勉強法の常識No.S14
モーツァルトを聴くと頭が良くなるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
モーツァルトを聴いたあとの小さな効果は、ほかの音楽でもほぼ同じでした。モーツァルトだけの効果は、ほとんど残っていません。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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1993年、科学雑誌『ネイチャー』に、1ページの短い報告がのりました。書いたのは、カリフォルニア大学アーバイン校のラウシャー、ショー、カイの3人です。
大学生にモーツァルトの曲を10分間聞かせると、そのあとの推論の課題の成績が、知能指数に直して8〜9ポイント高くなった、というのです。比べた相手は、リラックスするための指示を聞いた場合と、何も聞かずに静かにしていた場合でした。
この結果は「モーツァルト効果」と呼ばれるようになり、いくつもの研究グループが確かめようとしました。
確かめるほど、効果は小さくなった
1999年、心理学者のチャブリスは、それまでの研究をまとめて分析し、同じ『ネイチャー』に報告しました。結論は、効果があったとしても小さく、知能指数や推論の力が全体として上がったわけではない、というものでした。成績が上がっていたのは、ある特定の種類の課題だけで、その理由も、脳の働きから簡単に説明がつくとしています。
「モーツァルト効果、シュモーツァルト効果」
2010年、ピーチュニヒらは、さらに多くの研究を集めました。40近くの研究、3,000人を超える参加者のデータです。論文の題名は「モーツァルト効果、シュモーツァルト効果」。英語では、言葉の頭を「シュム」に変えてくり返すと、「何が○○だ」と軽くあしらう響きになります。
分析で調べたのは、空間的な課題の成績です。モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」を聞くと、何も聞かない場合に比べて小さな効果がありました。効果量は0.37です。ところが、モーツァルト以外の音楽を聞いた場合も、効果量は0.38でした。モーツァルトとほかの音楽を比べると、差は0.15で、著者たちはこれを無視できるほどの差だとしています。
さらに2つの問題が見つかりました。ひとつは、効果が出た研究ほど発表されやすい「出版バイアス」の形跡です。これを補正すると、効果はもっと小さく見積もられます。もうひとつは、最初にこの効果を報告したラウシャーたちの研究で、効果が大きく出やすかったことです。
著者たちの結論は、モーツァルトに特有の、成績を上げる効果の証拠はほとんど残っていない、というものでした。
1本の論文が常識になるとき
ひとつの研究が大きく取り上げられると、あとから追試や反対の結果が出ても、最初の結果だけが「常識」として残ることがあります。モーツァルト効果は、そのよい例です。
ひとつの研究室の結果だけで判断しない。たくさんの研究をまとめた分析や、別のグループの追試で同じ結果が出てはじめて、その効果は確かだと言えます。勉強法のうわさを聞いたときにも、覚えておきたい考え方です。
勉強の前に好きな曲を聞いて気分がよくなるなら、それはそれで悪くありません。でも、その曲がモーツァルトである必要はありません。
この記事に出てくる用語
- 効果量
- 効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。
- 追試
- 同じ実験をもう一度行い、同じ結果が出るかを確かめること。
- 出版バイアス
- 効果が出た研究ほど論文になりやすく、効果がなかった研究が埋もれてしまう偏り。
参考文献
Rauscher F., Shaw G., Ky C. (1993). Music and spatial task performance. Nature, 365, 611-611.
doi.org/10.1038/365611a0✓ 実在と内容を確認済み
Pietschnig J., Voracek M., Formann A. (2010). Mozart effect–Shmozart effect: A meta-analysis. Intelligence, 38, 314-323.
doi.org/10.1016/j.intell.2010.03.001✓ 実在と内容を確認済み
Chabris C. (1999). Prelude or requiem for the 'Mozart effect'? Nature, 400(6747), 826-827.
doi.org/10.1038/23608✓ 実在と内容を確認済み
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