ことわざ・教養・背景知識No.341確認問題集あり

背景知識チートシート:言語学・言語習得

言語の長文は「早く始めるほどよい?」「言葉は考えを決める?」の常識を疑わせる。論争の地図を持って読む。

背景知識チートシート:言語学・言語習得 の1ページ目

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まずはこの3つ

  1. 年齢の差が最も出るのは発音。大人は最初の伸びがむしろ速い
  2. 「言語が思考を決める」は否定、「影響する」は一部支持
  3. 言語が消えると、ものの見方や知識の一部も失われうる
このテーマは「常識の修正」で出る

言語の長文は「子どもは何でもすぐ覚える」「バイリンガルは混乱する」「イヌイットには雪の単語が何百もある」など、広く信じられた話を研究で修正する展開が多い。本文の It is often believed that〜 や popular belief は、後でひっくり返される合図。

1入試で狙われる論点(対立する見方)7

  1. 1生まれつきか、経験か
    Chomsky:人間は言語の文法の土台を生まれつき持つ(普遍文法)。聞く言葉だけからは導きにくい文法まで子どもが身につける、が根拠とされる(刺激の貧困。反論もある)。対立説:大量のインプットからパターンを見つけ、人とのやり取りで学ぶ(用法基盤)。
    Children acquire their first language without being formally taught.子どもは正式に教えられなくても第一言語を身につける。
  2. 2臨界期はあるか
    ある年齢を過ぎると母語話者並みの習得が難しくなる、という仮説(Lenneberg 1967 が有名)。発音では年齢の影響が大きい。一方、大人は初めの学習が速く、量・動機・環境の方が大事だという見方もある。
  3. 3インプットか、アウトプットか
    Krashen:理解できるインプットを大量に受けることが習得の鍵。Swain:話す・書くことで自分に足りない所に気づく。Long:やり取りで意味を確かめ合うことが習得を進める。今は組み合わせが主流。
  4. 4言語は思考を決めるか
    サピア=ウォーフの仮説。強い形(言語が思考を決める)はほぼ否定。弱い形(言語が知覚や記憶に影響する)は、色の区別や方角の言い方の研究で一部支持されている。
    The language we speak may influence how we see the world.話す言語は世界の見え方に影響するかもしれない。
  5. 5バイリンガルは頭がよくなるか
    2言語を切りかえることで注意を制御する力が高まる、という研究が話題になった。その後、効果がない研究が出版されにくかった偏りが指摘され、今は議論が続いている。
  6. 6消滅危機言語を守るべきか
    守る理由:言語には文化・歴史・自然の知識が詰まっている。反論:どの言語を使うかは話し手の自由で、経済的に有利な言語を選ぶのは自然。ハワイ語・マオリ語などの復興例がよく出る。
  7. 7英語が世界共通語であること
    利点:国際的な意思疎通、情報へのアクセス。懸念:英語を話せる人とそうでない人の格差、他の言語・文化の弱体化。「母語話者の英語だけが正しい」という考えへの疑問も論点。

2論理の流れの典型

型流れ設問で狙われる所
俗説の修正広く信じられている→研究ではそうではない→本当の姿俗説と研究結果の区別
赤ちゃんの実験乳児に音を聞かせる→反応の変化を測る→生まれつきの力と経験の役割何か月でどう変わったか
事例研究特別な環境の子ども・新しく生まれた言語→習得の条件を考える事例から導かれる結論
言語の比較A語にはある区別がB語にない→話者の知覚に違いはあるか違いが「ある」の程度(わずか・一部)
問題→取り組み話者の減少→原因→復興の試み→課題原因(教育・移住・差別)

