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イメージと結びつける:二重符号化と精緻化「apple=りんご」の丸暗記より、絵と動作と自分の文。覚え方を増やすと忘れにくい

原田英語6分で読める研究・公式情報 5件第1章の7/7節

イメージと結びつける:二重符号化と精緻化のイメージ

ロシア語の単語120個を覚える実験で、語呂合わせ(キーワード法)を使った組は72%を思い出し、使わなかった組は46%にとどまりました。6週間後の予告なしのテストでも、差は残っています。ところが、勉強法の研究をまとめた2013年のレビューは、この方法に「低」の評価をつけました。よく効いたはずの覚え方が、なぜ低いのか。そして、単語を忘れにくくする手がかりは、語呂のほかにどこにあるのか。

この節の目次(6項目)
  1. 言葉と絵、記憶の通り道は2本ある
  2. 抽象的な単語は「場面」にして覚える
  3. 自分ごとにすると、もっと残る
  4. 身ぶりをつけて覚える
  5. 語呂合わせ(キーワード法)の効き目と限界
  6. 「なぜ?」と語源で、知っていることとつなぐ

01言葉と絵、記憶の通り道は2本ある

カナダの心理学者アラン・パイヴィオは、二重符号化理論という考え方を出しました。人の頭には、

  • ことばの系(単語や文として扱う)
  • イメージの系(絵や場面、音、手ざわりとして扱う)

の2つの通り道があり、両方で覚えたものは、片方だけで覚えたものより思い出しやすい、という理論です。

たとえば ladder(はしご)は、すぐにはしごの姿が浮かびます。ことばとイメージの両方で覚えられるので、思い出す手がかりが2つになります。一方、justice(正義)のような抽象的な単語は、絵が浮かびにくい。具体的な単語のほうが抽象的な単語より覚えやすい(具体性効果)のは、この違いで説明されます。

Clark と Paivio(1991)は、この理論を教育に当てはめた論文で、具体的な例やイメージを使うことが学習を助けると論じています。

英単語を「apple=りんご」と文字だけで覚えるのは、2本ある通り道の1本しか使っていない状態です。もう1本のイメージの通り道も使えば、思い出す入口が増えます。

02抽象的な単語は「場面」にして覚える

抽象的な単語でも、それが使われる場面にすれば、イメージがつきます。

  • reluctant(気が進まない)→ 歯医者の入口の前で、足がなかなか前に出ない子ども
  • The boy was reluctant to go into the dentist's office.(男の子は歯医者に入りたがらなかった)
  • generous(気前がいい)→ 自分のお弁当のおかずを、友だちに分けている場面
  • It was generous of you to share your lunch.(お弁当を分けてくれるなんて、気前がいいね)
  • anxious(不安な)→ 合格発表のページを開く前に、指が止まっている場面
  • I was anxious about the test results.(テストの結果が不安だった)

場面を作るときのコツは3つです。

  1. 動きのある場面を選ぶ。 止まった絵より、何かが起きている場面のほうが浮かびやすい
  2. 例文と場面をセットにする。 絵だけでは使い方がわからないので、短い例文と一緒にする
  3. かんたんな絵をかく。 棒人間で十分。単語カードの裏に小さくかいておくと、イメージの手がかりになる

注意したいのは、Dunlosky ら(2013)のレビューで「文章を読みながらイメージを思い浮かべる」方法の評価が「低」だったことです。イメージは、それだけで記憶を保証するものではありません。イメージで入口を作り、そのあと思い出す練習で固める、という順番で使います。

03自分ごとにすると、もっと残る

ことばを自分に関係づけると、記憶に残りやすくなることも知られています。これを自己関連づけ効果といいます。

Symons と Johnson(1997)は、この効果を調べた研究をまとめて分析しました。「この言葉は自分に当てはまるか」を考えながら覚えると、意味を考えるだけの覚え方や、他人に当てはめる覚え方よりも、よく覚えていることが確かめられました。自分については、もともとたくさんの知識があるので、新しい情報をそこに結びつけやすいからだと考えられています。

英語では、新しい単語で自分についての文を作るのが、いちばん手軽な方法です。

  • reluctant → I'm reluctant to get up early on Sunday mornings.(日曜の朝に早起きするのは気が進まない)
  • generous → My grandmother is very generous with her time.(祖母は自分の時間を惜しまず使ってくれる)
  • anxious → I get anxious before speaking in front of people.(人前で話す前は不安になる)

教科書の例文をそのまま覚えるより、自分の生活に置きかえた1文を作ると、その単語に「自分の思い出」がくっつきます。英語日記で、その日に覚えた単語を1つ使うのも、同じ効果をねらった方法です。

