11月2日、GMOインターネットグループの熊谷正寿代表が、不正アクセス問題で初めての謝罪会見を開きました。そこで飛び出したのが「命の砂時計」という言葉。質問が前と重なっているとして「皆様の命の砂時計を無駄遣いしますんで」と記者に返した場面が動画で広まり、一気に話題になりました。意味と元ネタ、会見のやりとり、事件の流れを要点だけまとめます。

30秒でわかる要点
  • 「命の砂時計」は、人生の残り時間を砂時計の砂にたとえた言葉。熊谷氏は会見の前から使っていて、5月には「命の砂時計は、夢だけに注げ。」とXに投稿していた
  • 11月2日の謝罪会見で、質問が前と重なっているとして記者に「同じ回答をすると皆様の命の砂時計を無駄遣いしますんで」と返し、動画が広まって話題に
  • 会見のきっかけは、FX自動売買用サーバー「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセス。約80億円の金銭要求、顧客情報の流出、熊谷氏のSNS投稿への批判が続いていた
この記事は2026年11月2日時点の報道と、GMOインターネットグループ・GMOインターネットの発表をもとにしています。

「命の砂時計」とは?意味と元ネタ

いのちのすなどけい
命の砂時計
= 一人ひとりに残された人生の時間。
砂のように、刻一刻と減っていく。
(熊谷氏の使い方から)

砂時計の砂は、上から下へ一方向にさらさらと落ちていきます。その落ちていく砂を、一秒ごとに減っていく人生の残り時間に重ねたたとえです。熊谷氏の使い方では、「限りある時間を何に使うか、大事に選ぼう」という意味合いになります。

GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏は、会見の前からこの言葉をくり返し使ってきました。5月28日のXには「命の砂時計は、夢だけに注げ。」と投稿し、9月にはAIで自作したアプリを紹介して、「命の砂時計」を夢だけに注ぐためのツールだと書いています。つまり、会見で急に出てきた言葉ではなく、熊谷氏が自分の人生観を語るときに使ってきた表現です(熊谷氏が最初に言い出した言葉かどうかは確認できていません)。

いつ どんな使い方?
2026年
5月28日
X投稿
「命の砂時計は、夢だけに注げ。」=限られた時間は夢のためだけに使え
9月
X投稿
AIで時間を節約して、「命の砂時計」を夢だけに注ぐ
11月2日
会見
質問が重なっているとして、同じ回答をすると「皆様の命の砂時計を無駄遣い」してしまう
11月2日
会見
GMOの理念を語る場面で「『命の砂時計』を何に捧げているのかというのが人生であり…」

会見で何があった?「命の砂時計を無駄遣い」の場面

記者会見場の上に光る砂時計が浮かび、同じ形のはてなマークの吹き出しがいくつも並ぶイラスト

問題の場面は、会見の質疑応答で起きました。ある記者が、2年前にグループ内の専門家から受けていた指摘について質問。熊谷氏は、質問が先ほどと重なっているとして、こう返しました(ABEMA TIMES の報道より。記者の質問は要約、熊谷氏の発言は報道された言葉のままです)。

記者
(要約)2年前に専門家から具体的にどんな指摘があったのか。当時リスク分析の判断が甘くなった背景は何か。事業の継続やコストを優先した影響はあったのか。
熊谷氏
ご質問が先ほどと重なっていらっしゃる。(中略)願わくば、人数が多いので、同じ回答をすると皆様の命の砂時計を無駄遣いしますんで、大変恐縮なんですが、なるべく違うご質問でご質問いただけたらよろしいかと思います。
熊谷氏
ごめんなさい。失礼なこと申し上げているのはわかってるんですけどお許しください。
記者
ちょっと具体的に答えていただきたい。
熊谷氏
具体的とは? 先ほど、具体的にお答えしたと思いますけど。
記者
その当時何があったのか、もう少し詳細に教えてください。
→ このあと、担当の山下浩史副社長が説明を引き取りました。

