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ヒンドゥー教徒はなぜ牛を食べない?神聖な理由と、牛乳・水牛・牛革のこと

結論
大きな理由は2つです。命を傷つけない「アヒンサー」の教えと、乳で人を養ってくれる牛を母のように敬う心です。インドのヒンドゥー教徒の72%が「牛肉を食べる人はヒンドゥー教徒とは言えない」と答えています。一方で、牛乳やヨーグルトは大切な食べ物で、菜食の人もふつうにとります。

1なぜ牛を食べないの? 3つの理由

インドの町では、大通りの真ん中で牛がのんびり寝そべり、車やバイクがよけて通ります。牛がここまで大切にされる理由は、大きく3つあります。

1. 命を傷つけない教え(アヒンサー)
ヒンドゥー教には、すべての生き物を傷つけないという考えがあります。特に牛は、その心を表すシンボルになりました。インド独立の父ガンディーは、牛を守ることこそヒンドゥー教の中心だ、とまで述べています。

2. 人を養う「母」のような存在
牛は乳をくれ、畑を耕し、ふんは燃料や肥料になります。牛は昔から、人の世話をしてくれる母のような存在と考えられてきました。神話には、願いをかなえる「豊かさの牝牛」カーマデーヌも登場します。最古の聖典『リグ・ヴェーダ』では、乳牛を「殺してはならないもの」と呼んでいます。

3. 神さまとのつながり
人気の神クリシュナは牛飼いの村で育ち、牛と一緒に描かれることがよくあります。シヴァ神の乗り物は雄牛のナンディで、シヴァの寺院ではナンディの像が本堂のほうを向いて座っています。

2牛は神様? 神の使い? よくある誤解

誤解1:ヒンドゥー教徒は牛を神様として拝んでいる
ホント:多くの人にとって、牛は神そのものというより大切に敬う存在です。牛に祈りをささげる「ゴーパーシュタミー」という祭りの日もありますが、これは牛が直接拝まれる数少ない機会とされています。ネパールでは、牛は富の女神ラクシュミーと結びつけられ、秋の祭りティハールには牛に感謝する日があります。

誤解2:イスラム教も牛を食べてはいけない
ホント:イスラム教で禁じられているのは豚です。牛肉は決められた方法で処理すれば食べてよく、犠牲祭(イード・アル=アドハー)では羊やヤギとともに牛もささげられます。牛を食べないのはヒンドゥー教、豚を食べないのはイスラム教です。

誤解3:ヒンドゥー教徒はみんな菜食
ホント:インドの大規模な調査では、ヒンドゥー教徒で菜食の人は44%。鶏やヤギ、魚を食べる人もたくさんいます。東インドのベンガル地方などでは、魚料理が毎日の食卓の主役です。

誤解4:大昔から牛はずっと神聖だった
ホント:古代インドでは牛肉が食べられていた形跡もあり、牛が今のように神聖になったのは後の時代だと考える歴史学者もいます。古い聖典の書き方もまちまちで、この点は学者の間でも意見が分かれています。

3牛乳・ヨーグルト・牛革・水牛はOK?

牛乳・ヨーグルト・バターは、食べてよいどころか大切な食べ物です。インドで多いのは、肉や卵は食べないが乳製品はとる「乳菜食」。断食の日にもヨーグルトは食べてよいとされ、神さまへのお供えにも乳が使われます。チャイやラッシー、バターを煮つめたギーは、インドの台所に欠かせません。牛を殺さずにもらえる恵みだから、問題ないのです。

牛革は人によって違います。菜食の人の中には、どんな革製品も使わない人が多いとされます。一方で、インドには大きな皮なめしや革の産業があります。1950年には国の政府が、牛の処分を全面的に禁止すると革の輸出が打撃を受ける、と各州に注意したほどです。

水牛は、牛(雌牛)とは別に扱われます。多くの州で、水牛の処分は法律で認められています。インドは水牛の肉の輸出で世界有数の国で、アメリカ農務省の2016年の資料では、世界の牛肉の取引の約20%をインドが占めていました。

4インドの中でも州によって違う:法律と地域差

インドの憲法第48条は、牛や子牛、乳をとる家畜や農作業用の家畜の処分を禁じるよう、国に求めています。ただしこれは「目標」で、実際のルールは州ごとに決まります。28の州のうち20州に牛の処分を規制する法律があり、厳しさはまちまちです。

一方、南のケーララ州、東の西ベンガル州、ゴア州、北東部のメガラヤ州やナガランド州などには制限がありません。インドにはイスラム教徒やキリスト教徒も多く、牛肉を食べる人たちも暮らしています。

となりのネパールでは、牛と雄牛の処分は全面的に禁止されています。

5日本でヒンドゥー教徒の人と食事をするときは

インドやネパールから来た人と食事をするときは、まず本人に聞くのがいちばんです。牛肉だけ食べない人、肉も魚も卵も食べない人、ふだんは食べるが特別な日だけ控える人など、本当に人それぞれだからです。

気をつけたいのは、見えないところに入っている牛です。カレールーやコンソメのビーフエキス、揚げ物やラーメンの牛脂、ハンバーグの合いびき肉など。原材料の表示を一緒に確かめると安心です。

よく食べられる肉は鶏・ヤギ・羊・魚で、豚はあまり食べられていません。菜食の人なら、野菜や豆、乳製品の料理を用意すると喜ばれます。

❓FAQあわせてよく聞かれる質問

ヒンドゥー教徒は牛乳を飲むの?

飲みます。牛を殺さずにもらえる恵みなので、乳製品は菜食の人にも大切な食べ物です。チャイやラッシー、ギーはインドの食卓に欠かせません。

ヒンドゥー教で豚は食べていいの?

牛のように強く避けられているわけではありませんが、インドでよく食べられる肉は鶏・ヤギ・羊・魚で、豚はあまり食べられていません。食事に招くときは本人に確かめると安心です。

インドでは牛は神様の使いなの?

シヴァ神の乗り物が雄牛ナンディだったり、クリシュナ神が牛飼いとして育ったりと、神さまと深いつながりがあります。ただ多くの人にとって、牛は神そのものより「大切に敬う存在」です。

インドの人はみんな牛肉を食べないの?

いいえ。イスラム教徒やキリスト教徒などは食べますし、ケーララ州や西ベンガル州など牛の処分に制限のない州もあります。

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