数字でわかるNo.N22
キーワード法(語呂合わせ)で、正答率は46%から72%へって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ホント
ロシア語の単語テストで、キーワード法のグループは72%、自由に覚えたグループは46%の正解でした。
ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。
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sly という英単語は「ずるい」という意味です。
たとえば、こう覚えてみます。sly の音は「スライ」。日本語の「スライム」に少し似ています。そこで、ゲームに出てくるスライムが、宝箱の陰で「ずるそうに」にやりと笑っている場面を思い浮かべます。次に sly を見たとき、スライムの顔が浮かべば、「ずるい」にたどり着けます。
これは説明のために作った例ですが、こうした覚え方は、心理学では「キーワード法」と呼ばれ、50年以上前から実験で確かめられてきました。
ロシア語を、英語の音で覚える
1975年、アトキンソンとラウは、英語を話す人がロシア語の単語を覚える場面で、この方法を試しました。
キーワード法は、2つの段階でできています。1つ目は、外国語の単語を耳で聞いて、その一部と音が似ている母語の単語、つまりキーワードを結びつけること。2つ目は、そのキーワードと、外国語の単語の意味とが関わり合っている場面を、頭の中に絵として描くことです。
外国語の単語とキーワードは「音」でつながり、キーワードと意味は「イメージ」でつながる。2本の鎖で、知らない単語を意味まで引っぱってくる仕組みです。sly とスライムの例で言えば、音のつながりが「スライ」と「スライム」、イメージのつながりが「ずるそうに笑うスライム」です。
46%と72%
アトキンソンとラウは、キーワード法で覚えるグループと、好きなやり方で自由に覚えるグループを比べました。
どの測り方でも、キーワード法はよく効きました。いちばん重要なテストでは、キーワード法のグループの正解が72%、自由に覚えたグループは46%でした。100語あれば、26語ほどの差になります。
速く覚えて、速く忘れる?
ただ、この方法には弱点も指摘されています。
1992年、ワンらは、キーワード法で覚えた単語が、時間がたってもどれだけ残るかを調べ直しました。それまでの研究の多くは、同じ人の「直後の成績」と「しばらくあとの成績」を比べていました。でもその比べ方では、最初にどれだけ覚えたかの差が、忘れ方の差とまざってしまいます。
そこでワンらは、直後にテストする人と、時間をおいてテストする人を、別々のグループに分けました。4つの実験の結果は一貫していて、キーワード法で覚えた人のほうが、くり返し唱えて覚えた人より、あとで多く忘れていました。
ワンらの考えでは、キーワードにはもともといろいろな連想がくっついています。スライムなら、ほかのゲームの場面も浮かぶでしょう。そうした別の連想がじゃまをして、実験で作ったイメージが引き出しにくくなるのではないか、というのです。
語呂は入口、復習で固める
キーワード法は、覚えにくい単語の「最初の1回」をぐっと楽にしてくれます。ただし、それで終わりにすると、思ったより早く抜けていく可能性があります。
原田英語のおすすめは、どうしても覚えられない単語にだけキーワードを作ることです。そして、数日後と1週間後に、その単語をテストし直します。何度か思い出すうちに、スライムを経由しなくても sly の意味が出てくるようになれば、それで成功です。語呂は、記憶の入口に置く足場のようなもの。建物ができたら、外してかまいません。
参考文献
Atkinson R., Raugh M. (1975). An application of the mnemonic keyword method to the acquisition of a Russian vocabulary.. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 1, 126-133.
doi.org/10.1037/0278-7393.1.2.126✓ 実在と内容を確認済み
Wang A. Y., Thomas M. H., Ouellette J. A. (1992). Keyword mnemonic and retention of second-language vocabulary words. Journal of Educational Psychology, 84(4), 520-528.
doi.org/10.1037/0022-0663.84.4.520✓ 実在と内容を確認済み
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