽しくない。安全な場所で恐怖を練習する意味があるという説も。
ひとことで言うとホラーは「安全な場所でこわさを練習できる」から楽しいのかも!
夏になると増えるホラー映画、行列のできるお化け屋敷、深夜に読んでしまう怪談。冷静に考えると不思議です。わざわざお金と時間を使って、怖い思いをしにいくなんて。
恐怖は本来、危険から逃げるための「警報」のはず。なのになぜ私たちは、その警報を自分から鳴らしにいくのでしょう?
近年、この謎に本気で取り組む研究者たちが現れました。舞台はなんと、本物のお化け屋敷です。
01お化け屋敷で心拍数を測った
グラフにすると、山なりの形(逆U字)になります。退屈でも、恐怖でパニックでもない、その間にある「ちょうどいい怖さ」のスイートスポット。そこで人は一番楽しんでいた、というわけです。
研究チームはこれを、子どもが鬼ごっこや「高い高い」を喜ぶのと同じような、恐怖を使った遊びだと考えています。
02安全な場所での「怖さの練習」
ではなぜ、人は恐怖で遊ぶのでしょう。有力な考え方の一つが、脅威シミュレーションです。
かみ砕くと、ホラーは危険のリハーサルということ。本物の危険にあう前に、安全な場所で「怖いとき自分の体はどうなるか」「どう落ち着けばいいか」を体験しておく。動物の子どもが、じゃれ合いで狩りや逃げ方を練習するのと似ています。

03ホラー好きは、パンデミックに強かった?
この考え方を裏付けるかのような研究もあります。
新型コロナの流行が始まった2020年、米シカゴ大などの研究チームが310人を対象にしたオンライン調査で、ホラー映画のファンほど、パンデミック中の心理的なレジリエンス(落ち込みにくさ・立ち直りやすさ)が高かったという結果を報告しました(Personality and Individual Differences, 2021)。ゾンビやエイリアン侵略などの「終末もの」が好きな人は、パンデミックへの備えもできていたと答える傾向がありました。
研究者たちは「ホラーで不安や恐怖を扱う練習をしてきたからかもしれない」と考えています。ただしこれは一度きりの調査研究(相関研究)なので、ホラーを見たから心が強くなったのか、もともと心が強い人がホラーを好むのかは、まだ区別できていません。
04「怖かった!」のあとの爽快感
もう一つ見逃せないのが、恐怖が終わったあとの解放感です。心臓がバクバクした状態のまま安全が確認されると、その高ぶりが「楽しかった!」という気分に上乗せされる、という考え方もあります。お化け屋敷を出たあと、友だちと大笑いしてしまうのはこのためかもしれません。
05まとめ
人が怖いものにひかれるのは、安全なところで心をゆさぶり、恐怖とつき合う練習をしているからなのかもしれません。そして、その楽しさには「ちょうどいい怖さ」がありました。
あなたのスイートスポットは、どのくらいの怖さですか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFear is supposed to warn us about danger, so why do so many people enjoy horror films and haunted houses?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Why do people pay money to feel scared? Researchers in Denmark studied 110 visitors at a haunted house. The visitors wore heart monitors. They also said how scared they felt and how much fun they had.
People had the most fun when they were a little scared. When they were not scared or too scared, it was less fun. Horror may help us practice fear in a safe place.
69 words ・ CEFR A2
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なぜ人はお金を払ってまで怖い思いをするのでしょうか?デンマークの研究者たちは、お化け屋敷の来場者110人を調べました。来場者は心拍計をつけました。また、どれくらい怖かったか、どれくらい楽しかったかも答えました。
人々は、少し怖いときに一番楽しんでいました。怖くないときや怖すぎるときは、あまり楽しくありませんでした。ホラーは、安全な場所で恐怖を練習する助けになるのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
なぜ人はお金を払って怖がるのか、をお化け屋敷の研究で考える内容なので B。
Q2. How many visitors did the researchers study?
Researchers in Denmark studied 110 visitors とあるので A。
Q3. In this passage, "practice" means ...
practice は「練習する」。安全な場所で恐怖に慣れておく、という意味で使われているので D。
Fear is supposed to warn us about danger, so why do so many people enjoy horror films and haunted houses? To find out, researchers from Aarhus University in Denmark asked 110 visitors at a haunted house to wear heart rate monitors. The visitors also reported how frightened they were and how much they enjoyed the experience.
The results formed an upside-down U shape. Enjoyment was highest when people were moderately scared, and it fell when they were either barely scared or extremely scared. The researchers see this as a kind of play with fear. One popular idea is that horror lets us rehearse dangerous situations in a safe place, just as young animals practice hunting through play.
117 words ・ CEFR B1
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恐怖は本来、危険を知らせるためのものなのに、なぜこれほど多くの人がホラー映画やお化け屋敷を楽しむのでしょうか。それを調べるため、デンマークのオーフス大学の研究者たちは、お化け屋敷の来場者110人に心拍計をつけてもらいました。来場者は、どれくらい怖かったか、どれくらい楽しんだかも報告しました。
結果は逆U字の形になりました。楽しさは、ほどほどに怖いときに最も高く、ほとんど怖くないときや極端に怖いときには下がったのです。研究者たちはこれを、恐怖を使った一種の遊びだと考えています。有力な考え方の一つは、子どもの動物が遊びを通して狩りを練習するように、ホラーは安全な場所で危険な状況のリハーサルをさせてくれる、というものです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the haunted house study find?
enjoyment was highest when people were moderately scared とあるので C。怖いほど楽しいわけではない。
Q2. What did the visitors do in the study?
