教科別の常識No.K11

数学は、公式を教わってから問題を解くのがいちばんいいって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:42文献 2件

「数学は、公式を教わってから問題を解くのがいちばんいい」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:半分ホント

計算の手順はどちらの順番でも身につきます。でも、理解や応用は、先に自分で挑戦して、つまずいてから教わるほうが伸びやすいとわかってきました。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

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論文での効果先に問題に挑戦した授業のほうが、成績が上回った(効果量0.36)

今日からできるやり方

  1. 新しい単元は、解説を読む前に例題に挑戦する
  2. 間違っていてもいいので、解き方を何通りか書く
  3. そのあと解説を読み、自分の解き方と比べる

新しいゲームを始めるとき、説明書を最初から読む人と、とりあえず触ってみる人がいます。触ってみる人は、たいていすぐに行き詰まります。ジャンプのボタンがわからない。敵の倒し方がわからない。そこで説明書を開くと、さっきの行き詰まりの意味が一度にわかります。

数学の授業は、たいてい説明書を先に読む順番で進みます。先生が公式と解き方を教え、そのあと生徒が練習問題を解く。考えてみれば当たり前の順番です。知らないことを、教わる前に解けるはずがないのですから。

ところが、この「当たり前」に疑問を投げかけた研究者がいます。

先に、失敗させてみる

2014年、教育研究者のカプールは、新しい数学の考え方を学ぶ2つの順番を比べました。

ひとつは、先に教わってから問題を解く、ふつうの順番。もうひとつは、まだ教わっていない問題に先に自分で挑戦させ、うまくいかなかったあとで教える順番です。カプールはこれを「生産的な失敗」と呼びました。うまくいかないことを見こんだうえで、わざと順番を入れかえた授業です。

生徒をくじで分けた2つの実験の結果、計算の手順は、どちらの順番でも同じようによく身につきました。ちがいが出たのは、その先です。考え方の理解と、初めて見る形の問題に応用する力では、先に挑戦した生徒のほうがはっきり上回りました。

たくさん考えた子ほど

カプールは、生徒が挑戦の時間に何をしていたかも調べました。すると、自分で考え出した解き方の数が多い生徒ほど、あとでよく学べていました。正解にたどりつかなくても、いろいろな解き方を試したこと自体が、あとの学びにつながっていたのです。

2つめの実験では、別の条件も試されました。自分では挑戦せず、ほかの生徒が失敗した解き方を見てから教わる条件です。この生徒たちは、先に教わった生徒よりは成績がよくなりました。しかし、自分で挑戦した生徒には届きませんでした。

53の研究をまとめると

1つの研究だけでは、たまたまかもしれません。2021年、シンハとカプールは、2つの順番を比べた53の研究、166の比較をまとめました。

全体では、問題が先の順番のほうが、中くらいの差で上回りました。効果量は0.36です。「生産的な失敗」の考え方に忠実に作られた授業ほど、その差は大きくなりました。

ただし、例外もありました。小学2〜5年生くらいの年下の子どもたちでは、先に教わる順番のほうがよい傾向が出ていました。教科を問わない一般的な力を学ぶ場合も同じでした。研究者のあいだでも、どちらがよいかの議論は今も熱く続いています。

解説を読む前に、少しだけ

ですから、「公式を教わってから解くのがいちばん」は半分ホントです。手順を覚えるだけなら、どちらでもかまいません。小学生くらいの年下の子では、先に教わるほうがよい場合もあります。けれども、中学・高校で考え方そのものを身につけたいなら、先に挑戦する時間に意味があります。

忘れてはいけないのは、先に挑戦するやり方も、あとでしっかり教わることが前提だという点です。挑戦しっぱなしでは、失敗はただの失敗で終わります。

新しい単元に入ったら、解説を読む前に例題に少しだけ挑戦してみましょう。間違っていてかまいません。思いつく解き方を何通りか書き出します。そのあとで解説を読み、自分の解き方と比べます。行き詰まった経験があると、解説の一行一行が、答え合わせのように頭に入ってきます。

この記事に出てくる用語
効果量
効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。

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参考文献

  1. Kapur M. (2014). Productive Failure in Learning Math. Cognitive Science, 38, 1008-1022.

  2. Sinha T., Kapur M. (2021). When Problem Solving Followed by Instruction Works: Evidence for Productive Failure. Review of Educational Research, 91, 761-798.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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