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恋人が着た服をかいだ女性は、面接後の「感じるストレス」が低めだった(96人の実験)

恋人が着た服をかいだ女性は、面接後の「感じるストレス」が低めだった(96人の実験)

読む前に予想してみよう!

恋人のシャツのにおいをかぐと、ストレスホルモンが下がる

研究カード(どんな研究?)
対象
カナダの大学周辺で集めた、男性の恋人がいる女性
規模
96人
研究の種類
ランダム化比較試験(3種類のシャツに分けた実験)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

恋人が着たTシャツをかいだ女性は、面接テストのあとに感じるストレスが低めだった。知らない男性のシャツでは、ストレスホルモンが多く出た。

ひとことで言うと恋人のにおいで気持ちが少し落ち着き、知らない人のにおいではストレスホルモンが多く出た

もくじ
  1. 恋人は24時間、同じTシャツを着て過ごした
  2. 笑わない審査員の前で、面接と暗算
  3. 恋人のにおいで「気持ち」は軽くなった
  4. ホルモンを上げたのは「知らない男性」のにおい
  5. 「恋人のだ」と気づいたことも関係していた?
  6. どんでん返し:分かっていないことも多い
  7. 相手がその場にいなくても
  8. まとめ

離れて暮らす恋人の服を、そっとかいでみる。それだけで少し落ち着く、と話す人がいます。気のせいなのでしょうか。それとも、体の中でも何かが起きているのでしょうか。

カナダのブリティッシュコロンビア大学のチームが、これを実験で確かめました。女性96人に、恋人が丸1日着たTシャツなどをかいでもらい、緊張する面接テストを受けてもらったのです。恋人のシャツをかいだ人は、テストを待つ間と、テストのあと落ち着いていく間に、感じるストレスが低めでした。

ところが、体の反応は別のところに出ました。ストレスで多く出るホルモン(コルチゾール)が多かったのは、知らない男性のシャツをかいだ人でした。恋人のにおいがホルモンを下げたのではありません。知らない人のにおいのほうが、ホルモンを上げていたのです。

01恋人は24時間、同じTシャツを着て過ごした

参加したのは、男女のカップル96組です。においを「出す側」は男性、においを「かぐ側」は女性でした。

男性は、白い無地のTシャツを24時間着て過ごしました。その間は、制汗剤や香りのある体の手入れ用品を使いません。たばこや、ニンニク・タマネギのようなにおいの強い食べ物も控えるように言われました。

脱いだシャツは5時間以内に研究室へ返します。においを保つため、シャツは1枚ずつ袋に密閉して冷凍されました。

女性たちは、偶然で決まるやり方で3つのグループに分けられました。

  • 恋人が着たシャツをかぐ
  • 知らない男性が着たシャツをかぐ
  • だれも着ていないシャツをかぐ

どのシャツなのかは、かぐ本人には知らされませんでした。

02笑わない審査員の前で、面接と暗算

女性たちが受けたのは、就職の模擬面接です。審査員は、笑わないように言われていました。面接のあとには、2027から17ずつ引いていく暗算も出されます。心理学の実験で、人に強いストレスを与えるときによく使われる手順です。

ストレスの感じ方は、月経の周期によって変わることがあります。そこで、テストはどの女性も周期の同じ時期(排卵のあと)に受けました。

女性たちは、テストの前・最中・後に、シャツに鼻を近づけて1回1分ずつ、何度もにおいをかぎました。

審査員は笑わない。人に強いストレスを与えるための模擬面接(イメージ)
審査員は笑わない。人に強いストレスを与えるための模擬面接(イメージ)

03恋人のにおいで「気持ち」は軽くなった

感じるストレスの点数を比べると、恋人のシャツをかいだ人は低めでした。

差が出たのは、テストを待っている間と、テストのあと落ち着いていく間です。論文の要旨には、この2つの時期でストレスが下がったと書かれています。

04ホルモンを上げたのは「知らない男性」のにおい

コルチゾールは、ストレスを受けると体から多く出るホルモンです。チームは、だ液を7回とって量を調べました。

結果は、気持ちとは違う形になりました。知らない男性のシャツをかいだ人は、テストの直前、量がいちばん増える時期、そのあと落ち着いていく時期のどれでも、コルチゾールが多かったのです。一方、恋人のシャツとだれも着ていないシャツでは、全体としては差がありませんでした。