04身ぶりをつけて覚える

体の動きも、記憶の手がかりになります。Macedonia(2014)は、外国語の単語に身ぶりをつけて覚える研究をまとめ、意味を表す身ぶりをつけると記憶がよくなったという結果を紹介しています。意味を表す身ぶりと意味のない身ぶりを比べた研究では、意味を表す身ぶりのほうが、60日後まで記憶がよかったと報告されています。

一方で、身ぶりの効果が出なかった研究もあります。どんな単語に、どんな条件で効くのかは、まだ研究が続いている段階です。「身ぶりをつければ必ず覚えられる」とまでは言えません。

それでも、英語では特に動詞と句動詞で試しやすい方法です。

  • grab(つかむ)→ 手でさっとつかむ動き
  • whisper(ささやく)→ 口に手を当てて小声で言う
  • pick up(拾い上げる)/ put down(下に置く)→ 実際に物を持ち上げ、下ろす
  • turn on / turn off(つける・消す)→ スイッチを入れる・切るしぐさ

例文を音読するとき、動詞のところで身ぶりをつけます。

  • She picked up the pen and put it down on the desk.(彼女はペンを拾い上げて、机の上に置いた)

ことば・音・動きが一度に結びつきます。家でひとりで練習するときこそ、遠慮なく体を動かしてかまいません。

05語呂合わせ(キーワード法)の効き目と限界

外国語の単語を、似た音の言葉と結びつけ、そのイメージで覚える方法をキーワード法といいます。日本では「語呂合わせ」として広く使われています。

この方法を有名にしたのが、Atkinson と Raugh(1975)の研究です。ロシア語の単語120個を覚える実験で、キーワード法を使ったグループは、全体のテストで72%を思い出しました。使わなかったグループは46%。6週間後の予告なしのテストでも、43%対28%と差が残りました。

一方、Dunlosky ら(2013)のレビューでは、キーワード法の評価は「低」です。理由は、使える材料が限られること(よいキーワードが作れない単語も多い)と、効果が短い期間にとどまりやすいことでした。

この2つの結果を合わせると、使い方が見えてきます。

  • 全部の単語に使わない。 何度やっても覚えられない「しつこい単語」だけに使う
  • キーワードは入口にすぎない。 覚えたら、例文で思い出す練習に移る
  • よく知っている場面で作る。 自分の生活の場面を使うと、イメージが具体的になる

例:tremble(震える)→「取れん、ぶる…」寒さで手がぶるぶる震えて、電車のつり革が取れない場面

  • My hands were trembling with cold.(寒さで手が震えていた)

語呂を思い出したら、次はこの例文を日本語から言えるかを確かめます。語呂は、例文にたどりつくまでの「はしご」として使います。

06「なぜ?」と語源で、知っていることとつなぐ

イメージ以外にも、新しい情報を知っていることと結びつける方法(精緻化)があります。

「なぜ?」と問う。 Dunlosky ら(2013)のレビューで「中」の評価だった精緻化質問は、「なぜそうなるのか」を自分に問いかける方法です。英語なら、ルールを丸暗記するのではなく、理由とセットで覚えます。

  • なぜ「家に帰る」は go to home ではなく go home なのか? → home には「家へ」という副詞の使い方があるから
  • なぜ I have lived here since 2020. は現在完了なのか? → 2020年から今まで、ずっと続いているから

語源で仲間を作る。 単語を部品に分けると、新しい単語を、すでに知っている単語とつなげられます。

  • pre(前に)+ dict(言う)→ predict(予測する)
  • re(もう一度)+ view(見る)→ review(見直す)
  • inter(間に)+ national(国の)→ international(国際的な)

この節で紹介した方法は、どれも思い出す手がかりを増やすための方法です。絵・場面・自分の文・身ぶり・語呂・理由・語源。どれか1つを選ぶのではなく、覚えにくい単語ほど2つ、3つと手がかりを足していきます。そして最後は、想起練習と間隔反復で、本当に言えるかを確かめます。

この節の答え

思い出す手がかりを増やすほど、記憶は取り出しやすい

今日からのやり方

  1. 今日の新しい単語から、覚えにくいものを3つ選ぶ
  2. それぞれ動きのある場面を思い浮かべ、カードの裏に簡単な絵をかく
  3. 自分の生活に置きかえた例文を1つずつ作る
  4. 動詞は身ぶりをつけて、例文を3回音読する
  5. 翌日、絵と例文を隠して、日本語から英語で言えるかを確かめる

