出会いのイベントで女性が「席を移る側」になると、相手選びの男女差が消えた(大学生350人)

読む前に予想してみよう!
スピードデートで席を移る側になった人は、座って待つ側より、相手を選ぶ目が厳しくなった
アメリカの大学生350人の実験では、席を移る側のほうが男女とも「また会いたい」と答えやすかった。ただし546人を調べた別の研究では、男性のえり好みは、どちらが動くかで変わらなかった。
- 対象
- アメリカの大学生(異性どうしのスピードデート15回)
- 規模
- 350人
- 研究の種類
- 実験(男性が席を移る8回と、女性が席を移る7回を比較)
- 確かさ
- ★★★☆☆
アメリカの大学生350人が、短い時間ずつ次々に相手と話す出会いのイベント(スピードデート)に参加。席を移る側の人は男女とも「また会いたい」と答えやすく、女性が席を移る回ではふだんの男女差が消えた。
ひとことで言うと自分から歩いて近づく側になると、相手を選ぶ目が少しゆるくなるらしい!
もくじ
「恋人選びは、女性のほうが慎重」。そう聞いて、うなずく人は多いかもしれません。出会いのイベントの研究でも、女性は男性より相手をきびしく選ぶ(えり好みする)という結果が、くり返し出てきました。
ところが、決まりを1つだけ逆にすると、この男女の差が消えました。舞台は、アメリカの大学生350人が参加したスピードデートです。スピードデートは、初対面の人と短い時間ずつ話し、相手を次々に替えていく出会いのイベントです。変えたのは「どちらが席を移るか」だけです。
研究チームは、「男性が席を移る」というふだんの決まりそのものが、男女の差の一部を作っているのではないかと考えました。ただし、その後に別のチームが行った研究では、話はもう少し複雑でした。
01スピードデートでは、ふつう男性が席を移る
スピードデートでは最後に、話した相手ひとりずつについて「また会いたいか」を答えます。
このとき、席を移るのはたいてい男性です。女性はテーブルで待ち、男性が順番にやってきます。論文によると、それまでに発表された、えり好みを調べるスピードデートの研究は、どれも男性が席を移るやり方でした。業者が開くイベントも、ほぼすべてそうです。
アメリカのノースウェスタン大学のフィンケル(Finkel)さんとイーストウィック(Eastwick)さんは、「自分から歩いて近づく」という動きに注目しました。相手に近づく行動は、女性より男性に多く見られます。近づく動きそのものが、相手への気持ちを強めるのではないか。そうだとすれば、男性が「えり好みしない」ように見えるのは、いつも近づく側にいるせいかもしれません。
0215回のうち7回は、女性が席を移った
確かめ方は単純です。大学生のスピードデートを15回開き、そのうち7回だけ、男性が座って待ち、女性が席を移るようにしました。
03席を移る側は、男女とも「また会いたい」が増えた
席を移る側の人は、座って待つ側の人より、えり好みが少なめでした。これは男性でも女性でも同じでした。相手への恋愛の気持ちや、「気持ちが通じ合った」という感覚も、席を移る側のほうが強めでした。
ただし「また会いたい」と答えた割合は、座る側が平均43%、移る側が48%です。差は5ポイントほどで、統計の上ではぎりぎりの差でした。
男性が席を移る回では、いつもの「男性は女性よりえり好みしない」という差が出ました。一方、女性が席を移る回では、その差が消えました。
席を移る側の人は、自信も高めでした。統計の分析では、この自信の高さで、結果の一部を説明できました。歩いて近づくと自信がつき、そのぶん相手を受け入れやすくなる、という筋道です。ただし著者たちも、この筋道はまだ仮の説明で、ほかの説明も成り立つと書いています。
なお、女性が席を移る回でも、男女が逆転して男性のほうがえり好みするようになったわけではありません。それでも論文は、次のような考えも示しています。ふだんの生活では「男性から近づくもの」という決まりが、一生ついて回ります。この決まりだけでも、女性のほうがえり好みする理由を説明できるかもしれない、というのです。ただし、これは著者たちの推測です。今回の結果は、その考えと「少なくとも一部は合う」というところまでです。

04どんでん返し:別の研究では、男性の選び方は変わらなかった
2013年には、オランダのオーフェルベーク(Overbeek)さんらの研究チームが、22〜42歳の大人546人が参加した22回のスピードデートを調べました。男女の人数の比、どちらが席を移るか、同性のライバルの魅力などの条件と、えり好みの関係を見たのです。えり好みの強さは、「会わなくていい」と答えた相手の割合で測りました。
- 男性:会場の条件で、えり好みの強さは変わらなかった。どちらが席を移るかも関係がなかった
- 女性:会場の条件で変わった。ただし、変わり方は人によって違った。女性が席を移る回や、ほかの女性の魅力が高い回など、女性どうしの競争が強い回でだけ、顔の魅力の評価が低めの女性などが、あまりえり好みしなくなっていた
「席を移れば誰でもえり好みが減る」という単純な形は、ここでは見られませんでした。ただしこの研究は、同じ実験をそのままやり直したものではありません。参加者の年齢も、調べた条件も違います。
女性の選び方が場の条件で変わる、という結果はほかにもあります。2006年に発表されたアメリカのスピードデートの実験では、1回に会う相手の人数を変えると、女性は人数が多いほど、えり好みが強くなりました。男性は、人数が変わっても同じでした。
フィンケルさんたちの研究にも限界があります。参加したのはアメリカの大学生だけで、1人と話すのは4分間です。「また会いたい」は、実際に付き合うこととは違います。どちらが動くかは回ごとに決めたので、回ごとの参加者の違いが混ざっている心配もあります。
05「自分から近づく」と何が変わる?
