赤い服の「モテ効果」、約5700人分の実験をまとめたら小さく縮んでいた

読む前に予想してみよう!
女性の写真の背景やシャツを赤にすると、男性からの魅力の評価が大きく上がることが、追試でもくり返し確かめられている
2008年の実験では赤のほうが高かったが、大人数の追試では差がほぼ出ないものが多かった。約2960人分をまとめた分析でも、差は「小さい」だった。
- 対象
- 写真の人物の魅力を評価した大学生やネットの参加者
- 規模
- 約5,700人(81の比較)
- 研究の種類
- メタ分析(多くの実験をまとめ直す分析)
- 確かさ
- ★★★☆☆
「赤を身につけた女性は、男性から魅力的に見える」という2008年の実験。約5700人分の実験をまとめ直すと、差は小さく、女性が男性を見る場合はごくわずかだった。
ひとことで言うと赤い服で魅力が上がる効果は、調べ直すとかなり小さかった!
「デートには赤い服」。そんな話を聞いたことがあるかもしれません。2008年、アメリカの心理学者が「赤を身につけた女性は、男性からより魅力的に見える」という実験を発表し、注目を集めました。
ところが、その後10年ほどの間に各地で行われた実験を集めてまとめ直すと、約5700人分のデータで赤の効果は「小さい」。女性が男性を見る場合は「ごくわずか」でした。しかも、このまとめ直しには、2008年の実験をした研究者の1人が加わっていました。
01同じ写真で、まわりの色だけを変えた
2008年の実験を発表したのは、アメリカのロチェスター大学のエリオット(Elliot)さんと、共同研究者のニエスタ(Niesta)さんです。手がかりは動物でした。人間以外の多くのサルの仲間では、メスの赤い色がオスを引きつけるとされます。人間にも似たことがあるのではないか、と考えたのです。
シャツの色を変えた実験では、赤いシャツの女性のほうが「デートに誘いたい」「デートにお金を使ってもいい」という気持ちも高かったと報告されています。2010年には、2人を含む研究チームが、女性が男性を見る場合も同じだったという7つの実験を発表しました。
02大人数でやり直すと、差が出ない
ほかの研究者が試すと、差が出ない例が目立ち始めます。オランダなどのチームは2016年、オランダの大学で集めた男性206人と、主にアメリカのネットの参加者の男性191人に、赤・白・黒のシャツを着た同じ女性の写真を見せました。どちらでも、赤の女性がいちばん魅力的とは評価されませんでした。参加者自身も、「表情」「服」「色」のうち、色の影響がいちばん小さかったと答えています。
同じチームは、赤いシャツの女性は「恋愛に積極的そうに見える」という結果が出ていた別の研究も、同じ写真・同じ質問でやり直しました。元の研究の男性は25人。やり直しは433人と、17倍以上です。結果は、赤と白で差がありませんでした。3つの実験の男性は合わせて830人です。
アメリカのドミニカン大学のチームも、2017年に「追試」を発表しました。追試とは、同じ実験をやり直して結果を確かめることです。チームは元の研究の写真などを取り寄せ、実験の前にやり方と分析の計画をネットで公開しました。これを事前登録といいます。あとから都合のよい分析を選べないようにするためです。結果は、男性242人ではごくわずかに赤が上、女性360人ではごくわずかに逆向きで、どちらもほぼ差なしでした。
2019年には、女性が男性の写真を評価する実験を、学生の研究チームが事前登録してやり直した結果もまとめられました。合わせて640人で、赤の効果は見られませんでした。

03提唱者も加わって、全部まとめ直した
2018年、ドミニカン大学のレーマン(Lehmann)さん、カリン=ジャジェマン(Calin-Jageman)さんと、2008年の実験をしたエリオットさんが、一緒にデータを分析しました。考え方が反対の研究者どうしの共同研究です。
3人は、発表された論文だけでなく、研究者に呼びかけて未発表の実験のデータも集めました。こうして多くの研究をまとめ直す方法を、メタ分析といいます。
差が出なかった実験は、論文として発表されないことがあります。発表された論文だけを集めると、差が実際より大きく見えるおそれがあります。これを出版バイアスといいます。
結果は「効果の大きさ」で表します。赤とほかの色の点数の差が、人による点数のばらつきと比べてどれくらいかを示す数字です。心理学では、その大きさを「小さい」「中くらい」「大きい」などと呼び分けます。
- 男性が女性を評価:45の比較、2961人。赤のほうがやや高かったが、効果の大きさは「小さい」
- 女性が男性を評価:36の比較、2739人。差は「とても小さい」。しかも、実際より大きく出ている形跡があった
データのうち、男性では48%、女性では64%が未発表の実験のものでした。新しい実験ほど差が小さくなる傾向も見られました。女性が男性を評価した実験では、事前登録した8つの比較だけで見ると、赤の効果はほぼゼロでした。
どれほど小さいのかは、論文自身が人数で示しています。この大きさの差を確かめるには、赤のグループと別の色のグループに、男性なら1グループ234人、女性なら930人ほどが必要だといいます。2008年の実験は、1グループ11〜20人でした。
ただし3人は、結果の読み方では一致せず、論文に2つの意見を並べました。レーマンさんたちは「本当の効果はとても小さく、ゼロかもしれない」。エリオットさんは「男性が女性を見る場合は、小さいが確かな効果がある。人数を増やし、色の作り方や見せ方に気を配った実験が必要だ」。エリオットさんは、このまとめに入った発表済みの研究には、人数と色の扱いの2点だけで見ても手本と言えるものが一つもない、とも書いています。
04服の赤より「顔の赤み」
同じ論文には、別のまとめも載っています。服や背景ではなく、写真の顔の赤みを強くした実験です。こちらは男性が女性を見る場合も、女性が男性を見る場合も、赤みのある顔のほうが魅力的と評価されました。効果の大きさは、男性が女性を見る場合で「中くらい」、女性が男性を見る場合はそれより少し小さめです。3人とも、この結果は確かだと認めています。
ただし、白人の参加者では顔の黄色みも魅力を上げるという研究があります。加工していないふつうの写真では、顔の赤さと魅力の評価がいつも一致するわけではありません。顔が赤くなるしくみは、顔が赤くなる理由を調べた記事もどうぞ。スポーツの赤いユニフォームをめぐる論争は、格闘技の「赤の勝率」の記事にまとめています。
