教科別の常識No.K15

数学は、ブロックなど手で動かせる教材を使うとよくわかるって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:36文献 3件

「数学は、ブロックなど手で動かせる教材を使うとよくわかる」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:半分ホント

ブロックなどを使う授業は、平均すると効果があります。でも、本物そっくりの凝った教材は、かえって正答を減らすことがありました。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

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論文での効果55研究・7237人のまとめで、小さめから中くらいの効果

今日からできるやり方

  1. おはじきや線分図など、見た目が単純な物を使う
  2. 手で動かしたら、すぐに式と結びつけて書く
  3. 慣れたら、具体物なしで同じ問題を解いてみる

小学校に入るとき、おはじきや数え棒、時計の模型などが入った「算数セット」を用意した人は多いでしょう。ひとつひとつに名前シールを貼った記憶がある人もいるかもしれません。

数を手で触れる形にすれば、算数はわかりやすくなる。この考えは、学校でも家庭でも広く信じられています。研究は、どこまでそれを支えているのでしょうか。

55の研究のまとめ

2013年、カーボノーらは、ブロックなどの具体物を使う算数・数学の授業を調べた研究を集めました。条件に合ったのは55の研究で、対象は幼稚園から大学までの7237人です。比べた相手は、数字や記号だけで教える授業でした。

全体では、具体物を使う授業に、小さめから中くらいの効果がありました。とくに、学んだことを覚えておく力への効果は、中くらいから大きめでした。

いっぽう、問題を解く力や、学んだことを新しい場面に応用する力、なぜそうなるかを説明する力への効果は、小さめでした。しかも、問題を解く力を調べた研究は9本、説明する力は2本しかなく、まだ確かなことは言えません。効果の大きさは、どう教えたか、どんな方法で研究したかによっても変わっていました。

具体物は、使えば必ず効くわけではない、ということです。

本物そっくりのお金で、正答が減った

使い方によっては、具体物が逆効果になることもあります。2009年、マクニールらは、お金を使う文章題でこれを示しました。

1つめの実験では、小学4年生と6年生229人に、お金の文章題を解いてもらいました。一方の組の子には、問題を解く助けとしてお札と硬貨を配り、もう一方の組には配りませんでした。結果は、お札と硬貨を配られた子のほうが、正しく解けた問題が少なかったのです。

2つめの実験では、小学5年生79人を3つに分けました。本物そっくりの、見た目に凝ったお札と硬貨を使う組。飾りのない、素朴なお札と硬貨を使う組。何も使わない組です。

いちばん間違いが多かったのは、見た目に凝ったお札と硬貨の組でした。ところが、その間違いの中身を見ると、考え方を取り違えた間違いはもっとも少なかったのです。見た目の豊かな教材には、良い面と悪い面の両方があることがわかります。

おもちゃであり、記号でもある

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。2009年、ウタルらは「二重の表現」という考え方で説明しています。

具体物は、それ自体がひとつの物です。同時に、数や量という別のものを表す記号でもあります。見た目がおもしろい物ほど、子どもは物そのものに目を奪われ、それが何を表しているかに注意を向けにくくなります。反対に、物としての特徴に気を取られなければ、具体物と数を結びつけやすくなる、という考えです。

本物そっくりのお札は、つい手に取って眺めたくなります。けれども、問題を解くのに必要なのは、お札の絵柄ではなく、金額という数のほうです。

具体物から、式へ

ですから、具体物を使うなら、見た目が単純な物を選びましょう。おはじきや、線を引いただけの図で十分です。

そして、手で動かしたら、すぐにその動きを式と結びつけて書きます。おはじきを3個と2個に分けたなら、その横に「3+2=5」と書く。慣れてきたら、具体物なしで同じ問題を解いてみます。

具体物は、わかるためのきっかけです。最後は、式だけで解けるところまで移っていくことを目指しましょう。

参考文献

  1. Carbonneau K., Marley S., Selig J. (2013). A meta-analysis of the efficacy of teaching mathematics with concrete manipulatives. Journal of Educational Psychology, 105, 380-400.

  2. McNeil N., Uttal D., Jarvin L., Sternberg R. (2009). Should you show me the money? Concrete objects both hurt and help performance on mathematics problems. Learning and Instruction, 19, 171-184.

  3. Uttal D. H., O'Doherty K., Newland R., Hand L. L., DeLoache J. (2009). Dual representation and the linking of concrete and symbolic representations. Child Development Perspectives, 3(3), 156-159.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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