先延ばしは「怠け」じゃなかった? 200以上の研究をまとめて見えた"本当の原因"

読む前に予想してみよう!
完璧主義の人ほど先延ばしをしやすいことが、研究ではっきり示されている
大規模なメタ分析では、完璧主義と先延ばしの関係は弱く、はっきりしなかった。
- 対象
- 大学生・一般成人
- 規模
- 691件の相関データ(メタ分析)ほか
- 研究の種類
- メタ分析・縦断研究
- 確かさ
- ★★★★☆
先延ばしは単なる怠けではなく、「イヤな気分から逃げる」心の働きが大きい。大規模なメタ分析では、作業のイヤさ・衝動性・締め切りの遠さが強く関係していた。
ひとことで言うと先延ばしは「なまけ」より「イヤな気持ちから逃げたい」が原因かも!
宿題の締め切りは明日。なのに、気づけば部屋の掃除を始めている。
「やらなきゃ」とわかっているのに、なぜか手が動かない。そして「自分はなんてダメなんだ」と落ち込む……。
でも、ちょっと待ってください。心理学の研究によると、先延ばしは単なる怠けや性格のだらしなさとは言い切れないようです。
01200以上の研究をまとめた「先延ばしの地図」
2007年、カナダ・カルガリー大学の心理学者ピアーズ・スティールは、先延ばしについての研究データを大量に集めて分析しました。691件の相関データをまとめた、メタ分析(たくさんの研究を「まとめ買い」して全体の傾向を見る方法)です。
ここで注意したいのは、これらは「一緒に見られやすい」という相関だということ。たとえば「衝動性が先延ばしを引き起こす」と言い切るには、実験や長期追跡のデータも必要です。
意外だったのは完璧主義です。「完璧にやりたいから手をつけられない」とよく言われますが、このメタ分析(2007年)では完璧主義と先延ばしの関係は弱く、はっきりしなかったのです。
02先延ばしの「やる気の方程式」
スティールは、やる気をざっくりこんな式で表しました。
やる気 =(うまくいく見込み × ごほうびの大きさ)÷(気の散りやすさ × ごほうびまでの遠さ)
分母が大きいほど、やる気はしぼみます。テスト勉強のごほうび(良い成績)は何週間も先。一方、スマホのごほうび(おもしろい動画)は0秒後。脳が目の前のごほうびを選んでしまうのは、ある意味当然なのです。

03どんでん返し:先延ばしは「気分の応急処置」
さらに近年の研究者たちは、先延ばしを「時間管理の問題」ではなく「気分を管理する問題」として捉え直しています(Sirois & Pychyl, 2013)。
やるべき作業を思い浮かべると、不安・退屈・面倒くささなど、イヤな気分がわいてきます。そこで別のことをすると、その気分が一時的にスッと楽になる。この「応急処置」がクセになってしまうのです。
でも、その代償は後からやってきます。1997年の研究では、先延ばし傾向の強い大学生は学期の初めこそストレスが少なかったものの、学期末にはストレスや体調不良が増え、どの課題の成績も低めでした。
04自分を責めると、また先延ばしする
ここで大事な発見があります。2010年のカナダの研究(大学1年生約120人)では、最初の試験勉強で先延ばしをした学生のうち、自分を許した学生ほど、次の試験では先延ばしが少なかったのです。ただし、これは1つの大学での観察研究なので、「自分を許せば必ず先延ばしが減る」とまでは言えません。
自分を責める→イヤな気分が増える→さらに逃げたくなる。この悪循環を断ち切るには、「やっちゃったね、次いこう」と自分に優しくする方が効果的なのかもしれません。
そもそも作業時間を短く見積もってしまうクセについては、計画錯誤の記事もどうぞ。
05まとめ
先延ばしは「性格がだらしない」だけでは説明できず、イヤな気分から逃げたいという、人間らしい心の働きが大きく関わっています。
だからこそ、根性で戦うより、仕組みでラクにするのが近道です。なお、先延ばしで日常生活に大きな支障が出ていたり、気分の落ち込みが続いたりする場合は、背景に別の要因があることもあるので、専門家に相談してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerProcrastination is often seen as simple laziness, but research suggests otherwise.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Your test is tomorrow, but you start cleaning your room instead of studying. Why? Many people think procrastination means being lazy.
