まずはこの3つ
- 年齢の差が最も出るのは発音。大人は最初の伸びがむしろ速い
- 「言語が思考を決める」は否定、「影響する」は一部支持
- 言語が消えると、ものの見方や知識の一部も失われうる
このテーマは「常識の修正」で出る
言語の長文は「子どもは何でもすぐ覚える」「バイリンガルは混乱する」「イヌイットには雪の単語が何百もある」など、広く信じられた話を研究で修正する展開が多い。本文の It is often believed that〜 や popular belief は、後でひっくり返される合図。
1入試で狙われる論点(対立する見方)7
- 1生まれつきか、経験かChomsky:人間は言語の文法の土台を生まれつき持つ(普遍文法)。聞く言葉だけからは導きにくい文法まで子どもが身につける、が根拠とされる(刺激の貧困。反論もある)。対立説:大量のインプットからパターンを見つけ、人とのやり取りで学ぶ(用法基盤)。Children acquire their first language without being formally taught.子どもは正式に教えられなくても第一言語を身につける。
- 2臨界期はあるかある年齢を過ぎると母語話者並みの習得が難しくなる、という仮説(Lenneberg 1967 が有名)。発音では年齢の影響が大きい。一方、大人は初めの学習が速く、量・動機・環境の方が大事だという見方もある。
- 3インプットか、アウトプットかKrashen:理解できるインプットを大量に受けることが習得の鍵。Swain:話す・書くことで自分に足りない所に気づく。Long:やり取りで意味を確かめ合うことが習得を進める。今は組み合わせが主流。
- 4言語は思考を決めるかサピア=ウォーフの仮説。強い形(言語が思考を決める)はほぼ否定。弱い形(言語が知覚や記憶に影響する)は、色の区別や方角の言い方の研究で一部支持されている。The language we speak may influence how we see the world.話す言語は世界の見え方に影響するかもしれない。
- 5バイリンガルは頭がよくなるか2言語を切りかえることで注意を制御する力が高まる、という研究が話題になった。その後、効果がない研究が出版されにくかった偏りが指摘され、今は議論が続いている。
- 6消滅危機言語を守るべきか守る理由:言語には文化・歴史・自然の知識が詰まっている。反論:どの言語を使うかは話し手の自由で、経済的に有利な言語を選ぶのは自然。ハワイ語・マオリ語などの復興例がよく出る。
- 7英語が世界共通語であること利点:国際的な意思疎通、情報へのアクセス。懸念:英語を話せる人とそうでない人の格差、他の言語・文化の弱体化。「母語話者の英語だけが正しい」という考えへの疑問も論点。
2論理の流れの典型
| 型 | 流れ | 設問で狙われる所 |
|---|---|---|
| 俗説の修正 | 広く信じられている→研究ではそうではない→本当の姿 | 俗説と研究結果の区別 |
| 赤ちゃんの実験 | 乳児に音を聞かせる→反応の変化を測る→生まれつきの力と経験の役割 | 何か月でどう変わったか |
| 事例研究 | 特別な環境の子ども・新しく生まれた言語→習得の条件を考える | 事例から導かれる結論 |
| 言語の比較 | A語にはある区別がB語にない→話者の知覚に違いはあるか | 違いが「ある」の程度(わずか・一部) |
| 問題→取り組み | 話者の減少→原因→復興の試み→課題 | 原因(教育・移住・差別) |
3必須キーワード:概念で覚える20
英語和訳ひと言
language acquisition言語習得learning より自然に身につく感じ
second language acquisition (SLA)第二言語習得研究分野の名前でもある
the critical period hypothesis臨界期仮説ゆるやかな版が sensitive period(敏感期)
universal grammar普遍文法Chomsky の中心的な考え
the poverty of the stimulus刺激の貧困入力だけでは文法を導けないとする論
overgeneralization過剰一般化goed・mouses など。規則を学んだ証拠
infant-directed speech乳児に向けた話し方高く・ゆっくり・抑揚大きく
babbling喃語(なんご)ba-ba-ba など意味のない発声
comprehensible input理解可能なインプット少しだけ難しいのが最適とされる
linguistic relativity言語相対論サピア=ウォーフの弱い形
linguistic determinism言語決定論強い形。ほぼ否定
code-switchingコードスイッチング会話中に言語を切りかえる
heritage language継承語移民の家庭で受け継ぐ言語
language revitalization言語の復興re(再び)+vital(命)
lingua franca共通語母語の違う人どうしが使う言語
