おはぎとぼたもちの違いは? 中身はほぼ同じ、春は牡丹・秋は萩にちなむ呼び名
1いちばん有名な説:春は牡丹、秋は萩に見立てた
春のお彼岸のころに咲くのが牡丹(ぼたん)。秋のお彼岸のころに咲くのが萩(はぎ)。あんこをまとった丸いお餅を、その季節の花に見立てて呼んだ、というのがいちばん有名な説です。漢字で書くと「牡丹餅(ぼたもち)」と「御萩」になります。
見立ての話はかなり古くからあります。平凡社の『世界大百科事典』によると、ぼたもちも、おはぎも、形や色を牡丹や萩に見立てた名前です。江戸時代のはじめに出た日本語とポルトガル語の辞書『日葡辞書(にっぽじしょ)』にも、「萩の花」という呼び名が載っているそうです。
大きさで分ける考え方もあります。大きな牡丹の花のように大ぶりで丸いのがぼたもち、小さな萩の花のように小ぶりで細長いのがおはぎ、というものです。
2こしあんとつぶあんの説:秋の小豆は皮がやわらかい
もう一つよく聞くのが、あんこの違いです。農林水産省の広報誌『aff』では、つぶあんで包んだのが「おはぎ」、こしあんのものが「ぼた餅」という説を紹介しています。
理由がおもしろいのです。小豆がとれるのは秋。とれたばかりの小豆は皮までやわらかいので、秋のおはぎは皮ごと使うつぶあんにします。春になると、冬を越した小豆の皮は硬くなっています。そこで皮を取りのぞいたこしあんで、ぼたもちを作ったというわけです。
ほかにも、もち米が多いものがぼたもち、うるち米が多いものがおはぎ、あんこがぼたもちできな粉がおはぎ、など説はいろいろです。どれも「そういう地域や家がある」という話で、全国共通の決まりではありません。
3夏は「夜船」、冬は「北窓」:餅つきの音がしないお餅
春と秋だけではありません。同じ食べ物を、夏は「夜船(よふね)」、冬は「北窓(きたまど)」と呼んだともいわれます。農林水産省のページで、この不思議な名前の由来が紹介されています。
普通のお餅は、臼と杵でぺったんぺったんとつきます。ところがぼたもちは、炊いたお米を軽くつぶして作るので、つく音がしません。つまり「つき知らず」。
・夏:「つき知らず」→「着き知らず」。夜の船は暗くて、いつ港に着いたかわからない。だから「夜船」
・冬:「つき知らず」→「月知らず」。北の窓からは月が見えない。だから「北窓」
江戸時代の1697年の『本朝食鑑』にも、音を立てずに作れるので「隣知らず」、ついたかわからないので「夜舟」という、しゃれのような呼び名が出てきます。お米を半分ほどつぶすことから「半殺し」と呼ぶ地方があるのも、この作り方から来ています。
| 季節 | 呼び名 | 名前の由来(説) |
|---|---|---|
| 春 | ぼたもち(牡丹餅) | 春のお彼岸に咲く牡丹の花に見立てた |
| 夏 | 夜船(よふね) | つく音がしない=「着き知らず」。夜の船はいつ着いたかわからない |
| 秋 | おはぎ(御萩) | 秋のお彼岸に咲く萩の花に見立てた |
| 冬 | 北窓(きたまど) | 「月知らず」。北の窓からは月が見えない |
4なぜお彼岸に食べる? 小豆の赤と、ぜいたくな砂糖
お彼岸にぼたもちやおはぎを供える習慣は、江戸時代に定着したといわれます。
農林水産省によると、理由の一つは小豆の赤い色です。赤には邪気をはらい、災いから身を守る力があると考えられてきました。お赤飯と同じように、お祝いや大切な日に使われてきたのです。
もう一つは砂糖です。昔、砂糖はとても貴重でした。あんこは、もともと塩味で作られていたといいます。甘いあんこが広まったのは江戸時代の中ごろです。貴重な砂糖を使ったお菓子を供えることで、ご先祖様への感謝を表したのです。
春のお彼岸は春分の日(次は2027年3月21日)、秋のお彼岸は秋分の日(次は2027年9月23日)を真ん中にした7日間です。
5結局どう呼べばいい? 迷ったら「季節で呼び分け」
農林水産省のページでは、今では呼び名は区別していないと説明しています。お店で売られているものは、季節に関係なく「おはぎ」の名前が多いともいわれます。東京では、春も秋も「おはぎ」と呼んでいたという指摘もあります。北海道などで「一年中おはぎ」と呼ぶ人がいても、間違いではありません。
ですから、「ぼたもちとおはぎ、どっちが正しい?」と聞かれたら、答えはどちらも正しいです。迷ったら、春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」と季節で呼び分けておけば、由来の話もできて安心です。
❓FAQあわせてよく聞かれる質問
おはぎとぼたもち、こしあんとつぶあんはどっち?
決まりはありませんが、秋のおはぎはつぶあん、春のぼたもちはこしあん、という説があります。秋はとれたての小豆の皮がやわらかく、春は皮が硬くなるからだと説明されます。
「半殺し」とは何のこと?
炊いたお米を、粒が半分くらい残る程度につぶすことです。ぼたもち・おはぎの作り方から来た言葉で、ぼたもちのことを「はんごろし」と呼ぶ地方もあります。
おはぎ・ぼたもちはいつ食べる?
代表的なのは春と秋のお彼岸です。お仏壇やお墓に供えたあと、家族でいただきます。四十九日の忌明けに食べる風習もあり、今は一年中お店で売られています。
「棚からぼたもち」のぼたもちは同じもの?
同じです。思いがけない幸運が転がりこむことのたとえで、略して「たなぼた」ともいいます。
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