また会社側は、指摘された脆弱性(システムの弱点)の中身について「今後同じような攻撃等を含めてリスクがありますので、この場での明言は避けさせていただきたい」と、具体的な説明を控えました(ニコニコニュースの会見動画より)。こうした場面を収めた動画がXで広まり、「命の砂時計を無駄づかい」というフレーズを複数のメディアが取り上げました。

なぜこんなに話題になった?3つの理由

1
謝罪会見の場で「なるべく違う質問を」
熊谷氏は、質問が先ほどと重なっているとの認識を示し、出席者が多いので別の質問をしてほしいと求めました。一方で記者はさらに具体的な説明を求めていました。説明責任が問われる会見でのこのやりとりに、受け止めが分かれました。
2
「時間」ではなく「命の砂時計」
謝罪会見ではあまり聞かない独特のたとえだったため、その言い回しと会見の場面との落差が目を引き、複数のメディアが見出しに取り上げました。
3
会見の前からSNS投稿で注目されていた
事件のさなかに笑顔の写真を投稿したことなどで批判を浴び、会見でも謝罪していました。もともと注目が集まっていたところに、印象の強い言葉が重なりました。

一連の事件を3分でまとめ

発端は、グループ会社のGMOインターネットが提供する「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスです。これは、FX(外国為替証拠金取引)の自動売買ソフトを24時間動かすための仮想サーバー(VPS)。そこに攻撃者が入り込み、顧客の情報が持ち出され、顧客の意思によらないFX口座の取引による損失まで報告されました。

約80億円攻撃者が脅迫メールで要求した金額(GMOは支払いを拒否)
2万6739台影響を受けた可能性があるサーバーの数(第1報)
2か月侵入(2026年8月20日)から発覚(10月20日)まで
2024年子会社がシステムの弱点を指摘していた年

時系列(タイムライン)

  1. 2024年4月子会社のGMOサイバーセキュリティ byイエラエが、システムの脆弱性を報告。4〜5月に緊急メンテナンスを4回したが、抜本的な改善には至らず
  2. 2026年
    8月20日
    攻撃者が侵入(会見での説明)
  3. 10月20日不正なプログラムが置かれているのを確認=発覚
  4. 10月21日午前4時から全プランのサーバーを順次停止し、第1報。攻撃者から約80億円を要求する脅迫メール。GMOは支払いを拒否。顧客の意思によらないFX取引も報告される
  5. 10月24日その時点の利用者全員に一律5,000円のお見舞金、不正取引の損失補償、代替サービスを6か月無料で提供すると発表。同じころ攻撃者は自分のサイトで、27日正午までに100万ドルを払わなければ顧客情報を公開すると脅す
  6. 10月27日攻撃者が顧客1人分の個人情報をネットに掲載。GMOは、情報が公開された人への特別お見舞金(公開された情報の区分ごとに1万円・1万5,000円・2万5,000円を合計。1回の公開につき上限300万円)を発表。同じ日の夜、熊谷氏が笑顔の自撮り写真つきの投稿をして批判が集まる
  7. 10月28日GMOが、犯人の特定につながる情報に報奨金を出す懸賞金サイトを開設(総額の上限100万ドル=約1億5,000万円)
  8. 10月29日熊谷氏がXで、SNS投稿について謝罪
  9. 11月2日初めての記者会見。熊谷氏が謝罪し、役員報酬の減額を発表。「命の砂時計」発言

会見で認めたこと・決めたこと

認めた システムにセキュリティ上の問題があったのは「事実」。2024年の子会社の指摘を「サービスの運営において活かすことができませんでした」
理由 社内で情報を上に報告する基準が整っておらず、熊谷氏には報告されていなかった(グループ副社長でGMOインターネット社長の伊藤正氏は把握していたと説明)
処分 役員報酬を3か月減額。熊谷氏30%、伊藤副社長25%、山下副社長と児玉常務執行役員が各20%
SNS 笑顔の写真は「我々には脅迫はきかないよ」という牽制のつもりだったが「結果的には間違い」。犯人側の動きがなければXはいったん休止する考え

SNS投稿は何が問題だった?

