有名な勉強法を判定No.P04
ライトナー方式(暗記カードの箱)は、効率よく覚えられるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
「できたカードは間をあけて、できないカードは何度も」は理にかなっています。落とし穴は、カードの「卒業」です。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 5:21
論文での効果覚えた単語もテストし続けると、後日の記憶が大きく向上
今日からできるやり方
- カードをすべて箱1に入れ、毎回テストする
- 正解は次の箱へ、間違いは箱1に戻す
- 後ろの箱ほど、間をあけてテストする
- 最後の箱のカードも、ときどき引き直す
mashua(マシュア)は、スワヒリ語で「ボート」。
アメリカの大学生たちが、こんな単語のペアを40個覚える実験に参加しました。2008年、心理学者のカーピキーとローディガーが、科学雑誌『サイエンス』に発表した実験です。この結果は、暗記カードを使うすべての人に関わってきます。
一度言えたら、もう覚えた?
学生たちは、まず40ペアを見て覚え、次にテストを受けます。「mashua=?」と出て、英語の意味を答える形です。これを何度かくり返します。
仕掛けは、一度正しく答えられた単語のその後の扱いでした。学生は4つのグループに分かれています。1つ目は、正解した単語も含めて、全部を見直し、全部をテストし続けるグループ。2つ目は、正解した単語はもう見直さないけれど、テストには出し続けるグループ。3つ目は逆に、見直しは続けるけれど、テストからは外すグループ。4つ目は、見直しからもテストからも外す、つまり「覚えたら卒業」のグループです。
練習の終わりには、どのグループもほぼ全部の単語を答えられるようになっていました。覚えるまでの速さにも、差はありませんでした。学生たちに「1週間後に何個思い出せると思うか」を聞くと、どのグループも平均して半分くらいと予想しました。
1週間後のテストの結果は、はっきり分かれました。正解した単語もテストし続けた2つのグループは、約80%を思い出しました。テストから外した2つのグループは、36%と33%。正解したあとに見直しを何度続けても、1週間後の記憶はまったく伸びていなかったのです。そして、学生たちの予想は、実際の成績とほとんど関係がありませんでした。
ライトナーの箱がしていること
この結果をカードの整理法にしたようなのが、ライトナー方式です。ドイツのライトナーが広めた方法で、カードをいくつかの箱に分けて使います。
はじめは全部のカードを1つ目の箱に入れます。テストして正解したカードは次の箱へ進め、間違えたカードは1つ目の箱に戻します。後ろの箱ほど、テストする間隔をあけます。こうすると、できないカードは何度も出てきて、できたカードも間をあけて出てきます。
つまりライトナー方式では、正解したカードもテストからは外しません。カーピキーらの実験でよく覚えていた「テストし続けるグループ」と、同じ形になっているのです。この方式そのものをほかの方法と厳密に比べた研究は、ほとんど見つかりませんでした。それでも、中心の考えは研究とよく合っています。
落とし穴は「卒業」
気をつけたいのは、最後の箱まで進んだカードを「もう覚えた」と箱から出してしまうことです。
2008年、コーネルとビョークは、暗記カードで勉強するときに、覚えたと思うカードを学生が自分で外せるようにする実験をしました。最初の実験では、大学生60人が、スワヒリ語と英語の単語ペアを画面上のカードで学びました。20ペアずつのリストを2つ、10分ずつ学びます。片方のリストでだけ、覚えたと思ったカードを外してよいことにしました。
外せば、まだ覚えていないカードに時間を回せるので、効率がよさそうに思えます。ところが、この実験を含む4つの実験で、外してよいとされた場合の成績は、小さいながら一貫して下がりました。
コーネルらは、カードを外す判断は2つのあやうい土台の上に立っていると述べています。1つは、自分がどれだけ覚えているかの見積もり。もう1つは、もう一度勉強することの価値の見積もりです。カーピキーらの実験で、学生の予想が実際の成績と結びついていなかったことも、これと合っています。
原田英語のおすすめは、ライトナー方式に「卒業」をつくらないことです。最後の箱のカードも、月に一度など、ときどき引き直します。忘れていたら、1つ目の箱に戻せばいいだけです。一度言えた単語ほど、手放したくなります。でも、1週間後に残っていたのは、言えたあとも問われ続けた単語でした。
参考文献
Karpicke J., Roediger H. (2008). The Critical Importance of Retrieval for Learning. Science, 319, 966-968.
doi.org/10.1126/science.1152408✓ 実在と内容を確認済み
Kornell N., Bjork R. (2008). Optimising self-regulated study: The benefits—and costs—of dropping flashcards. Memory, 16, 125-136.
doi.org/10.1080/09658210701763899✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





