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脳と心理ウソ

【関学の入試に出た】地平線の月が大きく見えるのは脳の錯覚。写真に撮ると大きさはほぼ同じだった

【関学の入試に出た】地平線の月が大きく見えるのは脳の錯覚。写真に撮ると大きさはほぼ同じだった

読む前に予想してみよう!

地平線近くの月が大きく見えるのは、大気がレンズのように月を拡大しているからだ

研究カード(どんな研究?)
対象
成人の参加者
規模
数人〜数十人規模
研究の種類
知覚実験(人工の月を使った実験)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

昇ったばかりの巨大な月も、真上の小さな月も、目に映る大きさはほぼ同じ。脳が「地平線の月は遠い」と判断し、大きく補正してしまう錯覚と考えられている。

ひとことで言うと地平線の大きな月は、実は脳の勘違い。本当の見かけの大きさは同じ!

もくじ
  1. 測ってみると、大きさは同じ
  2. 脳は「遠いもの=大きいはず」と補正する
  3. ところが「近くに見える」という人も
  4. まとめ

夕方、地平線から昇ってきた満月が、びっくりするほど大きく見えたことはありませんか? ところが夜が更けて空高く昇ると、なんだか小さくなっている。

月が本当に大きくなったり小さくなったりしているわけではありません。これは人類が何千年も悩んできた「月の錯視」です。

この月の錯覚は、2026年度の関西学院大学(2月2日実施)の英語で、長文の題材になりました。テーマは「視覚認識と錯覚」です(代々木ゼミナールの解答速報・概評で確認)。

01測ってみると、大きさは同じ

月は、私たちの目にはおよそ0.5度の大きさに見えています。腕を伸ばしたときの、小指の爪の幅の半分ほどです。地平線にあっても、空高くにあっても、この「見かけの角度」はほとんど変わりません。

カメラで同じ設定のまま撮影して比べても、地平線の月と真上の月はほぼ同じ大きさに写ります。むしろ地平線の月は、空気で光が曲がる影響(大気差)で、縦にわずかにつぶれて見えるくらいです。

つまり「空気がレンズになって大きく見える」という説明は間違い。大きく見えるのは、目ではなく脳のしわざなのです。

02脳は「遠いもの=大きいはず」と補正する

私たちの脳には、自動の補正が備わっています。脳は「目に映る大きさが同じなら、遠くにあるほうが本当は大きいはず」と考えるのです。遠くを走る本物の電車と、目の前のおもちゃの電車。目に映る大きさが同じでも、本物の電車を小さいとは思いませんよね。

地平線の月の手前には、家や木、山々など距離の手がかりがたくさんあります。脳はそれを見て「月はあの山のさらに向こう。ずっと遠い」と判断します。そして、そのぶん月を大きく補正してしまうのです。一方、空高い月のまわりには何もないため、この補正が働きにくいと考えられています。

「遠くにある」と思うと、同じ大きさでも大きく見えてしまう
「遠くにある」と思うと、同じ大きさでも大きく見えてしまう

03ところが「近くに見える」という人も

この説には、ちょっとした謎も残っています。多くの人に聞くと、地平線の月は「大きくて、近くに見える」と答えるのです。脳は遠いと判断しているのに、本人は近いと感じる。矛盾していますよね。

これには、次のような考え方があります。脳が意識の外で行う「距離の判断」と、私たちが言葉で答える「見た目の印象」は別物だ、というものです。意識の外では月が遠いと処理され、そのぶん大きく見えます。ところが言葉で答えるときは、「こんなに大きく見えるなら近いはず」と、大きさの印象につられてしまうのです。錯視の研究は今も続いていて、完全に決着したわけではありません。

04まとめ

巨大な月は、実は脳がつくり出した、美しい勘違いでした。

次に大きな月を見つけたら、腕を伸ばして指先と比べてみてください。そして、空高く昇ったあとにもう一度比べてみると……大きさが同じことに、きっと驚くはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA full moon rising over the horizon can look surprisingly large, but its size in our eyes is about 0.5… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A full moon rising over the horizon can look surprisingly large, but its size in our eyes is about 0.5 degrees wherever it is in the sky. Photos taken with the same camera settings show the horizon moon and the high moon at almost the same size.

So the popular idea that the air acts like a magnifying lens is wrong. In 1962, the psychologists Kaufman and Rock suggested that the scenery on the ground gives the brain clues about distance. Because houses, trees and mountains appear in front of the horizon moon, the brain judges it to be very far away. The brain then automatically adjusts for this distance and makes the moon look bigger. The moon high in the sky has no such clues around it.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

地平線から昇る満月は驚くほど大きく見えることがありますが、目に映る大きさは、空のどこにあってもおよそ0.5度です。同じカメラの設定で撮った写真では、地平線の月と高い位置の月はほぼ同じ大きさに写ります。

つまり、空気が拡大レンズのように働くというよく知られた考えは間違いです。1962年、心理学者のカウフマンとロックは、地上の景色が脳に距離の手がかりを与えているのだと提案しました。地平線の月の手前には家や木や山が見えるので、脳は月がとても遠くにあると判断します。そして脳は、その距離に合わせて自動的に補正し、月を大きく見せるのです。空高い月のまわりには、そうした手がかりがありません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. According to Kaufman and Rock, what gives the brain clues about distance?

Q3. What can be inferred about the moon high in the sky?

重要単語

  • illusionB2
    名詞錯覚、幻想The moon illusion has puzzled people for centuries. optical illusion(目の錯覚)がセット。allusion(ほのめかし)との綴り違いに注意。
  • horizonB1
    名詞地平線、水平線The sun sank below the horizon. アクセントは ho-RI-zon(第2音節)。形容詞 horizontal(水平の)は vertical(垂直の)と対で入試頻出。
  • perceiveB2
    動詞知覚する、気づくWe perceive the horizon moon as larger. perceive A as B「AをBだと知覚する」。名詞 perception は知覚心理学の長文で必須。
  • angular sizeC1
    名詞(句)視角(目に見える角度の大きさ)The moon's angular size hardly changes. angle(角度)の形容詞が angular。実際の大きさではなく「目に映る角度」を表す専門語。
  • cueB2
    名詞手がかりTrees and buildings provide distance cues. depth cue(奥行きの手がかり)は知覚の基本語。queue(行列)と発音が同じ /kjuː/。
  • interpretB2
    動詞解釈するThe brain interprets signals from the eyes. 名詞 interpretation。錯視の長文では「目が見る」と「脳が解釈する」の区別が設問の核心になりやすい。
  • size constancyC1
    名詞(句)大きさの恒常性Size constancy helps us see a distant car as normal size. constant(一定の)+-cy。距離が変わっても物の大きさを一定に感じる脳の働き。難関大の知覚系長文で出る。

動画でもっと知る

4コマでわかる

【関学の入試に出た】地平線の月が大きく見えるのは脳の錯覚。写真に撮ると大きさはほぼ同じだったの4コマ漫画
地平線から昇る月が巨大に見えるの、空気がレンズになってるわけじゃないらしい。写真で測ると、真上の月とほぼ同じ大きさ。脳が「地平線の月は遠くにある」と判断して、勝手に大きく補正してしまう錯覚なんだとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kaufman & Rock (1962) The moon illusion, I, Sciencedoi.org
  2. Rock & Kaufman (1962) The moon illusion, II, Sciencedoi.org
  3. Kaufman & Kaufman (2000) Explaining the moon illusion, PNASdoi.org
  4. McCready (1986) Moon illusions redescribed, Perception & Psychophysicsdoi.org