「続きはCMのあと!」が気になる理由。「やりかけほど覚える」説は、実はかなり怪しかった

読む前に予想してみよう!
やり残したタスクを気にしてしまうとき、具体的な計画を立てるだけで頭から離れやすくなる
計画を書き出すと、未完了の目標が頭に割り込んでくる影響が減ったという実験がある。
- 対象
- 学生・教員・子ども
- 規模
- 原典は個別実験164人(ほかに集団実験あり)、メタ分析は約100年分・59本の論文
- 研究の種類
- 古典的実験+メタ分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
「途中でやめたことほど覚えている」ツァイガルニク効果は、追試をまとめるとはっきりしない。一方「やり残しを再開したくなる」傾向は比較的確か。
ひとことで言うとやりかけのことは気になる。でも「よく覚えてる」かはビミョー!
ドラマの一番いいところで「続きは来週!」。漫画の最後のコマで「次号へつづく」。分かっていても、気になって仕方がない。
この「途中で終わったものほど頭に残る」という話は、ツァイガルニク効果と呼ばれています。心理学の本や広告のテクニック集には、必ずと言っていいほど登場します。
ところが――。近年、たくさんの追試をまとめて調べ直した研究者たちが、こう報告しました。「その効果、ちゃんと確認できないんですけど」。
01始まりはウェイターの記憶力
舞台は約100年前のドイツ・ベルリン。心理学者クルト・レヴィンたちが、レストランでウェイターの不思議な記憶力に気づいたと伝えられています。ウェイターは、注文を会計が済むまでは細かく覚えている。なのに、支払いが終わったとたんに忘れてしまう、というのです。
この話をヒントに、レヴィンの学生だったブルーマ・ツァイガルニクが実験を行いました。
説明はこうです。やり残したことは心に「緊張」を残し、それが記憶を保つ。この分かりやすい説明とともに、「ツァイガルニク効果」は世界中に広まりました。

02追試を集めたら、効果が見えなかった
その後、多くの研究者が同じような実験を繰り返しました。ところが結果はバラバラでした。効果が出た研究もあれば、出なかった研究も、逆の結果の研究もあったのです。
2025年、スイス・ベルン大のギベリーニとマイヤーが、こうした研究をまとめて分析しました(Humanities and Social Sciences Communications, 2025)。メタ分析という方法です。たくさんの研究を束ねて、全体の傾向を見ます。結論は、「中断した課題のほうがよく覚えている」という記憶の効果は見られない、というものでした。
なぜ昔は効果が出たのでしょうか。研究者たちは、こう考えています。この効果は、「実験者の権威」や「参加者がどれだけ課題に入れ込んでいるか」に左右されるのかもしれない。そうした条件は、昔の実験のほうがそろいやすかった。だから現代では再現しにくいのではないか、というのです。
つまり、「途中のことはよく覚えている」という超有名な話は、科学的にはかなりビミョーだったのです。
03確かめられたのは「中断したことを再開したくなる」傾向
一方で、同じメタ分析が一般的な傾向として支持したものがあります。オフシャンキナ効果です。調べたのは、マリア・オフシャンキナ。ツァイガルニクと同じく、レヴィンの研究室にいた研究者です(Psychologische Forschung, 1928)。
これは、「中断されたことを、また再開したくなる」傾向のこと。記憶に残るかどうかではありません。「続きをやりたい」という行動の衝動です。
考えてみると、「続きはCMのあと」で私たちが感じているのも、こちらに近いはずです。「さっきの内容をよく覚えている」というより、「続きが見たい!」という気持ちですよね。
04「やり残し」のモヤモヤは計画で消せる
やり残しが頭から離れなくて困るときのヒントもあります。米フロリダ州立大のマシカンポとバウマイスターの研究です(Journal of Personality and Social Psychology, 2011)。未完了の目標について、具体的な計画を書き出す。それだけで、その目標が別の作業中に頭に割り込んでくることが減ったと報告しました。
ただし、この研究は「自我消耗」の研究でも知られるグループによるものです。自我消耗とは、「意志の力は使うとすり減る」という説で、のちの追試で揺らいでいます。この計画の研究も、別のチームによる大規模な追試で確かめられた、という報告はまだ見当たりません。
05まとめ
「途中のことはよく覚えている」は、教科書級に有名な話です。なのに追試で揺らいでいた、というどんでん返しでした。でも「続きが気になる」「再開したくなる」という感覚自体は、私たちの多くが実感しているものです。
有名な効果ほど、一度「ほんとに?」と疑ってみる。それが、科学といちばん楽しく付き合う方法かもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAbout 100 years ago in Berlin, psychologist Bluma Zeigarnik gave people simple tasks, such as puzzles, and…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When a TV drama stops at an exciting moment, we want to know what happens next. About 100 years ago, a scientist named Zeigarnik said that people remember unfinished tasks better than finished ones. This idea became very famous.
