有名な勉強法を判定No.P01

ファインマン・テクニック(やさしい言葉で説明してみる勉強法)は最強って、ホント?

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判定:半分ホント

やさしい言葉で説明してみると、「わかったつもり」が見破れます。ただ、「最強」と言える証拠はありません。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

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論文での効果架空の生徒への説明の効果は小さめ(理解で効果量0.29)

今日からできるやり方

  1. 学んだ内容を、本を閉じて紙に説明してみる
  2. 説明に詰まった所に印をつけ、本で確かめる
  3. 「なぜそうなるか」を自分に問いながら書き直す
  4. できれば、書くより声に出して説明する

ファスナーがどうやって閉まるのか、説明できますか。

毎日のように上げ下げしているので、多くの人は「だいたいわかる」と答えるでしょう。では、紙に書いてみてください。つまみを引くと、中で何がどう動いて、左右の歯がかみ合うのか。順番に書こうとすると、2行目あたりで手が止まるのではないでしょうか。

この「わかったつもり」を崩す方法として人気なのが、ファインマン・テクニックです。物理学者リチャード・ファインマンの名を借りた勉強法で、学んだことを子どもにもわかる言葉で説明し、詰まった所を調べ直します。ただ、ファインマン本人がこの名前で方法を発表したわけではありません。あとの人が名づけて広めたもので、この名前の方法そのものを試した研究は見つかりませんでした。それでも、中心にある考えには、しっかりした手がかりがあります。

大学院生16人の自己採点

2002年、アメリカのイェール大学で、ローゼンブリットとカイルが実験をしました。参加したのは、いろいろな学部の大学院生16人です。

まず、ファスナー、水洗トイレ、ピアノの鍵盤、ヘリコプターなど48の道具や現象について、仕組みをどれくらい理解しているかを7段階で自己採点してもらいます。次に、そのうち4つについて、仕組みを一段ずつ文章で説明させました。書き終えたら、もう一度採点します。

ほぼ全員の点数が下がりました。続いて「ヘリコプターは、空中で止まった状態からどうやって前へ進むのか」といった、仕組みがわかっていないと答えられない質問に答えます。最後に専門家の解説を読み、最初の自分の理解度をつけ直しました。点数は、はじめの自己採点より低いままでした。

解説を読んだあとの「今の理解度」は上がっていたので、ただ自信をなくしただけではありません。学部生33人で同じ実験をしても、結果は変わりませんでした。自分の知らなさに驚く参加者も多かったと、論文には書かれています。

ローゼンブリットらは、これを「説明の深さの錯覚」と名づけました。事実や手順の知識より、仕組みを説明する知識で特に強く出る錯覚です。説明しようとしてはじめて、頭の中の穴が見えてきます。

先生役になると、よく覚える?

では、誰かに教えるつもりで説明すると、さらによく身につくのでしょうか。それまでにも、架空の生徒に向けて口で説明すると学習が進む、という研究がありました。

2021年、ラッハナーらは、これを「書く」場面で確かめました。比べたのは、架空の生徒に向けて説明を書く、自分のために説明を書く(自己説明)、内容を思い出して書く、そして特別なことをしない、という条件です。

1つ目の実験は実験室で行われ、147人が参加しました。結果は、どの説明にも効果が見られませんでした。2つ目の実験は実際の学びの場で行われ、51人が参加しました。今度は、自分のために説明を書いた場合だけが、学んだことを新しい問題に使う「応用」の成績でほかの条件を上回りました。架空の生徒向けの説明は、自己説明に負けたのです。

書くより、声に出す

ラッハナーらは、それまでの研究も合わせて分析しています。架空の生徒に説明する効果は、理解を問うテストで効果量0.29、応用で0.22でした。論文でも「小さい効果」とされる大きさです。そして、説明は書くより口で行うほうが、効果が大きい傾向がありました。

研究を見るかぎり、聞き手の子どもを想像することは、それほど大事ではなさそうです。大事なのは、「なぜそうなるのか」を自分に問いながら、自分の言葉にしてみることです。聞き手は、空想の子どもでも、自分自身でもかまいません。

ファインマン・テクニックを「最強」と呼ぶ証拠はありません。それでも、説明してみることには、自分の理解の穴を教えてくれるという良さがあります。原田英語のおすすめは、本を閉じて、声に出して説明してみることです。言葉が止まった所に印をつけ、本で確かめてから、もう一度説明します。イェール大学の大学院生たちと同じように、穴は、説明しようとしたときにはじめて見つかります。

この記事に出てくる用語
効果量
効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。

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参考文献

  1. Rozenblit L., Keil F. (2002). The misunderstood limits of folk science: an illusion of explanatory depth. Cognitive Science, 26, 521-562.

  2. Lachner A., Jacob L., Hoogerheide V. (2021). Learning by writing explanations: Is explaining to a fictitious student more effective than self-explaining?. Learning and Instruction, 74, 101438.

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