まずはこの3つ
- グローバル化は「全体では得、国内で損する人も出る」
- 平均は一部の高所得者に引っぱられる。ふつうの人は中央値
- 新しい働き方は「自由」と「不安定」の表裏一体
このテーマは「勝者と敗者」で読む
経済の長文は、ある変化(貿易・技術・制度)で「全体としては豊かになるが、負担はだれかに集中する」と論じる型が圧倒的に多い。賛成派は全体の利益を、反対派は損をする人を見ている。筆者がどちらに光を当てているかで主張が決まる。
1入試で狙われる論点(対立する見方)7
- 1グローバル化は人を豊かにするか賛:貿易で安く多様な商品が手に入り、新興国で多くの人が貧困から抜け出した。否:工場の海外移転で国内の雇用が失われ、国の中の格差が広がった。賃金や環境基準の切り下げ競争の懸念も。Globalization has created winners and losers.グローバル化は勝者と敗者を生み出した。
- 2格差はどこまで問題か見方A:努力や才能の差の結果で、ある程度は意欲を生む。見方B:生まれた家庭で教育や機会が決まるなら不公平。「結果の平等」か「機会の平等」かの区別が鍵。
- 3ギグエコノミーアプリで単発の仕事を受ける働き方。賛:好きな時間に働ける、副収入。否:収入が不安定で、病気やけがの保障がない。働き手は「従業員」か「個人事業主」か、が法的な論点。
- 4リモートワーク賛:通勤がなく、子育て・介護と両立しやすい、地方に住める。否:孤立、雑談からのアイデアが減る、仕事と私生活の境目があいまい。在宅でできない仕事との不公平も。Remote work gives people more flexibility, but it can blur the line between work and home.在宅勤務は柔軟性を与えるが、仕事と家庭の境目をあいまいにしうる。
- 5ベーシックインカム全員に無条件で一定額を配る制度。賛:仕組みが簡単で支援の漏れがない、AIによる失業への備え。否:莫大な財源、働く意欲が下がるのでは、という懸念。
- 6消費社会と幸福大量生産・大量消費は生活を豊かにしたが、使い捨てや環境負荷を生んだ。モノより経験、所有より共有(シェアリング)という価値観の変化がよく出る。
- 7お金で幸せは買えるか所得が増えると満足度は上がるが、国全体が豊かになっても幸福度が上がらないという指摘もある(イースタリンの逆説)。他人との比較や慣れが原因とされる。
2論理の流れの典型
| 型 | 流れ | 設問で狙われる所 |
|---|---|---|
| 歴史の繰り返し | 産業革命で職人の仕事が消えた→新しい仕事が生まれた→今回のAIは? | 過去との共通点と違い |
| 勝者と敗者 | 全体の利益→損をする人々→補う政策 | 損をするのはだれか |
| 数字の読みかえ | 平均ではよく見える→中央値や内訳で見ると違う | どの数字を根拠にしたか |
| 逆説 | 豊かになった→でも幸福・時間のゆとりは増えない | なぜ増えないかの説明 |
| 働き方の変化 | 昔の終身雇用・通勤→今の多様な働き方→利点と課題 | 今の課題の具体例 |
3必須キーワード:概念で覚える20
英語和訳ひと言
comparative advantage比較優位相対的に得意なものに特化すると双方得
protectionism保護貿易主義関税で国内産業を守る
supply chain供給網(サプライチェーン)原料から消費者までの流れ
offshoring海外移転工場・業務を国外へ
race to the bottom底辺への競争賃金・規制を下げ合う
income inequality所得格差wealth inequality=資産格差
the Gini coefficientジニ係数0が完全平等、1が最大の不平等
social mobility社会移動階層を上下に移れる度合い
equality of opportunity機会の平等outcome なら結果の平等
gig economyギグエコノミーgig=演奏の1回の仕事から
independent contractor個人事業主(請負)employee との違いが争点
universal basic incomeベーシックインカムUBI と略す
safety net安全網(社会保障)落ちた人を受け止める制度
productivity生産性投入(時間・人手など)あたりの産出
conspicuous consumption顕示的消費見せびらかすための消費(Veblen)
planned obsolescence計画的陳腐化わざと早く古くさせ買いかえさせる
sharing economyシェアリングエコノミー持たずに共有・貸し借り
GDP (gross domestic product)国内総生産国内で生んだ付加価値の総額。幸福の量ではない
median / average中央値/平均値格差の話では中央値が重要
hedonic treadmill快楽のランニングマシン手に入れてもすぐ慣れる