But research says it is often about escaping bad feelings. Studying feels boring or stressful, so we do something else to feel better for a short time. Blaming yourself can make it worse. Try a very small first step, like just opening your textbook.
65 words ・ CEFR A2
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テストは明日なのに、勉強する代わりに部屋の掃除を始めてしまいます。なぜでしょうか?多くの人は、先延ばしとは怠けることだと思っています。
しかし研究によると、それはしばしばイヤな気持ちから逃げることに関係しています。勉強は退屈だったりストレスを感じたりするので、少しの間だけ気分を良くするために別のことをするのです。自分を責めると、もっと悪くなることがあります。教科書を開くだけ、のようなとても小さな最初の一歩を試してみましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
先延ばしの理由(イヤな気持ちから逃げる)と対策を説明しているので D。
Q2. According to research, procrastination is often about ...
it is often about escaping bad feelings とあるので B。
Q3. In this passage, "blaming yourself" means ...
blame は「責める・~のせいにする」。自分を責める=自分が悪いと言うこと、なので A。
Procrastination is often seen as simple laziness, but research suggests otherwise. In 2007, the psychologist Piers Steel combined data from over 200 studies. He found that procrastination was most strongly linked to unpleasant tasks, impulsiveness, low confidence, distant deadlines and low conscientiousness. Perfectionism, by contrast, was only weakly related. Other researchers argue that procrastination is really about managing our mood.
When a task makes us anxious or bored, doing something else gives us quick relief, but the costs come later. In a 1997 study, students who procrastinated felt less stress early in the term but more stress and illness at the end. A 2010 study also found that students who forgave themselves procrastinated less before the next exam.
118 words ・ CEFR B1
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先延ばしはしばしば単なる怠けとみなされますが、研究はそうではないことを示唆しています。2007年、心理学者ピアーズ・スティールは200以上の研究のデータをまとめました。彼は、先延ばしが最も強く結びついているのは、イヤな作業、衝動性、自信の低さ、締め切りの遠さ、誠実性の低さだと発見しました。一方、完璧主義との関係は弱いものでした。別の研究者たちは、先延ばしは本当は気分の管理の問題だと主張しています。
作業によって不安や退屈を感じると、別のことをすればすぐに楽になりますが、その代償は後でやってきます。1997年の研究では、先延ばしをした学生は学期の初めにはストレスが少なかったものの、学期末にはストレスや体調不良が増えました。2010年の研究ではまた、自分を許した学生ほど次の試験の前に先延ばしが少なかったこともわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. Which factor was only weakly related to procrastination?
perfectionism, by contrast, was only weakly related とあるので C。
Q2. What happened to procrastinating students in the 1997 study?
more stress and illness at the end とあるので A。
Q3. What does the 2010 study suggest?
自分を許した学生ほど次の試験で先延ばしが少なかったので B。
Procrastination is commonly blamed on laziness, but the research points elsewhere. In 2007, Piers Steel published a meta-analysis drawing on 691 correlations. The strongest correlates were task aversiveness, impulsiveness and distractibility, low self-efficacy, the distance of deadlines, and low conscientiousness. Perfectionism, often named as a cause, showed only a weak and unclear relationship.
Steel interpreted these findings through a motivational equation, in which expectancy multiplied by value is divided by impulsiveness multiplied by delay. The reward of studying lies weeks away, while the reward of a smartphone is immediate, so the equation predicts frequent delay. Most of these data are cross-sectional self-reports, however, so they cannot establish which way causation runs. More recently, researchers have recast procrastination as short-term mood repair.
Avoiding an unpleasant task brings instant relief, and the cost arrives later. Two studies, each based on a single group of students, fit this view. In 1997, procrastinating students reported less stress early in the term but more stress and illness by its end, and also received lower grades on all assignments. And in 2010, students who forgave themselves for procrastinating before one exam procrastinated less before the next.
