NEW別館「マジか!?ことば」英語と日本語の「えっ、マジか!?」を辞書と論文でウラ取りのぞいてみる →
💘 恋愛と人間関係の科学ビミョー

出会いのイベントで女性が「席を移る側」になると、相手選びの男女差が消えた(大学生350人)

出会いのイベントで女性が「席を移る側」になると、相手選びの男女差が消えた(大学生350人)

読む前に予想してみよう!

スピードデートで席を移る側になった人は、座って待つ側より、相手を選ぶ目が厳しくなった

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカの大学生(異性どうしのスピードデート15回)
規模
350人
研究の種類
実験(男性が席を移る8回と、女性が席を移る7回を比較)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

アメリカの大学生350人が、短い時間ずつ次々に相手と話す出会いのイベント(スピードデート)に参加。席を移る側の人は男女とも「また会いたい」と答えやすく、女性が席を移る回ではふだんの男女差が消えた。

ひとことで言うと自分から歩いて近づく側になると、相手を選ぶ目が少しゆるくなるらしい!

もくじ
  1. スピードデートでは、ふつう男性が席を移る
  2. 15回のうち7回は、女性が席を移った
  3. 席を移る側は、男女とも「また会いたい」が増えた
  4. どんでん返し:別の研究では、男性の選び方は変わらなかった
  5. 「自分から近づく」と何が変わる?
  6. まとめ

「恋人選びは、女性のほうが慎重」。そう聞いて、うなずく人は多いかもしれません。出会いのイベントの研究でも、女性は男性より相手をきびしく選ぶ(えり好みする)という結果が、くり返し出てきました。

ところが、決まりを1つだけ逆にすると、この男女の差が消えました。舞台は、アメリカの大学生350人が参加したスピードデートです。スピードデートは、初対面の人と短い時間ずつ話し、相手を次々に替えていく出会いのイベントです。変えたのは「どちらが席を移るか」だけです。

研究チームは、「男性が席を移る」というふだんの決まりそのものが、男女の差の一部を作っているのではないかと考えました。ただし、その後に別のチームが行った研究では、話はもう少し複雑でした。

01スピードデートでは、ふつう男性が席を移る

スピードデートでは最後に、話した相手ひとりずつについて「また会いたいか」を答えます。

このとき、席を移るのはたいてい男性です。女性はテーブルで待ち、男性が順番にやってきます。論文によると、それまでに発表された、えり好みを調べるスピードデートの研究は、どれも男性が席を移るやり方でした。業者が開くイベントも、ほぼすべてそうです。

アメリカのノースウェスタン大学のフィンケル(Finkel)さんとイーストウィック(Eastwick)さんは、「自分から歩いて近づく」という動きに注目しました。相手に近づく行動は、女性より男性に多く見られます。近づく動きそのものが、相手への気持ちを強めるのではないか。そうだとすれば、男性が「えり好みしない」ように見えるのは、いつも近づく側にいるせいかもしれません。

0215回のうち7回は、女性が席を移った

確かめ方は単純です。大学生のスピードデートを15回開き、そのうち7回だけ、男性が座って待ち、女性が席を移るようにしました。

03席を移る側は、男女とも「また会いたい」が増えた

席を移る側の人は、座って待つ側の人より、えり好みが少なめでした。これは男性でも女性でも同じでした。相手への恋愛の気持ちや、「気持ちが通じ合った」という感覚も、席を移る側のほうが強めでした。

ただし「また会いたい」と答えた割合は、座る側が平均43%、移る側が48%です。差は5ポイントほどで、統計の上ではぎりぎりの差でした。

男性が席を移る回では、いつもの「男性は女性よりえり好みしない」という差が出ました。一方、女性が席を移る回では、その差が消えました。

席を移る側の人は、自信も高めでした。統計の分析では、この自信の高さで、結果の一部を説明できました。歩いて近づくと自信がつき、そのぶん相手を受け入れやすくなる、という筋道です。ただし著者たちも、この筋道はまだ仮の説明で、ほかの説明も成り立つと書いています。

なお、女性が席を移る回でも、男女が逆転して男性のほうがえり好みするようになったわけではありません。それでも論文は、次のような考えも示しています。ふだんの生活では「男性から近づくもの」という決まりが、一生ついて回ります。この決まりだけでも、女性のほうがえり好みする理由を説明できるかもしれない、というのです。ただし、これは著者たちの推測です。今回の結果は、その考えと「少なくとも一部は合う」というところまでです。

この実験では、15回のうち7回、女性が席を移る側になった(イメージ)
この実験では、15回のうち7回、女性が席を移る側になった(イメージ)

04どんでん返し:別の研究では、男性の選び方は変わらなかった

2013年には、オランダのオーフェルベーク(Overbeek)さんらの研究チームが、22〜42歳の大人546人が参加した22回のスピードデートを調べました。男女の人数の比、どちらが席を移るか、同性のライバルの魅力などの条件と、えり好みの関係を見たのです。えり好みの強さは、「会わなくていい」と答えた相手の割合で測りました。

  • 男性:会場の条件で、えり好みの強さは変わらなかった。どちらが席を移るかも関係がなかった
  • 女性:会場の条件で変わった。ただし、変わり方は人によって違った。女性が席を移る回や、ほかの女性の魅力が高い回など、女性どうしの競争が強い回でだけ、顔の魅力の評価が低めの女性などが、あまりえり好みしなくなっていた

