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「鬼は外」と言わない地域・家があるのはなぜ? 寺社の掛け声と渡辺さんの言い伝え

結論
鬼を追い出す必要がない、と考える寺社や家があるからです。代表的なのは、鬼を神さまや仏の使いとしてまつる寺社、「仏さまの前には鬼はいない」と考える寺、渡辺姓や九鬼家などの言い伝えの3つ。日本の鬼は悪者だけでなく、守り神や改心した存在としても信じられてきました。

1なぜ鬼を追い出さない? 日本の鬼には「2つの顔」がある

節分の鬼は、病気や災いを運んでくる悪いものの象徴です。でも日本の鬼は、それだけではありません。山の神や、寺を守る存在としてまつられてきた鬼もいれば、悪さをやめて仏の弟子になった鬼の話もたくさんあります。

そうした鬼をまつる場所で「鬼は外!」と叫んだら、自分たちの守り神を追い出すことになってしまいます。そこで掛け声を「鬼は内」「鬼も内」に変えたり、「福は内」だけにしたりするのです。

もう一つのパターンは、「ここには、そもそも鬼がいない」という考え方です。東京の浅草寺では、豆まきで「千秋万歳(せんしゅうばんざい)福は内」と唱えます。理由は、観音さまの前には鬼はいないから、と寺が説明しています。千葉の成田山新勝寺も「福は内」だけで、不動明王の前では鬼さえ改心するから、とされています。

2渡辺さんは豆まきをしない? 言い伝えのホント

「渡辺さんの家は豆まきをしなくていい」という話は、全国で聞かれます。もとになっているのは、平安時代の武士渡辺綱(わたなべのつな)です。

綱は源頼光の家来「頼光四天王」の一人。京都の一条戻橋で、刀を抜いて鬼(茨木童子)の腕を切り落とした話や、仲間と大江山の酒呑童子を退治した話で知られます。そこから「鬼は渡辺姓の人を綱の子孫だと思いこみ、怖がって近寄らない。だから豆まきはいらない」という言い伝えが生まれました。

ただし、これは伝説をもとにした言い伝えです。鬼退治の話は『御伽草子』などの物語で、史実ではありません。それに「渡辺」という名字は、綱が住んだ摂津国の渡辺(今の大阪市中央区あたり)という地名がもとの一つとされ、全国の渡辺さんがみな綱の子孫というわけでもありません。実際には、豆まきをする渡辺さんの家もたくさんあります。

同じ四天王の坂田金時(金太郎)にちなんで「坂田さんも豆まきしない」という話も聞かれますが、こちらは確かな資料が見当たりません。どちらも、その家に伝わる習わしとして守るかどうかを決めればよい話です。

3名字や殿様にちなむ掛け声:九鬼家と二本松

名字や地名に「鬼」の字がつく家や地域でも、「鬼は内」と言うことが多いとされます。代表例が、大名だった九鬼(くき)家。その領地では、殿様への敬意から「鬼は外」を避け、「鬼は内」と唱えたと伝わります。

おもしろいのは、福島県の旧二本松藩領の一部です。二本松藩の殿様は丹羽(にわ)家。「おにはそと」が「お丹羽、外」(丹羽さまは出ていけ)に聞こえてしまうため、「は」を抜いて「鬼、外」と言う所があるといいます。言葉ひとつで殿様に失礼にならないよう気をつけた、江戸時代らしい話です。

4鬼子母神をまつる家では? 柊鰯(ひいらぎいわし)はどうする?

鬼子母神(きしもじん)は、もとは人間の子をさらって食べていた鬼神でした。お釈迦さまに、いちばんかわいがっていた末の子を隠されて、わが子を失う親の悲しみを知り、改心して子どもと安産の守り神になったと伝えられます。そのため、鬼子母神をまつる寺の中には、「鬼」の字の1画目の点(角)を書かない字を使う所があります。改心して角がとれた、という意味です。

鬼子母神を境内にまつる東京の池上本門寺も、豆まきは「福は内」だけとされています。鬼子母神を信仰する家で「鬼は外」を言わないのは、この考え方に沿ったものです。

一方、玄関に飾る柊鰯(ひいらぎいわし)は、ヒイラギのとげとイワシのにおいで邪気を近づけない、という別の習わしです。鬼子母神の信仰と両方を守る家があっても、おかしなことではありません。

迷ったら、その家に伝わるやり方に合わせるのがいちばんです。結婚して家の習わしが違ったら、どちらが正しいかを決めるより、「この家ではこう言う」と受け入れれば、どちらの家にも失礼になりません。

❓FAQあわせてよく聞かれる質問

成田山ではなぜ「鬼は外」と言わない?

ご本尊の不動明王の前では、鬼さえ改心してしまうと考えられているからです。そのため豆まきの掛け声は「福は内」だけです。

「鬼は内」と言うのはどこ?

吉野の金峯山寺(「鬼も内」)、奈良の元興寺、埼玉の鬼鎮神社など、鬼にゆかりのある寺社です。九鬼家の旧領など、「鬼」の字がつく家や地域でも言われます。

渡辺さんは豆まきをしなくていいって本当?

渡辺綱が鬼を退治したという伝説から生まれた言い伝えです。決まりではなく、豆まきをする渡辺さんの家も多くあります。家の習わしに合わせれば十分です。

嫁ぎ先が「鬼は外」と言わない家だったら?

その家の習わしに合わせるのがいちばんです。理由をたずねると、まつっている神仏や家の言い伝えがわかり、話のきっかけにもなります。

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