3必須キーワード:概念で覚える20

英語和訳ひと言
language acquisition言語習得learning より自然に身につく感じ
second language acquisition (SLA)第二言語習得研究分野の名前でもある
the critical period hypothesis臨界期仮説ゆるやかな版が sensitive period(敏感期)
universal grammar普遍文法Chomsky の中心的な考え
the poverty of the stimulus刺激の貧困入力だけでは文法を導けないとする論
overgeneralization過剰一般化goed・mouses など。規則を学んだ証拠
infant-directed speech乳児に向けた話し方高く・ゆっくり・抑揚大きく
babbling喃語(なんご)ba-ba-ba など意味のない発声
comprehensible input理解可能なインプット少しだけ難しいのが最適とされる
linguistic relativity言語相対論サピア=ウォーフの弱い形
linguistic determinism言語決定論強い形。ほぼ否定
code-switchingコードスイッチング会話中に言語を切りかえる
heritage language継承語移民の家庭で受け継ぐ言語
language revitalization言語の復興re(再び)+vital(命)
lingua franca共通語母語の違う人どうしが使う言語
World Englishes世界の諸英語インド英語なども正当な英語
pidgin / creoleピジン/クレオール共通語として生まれた言語→母語化したもの
dialect / accent方言/なまりdialect は語彙・文法も含む
phoneme音素意味を区別する音の単位
sign language手話独自の文法を持つ言語

4よく紹介される研究・事実

項目中身
乳児の音の聞き分け米国と日本の乳児は生後6〜8か月では英語の r と l を同じくらい聞き分けたが、10〜12か月で日本の乳児は聞き分けにくくなった(Kuhl ら 2006)
移住した年齢と文法米国に移り住んだ年齢が低い人ほど、英語の文法判断が母語話者に近かった(Johnson & Newport 1989)
ニカラグア手話1980年代、ろう学校に集まった子どもたちの間で新しい手話が生まれ、後から入った世代ほど文法が整っていった
ロシア語の「青」明るい青と濃い青を別の基本語で呼ぶロシア語の話者は、その境目の色をわずかに速く区別した(Winawer ら 2007)
消滅の危機世界で使われる約7,000の言語のうち、4割以上が危機にあるとされる(Ethnologue)。日本ではアイヌ語が「極めて深刻」(UNESCO 2009)

5英作文で使える一文7

  • Learning a foreign language opens the door to another culture.
    外国語を学ぶことは別の文化への扉を開く。
    導入の定番。open the door to〜
  • Starting early is not the only key to success in language learning.
    早く始めることだけが語学の成功のかぎではない。
    臨界期の論点で条件つきに
  • When a language dies, a unique way of seeing the world is lost.
    ある言語が消えると、独自の世界の見方が失われる。
    消滅危機言語を守る側
  • The more you use a language, the faster you improve.
    言語は使えば使うほど早く上達する。
    the 比較級, the 比較級
  • English no longer belongs only to its native speakers.
    英語はもはや母語話者だけのものではない。
    belong to=〜のものだ。進行形にしない
  • Making mistakes is a natural part of learning a language.
    間違えることは言語学習の自然な一部だ。
    過剰一般化の話と相性がよい
  • Language is not just a tool for communication but also part of our identity.
    言語は意思疎通の道具であるだけでなく、私たちのアイデンティティの一部でもある。
    not just A but also B

6よくある誤解6

  • ✕子どもは苦労せず、あっという間に言語を覚える
    ○何千時間も聞き、話して身につける。大人は初めの伸びが速いことも多い
    年齢の利点は主に最終的な到達度、特に発音
  • ✕2言語で育てると子どもが混乱し、発達が遅れる
    ○長く続く遅れの根拠はない。言語の切りかえは能力の一つ
    語彙が2言語に分かれて見えるだけのことが多い
  • ✕イヌイットには雪を表す単語が何百もある
    ○語の数え方しだいで、大げさに広まった話
    語をつなげて作る言語なので単語の数え方が違う
  • ✕方言やなまりは崩れた不正確な言葉
    ○方言にもそれぞれ一貫した規則がある
    「標準」は社会的に決まったもの
  • ✕言葉がない概念は考えることもできない
    ○言葉がなくても区別や理解はできる。影響は「しやすさ」の差
    強いサピア=ウォーフ仮説は否定的
  • ✕英語を使う人の大半は母語話者
    ○母語話者より、第二言語・外国語として使う人の方が多いとされる
    だから共通語としての英語が論点になる

確認テスト

  1. 1
    子どもが goed や mouses と言うのは何の証拠?
  2. 2
    母語の違う人どうしが共通に使う言語は?
  3. 3
    「言語が思考を完全に決める」という強い考え方は?
  4. 4
    The more you use a language, the you improve.
  5. 5
    臨界期の影響が最もはっきり出やすいのは?

参考にした資料

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