同じ顔でも「既婚」と書くと女性38人の評価が上がったが、対面の実験では上がらなかった

読む前に予想してみよう!
恋人や結婚相手がいると分かると、だれでも必ずモテるようになる
写真や映像の実験では「選ばれた人」の評価が少し上がることが多いが、男女が実際に会うスウェーデンの実験では、婚約中のしるしがあっても魅力は上がらなかった。
- 対象
- 大学生など(カナダ・アメリカ・スウェーデン・トルコ)
- 規模
- 写真・映像・カードの実験は1回38〜229人。対面の実験と、ヒトの研究をまとめたメタ分析もある
- 研究の種類
- 実験(同じ人の評価が、ほかの人に「選ばれた」と分かると変わるかを比べた)
- 確かさ
- ★★★☆☆
同じ男性の写真でも「既婚」と書くと、女性38人の評価が上がった。選ばれた相手を選びたくなる傾向は男女どちらにも見られたが、対面の実験では起きなかった。
ひとことで言うと「だれかに選ばれた人」は少しよく見える。でもいつもではない!
もくじ
「いい人は、みんなもう相手がいる」。恋愛の悩みでよく聞くセリフです。ところが、同じ男性の顔写真に「既婚」と書き添えるだけで、魅力の点が上がった実験があります。
カナダの研究者2人の実験です。女性38人に男性の顔写真を見せました。同じ写真に、半分の人には「既婚」、残りの人には「独身」と書いてあります。7段階でつけた魅力の点は、平均で「既婚」3.65点、「独身」2.96点でした。
ほかの人が選んだ相手を、自分も選びたくなる。この現象は「配偶者選びのまねっこ」と呼ばれ、鳥や魚などの動物でよく知られています。配偶者とは、つがいや結婚の相手のことです。ところが、男女が実際に顔を合わせる実験では、婚約中のしるしがあっても魅力は上がりませんでした。「相手がいる人はモテる」は、半分だけ当たっているようです。
01「相手がいる男性ほど魅力的に見える」のかを確かめた
始まりは1999年です。カナダのマクマスター大学で、独身の大学院生だった2人が議論しました。「いい男にはみんなもう相手がいる」のではなく、「相手がいる男がよく見える」のではないか、と考えたのです。
実験はシンプルでした。心理学の授業を受けている女子学生に、男性10人の顔写真と短い紹介文を見せます。違いは「結婚しているか」の欄だけです。同じ写真でも、ある人には「既婚」、別の人には「独身」と表示しました。
論文の終わりには、編集部からの一言がついています。「7年後のいま、著者は2人ともとても幸せに結婚している(おたがいとではない)」。
著者たち自身は、この結果を「女性が既婚の男性を求めている」とは読んでいません。「既婚」の文字は、長くつき合う気がある人だと伝えるしるしになったのかもしれない、と書いています。
02ほかの人が選んだ相手をよく思う傾向は、人にもある?
ただ、写真に「既婚」と書くだけの実験は、本物の出会いとはかけ離れています。人でも「まねっこ」が起きるのかを、より本物に近い場面で確かめたのが、2010年のアメリカのインディアナ大学などのチームです。
使ったのは、ドイツ・ベルリンで本当に行われた「スピードデート」の映像です。独身の男女が1組3分ずつ話し、終わると「また会いたいか」を答えます。
参加したのはアメリカの大学生80人(女性40人・男性40人)で、ドイツ語は分からない人たちです。まず異性8人の顔写真を見て、「一時的な関係の相手として」「長くまじめな交際の相手として」の興味を9段階でつけます。次に、その人がデートしている10秒の映像を見て、2人がおたがいに気に入ったかを判断します。そのあと、同じ写真にもう一度点をつけました。
結果、「この2人はうまくいった」と思った相手は、「うまくいかなかった」と思った相手より、2回目の点が高いほうへ動いていました。男女どちらでも、その差は9段階でおよそ0.5点でした。ただし動き方には男女差がありました。女性は「うまくいかなかった」と見た相手の点を下げ、男性は「うまくいった」と見た相手の点を上げていました。男性は、デート相手の男性が魅力的なときに、より強くまねていました。

03どんでん返し:実際に会うと、評価は上がらなかった
写真や映像ではなく、実際に会ったらどうなるのか。スウェーデンのヨーテボリ大学の2人は2003年、「結婚指輪効果」と呼ばれる説を、男女が実際に顔を合わせる実験で試しました。
結果ははっきりしていました。女性たちは、婚約中だと示すしるしのある男性や、恋人がいると感じた男性を、より魅力的とは評価しませんでした。収入や地位が高そうだとも思わず、短い交際・長い交際への興味も変わりませんでした。著者たちは、単純な「まねっこ」の説に疑問を示しています。
研究をまとめて調べたメタ分析もあります。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学などのチームが2018年に発表しました。女性が男性を評価するときは、となりに女性がいると評価が上がる傾向が見られました。一方、男性が女性を評価するときには、はっきりした効果が見られませんでした。
ただし、となりの人の魅力を変えて比べる実験では、男女とも「より魅力的な人と一緒にいる相手」を高く評価しました。研究ごとの結果のばらつきは大きく、「効果あり」の論文ほど発表されやすい偏りも、中くらいの強さで見つかっています。
04「人が選んだ相手を選びがちなのは女性」は本当か
動物の研究では、まねっこは長く「メスの行動」とされてきました。この見方を正面から確かめたのが、トルコのビルケント大学のチームです。2025年に発表しました。
男女で同じ材料を見せるため、顔写真は使いません。実際のスピードデートに参加した人の「プロフィールカード」を作りました。カードには、その人の魅力・知性・ユーモアの評価と、好きな活動が書かれています。さらに「相手6:YES/相手10:NO」のように、デートした相手の返事が2人分のっています。
大学生など229人(女性137人・男性92人)が、「この人とデートしたいか」を7段階で答えました。YESが多いカードほど点が高くなり、15人分の比べ方すべてで同じ向きの差が出ました。点の動きは女性が平均0.36点、男性が0.31点で、男女差は見られませんでした。
