ことわざ・教養・背景知識No.348確認問題集あり

背景知識チートシート:哲学・倫理(トロッコ問題など)

倫理の長文は「結果か、ルールか」の対立が軸。理論の名前と弱点を知れば、抽象的な英文も筋が見える。

背景知識チートシート:哲学・倫理(トロッコ問題など) の1ページ目

印刷用PDFA4 2枚・297KB・□チェック欄つき

まずはこの3つ

  1. 功利主義=結果で判断、義務論=行為そのもので判断
  2. トロッコ問題は正解探しではなく「直観のずれ」を考える道具
  3. 自由の限界は「他人に危害を加えない限り」(Mill の危害原則)
このテーマは「思考実験」で読む

倫理の長文には、現実にはありえない設定(暴走するトロッコ、無知のヴェール)がよく出る。これは条件を極端に単純化して、私たちの直観がどの原理に従っているかを取り出す実験。Imagine that〜 / Suppose〜 で始まったら思考実験の合図で、その後の「多くの人はこう答える。なぜか」が本題。

14つの考え方:結論と弱点

考え方判断の基準トロッコ問題では弱点
功利主義(Bentham・Mill)結果。最大多数の最大幸福1人を犠牲に5人を救う少数の犠牲や権利の侵害を正当化しうる
義務論(Kant)行為そのもの。人を単なる手段として扱うな人を突き落として止めるのは許されない結果が悲惨でもルールを守るのか
徳倫理(Aristotle)どんな人であるべきか(思いやり・勇気)徳のある人ならどうするかを問う具体的に何をすべきか決めにくい
社会契約論(Hobbes・Locke・Rawls)皆が合意できるルール自分がどの立場か知らなくても選べる規則は?(Rawls 流)合意に加われない動物・将来世代はどうなる

2入試で狙われる論点(対立する見方)7

  1. 1トロッコ問題
    レバーを引いて5人を救い1人を死なせる→多くの人が許されると答える。橋から人を突き落として5人を救う→多くの人が許されないと答える。結果は同じなのに判断が分かれるのはなぜか、が問い。
    The outcome is the same, yet most people judge the two cases differently.結果は同じなのに、多くの人は2つの場合を違うように判断する。
  2. 2自動運転のジレンマ
    事故が避けられない場面を想定すると、車の動きを前もってどう設計するかという倫理の問題が生じる。世界の数百万人の判断を集めた研究では、国や文化で傾向に違いがあった。現実にはまずブレーキと安全設計が先だという批判も。
  3. 3動物の権利
    Singer:苦しむ能力があるなら、種の違いだけで扱いを変えるのは差別(種差別)。反論:人間と動物には道徳的に重要な違いがある。肉食・動物実験・動物園の是非として出る。
    The question is whether animals can suffer, not whether they can think.問題は動物が考えられるかではなく、苦しむことができるかだ。
  4. 4AIに判断を任せてよいか
    AIが誤った判断をした時、開発者・運用者・利用者のだれが責任を負うのかがあいまいになる(責任の空白)。判断の理由を説明できないことも問題。一方、人間の判断にも偏りや疲れがある。最終判断を人間に残すべきかが論点。
  5. 5自由意志と責任
    すべてが原因と結果で決まっているなら(決定論)、人に責任を問えるのか。脳の活動が本人の「決めた」という自覚より先に始まるという実験(Libet 1983)もあるが、その解釈には議論がある。
  6. 6自由はどこまで許されるか
    Mill:他人に危害を加えない限り、個人の自由に干渉すべきでない(危害原則)。本人のためにと自由を制限すること(パターナリズム:ヘルメットの義務など)をどこまで認めるかが対立点。
  7. 7善悪は文化で決まるか
    文化相対主義:善悪の基準は文化ごとに違い、外から裁くべきでない。反論:それでは人権侵害も批判できなくなる。違いを尊重しつつ、普遍的な価値をどこまで認めるか。

3論理の流れの典型

型流れ設問で狙われる所
思考実験設定→多くの人の答え→その答えを説明する原理→反例答えを分けた条件の違い
理論の比較理論A→その弱点→理論B→その弱点→筆者の立場それぞれの弱点
原理の応用昔からの原理→新技術(AI・遺伝子)に当てはめる→新しい難しさ当てはめた時の新しい問題
道徳の輪の広がり配慮の対象が広がってきた歴史→次は動物・自然・AI?広がりの順番と根拠