つまり、「恋人のにおいでホルモンが下がった」わけではありません。「知らない男性のにおいで上がった」のです。

著者たちは、こう考えています。人は知らない人、とくに知らない男性を警戒する。だから知らない人のにおいで、体が身がまえたのではないか。ただし、これは研究者の推測で、この実験で確かめたことではありません。

05「恋人のだ」と気づいたことも関係していた?

女性たちは「かいだのは恋人のシャツだと思うか」とも聞かれました。

大学の発表によると、恋人のシャツをかいで「恋人のだ」と正しく当てた人では、コルチゾールが低めでした。ただしこれは、約30人の恋人のシャツのグループを、さらに分けて比べた結果です。実験全体の主な結果ではありません。

06どんでん返し:分かっていないことも多い

この実験には、はっきりした限界があります。

  • かいだのは女性だけで、かがれたのは男性のにおいだけ。男性が女性のにおいをかいだらどうなるかは調べていない
  • 参加者はカナダの1つの大学で集めた男女のカップルだけ。同性のカップルは調べていない
  • 1つのグループは約30人。感じるストレスに差が出たのは、テストの前と後の時期だった

同じ方法をそのままくり返した研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。近い実験はありますが、結果は分かれています。

2026年、ドイツのフライブルク大学などのチームが、男女のカップルの男性と女性、合わせて179人を調べました。鼻に付けた細い管から、恋人のにおいか、人のにおいではない比べるためのにおいを、本人がはっきりとは気づかない形で流します。そのうえで半数には同じ模擬面接と暗算のテストを、残りの半数には緊張しない似た課題を受けてもらいました。するとテストを受けた人では、恋人のにおいのほうが、感じるストレスと心拍数がむしろ高くなりました。コルチゾールには差がありませんでした。チームは、ホーファーさんたちの実験で気持ちが落ち着いたのは、「恋人のにおいだ」と意識してかぎ、恋人を思い浮かべたからかもしれない、と考えています。

スウェーデンのストックホルム大学などのチームは、2019年に34人で実験しました。弱い電気ショックを受けながら、恋人のにおい、自分のにおい、だれも着ていないシャツ、バラの香りをかいでもらいます。恋人のにおいのときは、自分のにおいのときより、感じる不快さが小さくなりました。一方、皮膚の汗の反応が小さくなったのは、とくに、人との関係に安心感をもちやすい傾向が強い人でした。

ホーファーさんたちは、2020年に眠りも調べています。155人が、恋人のにおいで2晩、比べるためのにおいで2晩眠りました。手首につけた機械で測ると、恋人のにおいの夜は、ベッドにいる時間のうち実際に眠っている割合が、平均で2%あまり上がりました。

07相手がその場にいなくても

人と触れ合うことがストレスをやわらげる、という研究は多くあります。ハグが多い人ほど風邪の症状が軽かった研究もその1つです。今回の実験は、相手がその場にいなくても、においだけで気持ちに変化が出る場合があることを示しました。人の鼻が思ったより働いていることは、目隠しでにおいをたどれた実験でも分かっています。

研究チームのチェンさんは大学の発表の中で、旅行などで大切な人と離れるときに、その人が着た服を1枚持っていく工夫を挙げています。

08まとめ

恋人のシャツのにおいは、緊張する場面の前と後で、感じるストレスを少し軽くしました。けれども体のストレスホルモンは、恋人のにおいで下がったのではなく、知らない男性のにおいで上がっていました。

恋人のシャツをかいでから模擬面接を受けるやり方で確かめたのは、調べた範囲ではカナダの女性96人の1つの実験だけです。においを気づかない形で流したドイツの実験では、逆に感じるストレスが上がりました。シャツを男性がかいだら、長く連れそった夫婦なら、同性のカップルならどうなるのか。次に確かめられるのは、そのあたりです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerResearchers at the University of British Columbia in Canada asked men to wear a plain white T-shirt for 24… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Researchers at the University of British Columbia in Canada asked men to wear a plain white T-shirt for 24 hours without deodorant. The shirts were then frozen to keep the smell. Later, 96 women who had a boyfriend were randomly given one shirt to smell. It was worn by their own partner, worn by a man they did not know, or never worn at all.