4よく紹介される理論・研究
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 比較優位(Ricardo 1817) | 英国の布とポルトガルのワインの例。両方が苦手な国でも、得意な方に特化して交換すれば双方が得をする |
| 顕示的消費(Veblen 1899) | 富を見せるための消費。高いほど売れる商品があることを説明 |
| エレファントカーブ | 1988〜2008年の世界の所得の伸びを示す図。新興国の中間層と最富裕層が大きく伸び、先進国の中・低所得層は伸び悩んだ(Lakner & Milanovic) |
| 在宅勤務の実験 | 中国の旅行会社のコールセンターで、在宅勤務の社員は成果が上がり離職も減った(Bloom ら 2015)。職種で結果は変わる |
| フィンランドの実験(2017〜2018) | 失業者2,000人に月560ユーロを無条件で給付。就業への効果は小さく、幸福感や健康の自己評価は改善した |
| お金と幸福 | 年収が一定額を超えると日々の幸福感は頭打ちとする研究(Kahneman & Deaton 2010)に対し、上がり続けるという研究も。2023年の共同研究で「多くの人は上がり続け、最も不幸な層では頭打ち」と整理された |
5英作文で使える一文7
- Globalization has brought both opportunities and challenges.グローバル化は機会と課題の両方をもたらした。導入の万能文。bring の過去分詞 brought
- Everyone should have an equal chance to succeed, regardless of their background.生まれ育ちにかかわらず、だれもが成功する平等な機会を持つべきだ。機会の平等。regardless of〜
- Hard work alone does not always guarantee success.努力だけで必ず成功するとは限らない。not always=部分否定
- Buying more things does not necessarily make us happier.多くの物を買っても幸せになるとは限らない。消費社会の論点。make O 比較級
- Gig workers need better protection, such as sick pay and insurance.ギグワーカーには病気休暇の手当や保険などのよりよい保護が必要だ。such as で具体例を足す
- A basic income would be simple, but it would also be very expensive.ベーシックインカムは簡単な仕組みだが、非常に費用がかかるだろう。仮定の話なので would
- Those who lose their jobs because of trade should be supported.貿易のせいで職を失う人々は支援されるべきだ。those who〜=〜する人々
6よくある誤解6
- ✕貿易は一方が得をすれば、もう一方が損をする○国どうしは双方が得をしうる。ただし国内に損をする人は出る比較優位の考え方
- ✕世の中の仕事の量は決まっていて、機械に奪われた分だけ減る○生産性が上がると新しい需要と仕事が生まれてきた労働塊の誤謬。ただし移行期の痛みは大きい
- ✕GDP が増えれば国民はその分幸せになる○GDP は市場で生んだ価値の総額で、家事・余暇・環境などは測らない幸福度や健康を含む指標も議論される
- ✕平均年収=ふつうの人の年収○一部の高所得者が平均を引き上げる。真ん中の人は中央値高所得側に裾が長いと平均>中央値
- ✕お金を配ると人は働かなくなる○これまでの実験では就業が大きく減る結果は出ていないただし実験は規模・期間が限られる
- ✕リモートワークはだれでも選べる働き方○医療・物流・接客など現場の仕事は在宅にできない職種による格差も論点
確認テスト
- 1高級ブランドを見せびらかすために買う消費は?正解は conspicuous consumption。conspicuous=目立つ
- 2格差が大きいとき、平均値と中央値の関係は?正解は 平均値の方が高くなりやすい。高所得者が平均を押し上げる
- 3Hard work alone does not guarantee success.正解は always。not always=必ずしも〜ない
- 4生まれた家庭の階層から上下に移れる度合いは?正解は social mobility。機会の平等の指標
- 5各国が賃金や環境規制を下げ合って企業を呼び込む状態は?正解は race to the bottom。底辺への競争
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