第5章|単語5-6多義語はコアイメージでtakeの意味は辞書に何十個。でも中心のイメージは1つで、ほとんどがつながる

She runs a small bakery. My nose is running. The road runs along the river. 訳すと「経営している」「鼻水が出ている」「川沿いに続いている」。どれも同じ run です。辞書に並ぶ意味を一つずつ覚えていくと、きりがありません。けれど、この3つの run には、共通する1つの動きがかくれています。それは、どんな動きなのか。
01多義語は「中心」から広がっている
英語の基本語には、意味がたくさんある多義語が多くあります。get、take、make、run、have、そして over、up、out のような前置詞・副詞です。
認知言語学という分野では、こうした意味の多くは無関係に並んでいるのではなく、中心的な意味(コア)から、比喩やイメージの広がりでつながっていると考えます。たとえば日本語でも、「頭」は体の一部から「集団の頭(かしら)」「頭金」へと広がっています。
この考え方を英語学習に使うと、
- 意味の一覧を暗記する → 中心のイメージを1つ理解し、そこからの広がりとして各用法を見る
という覚え方になります。
Verspoor & Lowie (2003) は、学習者に多義語の比喩的な意味を学ばせる実験で、中心の意味を手がかりとして示したほうが、別の比喩的な意味を示すより、新しい意味を推測しやすく、記憶にも残りやすかったと報告しています。
ポイント:コアイメージは「暗記の量を減らす」ためではなく、「意味どうしをつなげて忘れにくくする」ための道具です。
なお、この節で紹介するコアの言い表し方は、意味のつながりを説明するための一つの捉え方です。研究者や教材によって言い方は少しずつ違います。
02take と get:基本動詞のコア
take:自分のところに取りこむ
take のコアを「手をのばして、何かを自分のところに取りこむ」と捉えると、多くの用法がつながります。
- Take an umbrella with you.(かさを持っていきなさい)→ 取って、自分と一緒に
- I take this medicine every morning.(毎朝この薬を飲んでいる)→ 体の中に取りこむ
- Let's take a bus.(バスに乗ろう)→ 乗り物を自分の移動手段として取りこむ
- It takes ten minutes to walk there.(歩いて10分かかる)→ 時間を(その行為が)取る
get:ない状態から、ある状態へ移る
get は「持っていない/そうでない状態から、持っている/そうである状態に移る」と捉えると整理できます。
- I got a letter from my aunt.(おばから手紙をもらった)→ 持っていない→持っている
- He got angry.(彼は怒った)→ 怒っていない→怒っている
- What time did you get home?(何時に家に着いた?)→ 家にいない→家にいる
- I finally got it.(やっと分かった)→ 分かっていない→分かっている
ポイント:「もらう」「なる」「着く」「分かる」は、日本語だとばらばらですが、get の目で見ると同じ動きです。
03run と over:意外な意味もつながる
run:途切れずに動く・動かし続ける
run を「足で走る」だけでなく「途切れずに、なめらかに動き続ける」と捉えると、意外な用法も見えてきます。
- She runs a small bakery.(彼女は小さなパン屋を経営している)→ 店を動かし続ける
- My nose is running.(鼻水が出ている)→ 液体が流れ続ける
- The road runs along the river.(その道は川沿いに続いている)→ 線が途切れずにのびる
- The engine is running.(エンジンがかかっている)→ 機械が動き続けている
over:弧を描いて上をおおう・越える
over のコアを「弧(アーチ)を描いて、何かの上をおおう、越える」と捉えてみます。
- The plane flew over the mountains.(飛行機は山の上を飛んだ)→ 上を越える
- She put a blanket over the baby.(彼女は赤ちゃんに毛布をかけた)→ 上をおおう
- Let's talk it over.(じっくり話し合おう)→ 端から端まで全体をおおう
- The game is over.(試合は終わった)→ 弧を描き切って向こう側に着いた
on(くっついている)や above(離れて上にある)とイメージを比べると、違いがはっきりします。
- a picture on the wall(壁にかかった絵:くっついている)
- a light above the table(テーブルの上の照明:離れて上)
04句動詞もコアでほどける
基本動詞に up、out、off などがつく句動詞も、副詞のコアから考えると整理しやすくなります。
up:上へ → 最後まで、すっかり
- Stand up.(立ち上がって)→ 上へ
- Eat up your vegetables.(野菜を全部食べなさい)→ 量が上限まで達する=すっかり
- I'll clean up the room.(部屋をきれいに片づける)→ 完全に
out:外へ → はっきり、最後まで
- She went out.(彼女は出かけた)→ 外へ
- Please fill out this form.(この用紙に記入してください)→ 空欄を最後まで埋める
- The milk ran out.(牛乳が切れた)→ 中身が外へ出きってなくなる
off:くっついていたものが離れる
- Turn off the light.(電気を消して)→ 電流から離れる
- The plane took off.(飛行機が離陸した)→ 地面から離れる
- I have a day off tomorrow.(明日は休みだ)→ 仕事から離れた日
ポイント:句動詞を「動詞の意味+副詞のイメージ」に分けると、初めて見る句動詞でも意味の見当がつくことがあります。
