教科別の常識No.K14
小さいころ算数が得意な子は、その後も数学が得意になりやすいって、ホント?

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判定:半分ホント
入学前後の算数の力は、何年も先の成績をよく予測します。でも、早く教えて作った差が、そのまま将来まで続くとは限りません。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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「過ぎ去ったことは、序幕にすぎない」。
シェイクスピアの劇『テンペスト』の第2幕で、アントーニオが口にするせりふです。2014年、研究者のワッツらは、このせりふを論文の題名に借りました。調べたのは、4歳半のときの算数の力と、15歳のときの数学の成績との関係です。
小さいころに算数が得意だった子は、そのあとも得意なままなのか。この問いには、いくつもの大きな追跡調査が答えを出しています。そして、その答えには少しひねりがあります。
入学したときの算数は、強い手がかり
2007年、ダンカンらは、6つの大規模な追跡データを分析しました。小学校に入学したときのどんな力が、その後の読みと算数の成績を予測するかを調べたのです。入学前の力や家庭の事情は、できるだけ統計的にそろえました。
6つのデータのどれでも、のちの成績をよく予測したのは、入学時の算数、読み、集中する力でした。中でもいちばん強い手がかりは、算数の力でした。読みの力より、算数の力のほうが、のちの読みと算数の成績をよく予測していたのです。
いっぽう、友だちづきあいの力や、落ち着きのなさ、気分の落ちこみといった行動面は、のちの成績とほとんど結びついていませんでした。この傾向は、男女でも、家庭が裕福かどうかでも、似ていました。
4歳半から15歳まで
冒頭のワッツらの研究も、同じ方向の結果でした。4歳半のときの算数の力は、15歳までの数学の成績を予測していました。早い時期の読みの力や知的な力、家庭の特徴をそろえても、この関係は残りました。
さらに、4歳半から小学1年生までの算数の伸びは、15歳の成績をもっと強く予測していました。小さいころの算数は、たしかにその後とつながっています。
先取りすれば、ずっと有利か
では、小さいうちに算数をたくさん教えこめば、その差はずっと続くのでしょうか。ここで話がひねられます。
幼いころの学習支援の効果は、時間とともに小さくなりがちだ、という研究がたくさんあります。早いころの算数の力がのちの成績をよく予測するのに、早く教えた効果は消えていく。この食い違いを説明しようとしたのが、2014年のベイリーやワッツらの研究です。
ベイリーらは、2つの追跡データを使って、子どもの数学の成績を2つの部分に分けて考えました。ひとつは、ずっと変わらずに学びに影響する、その子の特徴。もうひとつは、その時点で身につけている知識です。
分析の結果、変わらない特徴の影響は、その時点の知識の影響よりずっと大きいものでした。早いころの知識そのものが、のちの知識を直接押し上げる部分は、小さかったのです。なお、その特徴の6割ほどは、ワーキングメモリのような、よく調べられている力で説明できました。
つまり、小さいころに算数が得意だった子は、もともと学びを支える特徴を持っていて、それがずっと続いている、という見方です。先取りで知識だけを増やしても、その差は長くは続きにくいと考えられます。
過去は、序幕にすぎない
ここで紹介した研究は、どれも欧米の追跡データにもとづいています。日本にそのまま当てはまるかどうかは、これらの研究だけではわかりません。
それでも、見えてくることがあります。小さいころの算数の出来は、たしかに将来の手がかりになります。でも、それは決まった結末ではありません。早く始めた子に追いつけない、と思う必要もありません。
いまできることは、自分がつまずいている場所を見つけて、そこから一歩ずつ積み直すことです。シェイクスピアのせりふのとおり、これまでのことは序幕にすぎないのですから。
参考文献
Duncan G., Dowsett C., Claessens A., Magnuson K., Huston A., Klebanov P., Pagani L., Feinstein L., Engel M., Brooks-Gunn J., Sexton H., Duckworth K., Japel C. (2007). School readiness and later achievement. Developmental Psychology, 43, 1428-1446.
doi.org/10.1037/0012-1649.43.6.1428✓ 実在と内容を確認済み
Watts T., Duncan G., Siegler R., Davis-Kean P. (2014). What's Past Is Prologue: Relations Between Early Mathematics Knowledge and High School Achievement. Educational Researcher, 43, 352-360.
doi.org/10.3102/0013189X14553660✓ 実在と内容を確認済み
Bailey D., Watts T., Littlefield A., Geary D. (2014). State and Trait Effects on Individual Differences in Children's Mathematical Development. Psychological Science, 25, 2017-2026.
doi.org/10.1177/0956797614547539✓ 実在と内容を確認済み
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