食べ物と頭No.D03

チョコレートを食べると、記憶力が上がるって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:02文献 3件

「チョコレートを食べると、記憶力が上がる」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

話題になったのは、カカオ成分を使った中高年の実験でした。数千人規模の試験では、はっきりした効果は出ていません。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)

0:00 / 5:02

論文での効果平均73歳の2262人が3年間カカオ抽出物:認知機能に差なし

チョコレートの原料のカカオ豆には、フラバノールという成分が含まれています。果物や野菜の一部にも含まれる成分で、年をとってからの記憶の衰えとの関係が調べられてきました。

「チョコで記憶力が上がる」という話の火付け役は、2014年に脳科学の専門誌に載った、ブリックマンらの研究です。ところが、そのあとに行われた数千人規模の試験は、別の答えを出しました。

3か月で、記憶の衰えが戻った?

ブリックマンらがねらったのは、記憶に関わる海馬の中にある、歯状回という小さな部分です。年をとるとこの部分の働きが落ち、それが年齢による物忘れの原因の一つではないか、と考えられていました。

研究チームは、まず細かく見られる脳の画像で、年とともに働きが落ちる場所を特定しました。そして、その場所がよく働くときに解ける記憶テストを作りました。そのうえで、50〜69歳の健康な人に、カカオフラバノールを多く含む食事か、少ない食事を、3か月とってもらいました。

すると、多くとったグループでは、脳の画像で見た歯状回の働きも、記憶テストの成績も良くなっていました。

ただ、この研究には気をつけたい点が2つあります。1つめに、比べたのはフラバノールの量で、チョコレートそのものを食べた実験ではありません。2つめに、著者の一人は、菓子メーカーのマース社に所属していました。

2262人が、3年間とり続けた

そのあと、ずっと大きな試験が行われました。アメリカのCOSMOSという大規模な研究の一部で、カカオの成分とマルチビタミンを、1つの試験の中で同時に確かめる計画です。

2023年にベイカーらが報告した研究には、平均73歳の2262人が参加しました。参加者は、カカオから取り出した成分をフラバノールで1日500mg分か、偽物を、毎日3年間とり続けます。頭の働きのテストは、電話で毎年行われました。

結果、カカオの成分をとったグループでも、頭の働き全体に差は出ませんでした。

同じ試験で並べて調べたマルチビタミンのほうでは、小さな効果が報告されています。カカオのほうには、それがありませんでした。

3562人でも、主な結果は「差なし」

同じ2023年、ブリックマンらも、3562人の高齢者を対象にした、さらに大きな研究の結果を発表しました。カカオの成分を1日500mg、3年間とる試験です。前もって決めていた主な評価は、「1年後に、全員の記憶が良くなっているか」でした。

答えは、統計的に意味のある差はなし、でした。

試験を始める前に「何をいちばんの結果として見るか」を決めておくのは、あとから都合のよい結果だけを拾わないためです。そのいちばんの結果で、差は出ませんでした。

ただし、ふだんの食事の質が低い人や、もともとフラバノールをあまりとっていない人に絞ると、記憶が回復していたといいます。参加者のうち1361人では、尿の成分から、フラバノールをどれだけとっているかも調べました。試験のあいだにこの値が上がった人ほど、記憶が良くなる傾向もありました。著者らは、足りない人が補えば戻る、という見方を示しています。

これは、足りない栄養を補うと調子が戻る、という話に近いものです。すでに十分とっている人が、さらに足して上乗せがあるとは限りません。また、全員で差が出なかった以上、一部の人で見えた回復は、次の研究で確かめるべき手がかり、と受け止めるのが慎重な読み方です。

チョコは、ひと息つくおやつに

ここまでの研究は、どれも中高年や高齢者が対象です。学生がチョコを食べて、テストの点が上がるかを調べた研究ではありません。しかも使われたのは、カカオから取り出した成分で、板チョコではありません。

勉強の合間にチョコを一かけ食べて、ほっとする。それは、おやつのよい楽しみ方です。ただ、記憶力アップを期待して箱ごと食べる理由は、研究からは見つかりません。

原田英語の答えは、チョコは「ごほうび」の側に置いておく、です。単語を20個覚えたら一かけ。そのほうが、チョコも勉強も、おいしくなりそうです。

参考文献

  1. Brickman A., Khan U., Provenzano F., Yeung L., Suzuki W., Schroeter H. et al. (2014). Enhancing dentate gyrus function with dietary flavanols improves cognition in older adults. Nature Neuroscience, 17, 1798-1803.

  2. Baker L., Manson J., Rapp S., Sesso H., Gaussoin S., Shumaker S. et al. (2023). Effects of cocoa extract and a multivitamin on cognitive function: A randomized clinical trial. Alzheimer's & Dementia, 19, 1308-1319.

  3. Brickman A., Yeung L., Alschuler D., Ottaviani J., Kuhnle G., Sloan R. et al. (2023). Dietary flavanols restore hippocampal-dependent memory in older adults with lower diet quality and lower habitual flavanol consumption. Proceedings of the National Academy of Sciences, 120, e2216932120.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

あわせて読みたい関連する常識

20問・約2分あなたの勉強法は、科学的に何点?科学度診断をはじめる → 10問・ランダム出題ウソかホントか、見抜けるか?判定チャレンジに挑戦 →