勉強法の常識No.S67
勉強の計画は、たいてい予定より時間がかかるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ホント
人は自分の作業時間を、いつも甘く見積もります。「計画錯誤」と呼ばれる心のクセで、過去の実績と結びつけると直せます。
ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。
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1957年、オーストラリアのシドニーで、新しいオペラハウスの計画が立てられました。当初の見積もりでは、完成は1963年のはじめ、費用は700万ドル。実際に開館したのは1973年で、規模を縮めたうえに、費用は1億200万ドルにふくらんでいました。
この話は、1994年にカナダの心理学者ビューラー、グリフィン、ロスが書いた論文の冒頭に出てきます。巨大な建設計画の歴史は、楽観的すぎる見積もりであふれている。そして同じことは、ふつうの人の毎日の作業でも起きているのではないか。3人はそう考えました。
似た作業が遅れてきたことを知りながら、自分の計画だけは予定どおり進むと信じてしまう。このクセは「計画錯誤」と呼ばれています。
「最悪の場合」でも間に合わない
最初の研究の対象は、卒業論文の仕上げに入った、カナダのウォータールー大学の心理学の学生37人です。電話で、論文をいつ提出できそうかを尋ねました。いちばん当たりそうな予想に加えて、「すべてが最高にうまくいったら」と「すべてが最悪に進んだら」の予想も聞きました。
提出日を記録して比べると、学生たちの予想は平均33.9日後でした。実際にかかったのは、平均55.5日。予想どおりに出せた学生は、3割に届きませんでした。
さらに目を引くのは、「最悪の場合」の予想です。平均48.6日で、これでも実際より短かったのです。最悪の場合の予想までに提出できた学生は、半分もいませんでした。
頭の中には「これからの段取り」だけ
なぜ、こんなにずれるのでしょうか。ビューラーらは、予想を立てながら考えていることを、声に出して話してもらいました。
すると人々は、主に「これからどう進めるか」という段取りを考えていました。過去に似た作業でどれくらい時間がかかったかには、あまり目を向けていなかったのです。
過去の遅れを、今回に当てはめない傾向もありました。前回遅れた理由を尋ねると、人は、ほかの人や状況のせい、そのときだけの事情、その課題に特有の問題だと考えがちでした。これでは「今回は違う」と思えてしまいます。
論文の冒頭には、学生向けの簡単な調査も紹介されています。学生たちは、これまでの課題のおよそ3分の2を、予想より遅れて終えたと答えていました。過去はわかっているのに、今回の予想は甘い。人は、この2つを同時に抱えていられるのです。
一方、他人の作業時間を予想してもらうと、人はむしろ長めに見積もりました。他人については、過去の実績をよく参考にしていたのです。
過去と今回を、線で結ぶ
では、どうすれば見積もりのずれは小さくなるのでしょうか。ビューラーらは、学生123人に、1時間ほどかかるパソコンの課題を出して試しました。締め切りは1週間後か、2週間後です。
学生は3つの組に分かれました。何も指示されない組。予想の前に、過去の似た課題の経験を思い出す組。経験を思い出したうえで、「いつもと同じペースなら、今回はいつ終わるか」を考え、その筋書きを書く組です。
予想した時期までに課題を終えた学生は、何も指示されない組で29.3%、思い出すだけの組で38.1%でした。過去と今回を結びつけた組では、60.0%に上がりました。予想が楽観的にずれる傾向は、ほぼ消えたのです。
思い出すだけの組は、何も指示されない組と、はっきりした差がありませんでした。過去を知っているだけでは足りず、今回に当てはめるところまでやる必要がある、ということです。
計画表の横に、前回の記録を
勉強の計画にも、このまま使えます。
まず、記録をつけます。問題集10ページに何時間かかったか。単語100個を覚えるのに何日かかったか。次に計画を立てるときは、その記録を横に置き、「前回と同じペースなら、今回はいつ終わるか」を計算します。気合いで縮めたくなっても、そこは縮めません。
前回遅れた理由を「今回はないはず」と片づけないことも大切です。部活の大会や体調不良は、形を変えて、また起こるものです。
予定どおりに進まないのは、意志が弱いからとは限りません。予想の立て方そのものに、もともとクセがあるのです。
参考文献
Buehler R., Griffin D., Ross M. (1994). Exploring the "planning fallacy": Why people underestimate their task completion times. Journal of Personality and Social Psychology, 67, 366-381.
doi.org/10.1037/0022-3514.67.3.366✓ 実在と内容を確認済み
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