But in 2025, researchers looked at many studies and could not find this memory effect. Even so, people do want to go back and finish the things they stopped.
68 words ・ CEFR A2
和訳を見る
テレビドラマがわくわくする場面で終わると、私たちは次に何が起こるか知りたくなります。約100年前、ツァイガルニクという科学者は、人は終わった課題より終わっていない課題のほうをよく覚えていると言いました。この考えはとても有名になりました。
しかし2025年、研究者たちが多くの研究を調べたところ、この記憶の効果は見つかりませんでした。それでも、人は途中でやめたことに戻って、それを終わらせたいと本当に思うのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
やりかけの課題をよく覚えているという有名な説が本当かどうか、がテーマなので B。
Q2. What did researchers find in 2025?
researchers looked at many studies and could not find this memory effect とあるので D。
Q3. In this passage, "unfinished" means ...
un-(否定)+finished(終わった)で「まだ終わっていない」なので C。
About 100 years ago in Berlin, psychologist Bluma Zeigarnik gave people simple tasks, such as puzzles, and stopped them in the middle of half of the tasks. Later, people remembered the interrupted tasks better than the finished ones. This became known as the Zeigarnik effect, and it still appears in many psychology books.
However, later studies produced mixed results. In 2025, two researchers in Switzerland combined many of these studies in a meta-analysis and found no clear memory advantage for interrupted tasks. What did hold up was a different tendency, called the Ovsiankina effect, which means that people want to resume tasks that were interrupted. So when a show says "to be continued," we may not remember more, but we do want to see what happens.
126 words ・ CEFR B1
和訳を見る
約100年前のベルリンで、心理学者ブルーマ・ツァイガルニクは人々にパズルなどの簡単な課題を与え、その半分を途中で中断させました。あとで、人々は完了した課題より中断された課題のほうをよく覚えていました。これは「ツァイガルニク効果」として知られるようになり、今でも多くの心理学の本に登場します。
しかし、その後の研究の結果はまちまちでした。2025年、スイスの2人の研究者がこうした研究の多くをメタ分析でまとめたところ、中断された課題のほうが記憶に有利だという明確な証拠は見つかりませんでした。一方で確かだったのは「オフシャンキナ効果」と呼ばれる別の傾向、つまり人は中断された課題を再開したくなる、というものでした。ですから、番組が「つづく」と言うとき、私たちは内容をよく覚えているわけではないかもしれませんが、続きを見たいとは本当に思うのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
有名なツァイガルニク効果がメタ分析で確認できなかった、という話なので A。
Q2. What did the 2025 meta-analysis find?
found no clear memory advantage for interrupted tasks とあるので C。再開したくなる傾向はむしろ支持された。
Q3. According to the passage, why do we feel we must keep watching a show that says "to be continued"?
最終文で、よく覚えているからではなく続きを見たい(再開したい)からだと述べているので D。
According to a well-known story, psychologist Kurt Lewin noticed that waiters in a Berlin restaurant remembered orders in detail until the bill was paid, then quickly forgot them. Inspired by this, his student Bluma Zeigarnik reported in 1927 that people recalled interrupted tasks better than completed ones, supposedly because unfinished goals leave a lingering mental tension. The so-called Zeigarnik effect became a staple of textbooks and marketing advice.
