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脳と心理ビミョー

「続きはCMのあと!」が気になる理由。「やりかけほど覚える」説は、実はかなり怪しかった

「続きはCMのあと!」が気になる理由。「やりかけほど覚える」説は、実はかなり怪しかった

読む前に予想してみよう!

やり残したタスクを気にしてしまうとき、具体的な計画を立てるだけで頭から離れやすくなる

研究カード(どんな研究?)
対象
学生・教員・子ども
規模
原典は個別実験164人(ほかに集団実験あり)、メタ分析は約100年分・59本の論文
研究の種類
古典的実験+メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「途中でやめたことほど覚えている」ツァイガルニク効果は、追試をまとめるとはっきりしない。一方「やり残しを再開したくなる」傾向は比較的確か。

ひとことで言うとやりかけのことは気になる。でも「よく覚えてる」かはビミョー!

もくじ
  1. 始まりはウェイターの記憶力
  2. 追試を集めたら、効果が見えなかった
  3. 確かめられたのは「中断したことを再開したくなる」傾向
  4. 「やり残し」のモヤモヤは計画で消せる
  5. まとめ

ドラマの一番いいところで「続きは来週!」。漫画の最後のコマで「次号へつづく」。分かっていても、気になって仕方がない。

この「途中で終わったものほど頭に残る」という話は、ツァイガルニク効果と呼ばれています。心理学の本や広告のテクニック集には、必ずと言っていいほど登場します。

ところが――。近年、たくさんの追試をまとめて調べ直した研究者たちが、こう報告しました。「その効果、ちゃんと確認できないんですけど」。

01始まりはウェイターの記憶力

舞台は約100年前のドイツ・ベルリン。心理学者クルト・レヴィンたちが、レストランでウェイターの不思議な記憶力に気づいたと伝えられています。ウェイターは、注文を会計が済むまでは細かく覚えている。なのに、支払いが終わったとたんに忘れてしまう、というのです。

この話をヒントに、レヴィンの学生だったブルーマ・ツァイガルニクが実験を行いました。

説明はこうです。やり残したことは心に「緊張」を残し、それが記憶を保つ。この分かりやすい説明とともに、「ツァイガルニク効果」は世界中に広まりました。

すべては「やりかけ」の記憶から始まった
すべては「やりかけ」の記憶から始まった

02追試を集めたら、効果が見えなかった

その後、多くの研究者が同じような実験を繰り返しました。ところが結果はバラバラでした。効果が出た研究もあれば、出なかった研究も、逆の結果の研究もあったのです。

2025年、スイス・ベルン大のギベリーニとマイヤーが、こうした研究をまとめて分析しました(Humanities and Social Sciences Communications, 2025)。メタ分析という方法です。たくさんの研究を束ねて、全体の傾向を見ます。結論は、「中断した課題のほうがよく覚えている」という記憶の効果は見られない、というものでした。

なぜ昔は効果が出たのでしょうか。研究者たちは、こう考えています。この効果は、「実験者の権威」や「参加者がどれだけ課題に入れ込んでいるか」に左右されるのかもしれない。そうした条件は、昔の実験のほうがそろいやすかった。だから現代では再現しにくいのではないか、というのです。

つまり、「途中のことはよく覚えている」という超有名な話は、科学的にはかなりビミョーだったのです。

03確かめられたのは「中断したことを再開したくなる」傾向

一方で、同じメタ分析が一般的な傾向として支持したものがあります。オフシャンキナ効果です。調べたのは、マリア・オフシャンキナ。ツァイガルニクと同じく、レヴィンの研究室にいた研究者です(Psychologische Forschung, 1928)。

これは、「中断されたことを、また再開したくなる」傾向のこと。記憶に残るかどうかではありません。「続きをやりたい」という行動の衝動です。

考えてみると、「続きはCMのあと」で私たちが感じているのも、こちらに近いはずです。「さっきの内容をよく覚えている」というより、「続きが見たい!」という気持ちですよね。

04「やり残し」のモヤモヤは計画で消せる

やり残しが頭から離れなくて困るときのヒントもあります。米フロリダ州立大のマシカンポとバウマイスターの研究です(Journal of Personality and Social Psychology, 2011)。未完了の目標について、具体的な計画を書き出す。それだけで、その目標が別の作業中に頭に割り込んでくることが減ったと報告しました。

