脳と心理ビミョー

【共通テストに出た】怖いと時間がスローになるは本当?31m落下実験の答え

【共通テストに出た】怖いと時間がスローになるは本当?31m落下実験の答え

読む前に予想してみよう!

怖い体験の最中は、脳の処理速度が上がって世界がスローモーションに見えている

研究カード(どんな研究?)
対象
成人の参加者
規模
数十人規模
研究の種類
実験研究(自由落下)+スカイダイバー調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

31mの自由落下を体験した人は、自分の落下時間を36%長く見積もった。でも目が速くなったわけではなく、スローに感じるのは「記憶」のしわざらしい。

ひとことで言うとこわい時に時間がゆっくりに感じるのは、あとから思い出す記憶のせいらしい!

もくじ
  1. 遊園地のアトラクションで「落ちる」実験
  2. 手首の装置で「スローモーション視覚」をテスト
  3. スローの正体は「記憶の濃さ」
  4. 「怖さ」と「ワクワク」で逆になる?
  5. まとめ

交通事故に遭いかけた瞬間、「すべてがスローモーションに見えた」。そんな体験談、聞いたことありませんか?

映画の「マトリックス」みたいに、ピンチの時だけ脳がフル回転して世界がゆっくり見える……としたら、ちょっとかっこいい。では本当にそうなのか。人を高さ31mから落として確かめた、大胆な実験があります。

この「心の中の時間(心理的時間)」は、2024年度の大学入学共通テスト(本試験)英語リーディングでも長文のテーマになりました。

01遊園地のアトラクションで「落ちる」実験

ここまでは「やっぱり時間はスローになる」と言えそうです。でも研究チームは、もう一歩踏み込みました。

02手首の装置で「スローモーション視覚」をテスト

参加者の手首には、数字がチカチカ点滅する特製の表示装置が付けられていました。点滅が速すぎて、ふだんは数字が読み取れない設定です。

もし落下中に脳が本当に「高速モード」になっているなら、映画のスローモーションのように、ふだん読めない数字が読めるはず。

結果は――読めませんでした。落下中でも、目や脳の「時間の解像度」は上がっていなかったのです。

落下中、手首の数字は「スローには見えなかった」
落下中、手首の数字は「スローには見えなかった」

03スローの正体は「記憶の濃さ」

では、なぜ長く感じたのか。研究チームの答えは、記憶です。

怖い体験の最中、脳の「警報装置」である扁桃体などが強く働き、出来事がいつもより細かく、濃く記録されます。あとで思い出すと、記憶の量が多いぶん「長い時間だった」と感じてしまう。つまり、スローモーションは体験中ではなく、振り返った時に生まれるのではないか、というのが研究チームの考えです。

04「怖さ」と「ワクワク」で逆になる?

スカイダイビング初体験の人を調べた研究もあります。オーストラリアの研究者は、初めてタンデム(インストラクターと二人一組)で飛ぶ76人に、飛ぶ前後の気持ちと体感時間を聞きました(2007年)。

すると、恐怖が強い人ほど時間をゆっくり、ワクワクが強い人ほど時間を速く感じていたのです。同じ体験でも、気持ちの向きで時間の感じ方が変わるらしい。感情が時間の感覚を「色づける」ことは、多くの研究でも確かめられています(Droit-Volet & Meck, 2007)。

05まとめ

「時間がスローに見えた」は、体験としてはホント。でも、そのとき脳が高速化しているわけではありませんでした。

スローモーションの正体は、脳が必死に残した、濃い記憶。楽しい1日があっという間なのに、思い出すと長く感じるのも、もしかしたら同じ仕組みかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPeople who almost have accidents often say that everything happened in slow motion. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

People who almost have accidents often say that everything happened in slow motion. To test this idea, Eagleman and his team asked volunteers to fall 31 meters backward into a safety net at an amusement park. Afterward, the volunteers estimated that their own fall had lasted about 36% longer than the falls of other people they watched.

However, the researchers also put a device on each person's wrist that flashed numbers too quickly to read normally. If the brain really sped up, the numbers would become readable during the fall. They did not. The team concluded that frightening moments are recorded in richer detail, so when we remember them later, they seem longer.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

事故に遭いかけた人は、すべてがスローモーションで起きたとよく言います。この考えを確かめるため、イーグルマンらのチームは、遊園地でボランティアに後ろ向きに31メートル落下して安全ネットに着地してもらいました。その後、ボランティアたちは、自分の落下が、見ていた他の人の落下より約36%長く続いたと見積もりました。

しかし研究者たちは、ふだんなら速すぎて読めない数字を点滅させる装置を、一人ひとりの手首にも付けていました。もし脳が本当に高速になっているなら、落下中に数字が読めるはずです。読めませんでした。チームは、怖い瞬間はより細かく記録されるため、あとで思い出したときに長く感じられるのだと結論づけました。

4択リーディングクイズ

Q1. What was the wrist device used to test?

Q2. What did the volunteers say about their own fall?

Q3. According to the researchers, when does the slow-motion feeling appear?

重要単語

  • perceptionB2
    名詞知覚、感じ方Our perception of time changes with our mood. 動詞は perceive。time perception(時間知覚)は心理系長文の定番テーマ。
  • estimateB1
    動詞・名詞見積もる、推定する/見積もりParticipants estimated how long the fall lasted. overestimate(過大評価する)/ underestimate(過小評価する)は設問の言い換えに頻出。
  • retrospectiveC1
    形容詞振り返っての、回顧的なRetrospective judgments of time depend on memory. retro(後ろへ)+spect(見る)。反対は prospective(前を見る=これからの)。
  • resolutionB2
    名詞分解能、解像度The device tested the temporal resolution of vision. 「決意」「解決」の意味もある多義語。文脈で意味を決める問題が入試で出やすい。temporal は「時間の」。
  • arousalC1
    名詞覚醒、興奮状態High arousal can make a moment feel longer. 動詞は arouse(呼び起こす)。arouse interest / arouse suspicion のコロケーションで覚える。
  • noviceB2
    名詞初心者Novice skydivers were asked about their fear. nov-(新しい)は novel, innovation と同語源。反対語は expert / veteran。
  • durationB2
    名詞継続時間、期間The duration of the fall was about three seconds. dur-(続く)は during, durable と同語源。時間の長さを表す硬い語として長文で頻出。

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4コマでわかる

【共通テストに出た】怖いと時間がスローになるは本当?31m落下実験の答えの4コマ漫画
事故の瞬間「時間がスローになった」ってよく聞くけど、31mの自由落下実験で確かめたら、落ちている最中に目や脳が速くなるわけではなかったらしい。スローに感じる正体は、濃く残った「記憶」。共通テストにも出たテーマ。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Stetson, Fiesta & Eagleman (2007) Does time really slow down during a frightening event?, PLoS ONEdoi.org
  2. Campbell & Bryant (2007) How time flies: a study of novice skydivers, Behaviour Research and Therapydoi.org
  3. Droit-Volet & Meck (2007) How emotions colour our perception of time, Trends in Cognitive Sciencesdoi.org