数字でわかるNo.N01
英語ネイティブ(20歳)が知っている単語は、約2万語って、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
約2万語ではなく、見出し語で数えて約4万2000語。ただし「1語」の数え方しだいで、数字は大きく変わります。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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1946年、研究者のハートマンは、106人の大学生に単語のテストをしました。材料は、大型の英語辞典『メリアム・ウェブスター新国際辞典』の第2版です。40ページごとに同じ位置にある単語を1つずつ抜き出し、50語のリストを作りました。学生は時間の制限なしに、その意味を答えます。
正しく答えられたのは、平均で50語中26.9語でした。この割合を辞書全体に当てはめて、ハートマンは「学生たちは21万5000語を知っている」と結論しました。
タイトルの「約2万語」の、10倍以上です。では、どちらが正しいのでしょうか。2016年に、はるかに大きな規模で調べ直した研究者たちの答えは、そのどちらとも違っていました。
22万人が受けた単語テスト
ベルギーのゲント大学のブライスバールトらは、インターネットで誰でも受けられる単語テストを公開しました。画面には100個の文字列が並びます。67個は本物の英単語で、33個は英単語らしく作ったニセの単語です。受ける人は、知っている単語だけを選びます。
ニセの単語を選ぶと減点される、とあらかじめ伝えてあります。それでも選んでしまったら、その割合を点数から引きます。知ったかぶりの分を差し引くための工夫です。
テストを受けたのは22万1268人。1人が見るのは100個ずつでも、全員分を合わせると、6万1800の見出し語すべてについて答えが集まりました。見出し語とは、辞書の見出しになる形のことです。walk、walks、walked は、まとめて1語と数えます。
このデータから推定すると、平均的な20歳のアメリカ英語の話し手は、リストのおよそ68%、約4万2000の見出し語を知っていました。そのほかに、単語の意味を足しても全体の意味がわからない複数語の表現を、約4200知っていました。
個人差も大きく、下位5%の人で約2万7000語、上位5%の人で約5万2000語でした。「約2万語」は、下位5%の人よりもさらに少ない数字です。
数え方しだいで、10倍変わる
では、ハートマンの21万5000語は何だったのでしょうか。ブライスバールトらによると、この数には人名などの固有名詞、活用した形、派生語、複合語がすべて含まれていました。walked と walking を別の語として数えれば、数はすぐにふくらみます。
逆に、数え方を粗くすると数は小さくなります。develop、development、developer のように、もとの語とその派生語をひとまとめにする単位を「ワードファミリー」といいます。この単位で数えると、20歳の平均は約1万1100でした。
同じ人の語彙でも、数え方しだいで1万1100にも、4万2000にもなるわけです。これまでの研究の推定が「1万語未満」から「20万語以上」まで散らばっているのは、この数え方の違いが大きな理由です。
「知っている」の中身
もうひとつ、気をつけたい点があります。このテストでは、単語を見て知っていると思えば選ぶだけです。意味を説明できるか、自分で使えるかまでは調べていません。
ブライスバールトら自身も、ここでの知識は「その単語があることを知っている」程度の浅いものも含むと書いています。数字は語彙の深さではなく、広さを測ったもので、多めに見た推定だという位置づけです。4万2000語のすべてを使いこなしているわけではありません。
学習者は、数字のどこを見るか
この数を見て、気が遠くなった人もいるかもしれません。でも、ネイティブの4万2000語は、20年分の生活と読書の積み重ねです。比べて落ち込むより、よく使われる単語から順に、確実に増やしていくほうが先です。
原田英語のおすすめは、「〜語必要」という数字を見たら、まず何で数えた数かを確かめることです。見出し語か、ワードファミリーか。それだけで、数字は4倍近く変わります。単語の数は、単位を書かないと意味を持たない数字なのです。
参考文献
Brysbaert M., Stevens M., Mandera P., Keuleers E. (2016). How Many Words Do We Know? Practical Estimates of Vocabulary Size Dependent on Word Definition, the Degree of Language Input and the Participant’s Age. Frontiers in Psychology, 7.
doi.org/10.3389/fpsyg.2016.01116✓ 実在と内容を確認済み
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