05まとめ
「赤い服でモテる」は、少人数の実験で見えた大きな差が、追試とまとめ直しでぐっと小さくなった例です。一方、顔の赤みの効果は今のところ確かなようです。服の赤に小さな効果が本当にあるのか、ゼロなのか。決め手は、色の作り方と見せ方をそろえた、大人数の事前登録の実験です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2008, Andrew Elliot of the University of Rochester and a colleague ran five small experiments.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In 2008, a research team in the United States showed young men a photo of a woman. Some men saw the photo with a red background. Others saw it with another color, such as white or gray.
The men who saw red gave the woman higher scores. The researchers said this could matter for dating. But later, other teams tried the test with many more people. Most of them found almost no difference.
73 words ・ CEFR A2
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2008年、アメリカの研究チームが、若い男性たちに1人の女性の写真を見せた。ある男性たちは、背景が赤い写真を見た。ほかの男性たちは、背景が白や灰色など別の色の写真を見た。
赤を見た男性たちは、その女性に高い点をつけた。研究者たちは、この結果は恋愛にかかわるかもしれないと述べた。しかしその後、ほかのチームがもっと多くの人で同じテストを試した。そのほとんどでは、差はほとんど見つからなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
赤い色によって写真の女性の魅力の点数が変わるかを調べたテストの話なので、正解は B。
Q2. What did the men who saw the red background do?
「The men who saw red gave the woman higher scores.」とあるので、正解は A。
Q3. In the passage, "difference" is closest in meaning to ___.
「almost no difference」は、赤とほかの色で点数がほとんど「違わなかった」という意味なので、正解は B。
In 2008, Andrew Elliot of the University of Rochester and a colleague ran five small experiments. Male students looked at the same photo of a woman, but the color around her changed. Each time, men who saw red rated her as more attractive than men who saw white, gray, green, or blue. Each experiment had only 23 to 37 men.
Later, other teams repeated the work with much larger groups. One team in 2016 tested 433 men, more than 17 times as many as in the study they copied, and found no difference. In 2018, results from about 5,700 people were combined, and red made only a small difference when men rated women and a very small one when women rated men. Elliot was one of the authors.
128 words ・ CEFR B1
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2008年、ロチェスター大学のアンドリュー・エリオットさんと共同研究者が、5つの小さな実験を行った。男子学生たちは同じ女性の写真を見たが、そのまわりの色が変えられていた。毎回、赤を見た男性は、白・灰色・緑・青を見た男性より、女性を魅力的だと評価した。それぞれの実験は、男性23〜37人だけだった。
その後、ほかのチームがはるかに多い人数でこの研究をくり返した。2016年のあるチームは、まねた元の研究の17倍以上にあたる433人の男性を調べ、差を見つけなかった。2018年には約5,700人分の結果がまとめられ、赤による差は、男性が女性を評価する場合は小さく、女性が男性を評価する場合はとても小さかった。エリオットさん本人も、その著者の1人だった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2008年の赤の効果が、大人数でやり直すと小さくなった話なので、正解は A。
Q2. How many men took part in each of the 2008 experiments?
「Each experiment had only 23 to 37 men.」とあるので、正解は C。
Q3. Why does the writer mention that the 2016 team tested 433 men?
