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💘 恋愛と人間関係の科学

6種類の「愛」を55人の脳で比べたら、飼い主のペット愛は「人への愛」寄りだった

6種類の「愛」を55人の脳で比べたら、飼い主のペット愛は「人への愛」寄りだった

読む前に予想してみよう!

恋人への愛も自然への愛も、脳では同じ場所が同じように反応する

研究カード(どんな研究?)
対象
フィンランドの28〜53歳の親(全員に恋人・配偶者がいる)
規模
55人(うちペットの飼い主27人)
研究の種類
実験(fMRIで脳を測りながら、6種類の愛の物語を聞く)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

フィンランドの55人で6種類の愛を比べた脳の実験。親しい人への愛ほど反応が広く、ペットへの愛は、飼い主のほうが飼っていない人より人への愛に近い反応だった。

ひとことで言うと同じ「愛」でも、相手がだれかで脳の反応は変わっていた!

もくじ
  1. 「洗濯機の前で、ふと恋人を愛しく思う」物語を聞いた
  2. 親しい相手ほど、脳の奥まで反応が広がった
  3. 人への愛は「相手の心を考える場所」も使っていた
  4. ペットへの愛は、飼い主かどうかで分かれた
  5. どんでん返し:20年前の研究とは逆に見える結果も
  6. この実験で、まだ言えないこと
  7. まとめ

恋人にも、わが子にも、親友にも、私たちは「愛してる」と言います。犬や猫にも、海の景色にも、同じ「愛」という言葉を使います。では脳の中でも、同じことが起きているのでしょうか。

フィンランドのアアルト大学のチームが、55人の脳を測りながら、6種類の愛を比べました。親しい人への愛ほど、脳の広い範囲が反応しました。そしてペットへの愛は、飼い主かどうかで反応が違いました。

愛の脳研究は、これまでほとんどが「恋人」と「わが子」の2種類だけで、多くは顔写真を見せる方法でした。今回は物語で6種類を比べ、20年前の有名な研究とは逆に見える結果も出ました。

01「洗濯機の前で、ふと恋人を愛しく思う」物語を聞いた

参加したのは、フィンランドの28〜53歳の55人(女性29人、男性26人)。全員に子どもと、つきあっている相手がいました。

使ったのは、俳優が読む3文・13〜15秒の短い物語です。

  • 恋人:洗濯機に洗濯物を入れる恋人を見て、ふと「すてきな人だ」と思う
  • わが子:晴れた草原を、子どもがうれしそうに走ってくる
  • 友達:引っ越しの手伝いを頼むと、すぐ来てくれる
  • 知らない人:重い買い物袋のおばあさんを手伝い、お礼を言われる
  • ペット:公園で棒を投げると、犬がしっぽを振って取ってくる
  • 自然:海辺の岩、曲がった松、白い雲

最後は「あなたは〜を愛しく感じます」で終わり、10秒間その気持ちにひたります。比べるために、何も起きない物語も聞きました。

02親しい相手ほど、脳の奥まで反応が広がった

恋人・わが子・友達への愛では、脳の奥の広い範囲が反応しました。ほうびややる気に関わる場所(線条体・視床)から、脳と脊髄をつなぐ脳幹までです。

知らない人への愛でも、同じ場所の一部は反応しました。でも範囲は小さく、脳幹はほとんど反応しませんでした。物語のあとの10秒間に線条体と視床が反応したのは、わが子への愛だけでした。

実験後のアンケートでも、気持ちの強さや心地よさなど7項目すべてで、恋人とわが子への愛が上位2つでした。

03人への愛は「相手の心を考える場所」も使っていた

人への愛4種類では、相手の気持ちや考えを推しはかるときに働くとされる場所も反応しました。耳の後ろ上あたりの側頭頭頂接合部や、脳の真ん中の線にそった場所です。ペットや自然への愛より、はっきり強い反応でした(知らない人への愛では、その差は小さめでした)。

自然への愛では、側頭頭頂接合部は反応しませんでした。代わりに反応したのは、景色を見るときに働くと報告されている海馬傍回などです。

同じチームの2023年のアンケートでも、27種類の愛は「人への愛」と「考えや動物への愛」の2つに分かれていました。

04ペットへの愛は、飼い主かどうかで分かれた

ペットへの愛は、全体で見ると、人への愛より反応が小さめでした。「相手の心を考える場所」の反応も、はっきりとは出ませんでした。

そこで、飼い主27人と、飼っていない28人を比べました。飼い主のほうが、脳の真ん中の後ろ側にある楔前部(けつぜんぶ)や、側頭頭頂接合部のあたりなどが強く反応しました。人への愛で働いた場所と重なります。著者たちは、飼い主のペットへの愛は、飼っていない人より、脳では人への愛に近いと考えています。

ただし、飼ったから反応が変わったのか、動物好きな人が飼うのかは分かりません。

実験で聞いた6種類の愛の場面のイメージ(論文の図ではありません)
実験で聞いた6種類の愛の場面のイメージ(論文の図ではありません)

05どんでん返し:20年前の研究とは逆に見える結果も

2004年、バーテルズ(Bartels)さんとゼキ(Zeki)さんは、母親にわが子の写真を見せて脳を測りました。そして以前に調べた恋人への愛と比べました。どちらの愛でも、ほうびに関わる場所の一部が共通して働いていました。ここは今回と同じです。

ところが2004年の研究では、相手の心を推しはかる場所や、人を評価する場所の活動が、逆に下がっていました。2人は、愛は相手を厳しく見る働きをゆるめる、と考えました。今回は、人への愛でこうした場所がはっきり反応しています。