似た話に、ほかの顔と並ぶと同じ顔が少しよく見えるチアリーダー効果や、会う前の希望が実際の好みと合わない理想のタイプの研究もあります。
05まとめ
だれかに選ばれた相手を、自分も少し高く評価してしまう。写真や映像、カードを使った実験では、この傾向が男女どちらにも見られました。
ただし、差は小さく、男女が実際に会ったスウェーデンの実験では起きませんでした。人は相手を、まわりの評価だけで決めているわけではありません。次は、写真ではなく実際の出会いの場で、まねっこがどこまで働くのかが調べられる番です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 2010 study in the United States, 80 college students first rated photos of people from speed dating…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Two students in Canada had an idea. Maybe a man with a wife looks better to women.
Later, they showed 38 women photos of ten men. Some women saw the word "married" with a photo. Others saw "single" with the same photo. The women gave higher scores to the "married" men.
But a study in Sweden was different. There, women met the men in person. Men with a partner did not look more attractive.
74 words ・ CEFR A2
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カナダの2人の学生が、ある考えを持った。妻のいる男性は、女性にはよく見えるのかもしれない。
のちに2人は、38人の女性に10人の男性の写真を見せた。ある女性たちは、写真といっしょに「既婚」という言葉を見た。ほかの女性たちは、同じ写真といっしょに「独身」を見た。女性たちは「既婚」の男性に高い点をつけた。
しかし、スウェーデンの研究はちがった。そこでは、女性が男性と実際に会った。相手のいる男性が、より魅力的に見えることはなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
相手のいる男性が魅力的に見えるかを調べた話なので、正解は B。
Q2. Which men got higher scores in the Canadian study?
「The women gave higher scores to the "married" men.」とあるので、正解は C。
Q3. In the passage, "different" in "a study in Sweden was different" means the Swedish study ___.
スウェーデンでは相手のいる男性が魅力的に見えなかったとあり、カナダの結果と「同じではなかった」という意味なので、正解は B。
In a 2010 study in the United States, 80 college students first rated photos of people from speed dating events in Berlin. Then they watched a ten-second video of each person on a three-minute date. The talk was in German, which the students did not understand, so they had to guess from faces, tone of voice and body language whether the two people liked each other.
After that, they rated the same photos again. When the students thought a date had gone well, their ratings moved up by about half a point more on a nine-point scale than when they thought it had not. Men and women both showed this change. Scientists call it mate choice copying, and it is well known in many birds and fish.
127 words ・ CEFR B1
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2010年のアメリカの研究で、80人の大学生が、まずベルリンのスピードデートの会に来た人たちの写真を評価した。次に、それぞれの人が3分間のデートをしている10秒の映像を見た。会話はドイツ語で、学生たちには分からなかったので、2人がおたがいを気に入ったかどうかを、表情や声の調子、身ぶりから推測しなければならなかった。
そのあと、同じ写真をもう一度評価した。デートがうまくいったと思ったときは、そう思わなかったときと比べて、評価が9段階でおよそ0.5点多く上がった。男性も女性も、この変化を見せた。科学者はこれを「配偶者選びのまねっこ」と呼び、多くの鳥や魚でよく知られている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
うまくいったデートを見ると評価が変わったという実験の話なので、正解は B。
Q2. How long was each video clip?