4必須キーワード:概念で覚える20

英語和訳ひと言
utilitarianism功利主義utility=効用・有用性
consequentialism帰結主義結果で判断する立場の総称
deontology義務論deon=義務(ギリシャ語)
the categorical imperative定言命法Kant の無条件の道徳法則
virtue ethics徳倫理学virtue=徳・美徳
the greatest happiness of the greatest number最大多数の最大幸福功利主義の標語
thought experiment思考実験頭の中で行う実験
moral dilemma道徳的ジレンマどちらを選んでも何かを失う
moral intuition道徳的直観理由より先に感じる善悪
the doctrine of double effect二重結果の原則意図した害と予見した害を区別
the harm principle危害原則Mill『自由論』(1859)
paternalismパターナリズム本人のためという干渉。pater=父
autonomy自律・自己決定auto(自ら)+nomos(法)
free will / determinism自由意志/決定論両立するかが論争(両立論もある)
moral responsibility道徳的責任be held responsible for〜
speciesism種差別Singer が広めた語
animal welfare / animal rights動物福祉/動物の権利苦痛を減らす/利用自体を問う
the veil of ignorance無知のヴェールRawls『正義論』(1971)
moral relativism道徳相対主義universalism(普遍主義)と対立
the is-ought problem「である」と「べき」の問題事実から当為は導けない(Hume)

5名前と年を押さえる

人物・研究中身
Bentham(1789)動物について "The question is not, Can they reason? nor, Can they talk? but, Can they suffer?" と書いた
Foot(1967)・Thomson(1976・1985)Foot がトロッコの例を示し、Thomson が「トロッコ問題」と名づけ、橋の上の例などに発展させた
Rawls『正義論』(1971)自分の立場を知らない状態(無知のヴェール)で選ぶルールこそ公正だとした
Moral Machine(Awad ら 2018)自動運転のジレンマについてオンラインで世界中から数千万件の判断を集めた研究

6英作文で使える一文7

  • There is no easy answer to this question.
    この問いに簡単な答えはない。
    倫理テーマの導入の定番
  • The ends do not always justify the means.
    目的が常に手段を正当化するとは限らない。
    the end justifies the means の否定形。義務論側
  • We should respect individual freedom as long as it does not harm others.
    他人を害さない限り、個人の自由は尊重すべきだ。
    as long as=〜する限り。危害原則
  • Animals can feel pain, so their suffering should be taken seriously.
    動物は痛みを感じるのだから、その苦しみを重く受け止めるべきだ。
    take〜seriously の受け身
  • Someone must be held responsible when a machine makes a mistake.
    機械が誤りを犯した時、だれかが責任を問われなければならない。
    be held responsible=責任を問われる
  • Moral decisions should not be left entirely to machines.
    道徳的な判断を完全に機械任せにすべきではない。
    leave A to B の受け身。entirely=完全に
  • What is legal is not always what is right.
    合法なことが常に正しいこととは限らない。
    what 節どうしの対比。法と倫理の区別

7よくある誤解6

  • ✕功利主義=自分の幸福を最優先する考え
    ○関係する全員の幸福を等しく数える
    自分も「1人分」としてしか数えない
  • ✕トロッコ問題には1つの正解がある
    ○直観と理論のずれを浮かび上がらせる道具
    答えより「なぜそう感じるか」が本題
  • ✕自由=何をしてもよいこと
    ○他人の自由や安全を害さない範囲での自由
    Mill の危害原則
  • ✕義務論=規則を機械的に守るだけ
    ○核心は人を単なる手段とせず、尊厳を尊重すること
    「単なる手段として」の部分が大事
  • ✕文化で善悪が違う→どんな行為も批判できない
    ○違いがあるという事実と、何が正しいかは別の問題
    is から ought は導けない
  • ✕動物の権利=動物を人間と全く同じに扱うこと
    ○苦しみへの配慮が中心。選挙権を求めるような話ではない
    「同じ扱い」ではなく「同じ配慮」

確認テスト

  1. 1
    行為の結果ではなく、行為そのものの正しさで判断する立場は?
  2. 2
    自分がどの立場に生まれるか分からない状態でルールを選ばせる考えは?
  3. 3
    We should respect individual freedom as as it does not harm others.
  4. 4
    Someone must be responsible when a machine makes a mistake.
  5. 5
    ヘルメットの着用を本人のために義務づけるような干渉は?

背景知識:哲学・倫理を一覧にまとめ、A4 2枚で印刷できる無料PDFにしました。Web版は赤シート・覚えたチェック・カード・4択テストつき。

印刷して、持ち歩こう。

A4 2枚・297KB。□のチェック欄つきで、通学中や試験直前の見直しに。

PDFをダウンロード
CHECK TESTこのシートの確認問題集(24問)

入試レベルの問題と、詳しい解答・解説。表で解いて、裏で答え合わせ(両面印刷向け)。

このシートが入っているルート

あわせて印刷したいシート

原田英語の無料アプリで練習

PDF(2枚)