ただし今回も、物語を聞いていない休みの時間と比べると、側頭部や頭頂部の広い範囲で活動が下がっていました。何と比べるかで、同じデータでも見え方が変わるのです。

写真か物語か、何と比べたか(知り合いの子どもの写真か、何も起きない物語か)といった、方法の違いが関係しているのかもしれません。ただ、今回の論文はこの食い違いを直接は論じておらず、答えは出ていません。

一方、わが子・恋人・友達などを使った79本の脳研究をまとめた2024年の分析では、ほうびの場所と、人とのつながりや考えることの場所が、そろって反応していました。

06この実験で、まだ言えないこと

参加者はフィンランドの、子どもと恋人のいる28〜53歳だけです。論文も、文化や年齢の違う人での確認が必要だと書いています。

本物の恋人やわが子を見たわけではなく、物語で想像したときの脳です。知らない人への愛の物語は、どれも人助けをして感謝される場面でした。著者たちも、これは愛ではなく思いやりを測っているという見方もありうる、と書いています。

脳のある場所が反応しても、その気持ちが起きたとは言い切れません。ほかの多くの心の働きでも反応する場所なら、なおさらです。脳の研究者ポルドラック(Poldrack)さんが2006年に指摘した問題です。

だ液で、人とのつながりに関わるホルモンのオキシトシンも測ろうとしましたが、データの質が低く使えませんでした(オキシトシンのスプレー研究が再現されなかった話も参照)。

07まとめ

同じ「愛」という言葉でも、相手がだれかで、脳の使われ方は違っていました。親しい人ほど反応は広く、ペットへの愛は飼い主かどうかで分かれました。

測り方で見え方が変わる面もあります。失恋のつらさも、脳で測ると体の痛みとは細かいところで別物でした。次は、ほかの国や年代の人でも同じ違いが出るかが調べられる番です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMost brain studies of love have looked at only two kinds, love for a partner and love for a child. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Most brain studies of love have looked at only two kinds, love for a partner and love for a child. A team at Aalto University in Finland tried six. Fifty-five parents, all in a relationship, heard short stories while a scanner measured their brains.

In one story, a child runs happily across a sunny field. In another, a dog brings back a stick. Each story ended by telling listeners they felt love. Love for a partner, a child, or a friend caused the widest activity, including deep areas linked to reward.

Love for people also used areas that help us think about what others feel. Love for nature did not use one of the main ones. Pet stories gave a weaker response overall, but owners reacted more than non-owners.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

愛についての脳研究の多くは、恋人への愛とわが子への愛の2種類しか調べてこなかった。フィンランドのアアルト大学のチームは6種類を試した。全員が恋人や配偶者のいる55人の親が、装置で脳を測られながら短い物語を聞いた。

ある物語では、子どもが晴れた野原をうれしそうに走ってくる。別の物語では、犬が棒を取ってくる。どの物語も、聞き手が愛を感じている、と告げて終わった。恋人・子ども・友達への愛は、ほうびに関わる脳の奥の場所も含めて、最も広い範囲の活動を起こした。

人への愛では、他人の気持ちを考えるのを助ける場所も使われた。自然への愛では、そうした場所の主なものの1つが働かなかった。ペットの物語への反応は全体として弱かったが、飼い主は飼っていない人より強く反応した。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Which kind of love did NOT use one of the main areas that help us think about what others feel?

Q3. What can we infer about the pet stories?

重要単語

  • affectionB2
    名詞愛情、好意The old man looked at his cat with great affection. affectionate(愛情深い)も覚える。have (an) affection for ~ で「~に愛着がある」
  • strangerA2
    名詞知らない人、見知らぬ人She helped a stranger carry heavy bags to the station. strange(よその、見慣れない)と同じ語源。「変な人」ではない点に注意。I'm a stranger here. は「この辺りは初めてです」
  • rewardB1
    名詞・動詞ほうび、報酬/報いるSeeing her baby smile was the best reward. 脳科学では reward system(報酬系)。as a reward for ~ で「~のほうびとして」
  • bondB2
    名詞結びつき、きずなThe bond between the two sisters grew stronger over the years. 動詞 bond with ~ で「~と仲良くなる、きずなを作る」
  • imagineA2
    動詞想像するClose your eyes and imagine you are walking by the sea. imagine doing の形をとる(to do ではない)。名詞は imagination
  • sceneryB1
    名詞景色、風景We stopped the car to enjoy the mountain scenery. 数えられない名詞なので a scenery や sceneries とは言わない。1つの眺めは a scene / a view
  • pet ownerA2
    名詞ペットの飼い主Many pet owners talk to their dogs every day. own(所有する)+-er。dog owner, car owner のように使える
恋人・わが子・友達・知らない人・ペット・自然。6種類の「愛」を思い浮かべた55人の脳を比べると、親しい人への愛ほど反応が広がった。ペットへの愛は、飼い主のほうが飼っていない人より人への愛に近い反応だった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Rinne, Lahnakoski, Saarimäki, Tavast, Sams & Henriksson (2024) Six types of loves differentially recruit reward and social cognition brain areas, Cerebral Cortexdoi.org
  2. Rinne, Tavast, Glerean & Sams (2023) Body maps of loves, Philosophical Psychologydoi.org
  3. Bartels & Zeki (2004) The neural correlates of maternal and romantic love, NeuroImagedoi.org
  4. Bortolini et al. (2024) The extended neural architecture of human attachment: An fMRI coordinate-based meta-analysis of affiliative studies, Neuroscience & Biobehavioral Reviewsdoi.org
  5. Poldrack (2006) Can cognitive processes be inferred from neuroimaging data?, Trends in Cognitive Sciencesdoi.org