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辞書の使い方:英英辞典・コーパス・YouGlish辞書は「意味」を調べる道具ではなく「使い方」を調べる道具だ

原田英語6分で読める研究・公式情報 4件第13章の5/6節

辞書の使い方:英英辞典・コーパス・YouGlishのイメージ

「英英辞典を使わないと上達しない」。英語の勉強で、よく言われる言葉です。ところが、英英・英和型・その両方を載せた辞書を123人でくらべた研究では、新しい語を理解して使う助けになる辞書は、だれにとっても同じとは言えませんでした。しかも、どの辞書で意味が分かっても、いざ使うと不自然な英語になることがあります。辞書を引いたとき、意味のほかに何を確かめればよいのでしょうか。

この節の目次(6項目)
  1. 学習者向け英英辞典の4つの名門
  2. 1語を引くときの「5点チェック」
  3. 英英か英和か:レベルで使い分ける
  4. コロケーションとコーパスで「自然さ」を確かめる
  5. YouGlishで本物の発音を聞く
  6. 辞書を引いたあとが本番

01学習者向け英英辞典の4つの名門

英語を学ぶ人のために作られた英英辞典を、学習者向け英英辞典と呼びます。どれもオンラインで無料で引けます(広告が出たり、一部の機能が有料だったりします)。

辞書特徴(2026年10月に確認)
Cambridge Dictionary語や意味ごとにA1〜C2のレベル表示。英国・米国の2つの発音が聞ける。関連語をまとめた「SMART Vocabulary」。英語の定義と日本語訳を並べた英和版もある
Oxford Learner's Dictionaries学習者がまず知るべき「Oxford 3000」(A1〜B2)と、上級者向けの「Oxford 5000」(B2〜C1)の語に印。語ごとにCEFRレベル
Longman(LDOCE Online)よく使う語に「S2(話し言葉の上位2000語)」「W3(書き言葉の上位3000語)」のような頻度の印。例文の音声がある
Britannica Dictionary旧 Merriam-Webster Learner's Dictionary。いまは旧サイトを開くと Britannica Dictionary に移る。アメリカ英語の学習辞典

どれを使えばいい?

1つに決めてかまいません。迷ったら、レベル表示と英和版がある Cambridge を基本にし、例文や頻度をもっと見たいときに Longman や Oxford を引く、という組み合わせが使いやすいです。

辞書をよく知っている人ほど、1つの辞書を深く使っています。新しい辞書を探すより、1つの辞書のどこに何が書いてあるかを覚えるほうが、引く速さも正確さも上がります。

021語を引くときの「5点チェック」

辞書で単語を引いたら、意味だけで閉じずに、次の5つを見ます。

  1. どの意味か:意味が複数あるときは、自分が出会った文に合うのはどれか。
  2. 例文:その意味でどんな文に使われているか。
  3. 文の形:目的語をとるか(他動詞か自動詞か)、後ろに来る形(to 不定詞か -ing か)。
  4. 組み合わせ:いっしょによく使われる語(コロケーション)。
  5. 発音:アクセントの位置と、音声。

例:borrow と lend

「借りる」「貸す」は、意味だけ覚えると混乱しやすい組み合わせです。辞書の例文を見ると、文の形の違いがはっきりします。

  • Can I borrow your umbrella?(傘を借りてもいい?)
  • Could you lend me your umbrella?(傘を貸してもらえる?)

borrow は「自分が受け取る」側、lend は「相手に渡す」側で、lend は「lend+人+物」の形をとります。この違いは、意味の欄より例文と文の形の欄に書いてあります。

Cambridge Dictionary で borrow を引くと、この意味にA2の印がついています。中学で習う基本の語でも、文の形まで確かめると使える語に変わります。

引いたら1文作る

5点を見たら、その語を使って自分の文を1つ作ります。作った文は単語カードに入れ、数日後に「日本語を見て英文を言う」練習をします。

03英英か英和か:レベルで使い分ける

「英英辞典を使わないと上達しない」と言われることがあります。でも研究を見ると、答えはそう単純ではありません。

英英辞典、英和型の辞書、その両方を載せた辞書を123人でくらべた研究では、新しい語を理解して使う助けになる辞書の種類は、辞書を引く力によって違う可能性が示されました(Laufer & Hadar, 1997)。だれにでも英英がいちばん、とは言えないのです。

おすすめの使い分け

レベルおすすめ理由
初級(〜英検準2級)英和辞典+例文の確認定義の英語が分からないと、引いても理解できない
中級(2級前後)英語の定義と日本語訳が並んだ辞書英語の定義に慣れながら、訳で確かめられる
上級(準1級〜)学習者向け英英辞典似た語の違い、文の形、ニュアンスが詳しい