Later replications, however, were inconsistent, and some even found the opposite pattern. A 2025 meta-analysis by researchers at the University of Bern concluded that there is no reliable memory advantage for interrupted tasks. The authors suggest that the original effect may have depended on conditions common at the time, such as the authority of the experimenter and participants' strong personal involvement. In contrast, the Ovsiankina effect, the tendency to resume interrupted activities, was supported as a general pattern. A related 2011 study found that writing a specific plan for an unfinished goal reduced its intrusion into other tasks, although this finding still needs to be confirmed by independent research teams.
178 words ・ CEFR B2
和訳を見る
よく知られた話によれば、心理学者クルト・レヴィンは、ベルリンのレストランのウェイターが会計が済むまでは注文を細かく覚えているのに、その後すぐに忘れてしまうことに気づきました。これに着想を得て、彼の学生ブルーマ・ツァイガルニクは1927年、人は完了した課題より中断された課題をよく思い出すと報告しました。やり残した目標が心に緊張を残し続けるからだ、とされました。このいわゆるツァイガルニク効果は、教科書やマーケティングの助言の定番になりました。
しかし、その後の追試の結果は一貫せず、逆のパターンを示したものさえありました。2025年、ベルン大学の研究者によるメタ分析は、中断された課題に確かな記憶上の有利さはないと結論づけました。著者たちは、元の効果は、実験者の権威や参加者の強い個人的な入れ込みといった、当時ありがちだった条件に左右されていたのかもしれないと述べています。対照的に、中断された活動を再開しようとする傾向であるオフシャンキナ効果は、一般的な傾向として支持されました。関連する2011年の研究では、やり残した目標について具体的な計画を書き出すと、それがほかの作業に割り込んでくることが減ったと報告されました。ただし、この結果は、ほかの研究チームによってまだ確かめられる必要があります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
記憶の効果はメタ分析で否定的、再開したくなる傾向は支持された、という対比が中心なので B。
Q2. What possible reason do the authors give for the original result?
the original effect may have depended on ... the authority of the experimenter and participants' strong personal involvement とあるので A。
Q3. What can be inferred about the 2011 planning study?
this finding still needs to be confirmed by independent research teams とあるので、結果はさらに確認が必要だと分かる。正解は D。
重要単語
- interruptedB1形容詞中断されたInterrupted tasks may stay on our minds.
inter-(間に)+rupt(破る)。「話をさえぎる」の interrupt もよく出る。 - resumeB2動詞再開するShe resumed her homework after dinner.
発音は /rɪˈzuːm/。名詞の résumé(履歴書)とは発音が異なるので注意。 - unfinishedB1形容詞未完了のUnfinished business can make us restless.
unfinished business は「やり残したこと・未解決の問題」という決まり文句。 - replicateC1動詞(結果を)再現するThe memory effect was hard to replicate.
名詞 replication(追試)。科学の信頼性を語る英文で頻出。replica(複製品)と同語源。 - intrusive thoughtC1名詞(句)侵入思考(勝手に浮かぶ考え)Making a plan can reduce intrusive thoughts.
intrude(押し入る)の形容詞 intrusive。名詞 intrusion も本文に登場。 - meta-analysisC1名詞メタ分析(多数の研究をまとめて分析すること)A meta-analysis combines the results of many studies.
meta-は「より高次の」。研究の「研究」というイメージ。科学系長文で頻出の語。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
このネタ、誰かに教えたくなった?
「続きはCMのあと」で気になっちゃうのはツァイガルニク効果…と言われてきたけど、近年の分析では「途中のことをよく覚える」効果はかなり怪しいらしい。むしろ確かなのは「再開したくなる」ほう。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
- Zeigarnik (1927) Untersuchungen zur Handlungs- und Affektpsychologie III, Das Behalten erledigter und unerledigter Handlungen, Psychologische Forschungdoi.org
- Ovsiankina (1928) Untersuchungen zur Handlungs- und Affektpsychologie VI, Die Wiederaufnahme unterbrochener Handlungen, Psychologische Forschungdoi.org
- Masicampo & Baumeister (2011) Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Ghibellini & Meier (2025) Interruption, recall and resumption: a meta-analysis of the Zeigarnik and Ovsiankina effects, Humanities and Social Sciences Communicationsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













