第5章|単語5-5コロケーションとチャンク英語の半分以上は『決まった組み合わせ』でできている。単語より『かたまり』で覚えよ

58.6%。英語の話し言葉で、単語を選ぶ位置のうち、ネイティブが好んで使う「決まった組み合わせ」で埋まっていた割合です。Erman と Warren が2000年に報告した数字で、書き言葉でも52.3%ありました。「強い雨」を strong rain と書いて直されるのは、rain や strong の意味を知らないからではありません。では、何が足りなかったのか。
01コロケーションとチャンクとは
コロケーションは、単語と単語の「よくある組み合わせ」のことです。文法的にはほかの言い方もできるのに、ネイティブはふつうこちらを使う、という組み合わせです。
| 言いたいこと | 自然な英語 | 不自然になりやすい例 |
|---|---|---|
| 決断する | make a decision | do a decision |
| 宿題をする | do my homework | make my homework |
| 写真を撮る | take a picture | — |
| 強い雨 | heavy rain | strong rain |
| 濃いコーヒー | strong coffee | thick coffee |
| 高い熱 | a high fever | a tall fever |
| 薬を飲む | take medicine | drink medicine(錠剤なら take がふつう) |
| 注意を払う | pay attention | give attention(使えなくはないが pay がふつう) |
チャンクは、もう少し広く、ひとまとまりで使われる言い回しを指します。
- as a matter of fact(実は)
- I was wondering if you could ...(〜していただけないかと思いまして)
- It's not a big deal.(たいしたことじゃないよ)
- by the way(ところで)
研究者によって「定型表現(formulaic sequences)」「プレハブ」「レキシカル・チャンク」などと呼び方は違いますが、指しているのは「単語より大きい、記憶の単位」です。
02英語の半分以上はかたまりでできている
言語学者の Alison Wray は、2002年の著書『Formulaic Language and the Lexicon』で、私たちが言葉を一語一語組み立てているだけでなく、まとまった言い回しを丸ごと記憶し、取り出して使っていることを、言語習得・談話分析・失語症などの研究から整理しました。
では、実際の英文のどれくらいが決まった組み合わせなのでしょうか。Erman & Warren (2000) は、話し言葉と書き言葉の英語を分析し、単語を選ぶ位置のうち
- 話し言葉:約59%(58.6%)
- 書き言葉:約52%(52.3%)
が、プレハブ(ネイティブが好んで使う決まった組み合わせ)で埋まっていたと報告しました。ここでのプレハブは「同じ意味の別の単語に入れかえると、不自然になったり意味が変わったりする組み合わせ」と定義されています。何をプレハブと数えるかで数字は変わるので、「英語の半分以上は必ずかたまり」と言い切ることはできません。それでも、相当な割合であることは確かです。
さらに、かたまりは処理が速いことも分かっています。Conklin & Schmitt (2008) は、ネイティブと学習者に文を読んでもらい、決まった言い回し(例:take the bull by the horns「困難に立ち向かう」)と、同じ長さの決まっていない語の並びを比べました。どちらのグループも、決まった言い回しのほうを速く読みました。
ポイント:かたまりを知っていると、1語ずつ組み立てる手間が省け、読む・聞く・話すのすべてが速くなります。
03大人でもかたまりは身につく
「子どもは言葉をかたまりで覚えるが、大人は単語に分解してしまい、組み合わせの情報を覚えない」という考え方があります。Wray は、大人の第二言語学習者がそうした「単語ばらばら型」の学び方をしている可能性を論じていました。
この考えを実験で確かめたのが Durrant & Schmitt (2010) です。実験室での実験で、大人の学習者に単語の組み合わせを含む英文に触れてもらったところ、学習者はどの単語が一緒に出てきたかを記憶していました。著者たちは、学習者のコロケーションの知識が足りないのは、学び方の問題ではなく、インプットの量が足りないからだと結論しています。
このことから、学習の方針が2つ見えてきます。
- たくさん読む・聞く:自然な組み合わせに何度も出会えば、大人でも身につく
- 意識して集める:出会う量が限られる学習者は、気づいた組み合わせを意識してメモし、復習することで量を補う
日本語との違いが大きい組み合わせほど、自然に任せていると身につきにくいものです。「薬を飲む=drink?」のように、日本語から直訳したくなる組み合わせは、意識して集める価値があります。
04日本人がまちがえやすい組み合わせ
日本語の発想がそのまま出やすい組み合わせを、例文で確かめましょう。
動詞+名詞
- I made a mistake on the test.(テストでまちがえた)※do a mistake ではない
- Can you do me a favor?(お願いがあるんだけど)
- She caught a cold last week.(彼女は先週かぜをひいた)
形容詞+名詞
- There was heavy traffic this morning.(今朝は渋滞がひどかった)※「多い交通」でも many traffic ではない
- He has a strong accent.(彼はなまりが強い)
- It was a narrow escape.(危ないところだった)
動詞+前置詞
- It depends on the weather.(天気しだいだ)
- I'm looking forward to seeing you.(会えるのを楽しみにしている)※to の後ろは名詞や -ing
時間・回数の言い方
- spend time with my family(家族と時間を過ごす)
- once in a while(たまに)
ポイント:日本語の「〜する」「〜が強い」「〜が多い」は、英語では動詞や形容詞がばらばら。名詞ごとに相方を覚えるのが近道です。
05かたまりの集め方・覚え方
1. 単語帳の例文から「相方」を抜き出す
新しい名詞を覚えるときは、例文の中でその名詞と一緒に使われている動詞・形容詞にも線を引きます。decision なら make a decision、quick decision など。
2. コロケーション辞典・例文検索で確かめる
