心理学ビミョー

「会話を見れば離婚が9割当たる」は本当? 有名なゴットマン研究と"予言"の落とし穴

「会話を見れば離婚が9割当たる」は本当? 有名なゴットマン研究と"予言"の落とし穴

読む前に予想してみよう!

夫婦の会話を少し見るだけで、離婚するかを9割以上の精度で当てられることが確立している

研究カード(どんな研究?)
対象
米国の夫婦・カップル
規模
約130組〜43研究の統合
研究の種類
長期追跡+機械学習による統合分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

夫婦の会話から離婚を「93%の精度で予測」した有名研究。でも、別のデータで確かめると精度は大きく下がった。関係の未来を当てるのは、思ったより難しい。

ひとことで言うと会話で関係のヒントはわかる。でも「未来を当てる」のはむずかしい!

もくじ
  1. 「ラブ・ラボ」での観察研究
  2. 「同じデータで当てた」問題
  3. 43の研究を束ねたら見えたこと
  4. まとめ

「夫婦の会話をちょっと見るだけで、将来離婚するかが9割以上わかる」

海外の心理学記事や自己啓発本で、こんな話を見たことがあるかもしれません。主役は、アメリカの心理学者ジョン・ゴットマン。カップル研究の世界ではとても有名な人物です。

まるで占い師のような話ですが、本当なのでしょうか? 実はこの「的中率」には、統計の世界から鋭いツッコミが入っていました。

01「ラブ・ラボ」での観察研究

ゴットマンらは、夫婦に研究室で話し合いをしてもらい、その表情や言葉、体の反応をこまかく記録する研究を続けてきました。

ゴットマンは、関係を壊しやすい会話のパターンとして「非難」「軽蔑」「自己弁護」「無視(心を閉ざす)」の4つを挙げています。特に、相手を見下すような軽蔑の表情は危険信号だとされました。

02「同じデータで当てた」問題

ところが2001年、別の研究者たちがこう指摘しました。「その予測式、同じデータで作って、同じデータで当てていませんか?」

たとえるなら、テストの答えを見ながら問題を作り、その問題に自分で答えて「正解率100%!」と言っているようなもの。予測の本当の力を知るには、別のデータ(新しいカップル)で試す必要があります。

研究者たちが手元のデータで確かめると、別データで試したとたん、予測の精度は急激に下がりました。さらに、離婚する夫婦が全体の一部しかいない場合、「離婚する」という予言は外れやすくなる、という統計上の落とし穴も指摘されました。

「作ったデータで当てる」と、予測はとても良く見えてしまう
「作ったデータで当てる」と、予測はとても良く見えてしまう

これは、ゴットマンの観察が無意味だったということではありません。「どんな会話が関係を傷つけやすいか」という発見と、「この夫婦は離婚する」と個別に言い当てられるかは、まったく別の問題なのです。

0343の研究を束ねたら見えたこと

2020年には、29の研究室が持ち寄った43の長期カップル研究のデータを、機械学習でまとめて分析する大プロジェクトが行われました。

その結果、ある時点での関係の満足度を説明しやすかったのは、「相手は本気で関係を大事にしていると感じるか」「相手に感謝しているか」「相手は満足していると思うか」「衝突の多さ」など、本人が感じている関係そのものの手応えでした。

一方、驚きだったのは、関係の満足度がこれから上がるか下がるかは、ほとんど予測できなかったこと。カップルの未来は、データを山ほど集めても「占い」のようには当たらないのです。

04まとめ

ゴットマンの研究は、「どんな会話が関係を傷つけやすいか」を教えてくれる、価値ある研究です。でも「会話を見れば離婚が9割当たる」という言い方は、統計的にはかなり盛られた表現でした。

関係の未来は、占いのようには当たらない。だからこそ、今日の一言や「ありがとう」が、未来を変える余地を持っているのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJohn Gottman is well known for observing couples in his "love lab." In one study, about 130 newlywed… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

John Gottman is well known for observing couples in his "love lab." In one study, about 130 newlywed couples discussed a topic they disagreed about, and the researchers followed them for years. Gottman later reported that a model based on couples' emotional exchanges predicted divorce with 93 percent accuracy over 14 years. He also named four harmful patterns, including contempt, or looking down on a partner.

However, in 2001 other researchers pointed out that the prediction model had been built and tested on the same data. When they tested a similar method on new data, the accuracy dropped sharply. This does not mean Gottman's observations were useless. Knowing which kinds of talk can hurt a relationship is different from predicting the future of a particular couple.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ジョン・ゴットマンは、「ラブ・ラボ」でカップルを観察したことでよく知られています。ある研究では、約130組の新婚夫婦が意見の合わないテーマについて話し合い、研究者たちは何年も彼らを追跡しました。ゴットマンは後に、夫婦の感情のやりとりに基づくモデルが、14年間にわたって93%の精度で離婚を予測したと報告しました。彼はまた、軽蔑、つまり相手を見下すことを含む4つの有害なパターンも挙げました。

しかし2001年、別の研究者たちが、その予測モデルは同じデータで作られ、同じデータで試されていたと指摘しました。彼らが似た方法を新しいデータで試すと、精度は急激に下がりました。これは、ゴットマンの観察が無意味だったということではありません。どんな会話が関係を傷つけうるかを知ることと、特定のカップルの未来を予測することは別の問題なのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the newlywed couples do in the study?

Q2. What problem did researchers point out in 2001?

Q3. What is the writer's opinion about Gottman's work?

重要単語

  • predictB1
    動詞予測するIt is hard to predict the weather a month ahead. pre(前に)+dict(言う)。名詞 prediction、形容詞 predictable。
  • accuracyB2
    名詞正確さ、精度The test has high accuracy. 形容詞は accurate。with ~ accuracy「~の精度で」の形で出る。
  • contemptC1
    名詞軽蔑Rolling your eyes can show contempt. feel contempt for ~「~を軽蔑する」。形容詞 contemptuous は難関大レベル。
  • cross-validationC1
    名詞交差検証(別データでの確かめ)Cross-validation shows whether a model really works. validate(正しいと確かめる)が中心。データサイエンスの基本用語。
  • appreciationB2
    名詞感謝、ありがたみA small thank-you shows appreciation. appreciate は「感謝する」と「正しく理解する・鑑賞する」の両方の意味がある。
  • commitmentB2
    名詞関わり続ける決意Friendship needs time and commitment. commit(身をささげる)の名詞形。be committed to ~「~に打ち込んでいる」も頻出。
  • inflateC1
    動詞膨らませる、水増しするUsing the same data can inflate the results. 風船を膨らませる意味から「数字を実際より大きく見せる」へ。名詞 inflation は「物価上昇」。
夫婦の会話を見れば離婚を93%の精度で予測できる——そんな有名研究に「別のデータで試すと精度はガクッと下がる」とツッコミが。43の研究を束ねた分析でも、関係の"変化"はほぼ予測できなかったらしい。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Gottman et al. (1998) Predicting marital happiness and stability from newlywed interactions, Journal of Marriage and the Familydoi.org
  2. Gottman & Levenson (2000) The timing of divorce: Predicting when a couple will divorce over a 14-year period, Journal of Marriage and Familydoi.org
  3. Heyman & Slep (2001) The hazards of predicting divorce without crossvalidation, Journal of Marriage and Familydoi.org
  4. Joel et al. (2020) Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies, PNASdoi.org