Each woman then went through a mock job interview and a mental math task in front of judges who did not smile. Women who smelled their partner's shirt reported feeling less stressed while waiting for the test and while calming down afterward. But the women who smelled a stranger's shirt had more cortisol, a stress hormone, in their saliva.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究者たちは、男性に制汗剤を使わずに白い無地のTシャツを24時間着てもらった。シャツはそのあと、においを保つために凍らされた。後日、恋人のいる女性96人に、かぐシャツが無作為に1枚渡された。それは、自分の恋人が着たもの、知らない男性が着たもの、だれも着ていないもののどれかだった。

それぞれの女性は、笑わない審査員の前で、模擬の就職面接と暗算の課題を受けた。恋人のシャツをかいだ女性は、テストを待つ間と、そのあと落ち着いていく間に感じるストレスが低いと答えた。しかし、知らない人のシャツをかいだ女性は、だ液の中にストレスホルモンのコルチゾールが多かった。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Why were the shirts frozen?

Q3. What can we infer from the last sentence?

重要単語

  • scentB2
    名詞(人や物の)におい、香りShe could recognize her brother's scent on the jacket. smell より「その人・物らしいにおい」の感じが強い。発音は cent(セント)と同じ
  • cortisolC1
    名詞コルチゾール(ストレスで多く出るホルモン)Cortisol levels rise when we feel under pressure. stress hormone(ストレスホルモン)とセットで覚える。cortex(皮質)と同じ語源で、副腎の外側(皮質)から出る
  • strangerA2
    名詞知らない人The dog barked at the stranger at the door. strange(見慣れない)+-er。I'm a stranger here. は「この辺りは不案内です」
  • mockB2
    形容詞模擬の、練習用のWe had a mock interview before the real one. mock exam(模擬試験)は入試でもよく出る。動詞では「ばかにする」の意味もある
  • salivaC1
    名詞だ液、つばThe nurse took a saliva sample with a cotton swab. salivate は「よだれが出る」。ホルモン検査では saliva sample(だ液の検体)がよく使われる
  • randomlyB1
    副詞無作為に、偶然で決めてThe players were randomly put into two teams. be randomly assigned to ~ は「無作為に~に割り当てられる」。実験の説明で頻出
  • recoveryB1
    名詞回復His recovery after the race took only a few minutes. recover(回復する)の名詞。make a full recovery で「完全に回復する」
恋人が24時間着たTシャツをかいでから、実験用の面接と暗算のテストに挑んだ女性は、テストのあとに感じるストレスがほかの人より低めだった(女性96人の実験)。一方、知らない男性のシャツをかいだ人は、ストレスホルモンが多く出ていた。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Hofer, Collins, Whillans & Chen (2018) Olfactory cues from romantic partners and strangers influence women's responses to stress, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Granqvist et al. (2019) The scent of security: Odor of romantic partner alters subjective discomfort and autonomic stress responses in an adult attachment-dependent manner, Physiology & Behaviordoi.org
  3. Hofer & Chen (2020) The Scent of a Good Night's Sleep: Olfactory Cues of a Romantic Partner Improve Sleep Efficiency, Psychological Sciencedoi.org
  4. Spengler, Doerflinger, Noel, Ditzen, Freiherr & Heinrichs (2026) Smelling the romantic partner's natural body odor increases psychological and autonomic but not cortisol stress responses, Scientific Reportsdoi.org
  5. Hofer, Chen & Schaller (2020) What Your Nose Knows: Affective, Cognitive, and Behavioral Responses to the Scent of Another Person, Current Directions in Psychological Sciencedoi.org