2011年の別の研究では、女性に「自分で物事を決められる」という感覚を強めてもらいました。すると、男性と同じくらい、自分からはっきり相手に働きかけようとしました。研究チームは、恋の始め方の男女差は、思われていたより変わりやすいのかもしれない、と書いています。
同じフィンケルさんたちのチームは、スピードデートで「理想のタイプ」も調べています(理想のタイプは当てにならない、という研究)。初対面の会話のあと、相手は自分が思うより自分を好いている、という研究もあります(好かれ度ギャップ)。
06まとめ
アメリカの大学生のスピードデートでは、「どちらが歩いて近づくか」を入れかえただけで、えり好みの男女差が消えました。ふだんの決まりが、男女の違いの見え方を変えていた可能性があります。
一方、別のチームが546人を調べた研究では、男性には同じ差が出ず、女性でも人や条件によって違いました。「女性のほうが慎重」という差の大きさは、その場の決まりや人数でも変わることがあります。どんな決まりが、誰に、どのくらい効くのか。次に確かめるべきなのは、その中身です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn most speed-dating events, women stay at their tables while men walk from one partner to the next.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
At a speed-dating event, men and women talk for a few minutes. Then one side moves to the next table. Usually the men move and the women wait. Two researchers in the U.S. tried something new.
At some events, the women moved and the men sat. The people who moved said yes to more partners. When women moved, women and men were about the same. Who walks may change how choosy we are.
73 words ・ CEFR A2
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スピードデートのイベントでは、男性と女性が数分間話す。それから、片方が次のテーブルへ移る。ふつうは男性が移り、女性は待つ。アメリカの2人の研究者が、新しいことを試した。
いくつかの回では、女性が移り、男性が座っていた。移った人たちは、より多くの相手に「また会いたい」と答えた。女性が移った回では、女性と男性はだいたい同じになった。誰が歩くかで、私たちのえり好みの度合いが変わるのかもしれない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
席を移る側になった人の答えがどう変わったかを書いた話なので、正解は B。
Q2. At most speed-dating events, who moves to the next table?
「Usually the men move and the women wait.」とあるので、正解は C。
Q3. In the passage, "choosy" is closest in meaning to ___.
choosy は choose(選ぶ)から来た語で、「選ぶのに慎重な、えり好みする」という意味。正解は A。
In most speed-dating events, women stay at their tables while men walk from one partner to the next. They talk with each partner for a few minutes.
Later, they say which partners they want to meet again. Women usually say yes less often than men. Eli Finkel and Paul Eastwick of Northwestern University wondered whether walking itself plays a part. They held 15 events for 350 college students. At eight events the men moved, and at seven the women moved.
The people who moved said yes to more partners, whether they were men or women. They also felt more confident. When the women did the walking, the usual gap between women and men disappeared. A later study of 546 adults, however, found no such change for men.
127 words ・ CEFR B1
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多くのスピードデートでは、女性は自分のテーブルにとどまり、男性が相手から相手へと歩いて移る。1人の相手と話すのは数分間だ。
あとで、どの相手にまた会いたいかを答える。ふつう、女性は男性より「また会いたい」と言う回数が少ない。ノースウェスタン大学のイーライ・フィンケルとポール・イーストウィックは、歩くこと自体が関係しているのではないかと考えた。2人は大学生350人のために15回のイベントを開いた。8回は男性が移り、7回は女性が移った。
移った人は、男性でも女性でも、より多くの相手に「また会いたい」と答えた。また、より自信を感じていた。女性が歩いて移った回では、ふだんの女性と男性の差が消えた。しかし、のちに546人の大人を調べた研究では、男性にはそのような変化が見られなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
席を移る側になった人が男女とも「また会いたい」と答える相手が多かった実験の話なので、正解は B。
Q2. How many events had women moving to the next table?
