食べ物と頭No.D06

イチョウ葉エキスで、記憶力が良くなるって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:13文献 4件

「イチョウ葉エキスで、記憶力が良くなる」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

3000人以上を6年追った試験でも、健康な人の研究をまとめた分析でも、記憶への効果は見つかりませんでした。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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論文での効果健康な人のメタ分析:記憶への効果量はd=-0.04でほぼゼロ

「早ければ4週間ほどで、記憶や注意が良くなる」。処方せんなしで買える商品の中には、そううたって売られるものがいくつもありました。2002年、イチョウ葉エキスを調べたアメリカの研究者たちは、論文の冒頭でこの点にふれました。そして、こうした宣伝は、たいていしっかりした実験では裏づけられていない、と書いています。

イチョウ葉エキスは、記憶や頭の働きのために、広く使われているものの一つです。では、きちんとした実験で確かめると、どうなったのでしょうか。

新聞広告で集まった230人

2002年、ソロモンらは、新聞広告で参加者を募りました。集まったのは、60歳を超える健康な男女230人です。半分の人にはイチョウ葉エキスを1回40mg、1日3回。もう半分の人には、見た目の同じ偽物を、6週間飲んでもらいました。

6週間後、覚える力、注意や集中、物の名前を言う力などを、標準的なテストで調べました。結果は、どのテストでも差がありませんでした。最後まで指示どおりに飲み続けた203人だけで分析し直しても、やはり差はありませんでした。

本人による「物忘れが減った気がするか」という評価でも、配偶者や友人、親せきなど、身近な人による評価でも、2つのグループに違いはありませんでした。著者らは、メーカーの指示どおりに飲んでも、健康な人の記憶には測れるほどの効果がない、とまとめています。

3069人を、6年間追いかける

6週間では短すぎる、と考える人もいるでしょう。それに答えたのが、アメリカのGEM研究です。

2000年から2008年にかけて、アメリカの大学の医療センターで、75歳以上の3069人が参加しました。多くは物忘れのない人で、一部は、認知症の手前の「軽度認知障害」の人です。イチョウ葉エキス120mgを1日2回か、偽物を飲み、半年ごとに、認知症になっていないかを調べました。追跡期間は、真ん中の値で6.1年です。

2008年にデコスキーらが報告した結果では、認知症になったのは、イチョウ葉のグループで277人、偽物のグループで246人でした。途中で抜けたり連絡が取れなくなったりした人は6.3%と少なく、副作用の出方も2つのグループで同じくらいでした。統計的に意味のある差ではありませんが、イチョウ葉のほうが少ない、ということもありませんでした。軽度認知障害の人が認知症に進むのを遅らせる効果も、見られませんでした。

翌2009年、スニッツらは同じ参加者のデータを使い、記憶、注意、物の形をとらえる力、言葉、計画を立てる力の衰え方を比べました。1年ごとに、点数がどれだけ下がるかを見たのです。どの分野でも、2つのグループの衰え方に違いはありませんでした。年齢や性別、学歴などで分けて見ても、結果は変わりませんでした。

若い人なら、効くのか

「高齢者には効かなくても、若い人なら」と思うかもしれません。

2012年、ローズらは、健康な人を対象にした実験をまとめて分析しました。記憶については13の実験、合わせて1132人分のデータがあります。効果の大きさを表す「効果量」という数字は、マイナス0.04でした。ゼロとほとんど変わりません。計画を立てる力でマイナス0.05、注意でマイナス0.08と、ほかの力でもゼロに近いままでした。

さらに、参加者の年齢、飲んだ期間、1日の量、合計の量、実験の人数のどれも、効果の大きさとは関係がありませんでした。若い人なら効く、長く飲めば効く、量を増やせば効く。そうした望みも、データの中には見つかりませんでした。

その6週間を、別のことに

結論ははっきりしています。健康な人がイチョウ葉エキスを飲んでも、記憶が良くなるという証拠はありません。

原田英語のおすすめは、「記憶に効く」とうたう商品に払うお金と時間を、思い出す練習と、日をあけた復習に回すことです。覚えたことを、何も見ずに書き出してみる。数日後に、もう一度やってみる。

6週間イチョウ葉を飲み続けるより、6週間、毎日10分ずつ自分にテストをする。原田英語なら、そちらに賭けます。

この記事に出てくる用語
メタ分析
たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。
効果量
効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。
想起練習(思い出す練習)
教科書を閉じて、自分で答えを思い出す勉強。小テストや問題を解くことも、これにあたる。

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参考文献

  1. DeKosky S., Williamson J., Fitzpatrick A., Kronmal R., Ives D., Saxton J. et al. (2008). Ginkgo biloba for Prevention of Dementia: A Randomized Controlled Trial. JAMA, 300, 2253-2262.

  2. Snitz B., O'Meara E., Carlson M., Arnold A., Ives D., Rapp S. et al. (2009). Ginkgo biloba for Preventing Cognitive Decline in Older Adults: A Randomized Trial. JAMA, 302, 2663-2670.

  3. Laws K., Sweetnam H., Kondel T. (2012). Is Ginkgo biloba a cognitive enhancer in healthy individuals? A meta-analysis. Human Psychopharmacology: Clinical and Experimental, 27, 527-533.

  4. Solomon P., Adams F., Silver A., Zimmer J., DeVeaux R. (2002). Ginkgo for Memory Enhancement: A Randomized Controlled Trial. JAMA, 288, 835-840.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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