書くときに迷ったら、コロケーション辞典で「この名詞と一緒に使う動詞」を一覧で見られます。また、大量の英文から例文を探せるツールで、実際の使われ方を確かめると、不自然な組み合わせを避けられます。
3. かたまりのまま声に出す
make a decision を「メイク・ア・ディシジョン」と区切らず、ひと息で言えるまで音読します。かたまりで口に出せると、会話でもそのまま出てきます。
4. カードは「かたまり」で作る
単語カードやアプリでも、decision 1語ではなく、make a decision で1枚。例文の中で相方の部分だけを隠すカードにすると、書く・話す力につながります。
1日10分のメニュー
- 5分:今日読んだ英文から、名詞と相方の組み合わせを3つメモ
- 3分:メモしたかたまりを、ひと息で3回ずつ音読
- 2分:前日のメモを日本語から英語で言えるかテスト
単語は『相方』とセットで覚える。かたまりは読むのも話すのも速い
今日からのやり方
- 新しい名詞を覚えるとき、一緒に使われる動詞・形容詞にも線を引く
- 今日読んだ英文から、組み合わせを3つノートやカードに書き出す
- 書き出したかたまりを、区切らずにひと息で3回音読する
- 英作文で迷った組み合わせは、コロケーション辞典や例文検索で確かめる
- カードは1語ではなく、かたまりや例文単位で作る
レベル別:あなたならこうする
中学の教科書から、play the piano、do my homework、take a picture など「動詞+名詞」のかたまりを集めて音読します。単語テストでも、かたまりで書けるようにしておくと会話で使えます。
単語帳の例文で相方に印をつけ、make・take・have・get と組む名詞を整理します。英作文では、日本語から直訳したくなる組み合わせ(薬を飲む、雨が強い)を特に確認しましょう。
コロケーション辞典や例文検索ツールで、書いた英文の組み合わせを確かめる習慣を。論文やビジネスの決まり文句は分野ごとに集め、場面ごとのかたまりとしてストックします。
よくある失敗と対策
意味は分かっても、どの動詞や形容詞と組むかが分からず、書くと不自然になります。名詞は相方とセットで覚えましょう。
「薬を飲む」は take medicine、「雨が強い」は heavy rain。直訳したくなる組み合わせほど、辞書や例文で確かめる価値があります。
珍しい慣用句より、make a decision のような毎日使う組み合わせのほうが出番は多いです。まずは基本動詞のかたまりから。
1 MIN
今日読んだ英文から『動詞+名詞』の組み合わせを3つ書き出す
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
5-5英文の何割が「決まった組み合わせ」?
Erman & Warren (2000) の分析では、単語を選ぶ位置のうち、話し言葉で約59%、書き言葉で約52%が決まった組み合わせ(プレハブ)で埋まっていました。数え方で数字は変わりますが、かなりの割合です。
5-5英語の決まり文句は、読むのも速い?
Conklin & Schmitt (2008) では、ネイティブも学習者も、決まった言い回しを、同じ長さの決まっていない語の並びより速く読みました。かたまりで覚えると処理が速くなる手がかりです。
5-5大人の英語学習者は、単語の組み合わせを覚えにくい?
Durrant & Schmitt (2010) は、大人の学習者もどの単語が一緒に出てきたかを記憶していることを示しました。足りないのは能力ではなく、出会う量だと考えられます。
PRACTICE KIT
この節の実践キット
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使えるサイト・アプリ
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もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
言語習得・談話分析・失語症などの研究を整理し、人が決まった言い回しを丸ごと記憶して使うことを踏まえた語彙の記憶のモデルを提案した。
Wray, A. (2002). Formulaic Language and the Lexicon. Cambridge University Press.出典を開く ↗英語の話し言葉と書き言葉を分析し、単語を選ぶ位置の約59%(話し言葉)、約52%(書き言葉)がプレハブ(決まった組み合わせ)で埋まっていたと報告した。
Erman, B., & Warren, B. (2000). The idiom principle and the open choice principle. Text, 20(1), 29–62.出典を開く ↗ネイティブも学習者も、決まった言い回しを、同等の決まっていない語の並びより速く読んだ。比喩の意味でも文字どおりの意味でも同じ傾向だった。
Conklin, K., & Schmitt, N. (2008). Formulaic sequences: Are they processed more quickly than nonformulaic language by native and nonnative speakers? Applied Linguistics, 29(1), 72–89.出典を開く ↗大人の学習者も、インプットの中でどの単語が一緒に出てきたかを記憶していた。コロケーション知識の不足は、学び方ではなくインプット不足によると結論した。
Durrant, P., & Schmitt, N. (2010). Adult learners' retention of collocations from exposure. Second Language Research, 26(2), 163–188.出典を開く ↗よくある質問
コロケーションとイディオムはどう違いますか?
コロケーションは heavy rain のように、各単語の意味から全体の意味が分かる「よくある組み合わせ」です。イディオムは kick the bucket(死ぬ)のように、単語の意味を足しても全体の意味にならない慣用句。学習の優先度は、ふだん使うコロケーションのほうが高めです。
かたまりはどれくらい覚えればいいですか?
決まった数はありません。まずは make・take・have・get・do など基本動詞と組む名詞から始め、自分がよく話す・書く話題のかたまりを優先しましょう。使う場面がはっきりしたかたまりほど、記憶に残りやすくなります。
英作文で自然な組み合わせか確かめる方法は?
コロケーション辞典で名詞と一緒に使う動詞・形容詞を調べるか、大量の英文から例文を探せるツールで、その組み合わせが実際に使われているかを見ます。用例がほとんど見つからない組み合わせは、言いかえを考えましょう。



