有名な勉強法を判定No.P10
勉強はキリの悪いところでやめると、記憶に残る(ツァイガルニク効果)って、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
「途中でやめると、続きをやりたくなる」は支持されました。でも「途中のことほどよく覚えている」は確認されませんでした。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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今日からできるやり方
- やめる前に、次にやる問題を1つ決めておく
- 続きの1行目だけ書いてから休む
- 再開したら、まず前回の内容を思い出す
「勉強は、キリの悪いところでやめるといい」。
途中でやめたことは頭に残るし、続きもやりたくなる。だから、問題を最後まで解き終える前に、あえてペンを置く。そんなアドバイスを聞いたことがあるかもしれません。根拠としてよく挙がるのが、心理学の「ツァイガルニク効果」です。
このアドバイスには、2つの主張が入っています。「途中でやめたことは、よく覚えている」と、「途中でやめたことは、続きをやりたくなる」。2025年に発表された研究のまとめは、この2つにまったく違う判定を下しました。
100年前の2つの実験
どちらの主張も、20世紀の初めに、心理学者レヴィンの考えから生まれた2つの実験にさかのぼります。
1927年、ツァイガルニクは、参加者にいくつもの作業をさせ、そのうち一部を途中で打ち切りました。あとで、どんな作業をしたかを思い出してもらうと、終えた作業より、打ち切られた作業のほうが多く思い出されました。これが「ツァイガルニク効果」です。
翌1928年、オフシアンキナは、同じような方法で別のことを調べました。作業を途中で打ち切られた人は、続けてよい機会があると、誰にも言われないのに、その作業に戻っていきました。こちらは「オフシアンキナ効果」と呼ばれます。
レヴィンの考えでは、何かをしようと決めると、心の中に一種の緊張が生まれます。この緊張は、やり遂げるまで消えません。だから途中のことは記憶に残り、続きをやりたくなる、というわけです。
59本の研究をまとめると
2025年、スイスの研究者ギベリーニとマイヤーは、この2つの効果を調べた研究を集め直しました。1,349本の文献を調べ、条件に合った59本を分析しています。38本が記憶の効果、20本が再開の効果、1本が両方を調べたものでした。
記憶の効果は、ほとんど残りませんでした。ツァイガルニク自身の最初の研究を除くと、打ち切った作業と終えた作業の思い出されやすさは、ほぼ同じだったのです。思い出された作業のうち、打ち切った作業が占める割合は、平均49%。半分を切っていました。
一方、再開の効果ははっきりしていました。打ち切られた作業は、平均して約67%の割合で再開されていました。偶然なら50%なので、それを大きく上回ります。著者たちは、あまり知られていない再開の効果のほうが、むしろ安定して確かめられてきた、と書いています。
昔の実験室の空気
では、なぜツァイガルニクの実験では、記憶の効果が出たのでしょうか。著者たちは、実験者の権威や、作業をきちんとこなすよう求められる雰囲気、参加者の作業への入れ込み具合などが関わった可能性を挙げています。そうした状況は昔の実験ではよくあり、今では少なくなったので、効果を再現しにくいのではないか、という見方です。
実際、効果の出方は状況によって変わりました。分析では、くつろいだ雰囲気の実験で、記憶の効果が見られました。一方、作業そのものに集中させる中立的な実験や、作業を知能テストのように見せる実験では、見られませんでした。
再開の効果にも、条件があります。この分析で紹介されている研究のひとつでは、参加のお礼にお金がもらえると前もって知らされた人は、打ち切られた作業に戻る割合がはっきり下がりました。続きをやりたくなる気持ちは、自分でやり遂げたいという思いから来ているのかもしれません。
なお、この分析がまとめたのは、パズルや文字の並べかえのような作業を使った実験で、教科書の勉強そのものを調べたものではありません。
やめる場所は、「再開のスイッチ」
こうして見ると、キリの悪いところでやめるのは、記憶術としては根拠が弱いことになります。けれども、次に始めやすくする工夫としては、理にかなっています。
原田英語のおすすめは、やめる前に、次にやる問題を1つ決めておくことです。できれば、その問題の1行目だけ書いてから休みます。そして再開したら、いきなり続きに入らず、まず前回やった内容を、何も見ずに思い出してみる。覚えるのは思い出す練習に任せ、途中でやめるのは、机に戻るきっかけに使いましょう。
この記事に出てくる用語
- 追試
- 同じ実験をもう一度行い、同じ結果が出るかを確かめること。
- 想起練習(思い出す練習)
- 教科書を閉じて、自分で答えを思い出す勉強。小テストや問題を解くことも、これにあたる。
参考文献
Ghibellini R., Meier B. (2025). Interruption, recall and resumption: a meta-analysis of the Zeigarnik and Ovsiankina effects. Humanities and Social Sciences Communications, 12, 962.
doi.org/10.1057/s41599-025-05000-w✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