「At eight events the men moved, and at seven the women moved.」とあるので、正解は B。
Q3. What does the last sentence suggest?
最後の文で、のちの546人の研究では男性に同じ変化が見られなかったとあり、同じ結果がそのまま出たわけではないと分かる。正解は C。
Speed dating has an unwritten rule. Women sit, and men rotate from table to table. In 2009, Eli Finkel and Paul Eastwick of Northwestern University asked whether that rule could explain part of a familiar finding, that women tend to be more selective than men. They ran 15 speed-dating events for 350 college students.
At eight of them the men rotated as usual. At the other seven, the men stayed put and the women moved. After each four-minute date, participants rated their romantic interest and their own confidence, and later they marked online whom they wanted to see again.
People who rotated were less selective than people who sat, and this held for both sexes. At events where women rotated, the usual sex difference vanished. Rotators also reported more confidence, and the analysis showed that this confidence helped explain the result.
The events, not the individuals, were assigned to each rule, so differences between groups could have played a role. A 2013 study of 546 adults at 22 events gave a more mixed answer. Which sex rotated made no difference for men. For women, the effect appeared only in some of them.
192 words ・ CEFR B2
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スピードデートには、書かれていない決まりがある。女性は座り、男性がテーブルからテーブルへ移っていく。2009年、ノースウェスタン大学のイーライ・フィンケルとポール・イーストウィックは、この決まりが、よく知られた結果、つまり女性のほうが男性より相手をえり好みしやすいという結果の一部を説明できるのではないかと考えた。2人は大学生350人のために15回のスピードデートを開いた。
そのうち8回では、いつもどおり男性が移った。残りの7回では、男性がその場にとどまり、女性が移った。4分間のデートのたびに、参加者は相手への恋愛の関心と自分の自信を評価し、あとでウェブ上で、また会いたい相手に印をつけた。
移った人は、座っていた人よりえり好みをせず、これは男女どちらにも当てはまった。女性が移った回では、ふだんの男女差が消えた。移った人は自信も高く、分析では、その自信が結果を説明する手がかりになっていた。
決まりを割り当てたのは個人ではなく回ごとだったので、グループどうしの違いが影響した可能性もある。2013年に22回のイベントで546人の大人を調べた研究は、もっと入りまじった答えを出した。どちらの性が移るかは、男性には違いをもたらさなかった。女性では、その影響は一部の人にだけ現れた。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
どちらが席を移るかを変えた実験と、のちの研究がもっと入りまじった結果を出したことを述べているので、正解は B。
Q2. What did participants do after each four-minute date?
「After each four-minute date, participants rated their romantic interest and their own confidence」とあるので、正解は B。
Q3. Why does the writer mention that events, not individuals, were assigned to each rule?
続けて「グループどうしの違いが影響した可能性もある」と書いており、研究の弱点を指摘するためだと分かる。正解は B。
重要単語
- selectiveB2形容詞えり好みする、選ぶ目が厳しいThis college is very selective, so few students get in.
select(選ぶ)+-ive。be selective about ~ で「~をえり好みする」 - choosyB1形容詞えり好みする、好みがうるさいMy cat is choosy about her food.
choose(選ぶ)から。selective より会話的でくだけた言い方 - rotateB2動詞順番に入れかわる、回るThe guards rotate every two hours.
名詞は rotation。The earth rotates.(地球が自転する)の意味でも入試頻出 - approachB1動詞・名詞近づく、話しかける/やり方A dog approached us in the park.
他動詞なので approach to him とはしない。名詞では a new approach(新しいやり方) - confidenceB1名詞自信、信頼Winning the game gave the team more confidence.
形容詞は confident。self-confidence で「自信」をはっきり言える - social normC1名詞社会のならわし、暗黙のルールStanding in line is a social norm in many countries.
norm は「標準、決まり」。normal(ふつうの)と同じ語源
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- Finkel & Eastwick (2009) Arbitrary Social Norms Influence Sex Differences in Romantic Selectivity, Psychological Sciencedoi.org
- Overbeek, Nelemans, Karremans & Engels (2013) The Malleability of Mate Selection in Speed-Dating Events, Archives of Sexual Behaviordoi.org
- Fisman, Iyengar, Kamenica & Simonson (2006) Gender Differences in Mate Selection: Evidence From a Speed Dating Experiment, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
- MacGregor & Cavallo (2011) Breaking the rules: Personal control increases women’s direct relationship initiation, Journal of Social and Personal Relationshipsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