「watched a ten-second video」とあるので、正解は B。3分はデート全体の長さ。
Q3. Why did the students have to guess from faces, tone of voice and body language?
会話はドイツ語で学生には分からなかった、とあるので、正解は B。
Can being taken make someone more appealing? In a small experiment by two Canadian researchers, 38 women rated photos of men, and the same face scored higher when it was labeled "married" than when it was labeled "single." The two authors had first argued about the idea as single graduate students in 1999.
Later research has given a mixed answer. In Sweden, women who met men in person did not find men showing signs of engagement any more attractive. A 2018 review that pooled human studies found that women rated men more highly when a woman appeared beside them, while men showed no clear effect of this kind. The same review found large differences between studies and a moderate bias toward publishing positive results.
Then a 2025 study in Turkey used text-only profile cards, so that men and women saw exactly the same material. Each card listed whether two earlier speed-dating partners had said yes or no. Both sexes rated a profile higher when more partners had said yes, and the shift was about a third of a point on a seven-point scale for each.
185 words ・ CEFR B2
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相手がいることで、人はより魅力的になるのだろうか。カナダの研究者2人による小さな実験で、38人の女性が男性の写真を評価した。同じ顔でも、「既婚」と表示されたときのほうが、「独身」と表示されたときより点が高かった。
2人の著者は、1999年、独身の大学院生だったときに、この考えについて議論を始めていた。その後の研究の答えは、すっきりしない。スウェーデンでは、男性と直接会った女性たちは、婚約のしるしを見せる男性を、より魅力的とは感じなかった。ヒトの研究をまとめた2018年の総説では、となりに女性がいると女性は男性を高く評価したが、男性にはこの種のはっきりした効果は見られなかった。同じ総説は、研究ごとの差が大きく、よい結果ほど発表されやすい中程度の偏りがあることも見つけた。
そして2025年、トルコの研究は文字だけのプロフィールカードを使い、男女がまったく同じ材料を見るようにした。各カードには、以前のスピードデートの相手2人が「YES」と言ったか「NO」と言ったかが書かれていた。男女とも、YESと言った相手が多いほどプロフィールを高く評価し、その動きはどちらも7段階でおよそ3分の1点だった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
相手がいる・選ばれたことで魅力が上がるかについて、研究ごとに結果が分かれていることを述べているので、正解は B。
Q2. Why did the 2025 study use text-only profile cards?
「so that men and women saw exactly the same material」とあるので、正解は B。
Q3. What can we infer from the 2018 review?
よい結果ほど発表されやすい偏りがあったと述べているので、発表された証拠は実際の効果より強く見えている可能性がある。正解は B。
重要単語
- attractiveB1形容詞魅力的なThe town looks more attractive in spring.
attract(引きつける)+-ive。名詞は attractiveness(魅力) - copyA2動詞まねる、写すYoung birds copy the songs of older birds.
名詞でも使う。mate choice copying は「配偶者選びのまねっこ」 - labelB1動詞・名詞(札・言葉を)つける/ラベルEach photo was labeled with a name.
発音は「レイベル」。be labeled as ~ で「~とレッテルをはられる」 - engagementB2名詞婚約They announced their engagement last week.
engaged(婚約している)の名詞形。engagement ring は「婚約指輪」 - biasB2名詞偏り、えこひいきThe survey had a bias toward young people.
publication bias は「よい結果ほど発表されやすい偏り」 - mixedB1形容詞まちまちの、賛否が分かれたThe new movie got mixed reviews.
mixed results(結果がまちまち)は入試の長文にもよく出る
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同じ男性の顔写真に「既婚」と書くと、「独身」より魅力の点が上がった(女性38人の実験)。選ばれた相手を自分も選びたくなる傾向は、男女どちらにも見られた。ただし、男女が実際に会う実験では起きなかった。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Eva & Wood (2006) Are all the taken men good? An indirect examination of mate-choice copying in humans, Canadian Medical Association Journaldoi.org
- Place, Todd, Penke & Asendorpf (2010) Humans show mate copying after observing real mate choices, Evolution and Human Behaviordoi.org
- Uller & Johansson (2003) Human mate choice and the wedding ring effect, Human Naturedoi.org
- Gouda-Vossos, Nakagawa, Dixson & Brooks (2018) Mate Choice Copying in Humans: a Systematic Review and Meta-Analysis, Adaptive Human Behavior and Physiologydoi.org
- Bowers, Pınar, Sarıyıldız & Parlak (2025) Is mate-choice copying a female phenomenon?, Evolution and Human Behaviordoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