World Englishes世界の諸英語インド英語なども正当な英語
pidgin / creoleピジン/クレオール共通語として生まれた言語→母語化したもの
dialect / accent方言/なまりdialect は語彙・文法も含む
phoneme音素意味を区別する音の単位
sign language手話独自の文法を持つ言語
4よく紹介される研究・事実
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 乳児の音の聞き分け | 米国と日本の乳児は生後6〜8か月では英語の r と l を同じくらい聞き分けたが、10〜12か月で日本の乳児は聞き分けにくくなった(Kuhl ら 2006) |
| 移住した年齢と文法 | 米国に移り住んだ年齢が低い人ほど、英語の文法判断が母語話者に近かった(Johnson & Newport 1989) |
| ニカラグア手話 | 1980年代、ろう学校に集まった子どもたちの間で新しい手話が生まれ、後から入った世代ほど文法が整っていった |
| ロシア語の「青」 | 明るい青と濃い青を別の基本語で呼ぶロシア語の話者は、その境目の色をわずかに速く区別した(Winawer ら 2007) |
| 消滅の危機 | 世界で使われる約7,000の言語のうち、4割以上が危機にあるとされる(Ethnologue)。日本ではアイヌ語が「極めて深刻」(UNESCO 2009) |
5英作文で使える一文7
- Learning a foreign language opens the door to another culture.外国語を学ぶことは別の文化への扉を開く。導入の定番。open the door to〜
- Starting early is not the only key to success in language learning.早く始めることだけが語学の成功のかぎではない。臨界期の論点で条件つきに
- When a language dies, a unique way of seeing the world is lost.ある言語が消えると、独自の世界の見方が失われる。消滅危機言語を守る側
- The more you use a language, the faster you improve.言語は使えば使うほど早く上達する。the 比較級, the 比較級
- English no longer belongs only to its native speakers.英語はもはや母語話者だけのものではない。belong to=〜のものだ。進行形にしない
- Making mistakes is a natural part of learning a language.間違えることは言語学習の自然な一部だ。過剰一般化の話と相性がよい
- Language is not just a tool for communication but also part of our identity.言語は意思疎通の道具であるだけでなく、私たちのアイデンティティの一部でもある。not just A but also B
6よくある誤解6
- ✕子どもは苦労せず、あっという間に言語を覚える○何千時間も聞き、話して身につける。大人は初めの伸びが速いことも多い年齢の利点は主に最終的な到達度、特に発音
- ✕2言語で育てると子どもが混乱し、発達が遅れる○長く続く遅れの根拠はない。言語の切りかえは能力の一つ語彙が2言語に分かれて見えるだけのことが多い
- ✕イヌイットには雪を表す単語が何百もある○語の数え方しだいで、大げさに広まった話語をつなげて作る言語なので単語の数え方が違う
- ✕方言やなまりは崩れた不正確な言葉○方言にもそれぞれ一貫した規則がある「標準」は社会的に決まったもの
- ✕言葉がない概念は考えることもできない○言葉がなくても区別や理解はできる。影響は「しやすさ」の差強いサピア=ウォーフ仮説は否定的
- ✕英語を使う人の大半は母語話者○母語話者より、第二言語・外国語として使う人の方が多いとされるだから共通語としての英語が論点になる
確認テスト
- 1子どもが goed や mouses と言うのは何の証拠?正解は 規則を自分で見つけて使っている。overgeneralization(過剰一般化)
- 2母語の違う人どうしが共通に使う言語は?正解は lingua franca。今の代表は英語
- 3「言語が思考を完全に決める」という強い考え方は?正解は linguistic determinism。ほぼ否定されている
- 4The more you use a language, the you improve.正解は faster。the 比較級, the 比較級
- 5臨界期の影響が最もはっきり出やすいのは?正解は 発音。大人から始めると訛りが残りやすい
参考にした資料
背景知識:言語を一覧にまとめ、A4 2枚で印刷できる無料PDFにしました。Web版は赤シート・覚えたチェック・カード・4択テストつき。