心拍計をつけ、怖さと楽しさを報告したと書かれているので B。
Q3. Why does the author mention young animals?
just as young animals practice hunting through play と、ホラーを「遊びを通した練習」にたとえているので A。
Fear evolved as an alarm against danger, so why do people pay money to feel it? Researchers at Aarhus University in Denmark took the question to a real haunted house. There, 110 visitors aged 12 to 57 wore heart rate monitors and rated how scared they were and how much they enjoyed themselves. Enjoyment followed an inverted U-shaped curve, peaking at moderate levels of fear and falling off when visitors were barely scared or terrified.
The heart rate data told a similar story. Large swings in heart rate rose in step with fear, while smaller swings showed the same inverted-U pattern with enjoyment. The authors call this recreational fear, a form of play. A related idea, threat simulation theory, holds that scary fiction lets us rehearse our responses to danger in safety. A 2020 online survey of 310 adults fits this view, since horror fans reported greater psychological resilience during the COVID-19 pandemic.
But a survey like this only shows a link. Horror might build resilience, or resilient people might simply be drawn to horror. And the haunted house data came from one attraction whose visitors had all chosen to be there.
192 words ・ CEFR B2
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恐怖は危険を知らせる警報として進化したのに、なぜ人はお金を払ってまでそれを味わうのでしょうか。デンマークのオーフス大学の研究者たちは、この疑問を本物のお化け屋敷に持ち込みました。そこでは12〜57歳の来場者110人が心拍計をつけ、どれくらい怖かったか、どれくらい楽しかったかを評価しました。楽しさは逆U字型の曲線を描き、ほどほどの怖さで最も高くなり、ほとんど怖くないときや怖すぎるときには下がりました。
心拍のデータも同じような傾向を示しました。心拍の大きなゆれは怖さと直線的な関係にあり、小さなゆれは楽しさとの間に同じ逆U字の関係を示したのです。著者たちはこれを、遊びの一形態である「娯楽としての恐怖」と呼んでいます。関連する考え方である脅威シミュレーション理論は、怖い作り話のおかげで、危険への対応を安全にリハーサルできるとしています。2020年に成人310人を対象に行われたオンライン調査はこの見方に合っており、ホラーファンは新型コロナの流行中に心理的なレジリエンスが高いと報告しました。
しかし、このような調査が示せるのは関連だけです。ホラーがレジリエンスを育てるのかもしれませんし、レジリエンスの高い人がもともとホラーにひかれるだけなのかもしれません。また、お化け屋敷のデータは一つの施設のもので、来場者は全員、自分で来ることを選んだ人たちでした。
4択リーディングクイズ
Q1. Which best summarizes the passage?
ほどほどの恐怖が最も楽しく、安全な練習という説があるが、証拠には限界がある、という流れなので D。
Q2. According to the passage, how were smaller heart rate fluctuations related to enjoyment?
smaller swings showed the same inverted-U pattern with enjoyment とあるので C。直線的な関係にあったのは大きなゆれと怖さ。
Q3. Why can the survey not prove that horror builds resilience?
a survey like this only shows a link とあり、ホラーがレジリエンスを育てるのか、レジリエンスの高い人がホラーを好むのか区別できないと説明しているので B。
重要単語
- recreational fearC1名詞(句)娯楽としての恐怖Haunted houses offer recreational fear.
recreational は recreation(娯楽・気晴らし)の形容詞形。re-(再び)+create で「心身を作り直す」が原義。 - resilienceC1名詞回復力、心の強さResilience helps people cope with hard times.
元は「弾力」。形容詞 resilient。cope with ~「~にうまく対処する」とセットで出やすい。 - sweet spotB2名詞(句)ちょうどいいところ、最適点Enjoyment peaked at a sweet spot of fear.
元はバットやラケットで一番よく飛ぶ位置。hit the sweet spot「ちょうどいい所をつく」。 - sensation seekingC1名詞(句)刺激希求性People high in sensation seeking enjoy roller coasters.
sensation(感覚・刺激)+seek(求める)。性格心理学の用語で、high / low in ~ で程度を表す。 - simulationB2名詞模擬体験、シミュレーションHorror may work as a simulation of danger.
simulate(模擬する)の名詞形。similar(似ている)と同語源で「似せて作る」イメージ。 - moderateB2形容詞適度な、ほどほどのVisitors enjoyed moderate levels of fear the most.
moderate exercise「適度な運動」は頻出。発音は形容詞 /ˈmɑːdərət/、動詞 /ˈmɑːdəreɪt/ で異なる。
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お化け屋敷で心拍数を測った研究によると、ホラーには「ちょうどいい怖さ」のスイートスポットがあるらしい。しかもホラー好きの人は、コロナ禍で心の強さが高かったという報告まで。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Andersen et al. (2020) Playing with fear: a field study in recreational horror, Psychological Sciencedoi.org
- Scrivner et al. (2021) Pandemic practice: horror fans and morbidly curious individuals are more psychologically resilient during the COVID-19 pandemic, Personality and Individual Differencesdoi.org
- Clasen, Kjeldgaard-Christiansen & Johnson (2020) Horror, personality, and threat simulation: a survey on the psychology of scary media, Evolutionary Behavioral Sciencesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












