勉強法の常識No.S40
脳トレアプリで頭が良くなるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
脳トレで上手になるのは、練習したそのゲームだけ。ほかの課題や勉強の力にはほとんど広がらないことが、大規模な実験でわかっています。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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5万2,617人。2010年、イギリスで行われたある実験に登録した人の数です。
呼びかけたのは、BBCの科学番組でした。視聴者に、番組のウェブサイトで6週間、脳トレをしてもらう。それで本当に頭が良くなるのかを確かめる、という企画です。実験を組み立てたのは、イギリスのケンブリッジにある研究所の神経科学者オーウェンらでした。
クイズに答えていただけの人たち
参加者は、18歳から60歳までの大人です。くじ引きで3つのグループに分けられました。
1つめのグループは、推理や計画、問題解決のトレーニング。2つめは、短期記憶や注意、図形、計算のトレーニングで、市販の脳トレによくある内容です。どちらも、週に3回、1回10分以上取り組みます。
3つめのグループは、脳トレをしません。かわりに、あまり知られていない雑学クイズに答えます。答えはネットで調べてもかまいません。いわば、脳トレをしているつもりの比べ役です。
トレーニングの前と後には、全員が同じ4つのテストを受けました。脳トレとは別の、推理や記憶の力を測るテストです。最後まで条件を満たしたのは1万1,430人。ひとりあたり平均で25回ほど練習しました。
上手になったのは、練習したゲームだけ
結果は、はっきりしていました。練習したゲームの成績は、どれも上がりました。ところが、練習していないテストの伸びは、雑学クイズのグループとほとんど変わりませんでした。練習したゲームとよく似た力を使うテストでさえ、脳トレの効果は見られなかったのです。
たとえば1つめのグループは、抽象的な推理のゲームを3種類も練習していました。それなのに、推理のテストで数字の上で大きく伸びたのは、推理のゲームをしていない2つめのグループのほうでした。
テストによっては、伸び幅がいちばん大きかったのは、むしろクイズのグループでした。練習した回数が多い人ほどテストが伸びた、という関係も見られませんでした。ゲームの成績は練習するほど上がるのに、その外には広がらない。これがこの実験の答えです。
ある課題で身につけた力が、別の課題にも生きることを、心理学では「転移」と呼びます。脳トレが頭を良くするには、この転移が起きなければなりません。
科学者たちの公開書簡
それでも、脳トレの宣伝はなくなりませんでした。2014年には、科学者のあいだで意見が割れます。まず70人を超える国際的な科学者グループが、脳トレに科学的な裏づけはない、とする声明を出しました。数か月後、今度は133人の科学者や専門家が、効果を示す研究はたくさんある、と反論する手紙を出しました。
同じ研究を読んで、なぜ反対の結論になるのか。2016年、心理学者のサイモンズらは、脳トレ会社が自分たちの根拠として挙げている研究を、ひとつずつ点検しました。
結論は、オーウェンらの実験とよく似ていました。練習した課題が上達する証拠はたくさんある。よく似た課題への効果の証拠は少ない。かけ離れた課題や、日常生活で頭の働きが良くなる証拠は、ほとんどない。しかも、多くの研究には実験の組み立てや分析に大きな問題がありました。著者たちが示した基準をすべて満たした研究は、ひとつもなかったといいます。
上達したいことを、直接練習する
脳トレのゲームが上手になるのは、うそではありません。ただ、上手になるのはそのゲームです。英単語を覚えたいなら英単語を、数学の問題が解けるようになりたいなら数学の問題を練習する。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。
原田英語のおすすめは、脳トレに使っていた10分を、その日に習ったことを教科書を閉じて思い出す時間に変えることです。思い出せなかったところが、明日の勉強の出発点になります。
参考文献
Owen A., Hampshire A., Grahn J., Stenton R., Dajani S., Burns A. et al. (2010). Putting brain training to the test. Nature, 465, 775-778.
doi.org/10.1038/nature09042✓ 実在と内容を確認済み
Simons D., Boot W., Charness N., Gathercole S., Chabris C., Hambrick D. et al. (2016). Do “Brain-Training” Programs Work?. Psychological Science in the Public Interest, 17, 103-186.
doi.org/10.1177/1529100616661983✓ 実在と内容を確認済み
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