433人は元の研究の17倍以上だったと述べ、大きな人数でも差が出なかったことを示しているので、正解は B。
The original evidence looked convincing on paper. In five experiments published in 2008, male college students rated a woman in a photo as more attractive when red framed her picture or colored her shirt, and they seemed unaware that color had played any part. A companion paper in 2010 reported the same pattern for women judging men. Each 2008 experiment, however, involved only about 11 to 20 people per color group.
Larger replications told a different story. A Dutch-led team found no red advantage among 830 men across three experiments, and a preregistered study in which researchers posted their plans before collecting data found almost nothing for either sex. In 2018, two of those skeptics joined Andrew Elliot, who had led the original work, to pool 81 comparisons involving about 5,700 participants.
Much of the data had never been published. For men rating women, red produced a small but measurable boost. For women rating men, the effect was very small and may have been inflated. The three authors could not agree on what this meant, so they printed both views side by side. They did agree, though, that adding redness to the face itself made people look more attractive.
199 words ・ CEFR B2
和訳を見る
最初の証拠は、紙の上では説得力があるように見えた。2008年に発表された5つの実験で、男子大学生たちは、写真のまわりが赤いときや、シャツが赤いときに、写真の女性をより魅力的だと評価した。そして、色が何かの役割を果たしたことに気づいていない様子だった。2010年の関連論文は、女性が男性を判断するときも同じパターンだと報告した。しかし、2008年のどの実験も、色のグループごとに11〜20人ほどしかいなかった。
より大きな追試は、違う話を伝えた。オランダ中心のチームは、3つの実験で830人の男性を調べ、赤の有利さを見つけなかった。研究者がデータを集める前に計画を公開した事前登録の研究では、男女どちらでもほとんど何も見つからなかった。
2018年、そうした疑いを持つ研究者のうち2人が、最初の研究を率いたアンドリュー・エリオットさんと組み、約5,700人が参加した81の比較をまとめた。データの多くは、一度も発表されていないものだった。男性が女性を評価する場合、赤は小さいが測れるほどの上乗せを生んだ。女性が男性を評価する場合、効果はとても小さく、大きく出すぎていた可能性もあった。3人の著者はこの意味について合意できず、両方の見方を並べて載せた。ただ、顔そのものに赤みを加えると人がより魅力的に見えるという点では、3人の意見は一致した。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2008年の赤の効果が、大きな追試やまとめ直しで小さくなったことが中心なので、正解は A。
Q2. What was unusual about the 2018 analysis?
「two of those skeptics joined Andrew Elliot, who had led the original work」とあり、最初の研究者と疑う側が一緒に分析したので、正解は B。
Q3. What can be inferred about the effect of a red face?
「They did agree, though, that adding redness to the face itself made people look more attractive.」とあるので、3人とも顔の赤みの効果は認めたと分かる。正解は C。
重要単語
- attractiveA2形容詞魅力的なMany people find a warm smile attractive.
動詞 attract(引きつける)+-ive。名詞は attraction(魅力、引きつけるもの) - replicationC1名詞追試(同じ実験をやり直すこと)、複製The replication used far more people than the first study.
動詞 replicate(くり返す、再現する)。科学の英文で頻出 - combineB1動詞まとめる、組み合わせるThe team combined data from 45 comparisons.
combine A with B(AとBを組み合わせる)。名詞は combination - unawareB2形容詞気づいていないHe was unaware that the photo had been changed.
be unaware of ~ / be unaware that ~。反対は aware - skepticC1名詞疑う人、懐疑的な人Even the skeptics agreed with one result.
形容詞は skeptical(疑い深い)。イギリス式のつづりは sceptic - inflateC1動詞ふくらませる、(数字を)大きくしすぎるSmall studies can inflate the size of an effect.
もとは風船などを「ふくらませる」。inflation(インフレ)と同じ語源 - backgroundA2名詞(写真や絵の)背景、生い立ちThe photo had a plain white background.
family background(家庭環境)のように「経歴」の意味もある
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「赤い服を着るとモテる」という2008年の有名な実験。その後に集まった約5700人分の実験をまとめると、差は小さく、女性が男性を見る場合はごくわずかだった。まとめ直しには、最初の実験をした研究者の1人も加わっていた。
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- Elliot & Niesta (2008) Romantic red: Red enhances men's attraction to women, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Peperkoorn, Roberts & Pollet (2016) Revisiting the Red Effect on Attractiveness and Sexual Receptivity: No Effect of the Color Red on Human Mate Preferences, Evolutionary Psychologydoi.org
- Lehmann & Calin-Jageman (2017) Is Red Really Romantic? Two Pre-Registered Replications of the Red-Romance Hypothesis, Social Psychologydoi.org
- Wagge et al. (2019) A Demonstration of the Collaborative Replication and Education Project: Replication Attempts of the Red-Romance Effect, Collabra: Psychologydoi.org
- Lehmann, Elliot & Calin-Jageman (2018) Meta-Analysis of the Effect of Red on Perceived Attractiveness, Evolutionary Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