事件のさなか、熊谷氏のXの投稿がたびたび批判されました。熊谷氏は10月29日にXで、①被害に遭った人に関わる事柄に触れた投稿 ②笑顔の写真の投稿 ③自社の陸上部について投稿した人へのコメントの3つを謝罪し、会見でも「いずれも被害に遭われた方のお気持ちへの配慮が欠けておりました」とあらためて謝りました。

笑顔の写真 被害が続くなかで、笑顔の写真を投稿(国際刑事警察機構に相談したという報告にも自撮りを添えた)
被害者に
触れた投稿
犯人が公開した被害者の情報について、家族構成に触れる投稿をした。J-CASTニュースなどは「公開された情報が事実だと認めたように受け取れる」との指摘を伝えた
刑事告訴の
警告
情報を広めたとする人に「指定の時刻までに削除されないと刑事告訴いたします」と返信。J-CASTニュースは、公開された情報そのものを投稿していないアカウントにも送っていたと報じた。GMOは、犯人のサイトへの誘導につながる投稿を基準に確認しており、基準に当たらないものは要請を取り下げる、意見そのものは対象ではないと説明している(謝罪した3つとは別)
陸上部への
コメント
自社の陸上部について投稿した人へのコメントが不適切だったとして謝罪

「命の砂時計」を英語で言うと?

英語にも、時間を砂時計の砂にたとえる言い方があります。せっかくなので覚えておきましょう。

the hourglass of life
命の砂時計(説明的な直訳。決まった言い方ではないので、意味を添えて使う)
the sands of time
時の砂=過ぎていく時間。少し文学的な決まった言い方
Time is running out.
残り時間が少ない。時間切れが近い
waste someone’s time
(人の)時間を無駄にする
The sands of time are running out.(残された時間はもう少ない。)I don’t want to waste your time.(皆さんの時間を無駄にしたくありません。)

会見の「皆様の命の砂時計を無駄遣いしますので」を英語っぽく言いかえるなら、I don’t want to waste your precious time.(皆さんの貴重な時間を無駄にしたくない)くらいが自然です。

ほかの「命の砂時計」とまちがえないで

「命の砂時計」で検索すると、ほかの作品も出てきます。演歌歌手・伍代夏子さんのシングル「いのちの砂時計」(2024年5月22日発売)や、遊戯王OCGのカード「命の砂時計」もあります。今回の発言とのつながりを示す情報は見当たりません。

よくある質問

Q. 「命の砂時計」の意味は?
人生の残り時間を、一方向に落ちていく砂時計の砂にたとえた言葉です。「限りある時間を何に使うか大切に選ぼう」という意味で使われます。
Q. 誰の言葉?元ネタは?
GMOインターネットグループの熊谷正寿代表が、会見の前から使ってきた言葉です。5月28日には自身のXで「命の砂時計は、夢だけに注げ。」と投稿していました。熊谷氏が最初に言い出した言葉かどうかは確認できていません。
Q. 会見で何と言ったの?
11月2日の不正アクセス問題の会見で、質問が先ほどと重なっているとして「同じ回答をすると皆様の命の砂時計を無駄遣いしますんで、大変恐縮なんですが、なるべく違うご質問でご質問いただけたら」と記者に求め、「失礼なこと申し上げているのはわかってるんですけどお許しください」とも述べました。
Q. そもそも何の事件?
FX自動売買用のサーバー「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスです。2026年8月20日に侵入され、10月20日に発覚。顧客の情報が持ち出され、攻撃者は約80億円を要求しましたが、GMOは支払いを拒否しています。
Q. 被害にあった人への補償は?
発表時点の利用者全員に一律5,000円のお見舞金、不正な取引で出た損失の補償、代替サービスの6か月無料提供が発表されています。犯人に情報を公開された人には別に特別お見舞金があり、公開された情報の区分ごとに1万円・1万5,000円・2万5,000円を合計します(1回の公開につき上限300万円)。
Q. 熊谷正寿さんってどんな人?
1963年生まれ。1991年にボイスメディア(今のGMOインターネットグループ)を設立した創業者で、グループの代表を務めています。著書に『一冊の手帳で夢は必ずかなう』などがあります。

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参考にした報道・資料