数字でわかるNo.N04

英文を辞書なしで楽しく読むには、単語の95%がわかればいいって、ホント?

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読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:半分ホント

95%では、十分に理解できた人は半分に届きませんでした。有名な研究の答えは約98%。ただし、その数字にも追試で疑問が出ています。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

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たとえば、こんな文を読んでみてください。「彼は駅のベンチに座り、かばんから古いもろぱを取り出して、しばらくけしめていた。」

「もろぱ」と「けしめる」は、この文のために作ったでたらめの言葉です。それでも、何か古い物を取り出して、それをどうにかしていた様子は伝わります。でも、何を取り出して、何をしていたのかはわかりません。

知らない単語がどれくらいまでなら、話についていけるのか。この問いに、実際にでたらめの単語を使って答えようとした研究があります。

単語をニセモノに入れかえる

2000年、ニュージーランドのフーとネーションは、英語を学ぶ大学生66人に、英語の短いお話を読んでもらいました。そのお話には、少しずつ違う版が用意されていました。

やり方はこうです。お話の中でもあまり使われない単語を、意味のないニセの単語に置きかえます。置きかえる量を変えて、知っている単語が80%、90%、95%、100%の4つの版を作りました。95%なら、20語に1語が読めない単語です。

読んだあとは、4つの選択肢から答える問題を14問と、内容を思い出して書く問題を解きます。14問中12問以上などの基準を超えたら、「十分に理解できた」とみなしました。

95%では、まだ足りない

結果ははっきりしていました。80%の版では、基準を超えた人はひとりもいませんでした。90%では、ほんの数人。95%になると増えましたが、それでも理解できなかった人のほうが多かったのです。

すべての単語がわかる100%の版でも、両方のテストで基準を超えたのは17人中10人でした。単語を全部知っていても、お話を正しく理解できるとは限らないということです。

フーとネーションは、この結果を統計的に分析し、小説を辞書なしで十分に理解するには、約98%の単語を知っている必要があると結論しました。50語に1語だけ知らない単語がある状態です。この「98%」は、その後の語彙研究で、くり返し引用される数字になりました。

追試では、数字が揺れた

ところが、2023年にクレメルらが、スリランカの大人の学習者104人で同じような実験をしました。すると、もとの結果は完全には再現できませんでした。研究チームは、98%という数字そのものが、66人という少ない人数の分析から出たものだと指摘しています。

2025年には、ウェッブらも、イギリスの大学院で学ぶ上級の学習者94人に、フーとネーションと同じ、600語ほどのお話を読ませました。今度は90%、95%、98%、100%の4つの版です。理解度は、知っている単語が増えるほど上がる傾向がありました。しかし90%、95%、98%の3つの間には、統計的にはっきりした差は出ませんでした。100%の版だけが、90%と95%の版より明らかによくできていました。

フーとネーションと同じ「14問中12問以上」の基準で見ると、超えた人は90%の版で23%、95%で27%、98%で61%でした。98%で大きく増えてはいますが、統計で確かめると、はっきりした差とまでは言えない結果でした。

しかも、単語のカバー率で説明できた理解度のばらつきは、全体の11%ほどでした。読む力は、単語だけでは決まらないということです。

本を選ぶときの目安にする

では、95%と98%のどちらを信じればいいのでしょうか。どの研究でも、知っている単語が多いほど理解しやすいという傾向は共通しています。95%でも、ある程度まで理解できる人は少なくありません。それでも、細かいところまで味わうなら、98%に近いほうが安心です。

98%は、1ページ300語の本なら、知らない単語が6語ほどの状態です。95%なら15語ほどになります。辞書を引かずに楽しく読みたいなら、まず1ページ読んでみて、知らない単語が数個までの本を選びましょう。

原田英語のおすすめは、この数字を厳密なルールではなく、本選びのものさしとして使うことです。98%を下回る本でも、内容が好きなら読み進められることはあります。ただ、知らない単語だらけで苦しいなら、本のレベルを一段下げてみてください。

この記事に出てくる用語
追試
同じ実験をもう一度行い、同じ結果が出るかを確かめること。

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参考文献

  1. Hu, M. H.-c., & Nation, P. (2000). Unknown vocabulary density and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 13, 403-430.

  2. Kremmel B., Indrarathne B., Kormos J., Suzuki S. (2023). Unknown Vocabulary Density and Reading Comprehension: Replicating Hu and Nation (2000). Language Learning, 73, 1127-1163.

  3. Webb S., Pellicer-Sánchez A., Wang A. (2025). Lexical coverage and reading comprehension revisited. Reading in a Foreign Language, 37(1), 1-21.

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