Cambridge Dictionary の英和版は、英語の定義と日本語訳を並べて表示します。中級の人が英英に移るときの橋わたしに向いています。

推測だけに頼らない

「知らない語は文脈から推測しよう」とよく言われます。推測は大事な力ですが、研究では、意味を確かめずに読んだ人は知らない語を飛ばしたり、意味を誤って推測したりしがちでした(Hulstijn ほか, 1996)。推測したら、大事な語だけ辞書で答え合わせ。これで推測の力と正確さの両方が育ちます。

04コロケーションとコーパスで「自然さ」を確かめる

辞書で意味が分かっても、組み合わせを間違えると不自然な英語になります。たとえば「宿題をする」「ミスをする」「決断をする」は、日本語ではどれも「する」ですが、英語では動詞が変わります。

  • I did my homework before dinner.(夕食前に宿題をした)
  • I made a mistake on the last question.(最後の問題でミスをした)
  • She made a quick decision.(彼女はすぐに決断した)

こうした組み合わせをコロケーションと言います。調べるには、コーパス(大量の英文を集めたデータ)が役に立ちます。

SKELL(スケル)

  • 学習者と先生向けの無料の道具。登録なしで使える。
  • 単語やフレーズを入れると、読みやすい例文を最大40個表示する。
  • 「Word sketch」で、その語とよくいっしょに使われる語を種類別にまとめて見られる。
  • 「Similar words」で、似た意味の語を表示する。

COCA(コカ)

  • 10億語を超えるアメリカ英語のコーパス。1990〜2019年の英文を、テレビ・映画の字幕、話し言葉、小説、雑誌、新聞、学術論文などのジャンル別に集めている。
  • ある表現が、会話でよく使われるのか、論文でよく使われるのかを比べられる。

コーパスを使って学ぶ方法の64研究をまとめた分析では、全体として大きな効果が報告されています(Boulton & Cobb, 2017)。ただし、時間をおいても効果が残るかの検証はまだ少ないとされています。使うたびに自分の文に活かして、記憶に残す工夫を足します。

05YouGlishで本物の発音を聞く

辞書の音声は、1語をはっきり読んだものです。実際の会話では、前後の語とつながったり、弱く発音されたりします。そこで使えるのが YouGlish です。

YouGlish に単語やフレーズを入れると、その語を話している YouTube の場面が次々に再生されます。

  • アクセント(訛り)で絞れる:アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、アイルランド、スコットランド、ニュージーランド。
  • 品詞で絞ったり、話し手の性別で絞ったりもできる。

YouGlishの使い方

  1. 辞書で発音を確認した語を、YouGlishで検索する。
  2. 5つの場面を聞いて、辞書の音声とどこが違うかを聞き比べる。
  3. 気に入った1場面の、その語をふくむ文を3回まねる。

たとえば comfortable や vegetable のように、つづりから想像する音と実際の音がずれる語は、何人もの話し手で聞くと、本当の音がつかめます。フレーズで調べるのもおすすめです。「I was going to」のようなよく使う言い方が、会話の中ではどれだけ短く、つながって発音されるかがよく分かります。

辞書の音声は「お手本」、YouGlishは「実際の会話」。両方を聞くと、聞き取りと発音の両方に効きます。

06辞書を引いたあとが本番

辞書を引いただけでは、数日で忘れてしまいます。引いたあとの使い方で、残り方が変わります。

引いたあとの3ステップ

  1. 自分の文を1つ作る:例文をまねて、自分の生活の文にする。
  2. 単語カードに入れる:表に日本語の文、裏に英文。単語1つより、文で入れるほうが使い方ごと覚えられる。
  3. 思い出す練習をする:翌日、3日後、1週間後に、日本語を見て英文を言う。

引きすぎにも注意

たくさん読む練習(多読)の最中は、1ページに何度も辞書を引くと流れが切れます。

  • 多読・多聴:話の理解に必要な語だけ引く。それ以外は印だけつけて先へ。
  • 精読・単語の学習:気になった語はていねいに引き、5点チェックをする。

読む目的によって、引く量を変えるのがコツです。

道具の役割分担

調べたいこと使う道具
意味・例文・文の形学習者向け英英辞典(または英和)
よくある組み合わせSKELL、コロケーション辞典
話し言葉か書き言葉かCOCA
実際の発音YouGlish
語源語源辞典

1語を全部の道具で調べる必要はありません。迷ったときにどれを開けばいいかが分かっていれば十分です。

この節の答え

意味だけでなく、組み合わせ・文型・発音まで1回で調べる

今日からのやり方

  1. 学習者向け英英辞典(または英和版)を1つ決め、ブックマークする
  2. 引いた語は、意味・例文・文の形・組み合わせ・発音の5点を見る
  3. 組み合わせに迷ったら、SKELLで例文とWord sketchを確かめる
  4. 発音はYouGlishで5場面を聞き、1つの文を3回まねる
  5. 自分の例文を作って単語カードに入れ、数日後に思い出す