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

絵にしやすい具体的な単語(dog, bridge, ladder)から始め、カードに小さな絵をかきます。動詞は身ぶりをつけて声に出します。翌日、絵を見て英語が言えるかを確かめます。

中級 B1

抽象的な単語は、動きのある場面と自分についての例文で覚えます。どうしても覚えられない単語にだけ自作の語呂を使い、覚えたら例文で思い出す練習に移ります。

上級 B2〜

接頭辞や語根で単語の仲間を作り、新しい語を知っている語に結びつけます。語法は「なぜこうなるか」を英英辞典の例文で確かめ、自分の仕事や専門の例文に置きかえます。

よくある失敗と対策

語呂合わせだけで全部の単語を覚える

語呂が作れない単語も多く、効果が短期間にとどまりやすいとされます。しつこい単語だけに使い、例文で思い出す練習に移ります。

絵だけ見て、例文を作らない

イメージだけでは使い方がわかりません。場面と一緒に短い例文を作り、日本語から英語で言えるかまで確かめます。

「自分は視覚型だから絵だけ」と決める

学習スタイルに合わせると成績が上がるという説は、確かな裏づけがないとされています。絵・音・動作・自分の文は、誰にとっても手がかりを増やす方法として使います。

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覚えにくい英単語を1つ選び、自分についての例文を作る

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

1-7記憶の「二重符号化」って、どういう考え方?

心理学者パイヴィオの理論で、人はことばの系とイメージの系の2つで情報を扱い、両方で覚えたものは思い出しやすいと考えます。具体的な単語が抽象的な単語より覚えやすいことも、これで説明されます。

X で出題する

1-7単語の語呂合わせ(キーワード法)はどれくらい効く?

Atkinson と Raugh(1975)では、ロシア語120語でキーワード法の組が72%、使わない組が46%を思い出しました。ただ、Dunlosky ら(2013)は、使える単語が限られ効果も短期間になりやすいとして評価を「低」にしています。

X で出題する

1-7単語に身ぶりをつけると、本当に覚えやすい?

Macedonia(2014)は、外国語の単語に意味を表す身ぶりをつけると記憶がよくなった研究をまとめています。60日後まで効果が残った例もあります。一方で効果が出なかった研究もあり、条件はまだ研究中です。

X で出題する

X でポストLINEB!

この節の根拠(研究・公式情報)

ことばの系とイメージの系の2つで情報を扱うという二重符号化理論を、教育に当てはめて論じた。具体的な例やイメージを使うことが学習を助けると主張している。

Clark, J. M., & Paivio, A. (1991). Dual coding theory and education. Educational Psychology Review, 3(3), 149–210.出典を開く ↗

ロシア語120語の学習で、キーワード法の組は全体テストで72%、対照の組は46%を思い出した。6週間後の予告なしテストでも43%対28%だった。

Atkinson, R. C., & Raugh, M. R. (1975). An application of the mnemonic keyword method to the acquisition of a Russian vocabulary. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 1(2), 126–133.出典を開く ↗

自分に関係づけて覚える方法は、意味を考えるだけの覚え方や他人に関係づける覚え方より記憶がよいことを、研究をまとめた分析で確かめた。

Symons, C. S., & Johnson, B. T. (1997). The self-reference effect in memory: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 121(3), 371–394.出典を開く ↗

外国語の単語に意味を表す身ぶりをつけると記憶がよくなった研究をまとめたレビュー。60日後まで効果が残った研究がある一方、効果が出なかった研究もあると述べている。

Macedonia, M. (2014). Bringing back the body into the mind: Gestures enhance word learning in foreign language. Frontiers in Psychology, 5, 1467.出典を開く ↗

キーワード法は使える材料が限られ、効果が短期間になりやすいとして「低」、文章のイメージ化も「低」、精緻化質問は「中」と評価した。

Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.出典を開く ↗

よくある質問

絵が下手でも効果はありますか?

上手な絵は必要ありません。棒人間や丸と線だけで十分です。大事なのは、かいている間に場面を思い浮かべることと、あとでその絵を見て単語を思い出す手がかりにすることです。

語呂合わせは邪道ですか?

邪道ではありません。Atkinson と Raugh(1975)では、キーワード法でロシア語の単語の成績が大きく上がりました。ただし使える単語が限られ、効果が短期間になりやすいので、使いどころをしぼります。

抽象的な単語はどうイメージすればいい?

単語そのものではなく、その単語が使われる「場面」を思い浮かべます。reluctant なら歯医者の前で足が止まる子ども、のように、動きと気持ちのある場面を作り、例文とセットにします。