数字でわかるNo.N03
大人になると、もう語彙は増えないって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
増えます。英語のネイティブは、20歳から60歳までに約6000語、2日に1語のペースで語彙を増やしていました。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 5:02
同じ単語テストを、20歳の大学生と、60歳の大人が受けたとします。知っている単語が多いのは、どちらでしょうか。
頭が柔らかい若者のほうだ、と答えたくなるかもしれません。しかし、20万人を超える人のデータで比べると、結果は逆でした。年齢が上の人ほど、知っている単語は多かったのです。
ネット上の「単語の力だめし」
2016年、ベルギーのブライスバールトらは、英語の語彙の大きさを調べるテストをインターネットで公開しました。画面に出てくる文字列から、知っている英単語を選ぶだけの簡単なテストです。中には英語らしく作ったニセの単語がまぜてあり、それを選ぶと点数が引かれます。
受けた人は22万人を超えました。研究チームは、その答えを年齢ごとに整理しました。
20歳のまんなかの人は、テストに使った単語リストの68.0%を知っていました。見出し語、つまり辞書の見出しの形で数えて、約4万2000語です。
60歳のまんなかの人は、78.0%。約4万8200語でした。
差はおよそ6000語です。40年で6000語なら、2日に1語のペースになります。
派生語などをまとめた「基本語」の単位で数え直しても、傾向は同じでした。20歳は基本語の60.8%、60歳は73.2%を知っていました。
70歳まで、なだらかに上がり続ける
年齢と語彙の関係をグラフにすると、線は20歳を過ぎても下がりません。この研究に参加した人たちの範囲では、70歳まで、なだらかに上がり続けていました。
もちろん、子どものころのような勢いはありません。研究チームの計算では、2歳から20歳までの間に、基本となる単語を1日に約1.7語ずつ覚えていることになります。大人になると増え方はゆっくりになります。それでも、止まりはしないのです。
研究チームは、ここからもうひとつのことを読み取っています。人は単語をめったに忘れない、ということです。正確な意味は思い出せなくなっても、「この単語は見たことがある」という知識は残り続けるようです。
何が、大人の語彙を増やすのか
語彙の大きさには、学歴による差もはっきり出ていました。そして、その差の多くは、学校で学んでいる期間に生まれているようでした。研究チームは、読むことと学ぶことが語彙に大きく影響していると考えています。
人が耳や目から受け取る言葉の量も、見積もられています。別の調査では、人が1日に話す言葉は約1万6000語でした。これをもとにすると、会話だけで、20歳までに約2億3400万語、60歳までに7億語以上の言葉にふれる計算になります。
本を読む人は、ここにさらに文字が加わります。研究チームは、極端な読書家の場合も計算しました。1日16時間、1分間に300語の速さで読み続けたとすると、20歳までに目にする言葉は約21億語です。現実にはありえない上限ですが、読む量しだいで、出会う言葉の量が何倍にも変わることがわかります。
ただし、この調査には限界もあります。60歳の人を40年間追いかけたわけではなく、同じ時期に、年齢の違う人どうしを比べたものです。世代による違いがまじっている可能性は残ります。また、「知っている」は自己申告で、意味を説明できるかまでは確かめていません。
「もう若くないから」は、データと合わない
この研究は、英語を母語とする人についての話です。外国語の単語の覚えやすさを、そのまま示したものではありません。それでも、大人になっても新しい単語が少しずつ増え続けるのが、人間のふつうの姿だということはわかります。
単語が覚えられないのを年齢のせいにしたくなったら、この6000語を思い出してください。60歳の人たちの語彙も、40年かけて少しずつ増えてきたものです。
原田英語のおすすめは、1日に1語から始めることです。ネイティブの大人の倍のペースで、1年続ければ365語になります。年齢を気にするより、きょうの1語を気にしたほうが、ずっと実りがあります。
参考文献
Brysbaert M., Stevens M., Mandera P., Keuleers E. (2016). How Many Words Do We Know? Practical Estimates of Vocabulary Size Dependent on Word Definition, the Degree of Language Input and the Participant’s Age. Frontiers in Psychology, 7.
doi.org/10.3389/fpsyg.2016.01116✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





