拝啓・敬具の使い方:前略・謹啓との違い、名前の位置、女性の「かしこ」まで
1拝啓・敬具の意味:手紙の「こんにちは」と「さようなら」
日本郵便は、頭語(とうご)を「手紙の冒頭に書く『こんにちは』にあたる言葉」と説明しています。結語(けつご)は、その反対の「さようなら」。会話でも、あいさつで始めたらあいさつで終わるように、手紙も頭語と結語をセットで使います。
「拝啓」は「つつしんで申し上げます」、「敬具」も「つつしんで申し上げる」という意味の言葉です。どちらも、相手を敬う気持ちを形にしたものです。
実はこの組み合わせ、意外に新しいものです。国語辞典によると、拝啓が手紙の書き出しとして定着したのは明治の中ごろ。1875年の手紙の手本には、拝啓を結びの言葉として使った例まであります。1906年の作法書では「前に拝啓か粛啓、後に頓首ぐらいで十分」とされていて、「拝啓と敬具の組み合わせ」が一般的になったのは大正時代ごろからと考えられています。
それでも今では、手紙を書く人のほとんどが知っている、いちばん基本の組み合わせです。
2頭語と結語の組み合わせ:拝啓・謹啓・前略・拝復の使い分け
頭語と結語は、手紙の丁寧さと場面で選びます。いちばんよく使うのが「拝啓—敬具」。目上の人や改まった手紙には、より敬意の高い「謹啓」を使い、「謹白」「謹言」などで結びます。返事の手紙なら「拝復」で書き始めます。
「謹啓には謹白、と習ったのに、謹啓—敬具と書いてある本もある。どれが本当?」という疑問もよく見かけます。日本郵便の一覧でも、改まった手紙の結語として敬具・謹言・謹白・頓首・敬白が並んでいて、謹啓に敬具を合わせることも認められています。1つだけが正解というより、丁寧さの格をそろえるのが大事です。迷ったら「謹啓—謹白」なら格がぴったりそろいます。
女性の手紙では、結びに「かしこ」が使えます。「おそれ多いことです」という意味の古い言葉で、平安時代の中ごろには「あなかしこ」の形で使われていました。もとは男女ともに使いましたが、のちに女性が使う言葉になりました。日本郵便は、女性の私的な手紙では頭語を省くことが多いとしています。
| 場面 | 頭語 | 結語 |
|---|---|---|
| 普通の手紙 | 拝啓・拝呈・啓上 | 敬具・敬白・拝具 |
| 改まった手紙・目上の人へ | 謹啓・恭啓・粛啓 | 謹白・謹言・敬白・敬具・頓首 |
| 返信 | 拝復・復啓・謹復 | 敬具・敬白・拝具・拝答 |
| 前文を省く略式 | 前略・冠省・略啓 | 草々・早々・不一・不備・かしこ |
| 急ぎの手紙 | 急啓・急呈・急白 | 草々・早々・敬具・拝具・不一 |
| 重ねて出す手紙 | 再啓・追啓・再呈 | 敬具・敬白・拝具・再拝 |
| 女性の手紙 | (省くことが多い) | かしこ |
3拝啓のあとはどう書く?時候のあいさつから名前の位置まで
拝啓で始める手紙は、日本郵便によると次の順に書きます。
・頭語:拝啓
・前文:時候のあいさつ、相手の安否、自分の近況
・本文:「さて、」などで用件に入る
・末文:相手の健康を祈る言葉など+結語(敬具)
・あとづけ:日付、自分の名前、相手の名前
頭語のすぐあとに時候のあいさつを続けます。たとえば秋なら「拝啓 朝晩の冷え込みが日ごとに増してまいりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。」のような形です。
敬具の位置は、末文を書き終えたあと。縦書きなら行の下にそろえ、横書きなら右にそろえて書くのが一般的です。
よく迷う自分の名前は、敬具の前ではなく後ろです。敬具で手紙の本体を結んだあと、「あとづけ」として日付、自分の名前、相手の名前を書きます。署名まで書いてから敬具、という順番にはしません。
4前略・草々との違い:省くのは「時候のあいさつ」
「前略」は、「前の部分を略します」という意味です。手紙の場合、省くのは時候のあいさつや相手の安否をたずねる前文。国語辞典にも、そう説明されています。
ですから前略を使うときは、時候のあいさつを書かないのが正しい使い方です。「前略 秋も深まり…」と書くと、「略します」と言いながら略していないことになってしまいます。日本郵便も、急ぎを示す頭語(前略、冠省など)を使うときは前文を省いたほうがよいとしています。結びは「草々(そうそう)」です。
前略は略式なので、家族や親しい友人への手紙、急ぎの連絡に向いています。目上の人やお礼・お詫びなど改まった手紙では、きちんと時候のあいさつから書ける「拝啓」を選ぶと安心です。
まとめると、こう覚えるとかんたんです。
・あいさつをきちんと書く → 拝啓—敬具
・あいさつを省いてすぐ本題 → 前略—草々
5英語の手紙に「拝啓・敬具」はある? Dear と Sincerely
英語の手紙にも、日本語の頭語・結語にあたる決まった形があります。書き出しは Dear 〜,、結びは Sincerely, などです。
イギリス式では、相手の名前がわかっていて Dear Mr. Smith, で始めたら Yours sincerely,、名前がわからず Dear Sir or Madam, で始めたら Yours faithfully, で結ぶ、という組み合わせのルールがあります。書き出しと結びをそろえる点は、拝啓と敬具の関係とよく似ています。
アメリカのビジネスレターでは、Dear Mr. English: のように書き出しのあとにコロン(:)を打つ形もあり、結びは Sincerely, がよく使われます。結びのあとに少し間をあけて、手書きのサインと名前を書きます。名前が結びの「後ろ」に来るところも、敬具のあとに名前を書く日本の手紙と同じです。
✍️Examples英語の手紙の「拝啓」と「敬具」
❓FAQあわせてよく聞かれる質問
拝啓で始めたら、結びの敬具はなくてもいい?
頭語を書いたら、結語も必ず書きます。あいさつで始めてあいさつで終わるセットなので、片方だけだと書きかけのように見えてしまいます。頭語を省いた手紙なら、結語も書かなくてかまいません。
敬具と名前はどちらが先?
敬具が先です。末文の最後に敬具を書いて本文を結び、そのあとの「あとづけ」に日付、自分の名前、相手の名前を書きます。
縦書き・横書きで敬具の位置は?
末文を書き終えたあとに、縦書きなら行の下にそろえ、横書きなら右にそろえて書くのが一般的です。
前略のあとに時候のあいさつを書いてもいい?
書きません。前略は「時候のあいさつなどの前文を省きます」という意味なので、すぐに本題に入るのが正しい使い方です。
男性が「かしこ」を使ってもいい?
かしこはもとは男女ともに使った言葉ですが、今は女性の手紙の結びとして定着しています。男性は敬具や草々を使うのが一般的です。
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