教科別の常識No.K40
美術や音楽の授業は、ほかの教科の成績も上げるって、ホント?

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判定:まだ決着していない
作文の成績が伸びた大規模な実験はありますが、芸術がほかの教科の成績を上げるという確かな証拠は、全体としてまだそろっていません。
まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。
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算数と国語のほうが、美術や音楽より大事。世界のほとんどの教育制度が、そういう順番で教科を扱っています。イギリスでは、芸術の関係者や政治家が何年も前から、芸術にも同じくらいの重みを与えてほしいと求めてきました。芸術はほかの学びや、役に立つ力の育ちを助ける、というのがその理由です。
では、その主張には、どれくらいの証拠があるのでしょうか。
7万6000件の報告から
2016年、シーとココツァキは、芸術の学習が子どもの学びにどんな影響を与えるかを、世界中の研究から調べました。11のデータベースを検索して見つかった報告は、7万6195件。その中から200件を選んで分析しました。
結果は厳しいものでした。研究の組み立てに大きな弱点があり、しっかりした証拠と言える研究は1本もなかったのです。
手がかりがあったのは、音楽の訓練と、授業に演劇を取り入れることでした。ただし、研究の弱さに加え、同じ結果が再現されておらず、研究によって結果もばらばらでした。著者らは、成績を上げることが目的なら、芸術がその答えではないかもしれない、と書いています。そして、芸術の目的を、もっと広く考えるべきではないか、とも。
演劇を授業に取り入れると
演劇に絞った研究もあります。2015年、リーらは、授業に演劇の手法を取り入れた研究47本をまとめました。
成績には、プラスのはっきりした効果がありました。芸術家の講師より、担任の先生や研究者が進めたときのほうが、効果は大きくなりました。6回以上行い、国語や理科の授業に組みこんだ場合も同じです。
ただし、47本はどれも、原因と結果を確かめるには弱い組み立ての研究でした。
ヒューストンの42校
その中で、新しい種類の証拠が出てきました。2023年、ボウエンとキシダは、アメリカのヒューストンで、小学校と中学校の42校を対象に実験を行いました。芸術を学ぶ機会を増やす学校を、くじ引きで決めたのです。本物の学校で行った、芸術の学習の大規模なくじ引き実験としては、初めてのものでした。
芸術の機会が増えた学校では、問題行動による処分が減り、作文の成績が上がりました。人の気持ちに心を寄せる共感も高まりました。とくに力を入れた小学校では、学校への積極的な関わりや、大学に進みたいという気持ちも高まっていました。
ただ、成績の面で伸びが報告されたのは作文です。しっかりした実験ですが、まだ1つの都市の結果でもあります。
芸術は、芸術のために
まとめると、芸術がほかの教科の成績を上げるという主張は、全体としてはまだ証拠が足りません。一方で、ヒューストンの実験のように、作文や行動、共感の面で効果が見えた例もあります。
原田英語の考えでは、美術や音楽の時間を「ほかの教科のための時間」として見るのは、もったいないことです。シーとココツァキが書いたように、芸術の目的は、もっと広くていいはずです。絵を描く、歌う、演じる。その時間を、成績のおまけではなく、それ自体の学びとして楽しんでください。
参考文献
See B., Kokotsaki D. (2016). Impact of arts education on children's learning and wider outcomes. Review of Education, 4, 234-262.
doi.org/10.1002/rev3.3070✓ 実在と内容を確認済み
Lee B., Patall E., Cawthon S., Steingut R. (2015). The Effect of Drama-Based Pedagogy on PreK–16 Outcomes. Review of Educational Research, 85, 3-49.
doi.org/10.3102/0034654314540477✓ 実在と内容を確認済み
Bowen D., Kisida B. (2023). Investigating the Causal Effects of Arts Education. Journal of Policy Analysis and Management, 42, 624-647.
doi.org/10.1002/pam.22449✓ 実在と内容を確認済み
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