「席を移れば誰でもえり好みが減る」という単純な形は、ここでは見られませんでした。ただしこの研究は、同じ実験をそのままやり直したものではありません。参加者の年齢も、調べた条件も違います。

女性の選び方が場の条件で変わる、という結果はほかにもあります。2006年に発表されたアメリカのスピードデートの実験では、1回に会う相手の人数を変えると、女性は人数が多いほど、えり好みが強くなりました。男性は、人数が変わっても同じでした。

フィンケルさんたちの研究にも限界があります。参加したのはアメリカの大学生だけで、1人と話すのは4分間です。「また会いたい」は、実際に付き合うこととは違います。どちらが動くかは回ごとに決めたので、回ごとの参加者の違いが混ざっている心配もあります。

05「自分から近づく」と何が変わる?

2011年の別の研究では、女性に「自分で物事を決められる」という感覚を強めてもらいました。すると、男性と同じくらい、自分からはっきり相手に働きかけようとしました。研究チームは、恋の始め方の男女差は、思われていたより変わりやすいのかもしれない、と書いています。

同じフィンケルさんたちのチームは、スピードデートで「理想のタイプ」も調べています(理想のタイプは当てにならない、という研究)。初対面の会話のあと、相手は自分が思うより自分を好いている、という研究もあります(好かれ度ギャップ)。

06まとめ

アメリカの大学生のスピードデートでは、「どちらが歩いて近づくか」を入れかえただけで、えり好みの男女差が消えました。ふだんの決まりが、男女の違いの見え方を変えていた可能性があります。

一方、別のチームが546人を調べた研究では、男性には同じ差が出ず、女性でも人や条件によって違いました。「女性のほうが慎重」という差の大きさは、その場の決まりや人数でも変わることがあります。どんな決まりが、誰に、どのくらい効くのか。次に確かめるべきなのは、その中身です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn most speed-dating events, women stay at their tables while men walk from one partner to the next. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In most speed-dating events, women stay at their tables while men walk from one partner to the next. They talk with each partner for a few minutes.

Later, they say which partners they want to meet again. Women usually say yes less often than men. Eli Finkel and Paul Eastwick of Northwestern University wondered whether walking itself plays a part. They held 15 events for 350 college students. At eight events the men moved, and at seven the women moved.

The people who moved said yes to more partners, whether they were men or women. They also felt more confident. When the women did the walking, the usual gap between women and men disappeared. A later study of 546 adults, however, found no such change for men.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くのスピードデートでは、女性は自分のテーブルにとどまり、男性が相手から相手へと歩いて移る。1人の相手と話すのは数分間だ。

あとで、どの相手にまた会いたいかを答える。ふつう、女性は男性より「また会いたい」と言う回数が少ない。ノースウェスタン大学のイーライ・フィンケルとポール・イーストウィックは、歩くこと自体が関係しているのではないかと考えた。2人は大学生350人のために15回のイベントを開いた。8回は男性が移り、7回は女性が移った。

移った人は、男性でも女性でも、より多くの相手に「また会いたい」と答えた。また、より自信を感じていた。女性が歩いて移った回では、ふだんの女性と男性の差が消えた。しかし、のちに546人の大人を調べた研究では、男性にはそのような変化が見られなかった。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How many events had women moving to the next table?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • selectiveB2
    形容詞えり好みする、選ぶ目が厳しいThis college is very selective, so few students get in. select(選ぶ)+-ive。be selective about ~ で「~をえり好みする」
  • choosyB1
    形容詞えり好みする、好みがうるさいMy cat is choosy about her food. choose(選ぶ)から。selective より会話的でくだけた言い方
  • rotateB2
    動詞順番に入れかわる、回るThe guards rotate every two hours. 名詞は rotation。The earth rotates.(地球が自転する)の意味でも入試頻出
  • approachB1
    動詞・名詞近づく、話しかける/やり方A dog approached us in the park. 他動詞なので approach to him とはしない。名詞では a new approach(新しいやり方)
  • confidenceB1
    名詞自信、信頼Winning the game gave the team more confidence. 形容詞は confident。self-confidence で「自信」をはっきり言える
  • social normC1
    名詞社会のならわし、暗黙のルールStanding in line is a social norm in many countries. norm は「標準、決まり」。normal(ふつうの)と同じ語源
「女性のほうが恋人選びに慎重」はどこまで本当? 大学生350人のスピードデートで、女性が席を移る回を作ると男女の差が消えた。近づく側は男女とも「また会いたい」が多め。ただし別の研究では、男性にこの差は出なかった。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Finkel & Eastwick (2009) Arbitrary Social Norms Influence Sex Differences in Romantic Selectivity, Psychological Sciencedoi.org
  2. Overbeek, Nelemans, Karremans & Engels (2013) The Malleability of Mate Selection in Speed-Dating Events, Archives of Sexual Behaviordoi.org
  3. Fisman, Iyengar, Kamenica & Simonson (2006) Gender Differences in Mate Selection: Evidence From a Speed Dating Experiment, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
  4. MacGregor & Cavallo (2011) Breaking the rules: Personal control increases women’s direct relationship initiation, Journal of Social and Personal Relationshipsdoi.org