190 words ・ CEFR B2
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先延ばしはふつう怠けのせいにされますが、研究は別のところを指しています。2007年、ピアーズ・スティールは691の相関をもとにしたメタ分析を発表しました。最も強く関連していたのは、作業のイヤさ、衝動性と気の散りやすさ、自己効力感の低さ、締め切りまでの遠さ、そして誠実性の低さでした。原因としてよく挙げられる完璧主義は、弱くはっきりしない関係しか示しませんでした。
スティールはこれらの結果を、期待×価値を、衝動性×遅延で割るという「やる気の方程式」で解釈しました。勉強の報酬は何週間も先にあり、スマホの報酬はすぐに手に入るので、この方程式は先延ばしが頻繁に起こると予測します。ただし、これらのデータのほとんどは一時点での自己申告なので、因果がどちら向きなのかは確定できません。最近では、研究者たちは先延ばしを、短期的な気分の修復としてとらえ直しています。
イヤな作業を避けるとすぐにほっとできますが、その代償は後でやってきます。それぞれ1つの学生集団にもとづく2つの研究が、この見方に合っています。1997年の研究では、先延ばしをする学生は学期の初めにはストレスが少ないと答えましたが、学期末にはストレスや病気が多く、どの課題でも成績が低くなっていました。そして2010年の研究では、ある試験の前に先延ばしをした自分を許した学生は、次の試験の前には先延ばしが減りました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
怠けではなく、作業のイヤさや気分の修復などが関わると述べ、因果の向きは確定できないという限界にもふれているので C。
Q2. In Steel's equation, what makes motivation smaller?
expectancy multiplied by value is divided by impulsiveness multiplied by delay とあり、衝動性と遅延は割る側にあるので、大きくなるとやる気は小さくなる。C。
Q3. Why can the causal direction not be established?
Most of these data are cross-sectional self-reports, however, so they cannot establish which way causation runs とあるので A。
重要単語
- procrastinateC1動詞先延ばしにするI tend to procrastinate when a task feels boring.
pro-(前へ)+crastinus(明日の)で「明日へ回す」。名詞 procrastination。 - impulsiveB2形容詞衝動的なImpulsive shoppers buy things they don't need.
名詞 impulse(衝動)。on impulse(衝動的に)、impulse buying(衝動買い)。 - perfectionismC1名詞完璧主義Perfectionism can make it hard to finish work.
perfection+-ism。「~な人」は perfectionist。 - self-compassionC1名詞自分へのやさしさ、自己への思いやりSelf-compassion helps people recover from mistakes.
compassion は com-(共に)+passion(苦しみ)で「思いやり」。self-esteem とは別概念。 - put offB1句動詞先延ばしにするDon't put off your homework until Sunday night.
put off doing の形(不定詞は不可)が入試の語法問題で頻出。postpone と同義。 - aversiveC1形容詞嫌悪を感じさせる、不快なBoring tasks feel aversive.
aversion(嫌悪)の形容詞形。be averse to ~(~を嫌う)とつづりが似ているので注意。 - nuancedC1形容詞微妙な違いをふまえたThe issue requires a more nuanced view.
nuance(ニュアンス)から。単純化しない議論を褒めるときに使う。
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先延ばしの研究をまとめた大規模な分析によると、関係が強いのは「作業のイヤさ」「衝動性」「締め切りまでの遠さ」。意外にも「完璧主義だから先延ばしする」説は、データではあまり支持されなかったらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Steel (2007) The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure, Psychological Bulletindoi.org
- Sirois & Pychyl (2013) Procrastination and the priority of short-term mood regulation: Consequences for future self, Social and Personality Psychology Compassdoi.org
- Tice & Baumeister (1997) Longitudinal study of procrastination, performance, stress, and health: The costs and benefits of dawdling, Psychological Sciencedoi.org
- Gollwitzer & Sheeran (2006) Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes, Advances in Experimental Social Psychologydoi.org
- Wohl, Pychyl & Bennett (2010) I forgive myself, now I can study: How self-forgiveness for procrastinating can reduce future procrastination, Personality and Individual Differencesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