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

英和辞典で意味を確かめたら、必ず例文を1つ読みます。Cambridge Dictionary の英和版で、自分が引いた意味についているA1・A2の印を見ると、まず覚えるべき語かどうかが分かります。

中級 B1

英語の定義と日本語訳が並んだ辞書から、英英へ移っていきます。動詞は文の形、名詞はいっしょに使う動詞を確かめ、迷ったらSKELLで例文を見ます。

上級 B2〜

学習者向け英英辞典を主に使い、似た語の違いを定義と例文で比べます。COCAで話し言葉と書き言葉の使われ方を比べ、書く英語の自然さを確かめる習慣をつけます。

よくある失敗と対策

最初の意味だけ見て閉じる

意味が複数あるときは、出会った文に合う意味を選びます。そのうえで例文と文の形まで見ると、使える語になります。

英英辞典が読めずに挫折する

定義の英語が難しいうちは、英語の定義と日本語訳が並んだ辞書を使います。慣れてきたら英語の定義を先に読みます。

多読中に毎ページ辞書を引く

多読では話の理解に必要な語だけ引き、残りは印をつけて先へ進みます。ていねいに引くのは精読の時間にします。

TODAY
1 MIN

今日出会った単語を1つ、辞書の5点チェックで引き直す

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

13-5学習者向けの英英辞典は、ネイティブ向けの辞書と何が違う?

ネイティブ向けの辞書とちがい、やさしい語で定義を書き、例文や文型、よく使う語の印を載せています。Cambridge は意味ごとにA1〜C2のレベルまで示しています。

X で出題する

13-5英文を読んでいて出てきた知らない単語、推測すれば十分?

研究では、意味を確かめずに読んだ人は知らない語を飛ばしたり、意味を誤って推測したりしがちでした。辞書や注で意味を確かめると、同じ語に再び出会ったときの学習が生きます。

X で出題する

13-5その英語の言い方が「自然な英語か」を調べる方法はある?

コーパス(大量の英文データ)で、その組み合わせが実際に使われているかを確かめられます。コーパスを使う学び方の64研究をまとめた分析では、全体として大きな効果が報告されています。

X で出題する

X でポストLINEB!

この節の根拠(研究・公式情報)

英英・英和型・その両方を載せた辞書を123人で比べた。新しい語を理解し使う助けになる辞書の種類は、辞書を引く力によって違う可能性を示した。

Laufer, B., & Hadar, L. (1997). Assessing the effectiveness of monolingual, bilingual, and "bilingualised" dictionaries in the comprehension and production of new words. The Modern Language Journal, 81(2), 189–196.出典を開く ↗

意味が与えられない読み手は、知らない語を無視したり意味を誤って推測したりしがちだった。欄外の訳や辞書で意味を確かめると、くり返し出会う効果が生きた。

Hulstijn, J. H., Hollander, M., & Greidanus, T. (1996). Incidental vocabulary learning by advanced foreign language students: The influence of marginal glosses, dictionary use, and reoccurrence of unknown words. The Modern Language Journal, 80(3), 327–339.出典を開く ↗

コーパス(大量の英文データ)を使って学ぶ方法の64研究をまとめ、全体として大きな効果を報告。ただし時間をおいた効果の検証はまだ少ないとしている。

Boulton, A., & Cobb, T. (2017). Corpus use in language learning: A meta-analysis. Language Learning, 67(2), 348–393.出典を開く ↗

Oxford 3000 は学習者がまず知るべき3,000語でA1〜B2、Oxford 5000 はさらに2,000語を加えB2〜C1。語ごとにCEFRレベルが示される。

Oxford Learner's Dictionaries「The Oxford 3000 and 5000」出典を開く ↗

よくある質問

紙の辞書と電子辞書・ネット辞書、どれがいい?

引いたあとに例文を読んで自分の文を作るなら、どれでも効果があります。ネット辞書は音声が聞け、別の道具に移りやすいのが強みです。学校の決まりがあれば、それに従います。

翻訳サービスがあれば辞書は要らない?

翻訳は文の意味をつかむのに便利ですが、1語の意味の幅や文の形、組み合わせは分かりにくいです。自分で英語を書く・話すための語は、辞書で確かめるほうが確実です。

発音記号は読めたほうがいい?

読めると、音声がない場面でも発音を確かめられます。Cambridge Dictionary はすべての見出し語に国際音声記号をつけているので、音声と記号を見比べながら少しずつ覚えると楽です。