否定語を文頭に出すと、うしろは疑問文の語順になる。質問ではなく「この文はまるごと打ち消すぞ」という合図です
01しくみ:なぜこの意味になるのか
否定の副詞(never・little・rarely・seldom・hardly など)を強調のために文頭へ出すと、うしろが疑問文と同じ語順(助動詞+S+V)になります。これを倒置(語順の入れかえ)と言います。I have never seen ... なら Never have I seen ...、一般動詞の過去なら did を立てて Never did I think ... です。形は疑問文でも、文末はピリオド。質問ではありません。
なぜ語順を変えるのか。否定語が文頭に来ると、読み手は「この文は全部打ち消される」と身がまえます。語順をわざとくずすのは、その身がまえを確かにする合図です。読むときは、否定語をもとの位置に戻すだけ。Not a single word did he say. は He did not say a single word. で、目的語 not a single word が否定ごと前に出ています。Under no circumstances(どんな状況でも〜ない)も、否定を含む前置詞句がまるごと前に出た形です。
Little did S know の little は「少し」ではなく「まったく〜ない」。know・realize・dream など「わかる・思う」系の動詞と組んで、「〜とは思いもしなかった」とあとから振り返る場面でよく使われます。逆に、否定語が文頭でも倒置しない文があります。In no time(あっという間に)や Not long ago(少し前に)は文全体を打ち消していないので、うしろはふつうの語順です。
型
Never / Little / Rarely + 助動詞 + S + V
決して〜ない(否定を強める)
言いかえ・変形Not a single 名詞 + 助動詞 + S + VUnder no circumstances + 助動詞 + S + VHardly / Seldom + 助動詞 + S + V
02例文3つを構造図で読む
色のカタマリは文の要素、カッコはカタマリの種類です。「飾り(M)を消す」を押すと、文の骨組みだけが残ります。黄色の語が、この構文の目印です。
記号と色の約束
仮S真S は It のような「仮の主語」と、うしろにかくれた本当の主語。接 は接続詞。カタマリの下の小さな S' V' O' は、節や句の中の要素です。
Never have I seen such a clear night sky.
こんなに澄んだ夜空は、一度も見たことがない。
前から訳一度もない / 私は見たことが / こんなに澄んだ夜空を
- MNever否定の副詞が文頭へ
- 助動詞have現在完了の have が S の前に出た
- Vseenhave と seen で現在完了
- Osuch a clear night sky名詞句
ここを見るふつうの語順に戻すと I have never seen such a clear night sky. 現在完了の have が I の前に出て、have と seen が S をはさんで割れています。
Little did the team realize that their small app would be used by millions of students.
自分たちの小さなアプリが何百万人もの生徒に使われることになるとは、チームは思いもしなかった。
前から訳まったくなかった / チームは気づいて / 自分たちの小さなアプリが / 使われることになるとは / 何百万人もの生徒に
- MLittle「まったく〜ない」の否定語
- 助動詞did一般動詞なので did を立てる
- Vrealizedid があるので原形
- Othat their small app would be used by millions of students名詞節|realize の中身
- V'would be used過去から見た未来の would
ここを見るもとは The team little realized that ... です。did のあとの realize が原形になっているのは、疑問文と同じく did が時制を引き受けているからです。
Under no circumstances should students share passwords that give access to school accounts, even with friends they trust completely.
生徒は、学校のアカウントに入れるパスワードを、心から信頼している友だちにであっても、どんな場合でも教えてはいけない。
前から訳どんな状況でも〜ない / 生徒は共有すべきでは / パスワードを / 学校のアカウントに入れる / たとえ友だちとでも / 心から信頼している
- MUnder no circumstances副詞句|no を含む前置詞句がまるごと前へ
- 助動詞shouldshould が S の前に出た
- Opasswords that give access to school accounts名詞句
- M'that give access to school accountsthat は give の主語(関係代名詞)
- Meven with friends they trust completely副詞句|「〜とでさえ」
- M'they trust completely関係代名詞の省略
ここを見るもとは Students should share ... under no circumstances. 規則や注意書きでよく見る形です。no が前置詞句の中にあっても、文全体を打ち消すので倒置が起きます。
03誤読のわな
Little did I know that the quiz would count for half the final grade.
✕ やりがちその小テストが最終成績の半分になることを、少しは知っていた。
○ 正しくその小テストが最終成績の半分を占めるとは、まったく知らなかった。
little を「少し」と読むと意味が逆になります。a のつかない little は否定語で、文頭の Little+did は「まったく〜なかった」。did が I の前に出ているのが、否定の倒置の合図です。
04似ている構文と見分ける
05確認問題(3問)
Q1英文の意味として正しいのは?
Rarely does our coach praise anyone after a game.
Rarely(めったに〜ない)が文頭に出て、does our coach praise と疑問文の語順になっています。文末はピリオドなので質問ではありません。
Q2否定語が文頭に出て、倒置が起きているのはどれ?
目的語 not a single mistake が前に出て did she make の語順になっています。1つ目は Not a single student が主語なので倒置しません。3つ目の In no time は「すぐに」で、文を打ち消していません。
Q3空所に入るのは? Never ( ) I felt so nervous before a speech.
felt は過去分詞として使われているので、現在完了の have が前に出ます。did なら原形 feel、was なら felt とつながりません。
