英語の常識No.E45
「目・鼻・耳」のような仲間の単語は、まとめて覚えると覚えやすいって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
意味の近い単語を一度に覚えると、頭の中で取り違えやすくなります。まとめると覚えやすい、という証拠はありません。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 4:05
frog、green、hop、pond、slippery、croak。カエル、緑、跳ぶ、池、ぬるぬるした、ケロケロ鳴く。この6つの単語を並べると、池のほとりで跳ねる1匹のカエルが浮かびます。
もう1つのリストもあります。eye、nose、ear、mouth、chin。目、鼻、耳、口、あご。こちらは、教科書や単語帳でよく見る「顔の部品」のまとまりです。
どちらも、まとまりのある単語の並びです。でも、覚えやすさは同じではありませんでした。
「顔の部品」と「池のカエル」
1997年、ティンカムはこの2種類のまとめ方を比べました。この2つのリストは、ティンカムの論文に出てくる例です。
英語の授業では、新しい単語を、意味や品詞の似たものどうしでまとめて教えることがよくあります。授業の活動にはそのほうが便利で、一見、覚えやすそうにも思えます。けれどもティンカムによると、このまとめ方が単語を覚えやすくするという研究の裏づけは、ほとんどありませんでした。
調べてみると、結果は「まとめたほうが覚えやすい」という見方とは逆でした。「顔の部品」のような似た単語のまとまりは、覚えるのをじゃましていました。一方、「池のカエル」のような、1つの場面でつながる単語のまとまりは、覚えるのを助けていました。
似た単語は、記憶の中でぶつかる
似た単語がじゃまをし合う理由として、ティンカムが挙げたのは、心理学の「干渉」の考え方です。似たものを同時に覚えようとすると、記憶の中で混ざり合い、区別しにくくなるというものです。
目と鼻と耳は、どれも顔にある、似た種類の言葉です。一度に覚えると、どれがどれだったかがぼやけやすくなります。カエルと池と緑は、種類はばらばらですが、1つの場面に結びつくので、場面ごと思い出せます。
日本の大学生133人で確かめ直す
その後の研究では、結果が一致しないこともありました。そこで2019年、ナカタとスズキは、日本の大学生133人で確かめ直しました。覚えたのは、英語と日本語の単語のペア48組です。その半分は意味の近い単語どうし、残りの半分は関係のない単語どうしでした。
テストの点数では、意味の近い単語と、関係のない単語の間に、はっきりした差は出ませんでした。ただし、意味の近い単語では、別の単語の意味と取り違える間違いが、多く起きていました。
この研究では、間をあけてくり返す効果も調べています。著者たちは、間をあければ、意味の近い単語どうしの混ざり合いが減り、特に効くのではないかと考えていました。ところが、間をあける効果が大きかったのは、むしろ関係のない単語のほうでした。
点数で不利になるかどうかは、研究によって分かれます。それでも、まとめたほうが覚えやすいという結果は出ていません。少なくとも、取り違えが増えることには注意が必要です。
単語帳の並びを組みかえる
原田英語のおすすめは、似た仲間の単語を、日を分けて覚えることです。今日は「目」、明日は「鼻」。そして、同じ日に覚えるなら、1つの場面でつながる単語を組み合わせます。breakfast なら、toast、butter、coffee、table。朝の食卓が1つ浮かべば、単語はその場面ごと残ります。
参考文献
Tinkham T. (1997). The effects of semantic and thematic clustering on the learning of second language vocabulary. Second Language Research, 13, 138-163.
doi.org/10.1191/026765897672376469✓ 実在と内容を確認済み
Nakata T., Suzuki Y. (2019). Effects of massing and spacing on the learning of semantically related and unrelated words. Studies in Second Language Acquisition, 41, 287-311.
doi.org/10.1017/s0272263118000219✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





