勉強法の常識No.S25

運動する時間があるなら、その分勉強した方がいいって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:04文献 2件

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読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

有酸素運動で、記憶に関わる海馬が大きくなったという実験があります。運動の時間は、脳にとっても無駄ではありません。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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脳の奥に、海馬という小さな場所があります。新しいことを覚えるときに欠かせない場所で、記憶の入り口とも呼ばれます。

この海馬は、年をとると少しずつ縮んでいきます。それにつれて物忘れが増え、認知症のリスクも高まります。脳が縮むのは年齢のせいで、どうにもならない。そう思っている人も多いのではないでしょうか。

120人の高齢者を2組に分ける

2011年、エリクソン、クレイマーらは、この思いこみを実験で確かめ直しました。集めたのは、120人の高齢者です。くじ引きのように無作為に2つのグループに分け、一方には有酸素運動のトレーニングをしてもらいました。もう一方は、比べるためのグループです。こうした比べ方をランダム化比較試験といい、効果を確かめる方法としてとても信頼されています。

トレーニングのあと、脳の画像で海馬の大きさを測りました。有酸素運動をしたグループでは、海馬の前のほうが約2%大きくなっていました。研究チームによると、これは年齢による1〜2年分の縮みを取り戻したのに近い変化です。

比べるためのグループでは、海馬はむしろ縮んでいました。ただ、もともと体力のあった人ほど、縮み方は小さくなっていました。体力が、脳の目減りを防ぐ盾になっていたようです。

海馬が大きくなった人たちは、空間の記憶、つまり物の位置などを覚える力のテストの成績も上がっていました。さらに、海馬が大きくなった人ほど、血液中のBDNFという物質が多いこともわかりました。BDNFは、海馬で新しい神経細胞が生まれるのを助ける物質です。

一方、脳のほかの場所である尾状核や視床の大きさは、運動しても変わりませんでした。運動の効果は、脳のどこにでも同じように出るわけではないということです。

若い脳にも当てはまるか

ここで気をつけたいのは、この実験の参加者が高齢者だったことです。高校生や大学生の海馬が、運動で同じように大きくなるかは、この研究からはわかりません。

それでも、運動が脳に良いことを示す研究は、高齢者だけのものではありません。2008年、ヒルマン、エリクソン、クレイマーの3人は、運動と脳についての研究をまとめた総説を書いています。人間と動物の研究から、有酸素運動が、子どもから高齢者まで、認知機能のいくつかの面を高めうることを示しました。

この総説は、子どもの運動不足にも触れています。運動は体の健康だけでなく、学業成績にも良い影響を与えるかもしれない、と述べています。「かもしれない」という言い方のとおり、これは可能性の段階です。運動さえすれば成績が上がる、とまでは言えません。

部活をやめる前に

受験が近づくと、「部活をやめて、その時間を勉強に回そう」と考える人がいます。けれど、運動の時間をゼロにするのは、脳にとってもったいない選択かもしれません。

原田英語のおすすめは、毎日の勉強の中に、体を動かす時間を予定として組み込むことです。部活を続けられない時期でも、帰り道を一駅分歩く、勉強の合間に20分ほど散歩する、といった形なら取り入れやすいはずです。

机に向かっている時間だけが、勉強の時間ではありません。

この記事に出てくる用語
ランダム化比較試験
参加者をくじ引きのようにグループに分けて、方法の効果を比べる実験。もっとも信頼できる調べ方の一つ。

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参考文献

  1. Hillman C., Erickson K., Kramer A. (2008). Be smart, exercise your heart: exercise effects on brain and cognition. Nature Reviews Neuroscience, 9, 58-65.

  2. Erickson K., Voss M., Prakash R., Basak C., Szabo A., Chaddock L. et al. (2011). Exercise training increases size of hippocampus and improves memory. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108, 3017-3022.

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