お正月にやってはいけないこと:掃除・洗濯・料理・肉…理由と本当のところ
1なぜ「してはいけない」が多い? お正月は年神様をもてなす日
お正月は、年神様(としがみさま)という新しい年の神様を家にお迎えする行事です。年神様は、その年の実りや幸せを運んでくると考えられてきました。
昔の人は、大みそかの夜は寝ずに元日を迎え、家にこもって神様と過ごしました。百科事典は、これを「お籠(こも)り」の形と説明しています。だから元日は、ふだんの仕事や家事を休んで静かに過ごす日。その気持ちが「元日に〇〇をすると福が逃げる」という言い伝えになりました。
おもしろいのは、多くのことが正月2日に「初め」を迎えることです。新年に初めて家を掃除する「掃き初め(はきぞめ)」は正月2日。安土桃山時代の慶長3年(1598年)、宮中の女官がつけた日記にも、正月2日に「御はきそめあり」と書かれています。新年最初のお風呂の「初湯(はつゆ)」も2日が多いとされます。元日は休み、2日から動き出す。これが昔からのリズムでした。
| してはいけないと言われること | 言われる理由 | ホントのところ |
|---|---|---|
| 掃除 | 福や年神様を掃き出す | 俗信。正月2日に「掃き初め」をする習わしがある |
| 洗濯・水仕事 | 福を水で洗い流す | 俗信。大みそかまでにすませると安心 |
| 煮炊き(料理) | 火の神を休ませる・灰汁が「悪」に通じる | お雑煮は元日の朝に作るのが昔からの形 |
| 包丁・刃物 | 縁を切る・けが・道具を休ませる | 諸説ある縁起かつぎ |
| 四つ足の肉 | 殺生の戒め・神事で獣肉を避けた | 675年の禁令は鶏も対象。今は気にしない人が多い |
| 散財 | 1年お金がたまらない | お賽銭は問題なしとされる |
| けんか | 1年に悪い運気を持ちこむ | 縁起かつぎ |
2元旦の掃除・洗濯はダメ? 「福を掃き出す・洗い流す」
いちばんよく聞くのが、元日に掃除をすると福を掃き出してしまうという話です。福を運んできた年神様を、ほうきで追い払うことになるから、と言われます。キッチンやお風呂、トイレの水仕事や洗濯も、神様を水で洗い流すことになるので縁起が悪い、という説明もあります。
この考え方は日本だけのものではありません。中国の旧正月にも、福が逃げるからと、ちりさえ家の外に出さない地域があると百科事典は書いています。年の初めに家の中のものを外へ出したくない気持ちは、海をこえて共通しているのです。
とはいえ、どれも言い伝えです。赤ちゃんの服やペットの汚れなど、元日でも洗濯が必要な場面はあります。気になるなら、大みそかまでに洗濯をすませておき、元日は必要な分だけにすれば安心です。
3料理・刃物はダメ? じゃあお雑煮はいつ作るの?
三が日に火を使った煮炊きを控える理由には、火の神の荒神(こうじん)様を正月くらいは休ませる、煮炊きで出る「灰汁(あく)」が「悪」に通じる、といった説があります。包丁を使わないのは、けがを防ぐため、「縁を切る」に通じるため、道具を休ませるため、と諸説あります。おせち料理も、三が日の間食べられるように、日持ちするものを重箱に詰めた料理です。
でも、ここで疑問がわきます。お雑煮は煮る料理です。
実はお雑煮は、年神様に供えたお餅などを下ろして煮て、神様と人がいっしょに食べるものでした。百科事典によると、元日の朝は一家の主人が「年男」として早起きし、若水(わかみず)をくんで、雑煮の炊事を受け持ちました。つまりお雑煮づくりは、禁止どころかお正月の神事そのものだったのです。元日の朝にお雑煮を作るのは、昔のやり方どおりです。
4四つ足の肉・散財・けんか・釣り:ほかの「やってはいけない」
四つ足の動物の肉を食べないのは、仏教の殺生を戒める教えや、天武天皇の肉食禁止の命令から、と説明されます。ただ、天武4年(675年)の命令で食べるのを禁じられたのは牛・馬・犬・猿・鶏でした。二本足の鶏も入っていたのです。神事では古くから獣の肉が避けられましたが、今は気にせず食べる人が多くなっています。
散財は「年の初めにお金を使いすぎると、1年お金がたまらない」という縁起かつぎ。初詣のお賽銭は問題ないとされます。けんかも、年の初めに悪い運気を持ちこみたくないという願いからです。
釣りがダメという話は、はっきりした由来がわかりません。殺生を避ける考えから言われるようですが、日本のお正月はもともと肉や魚を断つ「精進」ではありません。年越しには東日本で鮭、西日本でぶりの「年取り魚」を食べ、鯛や数の子でお祝いします。釣りを禁じる全国的な決まりはありません。
5結局どうする? 気にする人がいるときの過ごし方
お正月の「してはいけない」は、守らなくても罰のない縁起かつぎです。地域や家によって、気にすることも全然違います。
そのうえで、角を立てずに過ごすコツは次のとおりです。
・実家や親戚の家では、その家のやり方に合わせる。元日に掃除機をかけない、など。
・掃除や洗濯は大みそかまでに。どうしても必要な分は、気にせず元日にしてかまいません。
・元日だけ控えて、2日から。「掃き初め」「初湯」の2日を区切りにするのが、昔ながらのやり方です。
ゆっくり休むための言い伝え、と考えると気が楽です。お正月くらい家事を休もう、という昔の人の知恵として受け取ればよいでしょう。
❓FAQあわせてよく聞かれる質問
三が日はずっと掃除してはいけない?
三が日とする言い方もありますが、昔の習わしでは正月2日に「掃き初め」をしていました。気になる人も、元日だけ控えれば十分です。
元旦にお風呂に入ってはいけない?
決まりはありません。新年最初のお風呂「初湯」は2日が多いとされますが、元日に入って困ることはありません。
元旦に爪を切ってもいい?
「縁が切れる」として嫌う地域もありますが、俗信です。気になるなら年内にすませておきましょう。
喪中でも正月のタブーは気にする?
喪中は新年を祝う飾りやあいさつを控えるのが一般的ですが、掃除や料理などの言い伝えは喪中かどうかと関係ありません。家の考え方に合わせてください。
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