ただし、この研究は「自我消耗」の研究でも知られるグループによるものです。自我消耗とは、「意志の力は使うとすり減る」という説で、のちの追試で揺らいでいます。この計画の研究も、別のチームによる大規模な追試で確かめられた、という報告はまだ見当たりません。

05まとめ

「途中のことはよく覚えている」は、教科書級に有名な話です。なのに追試で揺らいでいた、というどんでん返しでした。でも「続きが気になる」「再開したくなる」という感覚自体は、私たちの多くが実感しているものです。

有名な効果ほど、一度「ほんとに?」と疑ってみる。それが、科学といちばん楽しく付き合う方法かもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAbout 100 years ago in Berlin, psychologist Bluma Zeigarnik gave people simple tasks, such as puzzles, and… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

About 100 years ago in Berlin, psychologist Bluma Zeigarnik gave people simple tasks, such as puzzles, and stopped them in the middle of half of the tasks. Later, people remembered the interrupted tasks better than the finished ones. This became known as the Zeigarnik effect, and it still appears in many psychology books.

However, later studies produced mixed results. In 2025, two researchers in Switzerland combined many of these studies in a meta-analysis and found no clear memory advantage for interrupted tasks. What did hold up was a different tendency, called the Ovsiankina effect, which means that people want to resume tasks that were interrupted. So when a show says "to be continued," we may not remember more, but we do want to see what happens.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

約100年前のベルリンで、心理学者ブルーマ・ツァイガルニクは人々にパズルなどの簡単な課題を与え、その半分を途中で中断させました。あとで、人々は完了した課題より中断された課題のほうをよく覚えていました。これは「ツァイガルニク効果」として知られるようになり、今でも多くの心理学の本に登場します。

しかし、その後の研究の結果はまちまちでした。2025年、スイスの2人の研究者がこうした研究の多くをメタ分析でまとめたところ、中断された課題のほうが記憶に有利だという明確な証拠は見つかりませんでした。一方で確かだったのは「オフシャンキナ効果」と呼ばれる別の傾向、つまり人は中断された課題を再開したくなる、というものでした。ですから、番組が「つづく」と言うとき、私たちは内容をよく覚えているわけではないかもしれませんが、続きを見たいとは本当に思うのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did the 2025 meta-analysis find?

Q3. According to the passage, why do we feel we must keep watching a show that says "to be continued"?

重要単語

  • interruptedB1
    形容詞中断されたInterrupted tasks may stay on our minds. inter-(間に)+rupt(破る)。「話をさえぎる」の interrupt もよく出る。
  • resumeB2
    動詞再開するShe resumed her homework after dinner. 発音は /rɪˈzuːm/。名詞の résumé(履歴書)とは発音が異なるので注意。
  • unfinishedB1
    形容詞未完了のUnfinished business can make us restless. unfinished business は「やり残したこと・未解決の問題」という決まり文句。
  • replicateC1
    動詞(結果を)再現するThe memory effect was hard to replicate. 名詞 replication(追試)。科学の信頼性を語る英文で頻出。replica(複製品)と同語源。
  • intrusive thoughtC1
    名詞(句)侵入思考(勝手に浮かぶ考え)Making a plan can reduce intrusive thoughts. intrude(押し入る)の形容詞 intrusive。名詞 intrusion も本文に登場。
  • meta-analysisC1
    名詞メタ分析(多数の研究をまとめて分析すること)A meta-analysis combines the results of many studies. meta-は「より高次の」。研究の「研究」というイメージ。科学系長文で頻出の語。
「続きはCMのあと」で気になっちゃうのはツァイガルニク効果…と言われてきたけど、近年の分析では「途中のことをよく覚える」効果はかなり怪しいらしい。むしろ確かなのは「再開したくなる」ほう。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Zeigarnik (1927) Untersuchungen zur Handlungs- und Affektpsychologie III, Das Behalten erledigter und unerledigter Handlungen, Psychologische Forschungdoi.org
  2. Ovsiankina (1928) Untersuchungen zur Handlungs- und Affektpsychologie VI, Die Wiederaufnahme unterbrochener Handlungen, Psychologische Forschungdoi.org
  3. Masicampo & Baumeister (2011) Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  4. Ghibellini & Meier (2025) Interruption, recall and resumption: a meta-analysis of the Zeigarnik and Ovsiankina effects, Humanities and Social Sciences Communicationsdoi.org