英語の常識No.E31

文法は教わらなくても、英語に触れていれば自然に身につくって、ホント?

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判定:ウソ

メタ分析では、文法を的をしぼって教えると大きな効果があり、ルールをはっきり説明するほうが、気づかせるだけより効果的でした。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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「小さな子どもは、文法なんて習わずに日本語を話せるようになる。だから英語も、たくさん触れていれば自然に身につくはずだ」。こんな理屈を、聞いたことがあるかもしれません。

たしかに、私たちは「が」と「は」の使い分けを、だれかに説明されて覚えたわけではありません。では、外国語として英語を学ぶときも、文法の説明はいらないのでしょうか。

100ページを超える大論文

2000年、言語学者のノリスとオルテガは、この問題に正面から取り組みました。1980年から1998年までに発表された、外国語の教え方の効果を実験で調べた研究を集め、その結果をまとめて計算したのです。こうした分析をメタ分析と呼びます。

分析に使えるだけのデータがそろった研究は、49ありました。論文は雑誌の100ページ以上を占め、分析の手順も細かく記録されています。

結果は、はっきりしていました。特定の文法などに的をしぼって教えると、教えた項目で大きな伸びがありました。その効果は、時間がたっても続いていました。

さらに、教え方を「明示的」と「暗示的」に分けて比べています。明示的な教え方は、ルールをはっきり説明するものです。暗示的な教え方は、ルールは説明せず、例にたくさん触れさせて、学習者が自分で気づくのを待つものです。結果は、明示的な教え方のほうが効果が大きい、というものでした。

教え方には、ほかの分け方もあります。会話や読み物など、内容中心の活動の中で文法に目を向けさせる教え方。文法の項目を取り出して教える教え方。この2つは、どちらも同じくらい大きな効果を示しました。

簡単な文法でも、難しい文法でも

それでも、こんな反論が考えられます。「説明が効くのは、簡単なルールだけではないか。複雑な文法は、結局、たくさん触れて身につけるしかないのでは」。

2010年、スパダとトミタは、この点を確かめました。英語の文法項目を扱った41の研究を集め、文法を簡単なものと複雑なものに分けたのです。分け方の基準は、正しい形にたどり着くまでに、いくつのルールを当てはめる必要があるか、でした。

結果、簡単な文法でも複雑な文法でも、明示的な教え方のほうが効果は大きくなりました。しかも、明示的な指導は、テストのように注意して答える場面だけでなく、その場で自由に使う力にもプラスになっていました。

数字を読むときの注意

ノリスとオルテガ自身も、注意を書いています。効果の大きさは、どんなテストで測ったかに左右されていたようです。また、研究ごとに「明示的」や「暗示的」の中身が違い、同じ実験のくり返しも少ない。そのため、結果をどこまで広く当てはめてよいかには限りがある、としています。

「教えれば必ず身につく」とまでは言えません。それでも、「触れていれば自然に身につくから、説明はいらない」という考えは、これらの研究の結果とは合いません。

説明を聞いたら、たくさん使う

原田英語のおすすめは、ルールの説明を短く理解したら、すぐにその文法を含む英文にたくさん触れ、自分でも使ってみることです。説明だけで終わらせず、読む・聞く・書く・話すの中で何度も出会うと、ルールが少しずつ自分のものになっていきます。

母語は、文法を習わずに身につけました。けれども、限られた時間で外国語を学ぶなら、ルールの説明は近道のひとつになります。

この記事に出てくる用語
メタ分析
たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。

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参考文献

  1. Norris J., Ortega L. (2000). Effectiveness of L2 Instruction: A Research Synthesis and Quantitative Meta‐analysis. Language Learning, 50, 417-528.

  2. Spada N., Tomita Y. (2010). Interactions Between Type of Instruction and Type of Language Feature: A Meta‐Analysis. Language Learning, 60, 263-308.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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