ただし、すべての句動詞がきれいに分解できるわけではありません。put up with(我慢する)のように、イメージだけでは意味が出にくいものもあるので、例文ごと覚えるものと割り切りましょう。
05効果と限界:コアは万能ではない
認知言語学を語彙指導に生かす研究をまとめた Boers (2013) は、次のように評価しています。
- 1990年代以降、意味のつながりを利用した指導の効果を示す実験が積み重なってきた
- ただし、その多くは小規模で、効果が小さいものや、ほかの要因がからんで解釈が難しいものもある
- それでも、全体としては無視できない証拠になりつつあり、語彙指導の一部に取り入れる価値がある
- 何を教えるかの選び方、間隔をあけた復習、ほかの種類の知識との組み合わせなど、ふつうの語彙研究の知見と合わせることが大事
つまり、コアイメージは「これさえ分かれば全部解決」ではなく、ほかの覚え方と組み合わせて使う道具です。
実際の学習では、次のように使うのがおすすめです。
- 新しい意味に出会ったら、まず例文ごと覚える
- 同じ単語の別の意味をすでに知っていれば、「コアからどうつながるか」を考えてみる
- つながりが見えたら、例文の横に一言メモ(例:「run=動き続ける→経営する」)
- つながりが見えなくても気にしない。そういう用法もある
英英辞典の定義や、学習者向け辞典の意味の並びを眺めると、どの意味が中心で、どう広がっているかの手がかりになります。
意味の一覧より、中心のイメージ+広がり方を覚える
今日からのやり方
- take・get・run・over など、よく使う多義語を1つ選ぶ
- 辞書の例文を5つ読み、共通する『動き』や『形』を自分の言葉で書く
- そのイメージで説明できる例文と、できない例文に分ける
- 説明できる例文は一言メモつきで、できない例文はそのまま覚える
- 次に同じ単語の新しい意味に出会ったら、コアとのつながりを考える
レベル別:あなたならこうする
まずは in・on・at の位置のイメージを絵で覚えましょう。take と get も、教科書に出てくる例文をイメージの絵と一緒にノートにまとめると、意味がばらばらにならずにすみます。
make・take・get・have と、up・out・off などの副詞のイメージを整理し、句動詞を「動詞+イメージ」で覚えます。新しい用法に出会ったら、コアからつながるかを考える習慣を。
英英辞典の定義の並びや、コーパスの例文から、中心の意味と広がり方を自分で探ります。コアで説明しにくい用法も多いので、例文ごと覚えるものと使い分けましょう。
よくある失敗と対策
イメージだけでは、どの場面でどう使うかまでは分かりません。コアは理解の補助として、例文とセットで覚えましょう。
比喩の広がりが見えにくい用法や、慣用的な句動詞もあります。説明できないものは無理にこじつけず、そのまま覚えます。
コアの言い表し方は、研究者や教材で少しずつ違います。一つの捉え方として使い、自分が納得できる言い方で覚えれば十分です。
1 MIN
takeの例文を辞書で5つ読み、共通するイメージを一言で書く
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
5-6英語の多義語は、意味を1つずつ暗記するしかない?
認知言語学では、多くの意味が中心の意味から比喩やイメージの広がりでつながっていると考えます。中心の意味を先に知ると、ほかの意味の推測と記憶を助けたという実験もあります。
5-6多義語を「コアイメージ」で覚える効果は証明ずみ?
Boers (2013) のまとめでは、効果を示す実験は増えているものの、多くは小規模で、効果が小さいものや解釈が難しいものもあるとされています。有望だが万能ではない、が正確なところです。
5-6The game is over. の over はなぜ「終わり」?
over のコアを「弧を描いて上を越える」と捉えると、弧を描き切って向こう側に着いた状態=終わった、とつながります。これは一つの捉え方で、辞書の定義そのものではありません。
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もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
多義語の比喩的な意味を学ぶ実験で、中心の意味を手がかりに示すと、別の比喩的な意味を示すより、意味の推測と長期の記憶に有利だったと報告した。
Verspoor, M., & Lowie, W. (2003). Making sense of polysemous words. Language Learning, 53(3), 547–586.出典を開く ↗認知言語学的な語彙指導の研究をまとめ、多くは小規模で効果が小さいものもあるが、全体として無視できない証拠になりつつあると評価した。
Boers, F. (2013). Cognitive Linguistic approaches to teaching vocabulary: Assessment and integration. Language Teaching, 46(2), 208–224.出典を開く ↗よくある質問
コアイメージはどこで調べられますか?
コアイメージを図解した学習書や教材が多くあります。英英辞典で、その単語の最初のほうに並ぶ意味と例文を読むのも手がかりになります。教材によって表現が違うので、自分が納得できるものを選びましょう。
前置詞の使い分けもコアで覚えられますか?
in・on・at・over・above などは、空間のイメージで整理すると分かりやすくなります。ただし、時間や慣用的な表現(on time、in time など)には、イメージだけでは決まらないものもあるので、例文と一緒に覚えましょう。
中学生でもコアイメージは使えますか?
使えます。特に前置詞の in・on・at や、take・get などの基本動詞は、絵や身ぶりと結びつけると理解しやすくなります。ただし、イメージを覚えることが目的にならないよう、教科書の例文で使い方を確かめましょう。




